魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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第19話 負けたくない思い! トパーズ VS アウィン!
溶けない冷凍ミカン


 深夜、少女たちの穏やかな寝息に外から聞こえる虫の声がかすかに混じる。平和で静かな夜だった。窓際のベッドに魔法界の月が淡い光を落とし、向かい合って寝ている小百合とラナを照らしていた。

 

 その時、闇の中に別の異質な光が灯った。テーブルの上に置いてあるきんちゃく袋の中の闇の結晶の一つが怪しく光りだしていた。

 

 小百合は母親の夢を見ていた。真っ黒に塗りつぶされた空間の中に母の百合江が立ってこちらを見ているのだ。

 

「お母さん!」

 

 小百合が手を伸ばして走っても、ただ立っているだけの母との距離が縮まらない。

 

「……小百合、苦しい、早くわたしを助けて」

「お母さん!!?」

 

 百合江は本当に苦しそうに胸を押さえて今にも倒れてしまいそうだ。小百合はたまらない気持ちになって走り続けた。なのに百合江の姿が小百合からどんどん離れていく。

 

「早く助けに来て、小百合……」

 

 百合江が闇の奥底に消える前に聞こえた言葉が耳朶に残る。

 

 母の姿が消えてもなお走る続ける小百合は、何もないはずの闇に足を取られて転んでしまう。だが、完全に倒れてしまう前に誰かが手をつかんで支えてくれた。

 

「大丈夫、小百合?」

「えっ!? お母さん!!?」

 

 今度は小百合の目の前に百合江が立ち、しっかりと小百合の手をつかんでいた。その手から確かな温もりが伝わってくる。

 

「お母さん!!」

 

 小百合が母の懐に入ると優しい(かいな)に抱きしめられた。夢の中なのに確かに存在する母に触れて小百合の目に涙が溢れる。

 

 百合江は愛娘を抱きしめながら言った。

 

「あなたがわたしの為にしてきたことは全部見ていたわ。もうこれ以上わたしの為に苦しまないで」

「お母さん、わたしはどうしたらいいの……」

「小百合、あなたはどうすればいいのか、もうわかっているはずよ」

 

 百合江の体が徐々に闇に溶け込んでいく。

 

「行かないで、お母さん!」

 

「今のわたしは命だけの存在よ。この世界に長くとどまることはできないの。最後にあなた達に希望の光を託します」

 

 その言葉を最後に、母は無限の闇に抱かれて姿を消した。その瞬間に小百合は目を覚まして現実に帰ってくる。彼女は窓から差し込んでくる朝日の眩しさに目を細め、日の光を手でさえぎった。間近にはラナの寝息が聞こえる。

 

「お母さん……分からないわよ。苦しいって、助けてって、言っていたじゃない……」

 

 夢にもかかわらず小百合はすべてをはっきりと覚えていた。故に、その夢が突きつける矛盾に苦しめられることになった。

 

 

 

 闇の底に沈む城の玉座でロキは苦々しい顔をしていた。

「チッ、ダークネスの夢の中に入って操り人形にするつもりだったが、何かが邪魔してきやがった……」

 

 ロキはボルクスに与えた大量の闇の結晶の中の一つに闇の魔法で罠をしかけていた。その闇の結晶を通じて小百合の精神に入り込み、良からぬことをするつもりだった。しかしそれは失敗に終わった。ロキの念力ですらはね返す強力な力が働いたのだ。

 

 ロキは欲しい玩具が手に入らなかった:我儘な子供のように、いつまでも口惜しそうな顔で言った。

 

「さすがにプリキュアだ、あの男のように簡単にはいかんか。だが完全に失敗したわけじゃあねえ。ある程度の暗示を与えることには成功している。影響はあるはずだ」

 

 

 

 魔法学校の廊下にたくさんの生徒が集まっていた。みんな夏休み前の期末テストの結果を見に来たのだ。壁に貼りつけてある古風な木枠の魔法の掲示板をみんな見つめていた。上から上位10人の名前が流れ落ちるように降りてくると、生徒たちの中から控えめな歓声が起こる。廊下なのであまり大きな声は出せないが、生徒たちは先生方に注意されない範囲で思い思いの事を口にしていた。

 

「すごいよリコ!!」

「リコ、ついにやったな!!」

 

 魔法の掲示板を見つめていたリコは近くで急に大声を出されて焦ってしまった。

 

「ちょっと、みらいもジュンも声が大きいわ。ここは廊下なんだからお静かに!」

「あっ、ごめん」

 

 みらいが片方の手で口を塞ぐ。もう片方の手ではモフルンを抱いていた。そのモフルンが嬉しそうにバンザイするように両手を上げる。

 

「リコが一番モフ」

「リコがついに一番になったんだね!」

「おめでとう、リコ」

 

 ケイ、エミリーも続けて祝福の言葉を送ってくれた。

 

「ええ、みんなありがとう」

 

 礼を返すリコのことを見て、みんなあれっと思った。ケイもジュンもエミリーも、リコが一番になったあかつきには、もっともっと大喜びすると思っていたからだ。リコは微笑して嬉しそうではあるが、3人の友達の想像と比べたら喜んでいるとは言えないくらいだ。

 

 みらいは気づいていた。掲示板の一番上にある自分の名前を見るリコの中に納得していない気持ちがあることに。

 

「勉強と魔法の実技を合わせたら一番だけれど、魔法の実技だけで見たらまだ3番目よ。まだまだよ」

「それはいくら何でもハードル上げすぎなんじゃないのかい?」

 

 ジュンが言うとケイもエミリーも頷く。魔法最下位だったリコがここまで上がってきただけでもすごいことだ。3人ともリコが努力している姿をずっと近くで見ていたので、言葉を尽くして讃えたい気持ちでいっぱいだった。

 

「リコは小百合がいないから一番になった気がしないんだよね」

 

 みらいがはっきり言うと、リコはほのかに悲し気な顔でみらいを見つめる。そしてリコは感情を交えず客観的に答えた。

 

「もし小百合がいたとして、勉強では負けないけれど、魔法の実技では彼女が一番になると思うわ。小百合がここにいたら、わたしが一番になれたかどうか……」

 

 リコはそう言ったものの、正直言って小百合がいたら今の自分では負けると思っていた。前回のテストの学科試験で2位だった小百合との点差はたったの3点だった。魔法の実技の方は小百合は受けられずノーカウント。もし今度の期末試験で小百合が魔法実技で一番になるとすれば、4位になるリコとの点差は少なくとも10点くらいになる。

 

 リコはそんなつまらない想像の上で負けなど認めたくはない。けれど、どうしても一番上にある自分の名前に上に小百合の名前が見えてしまう。

 

 一番になったのに、しょんぼりしてしまったリコに、みらいが歓喜する笑顔を送った。

 

「でも、リコはやっぱりすごいよ! リコが一番になって、わたしすごくうれしい!」

 

 みらいは我が事のように喜んで、リコに抱きついた。

 

「本当におめでとう、リコ!」

「みらい、ありがとう」

 

 みらいのおかげでリコの中に素直に嬉しいという気持ちが生まれた。今は目標にしていた首席になれた喜びを友達と一緒に分かち合うことが大切なのだ。

 

「今度は魔法の実技も一番を目指すわ」

「リコなら絶対できるよ」

「当然よ」

 

 リコが自信満々に言うと、いつも通りの彼女の姿にみらいは安心して笑顔になった。

 

 それから話題がシフトしていく。

 

「小百合とラナはどうして急に学校にこなくなっちゃったの? みらいとリコは何か知らない?」

 

 ケイがふってきた話に、みらいとリコは思わず顔を見合わせた。

 

「ど、どうしてだろうね?」

「わたしたちは別に何も知らないし」

 

「なんか怪しいな」

 

 ジュンがみらいとリコにずいっと顔を近づけると二人とも目をそらしてしまい、余計に怪しまれてしまうのだった。

 

 みらいはジュンから距離を取ってごまかすように苦笑いした後に、水平線の先を見るような目で、どこまでも素直にまっすぐな気持ちになって言った。

 

「二人ともきっともうすぐ帰ってくるよ。何となくそんな気がするんだ」

 

 

 

 授業が終わって寮の部屋に帰ると、みらいのベッドに小さき者がいびきをたてて眠っていた。みらいとリコとモフルンが集まって彼を上から見下ろす。

 

「チクルンモフ」

「妖精の森に帰るって出ていったのに、また戻ってきたのね」

 

 リコがチクルンの小さな体を指でつつくと、彼は目を覚ましてむくりと起き上った。それから大きな欠伸と背伸びをしてからリコたちの姿に気づく。

 

「よう、おめえら。来るのが遅いから寝ちまったぜ」

 

「チクルン、妖精の森にいなくても大丈夫なの? 女王様に怒られる~って出ていったのに」

 

 そう言うみらいに、チクルンはえへんと胸を張る。

 

「女王様におめえらの事が心配だっていったらよう。そばにいて役にたってあげなさいってさ。これって女王様に認められたってことだよな」

 

「チクルン、わたしたちのことたくさん助けてくれたもんね」

「チクルン大活躍モフ~」

 

 みらいとモフルンに言われると、チクルンはこそばゆそうな顔になる。

 

「そんなに言われると照れるぜ」

「これからも期待しているわよ」

「おう、任せておけよ!」

 

 チクルンは小さな拳で自分の胸を叩いてリコに答えるのだった。

 

 その時、扉をノックする音が聞こえてくる。

 

「二人ともいるのでしょう?」

「リズ先生の声だ」

 

 みらいが言うと、リコが頷いて魔法の杖を取り出す。

 

「キュアップ・ラパパ、扉よ開きなさい」

 

 リコの魔法で扉が開くと明るい雰囲気のリズが立っていた。

 

「二人ともそろっているわね。校長先生がお呼びよ」

 

『校長先生が!?』

 リコとみらいの声が重なる

 

「校長先生、元気になったのね」

 リコに微笑のリズが頷く。すると今度はリコとみらいの笑顔が重なった。

 

 

 

 みんなで校長室に行くと、はたして机の前に校長先生が座って待っていた。普段通りの若々しい美丈夫の姿に戻っていた。

 

「校長先生が元気になってよかったぁ」

 

 みらいが心からの言葉を吐露すると校長が薄い笑みを浮かべる。

 

「心配をかけたな、もう大丈夫じゃ」

「もう無理はしないでくださいね、年なんですから」

「なあに、まだまだ若い者には負けんよ」

 

 冗談めいたリコの言葉に校長がやり返すと、校長室に少女達の明るい笑いが弾けた。校長はそんな歓談の後に少し真面目になって話し始めた。

 

「君たちをここに呼んだのは、少々気になるものを手に入れてのう。それを見せたかったのじゃ」

 

 校長先生は机の引き出しを開けてがさごそやってから、それを取り出して机の中心置いた。硬い音を立てて転がったのはリコもみらいも見慣れた冷凍ミカンだった。校長先生が何かすごい物を出すと期待していたリコは首を傾げてしまった。

 

「冷凍ミカンがどうかしたんですか?」

「リコ君、解凍してみたまえ」

「ミカンの解凍なら任せて下さい」

 

 リコが星の杖を出して呪文を唱える。

「キュアップ・ラパパ、解凍!」

 

 リコの魔法の光が水晶のような厚い氷に覆われているミカンに当たってはじける。ミカンには何の変化もなくカチコチに凍っていた。

 

「え、うそっ!?」

「リコ、失敗しちゃったの?」

「し、失敗なんてしてないし!」

 

 リコはみらいに思わず言ってしまったが、氷がまったく溶けてないのでさすがに無理がある。リコは引きつった笑みを浮かべながら、もう一度呪文を唱える。

 

「キュアップ・ラパパ! 氷よ溶けなさい!」

 リコが2度まで魔法を使ってもミカンは凍ったままだった。

「そ、そんな。冷凍ミカンの解凍はもう完璧なずなのに、はうぅ……」

 

「この冷凍ミカン変だよ。今度はわたしがやってみるね」

 みらいもハートの杖を出して呪文を唱える。

 

「キュアップ・ラパパ! 氷よ溶けて!」

 やっぱり冷凍ミカンは溶けなかった。

 

「リコの魔法が失敗したんじゃなくて、この冷凍ミカンに魔法がきかないんだよ!」

「な、なんなの、この冷凍ミカン!?」

 

「ハッハッハ、何を隠そう、わしの魔法でもこの冷凍ミカンは解凍できんのじゃ」

 

『ええぇっ!? 校長先生でも!?』

 

 みらいとリコの声が見事にハモる。モフルンがみらいの腕の中から校長先生の机に乗って、冷凍ミカンを両手で持って見つめた。水晶のような氷の表面にモフルンの顔が映り込んだ。

 

「とっても冷たいモフ~。でもこの氷ぜんぜん溶けないモフ」

 

「ひゃっこい島の永久凍土の地下深くには、決して溶けない氷がある。このミカンをおおっている氷はそれと同じものなのじゃ」

 

「どうして永久凍土と同じ氷がミカンなんかに……」

「話によれば、これはプリキュアが魔法で凍らせたミカンだそうな」

 

 校長先生がリコの疑問に答えると、しんと静まり返った。みらいもリコも硬い表情になって黙ってしまった。

 

「確か君たちが持つアクアマリンのリンクルストーンは冷気を操る魔法じゃったな」

 

「わたしたちじゃありません。それに、アクアマリンの魔法はそんなに強力じゃないわ。魔法で溶かせない氷を生み出すことなんてできないと思うし……」

 

 リコは校長先生に言いつつ考え出した。それをみらいが心配そうに見つめている。そんな二人に校長先生が真顔になって言った。

 

「わしの言いたいことはもう分るだろう。これをやったのが君たちでないとすれば答えは一つ。小百合君とラナ君は新たな力を手に入れたのだ」

 

 みらいは戦いを予見させるこの出来事を前に、ため息をつくように言葉を紡ぐ。

「魔法でも溶かせない氷だなんて……」

 

「支えのリンクルストーンではこんな強力な魔法は使えないわ。きっと二人は新しい守護のリンクルストーンを手に入れたのよ」

 

「うむ、わしもリコ君と同じ考えだ。君たちがスタイルチェンジできるのなら、同じ魔法つかいプリキュアである彼女らも出来てしかるべきであろう。あの二人と君たちとで戦ってほしくはないが、もしもの時は気を付けるのだ」

 

「わかりました」

 

 リコが校長先生に答えた時に悲し気だったみらいの表情が急に変わった。その薄紫の瞳には窓から見える眩い光体が映っていた。

 

「なにあの光!?」

 

 校長先生とリコも気づき、みんなで窓辺に駆け寄る。窓の向こうに太陽を小さくしたような焔の光が現れていた。

 

「あの方角は魔法商店街じゃな」

 

「リコ、すぐに行こう! 魔法商店街に!」

「ええ!」

 

 みらいとリコは校長先生に(いとま)も告げずに出ていくと、校内を走り渡り廊下から箒に乗って飛び立った。

 

 

 

 小百合とラナは久しぶりに穏やかな日常の中にいた。

 

 小百合はエリーが持ってきてくれた奇妙なものを疑るような目で見つめていた。テーブルの上に置かれたそれは鋼鉄のボウルの中に入っている黒い物体で、全体に長くて鋭い棘が無数にはえていた。

 

「エリーさん、これは?」

「ハリマンゴーよ。魔法界の最高級果実の一つなの」

「おお~、ハリマンゴ~、たべた~い!」

 

「見た目は狂暴な栗ね……」

 

 ラナがもろ手を挙げて喜んでいる隣で小百合がつぶやいた。小百合に抱かれていたリリンが飛んできてテーブルの上に立つと、ボウルの中のハリマンゴーをまじまじと見つめる。

 

「これ本当に食べられるデビ?」

「美味しいわよ。わたしの農園で少しだけ作ってるの」

「最高級っていうなら、たくさん作った方がいいんじゃないですか?」

 

 小百合がエリーにもっともな進言をする。

 

「ハリマンゴーは高く売れるけれど育てるのが難しいのよ。たくさん作るには人手が必要なの。それに、本業はリンゴ作りだから」

 

「ここはリンゴ村ですものね」

「そんなことより~、はやく食べようよ! ハリマンゴー食べたいよ~」

「はいはい」

 

 こらえ性のないラナに小百合は答えてから改めてハリマンゴーを見つめる。

 

「どうしてこんなにすごい棘があるの?」

「ハリマンゴーは食べようとして手を出すとね、食べられるのが嫌だから、ハリを伸ばして攻撃してくるんだよ。刺さるとめっちゃ痛いんだって! だから魔法じゃないと皮がむけないの」

 

「何なのよ、その危険生物みたいな果物は!?」

 

 ラナの説明に小百合は驚くのと一緒にハリマンゴーを食べるのが少し怖くなった。

 

「ハリマンゴー、ハリマンゴー、ハリマンゴー、は~や~く~」

 

 ラナからハリマンゴーコールが起こる。小百合は仕方なく魔法の杖を出した。

 

「はいはいはい、わかったわよ。キュアップ・ラパパ! 果物の皮よむけなさい」

 

 小百合が杖を一振りすると、ハリマンゴーが真ん中から割れて、パカッと上の皮が取れた。その中にはミカンのように別れている真っ白な果実が詰まっていた。

 

「これはマンゴスチンね」

「小百合なに言ってるの、マンゴーだよ」

 

「中身はナシマホウ界のマンゴスチンっていう果物に似てるって話よ」

「へぇ、ナシマホウ界にもハリマンゴーみたいなのあるんだ~」

「こんな恐ろしい棘はないけどね……」

 

 小百合とラナが話しているとリリンが足音をたてて果物に近づいて、白い果実を一つつまんで口に入れた。するとその赤い星の宿る瞳が輝きに満ちる。

 

「これはとーっても美味しいデビ!」

「そんなに美味しいの? どれどれ」

 

 小百合も白い果実を口に放り込む。すると果物とは思えない濃厚な味が口の中いっぱいに広がっていく。

 

「美味しい! これはまるで生クリームね。甘さの中にほのかな酸味もあって、濃厚だけれど後引く味だわ。食べてみるとマンゴスチンとは別物ね」

 

「魔法界では森の生クリームって呼ばれているのよ。ハリマンゴーの油分はお肌に潤いを与えてくれるから美容にもいいの」

 

「こんなに美味しくて美容にもいいなんて、完璧な果物ですね」

 

 小百合が感心しているすぐ横でラナとリリンがハリマンゴーを競って食べまくっている。小百合が気づいた時には果物の皮しかなくなっていた。

 

「ちょっとあんたたち! わたしの分も残しておきなさいよね!」

「ごめん小百合、おいしくってつい~」

「油断した小百合が悪いデビ。美味しいものの前では油断は禁物デビ」

 

 謝るラナに対してリリンは悪魔的に尊大な態度に出る。小百合は怒るのを通り越して呆れてしまった。

 

「あんた最低ね」

「悪魔にとってそれは誉め言葉というものデビ」

「くぅ、生意気な……」

 

  小百合が握りこぶしを作ってもリリンはテーブルの上に座って平然としていた。その様子を見ていたエリーが思わず吹き出してから言った。

 

「まあまあ、ハリマンゴーならもう一つあげるから」

「い、いえ、そんな高級なもの二つも頂けません」

 

「その代わり」

 

 とエリーは小百合の言葉を止めるようにかぶせてくる。

 

「お使いお願いできないかしら。ハリマンゴーを魔法商店街に卸したいんだけれど、まだまだリンゴの収穫で忙しくてなかなか身動きがとれないの」

「そんなのお安い御用です」

 

 小百合が即答するとエリーはにこやかに手を合わせた。

 

「助かるわ。魔法商店街の果物屋さんよ。場所はラナちゃんが知ってるから」

 

 そんな訳で小百合とラナは魔法商店街に向かうことになった。

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