魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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総力戦

「あなた何かいっていなかったっけ? わたしには近づくことなどできないとか何とか」

 

 マジカルはいくら何でも意地悪いなと思いながらもダークネスを挑発した。

 

「うるさいわね!!」

 

 ダークネスは下唇を噛んで心底悔しがった。そして即座に反撃に転じた。マジカルはダークネスは距離を開けてくると予想していたが逆に突っ込んできた。

 

 ――離れた方が有利なのになんで!?

 

 マジカルは焦って不用意に手を出してしまった。ダークネスは単調なパンチをよけると同時にその腕をつかんでマジカルを投げ飛ばした。

 

「てやーっ!」

 

「きゃっ!?」仰向けに倒れたマジカルの上で群青の光球がその輝きを強くする。すると地鳴りがしてマジカルの背中を何かが突き上げた。

 

「ええっ!? ちょっ!?」

 

 マジカルの体が急速に上へと持ち上げられていた。なんと地面から突き上げられた氷の柱がマジカルを先端に乗せたままどんどん高くなっていた。

 

「せっかくあんなに苦労して近づいたのに!」

 

 ダークネスとの距離がまた開いてしまった。できるだけ距離を狭めたいマジカルは、氷の柱の上から跳び出し、真上に広がった黄色い円を蹴って、まだ地上にいるダークネスに急接近する。しかし巨大な氷の柱の側面から樹の枝のような氷柱が伸びてきて空中のマジカルを弾いた。

 

「きゃあっ!?」

 

 マジカルが落下の途中で足場を作って着地すると、巨大な氷柱の側面から樹木が急速に成長するように次々と氷柱が突き出し、さらにその突き出た氷柱からも別の氷柱が何本も突き出て、その中の一本がマジカルの足場になっている黄色い円盤を下から突き破って破壊した。マジカルは仕方なく移動して巨大な氷の柱から離れた。ダークネスは樹のように成長した氷の柱の根元で少し余裕を取り戻して微笑していた。

 

 マジカルはアウィンの力で生み出された巨大な氷の樹木を見て息をのんだ。

 

「わたしたちには守護のリンクルストーンが四つあるのに対して、宵の魔法つかいは二つしかない。きっと数が少ないかわりに能力が高くなっているんだわ」

 

 地上のダークネスが右手を振り、新たなリンクルストーンを呼び出す。

 

「リンクル・スターサファイア! マジカル、どんな魔法を使ってでもあなたに勝つ!」

 

 そしてダークネスが飛翔した。マジカルはダークネスが近づくまでの短い時間、腕を組んで考える。

 

「遠距離が強力なアウィンスタイルに飛行を可能にするスターサファイア、最悪の組み合わせね。さて、どうしようかしら?」

 

 マジカルは上を見て、うんと一つ頷いた。それから彼女が二つの黄色い球を複数にちぎってブロックにして階段状に並べると、その上を駆け上がっていく。マジカルを射程に捕えたダークネスが再び氷柱のミサイルを撃ってきた。

 

「そう簡単には当たらないわ!」

 

 マジカルは途中から足場を二つの円盤に切り替えると、それを空中に縦置きにして次々蹴って稲妻のような形に上空へと昇っていく。

 

「何を考えてるのかは知らないけれど、狙い撃ちよ!」

 

 ダークネスは先を見てマジカルが配置した黄色い円盤に向かって氷柱を発射した。そこへちょうどマジカルが飛び込んでくることになり、無数の氷柱をまともに食らってしまった。

 

 空中に投げ出されたマジカルは落下しながら態勢を整えて、真下に黄色い四角形の膜状の足場を作る。

 

「落ちてたまるものですか!」

 

 黄色い膜はマジカルを包み込み、ゴムのように下に伸びて強靭な弾力をもってつぶてのようにマジカルを撃ちだす。ただまっすぐ真上に飛んでいくマジカルはダークネスにとって良い的だった。再び氷柱の弾丸がマジカルに迫ってくる。

 

「リンクル・ムーンストーン!」

 

 光のバリアがマジカルを守って氷柱をはね返す。ダークネスは苦々し気に舌打ちした。マジカルはさらに上へと跳躍する。

 

「なぜ上へ逃げるの?」ダークネスは不審に思いながらも飛翔してマジカルを追跡した。

 

 マジカルは空中で大きな雲を背にしてダークネスと向かい合う。

 

「やっとここまできたわ」

 

「こんなところにまできて、空中戦でも挑むつもり? あなたに勝ち目はないわよ」

 

「戦いに知性が必要と言ったのはあなたでしょ!」

 

 マジカルが背後に広がった黄色い円盤を蹴ってダークネスに向かって直進する。

 

「正面から向かってくるなんて、バカにしてるの!?」

 

 ダークネスが無数の氷柱を撃ちだすと、マジカルがリンクルステッキを振った。

 

「リンクル・アメジスト!」

 

 マジカルが正面に広がった魔法陣に吸い込まれて消える。その魔法陣が縮んで小さくなって消え去った後に、ダークネスが撃った無数の氷柱が通り過ぎていく。

 

「どこに行ったの!?」

 

 ダークネスが辺りを見てもマジカルの姿が見当たらない。

 

「アメジストの魔法は物体を吸い込む魔法陣と、吸い込んだものを排出する魔法陣が同時に出現するはずなのに……」

 

 ダークネスは目の前に広がる雲を見て赤い瞳を見開いた。

 

「まさか!」

 

 ダークネスの嫌な予感が高まったその瞬間に、雲の中から冷たい旋風が吹き出してダークネスに襲いかかった。旋風は大量の雲を巻き込んでダークネスの視界を白く染め上げる。

 

「これはアクアマリンの魔法!?」

 

 視界を失ったダークネスに雲の中から飛び出したマジカルが接近し、黄金のハンマーを振り上げた。

 

「はあーっ! たあーっ!」

 

 ハンマーを叩きつけられたダークネスは凄まじい勢いで墜落していく。

 

「うああぁっ!!?」

 

 墜落していくダークネスの先に回って群青色の光球が滑り台のように緩やかなカーブの薄氷の道を作っていく。その上に落ちたダークネスは大した衝撃も受けずに氷の上を滑って地上まで導かれた。そして彼女が地上に降りたとたんに、上から何かが降り注いでくる。氷の盾を屋根にしてそれを防いだ時に、降ってきているのが無数の緑葉であることに気づいた。すぐに氷の盾の上に緑の葉が降り積もって上が見えなくなった。そして、唐突にマジカルがダークネスの目の前に降りてくる。ダークネスの肌がぞくりと粟立った。

 

「たあぁーっ!」

 

 ダークネスはマジカルの回し蹴りをまともに食らって悲鳴を上げながら吹っ飛んだ。そして地面に叩きつけられて倒れたダークネスは屈辱に打ちひしがれて硬く拳を握りしめる。

 

「空を飛べるスターサファイアの魔法は一見便利なように見えるけれど、その魔法を使っている限りは他のリンクルストーンが使えないわ。それって見方によっては不利よ」

 

「スターサファイアの弱点を見抜いていたというわけね……」

 

 ダークネスが立ち上がってマジカルを見つめる。その表情には明らかな苛立ちが感じられた。

 

 ――怒ってる怒ってる。さすがのダークネスも冷静ではいられないみたいね。

 

 マジカルとダークネスが攻撃を受けている割合は大して変わらないが、火の付きやすい性格がダークネスの不利になりつつあった。

 

 不意にダークネスが地面に右手を付いた。そこから地面が氷に覆われて急速に広がり、まるで生き物のように増殖する氷がマジカルの足元にまで達した。

 

「しまった!?」

「覚悟しなさい!」

 

 足元が凍って動けないマジカルにダークネスが突進していく。マジカルはリンクルステッキを構えて呪文を唱えた。

 

「リンクル・ガーネット!」

 

 マジカルがガーネットのセットされたリンクルステッキを凍った地面に向けると、氷がせり上がって凍てつく巨大な手になった。

 

「なんですって!!?」

 

 覆いかぶさってくる氷の手をダークネスが慌てて後ろに跳んでよける。

 

「ガーネットは地面のエレメントによって魔法の性質が変わるのね。なら、これでもくらいなさい!」

 

 ダークネスのリンクルブレスレッドにブルーのトルマリンが宿る。

 

「リンクル・インディコライト! 電流が氷を伝ってあなたを撃つ!」

 

 氷の手が邪魔でマジカルの姿は見えない状態でダークネスは青い電撃を放った。しかし、電流が届く前に脱出したマジカルが丘のように横たわる氷の手を跳び越えてくる。

 

「はっ!」

 

 ダークネスが空中にいるマジカルに手のひらを向けてもう一度電撃を放とうとすると、

 

「リンクル・タンザナイト!」

 

 マジカルのリンクルステッキから放たれた眩い光がダークネスの視界を奪う。ダークネスは身の危険を感じて後ろへ飛び退くが、追撃してきたマジカルが目の前に迫った。

 

「このっ! リンクル・ジェダイト!」

「はあーっ!」

 

 ダークネスの腕輪に緑色の丸い宝石がセットされる。次の瞬間にマジカルのパンチがダークネスを痛打し、同時にマジカルもダークネスの手から放たれた爆風をまともに受けて、互いに逆方向に吹き飛んで、同時に地面に叩きつけられて二つの場所で土煙が吹き上がった。

 

 ミラクル達は意地と意地がぶつかりあう激戦から目が離せなかった。

 

「うわあ、めっちゃすごい戦い!」

「……」

 

 何だか楽しそうなウイッチに対して、ミラクルは真剣な顔で見守っている。もうミラクルに心配する気持ちはなくなっていた。二人の戦いには殺伐とした雰囲気はないし、清々しささえ感じるのであった。

 

 土煙が落ち着いてミラクルとダークネスの姿があらわになる。傷だらけの二人は同じように肩で息をしていた。やがてお互いを見据えたまま同じタイミングで立ち上がる。

 

「自信満々だった割には大したことないわね」

「なんですって!? マジカルぅっ!」

 

 ダークネスは完全に頭に血をのぼらせた。その姿をみたウィッチが震えた。

 

「ダークネスめっちゃ怒ってるよぉ。あんなに怒るの週に一回くらいだよぅ」

「ウィッチ、あんまりダークネスを怒らせたらだめだよ……」

 

 週に一回もあんなふうに怒ってると思うと、ミラクルはダークネスが少し気の毒になるのであった。

 

「もう小細工はなしよ! 正面から叩き潰してあげるからね!」

「望むところよ!」

 

 ダークネスの周囲を回る群青の光球が縦に走ると、光球が通った軌道に棒状の氷が現れる。マジカルは黄色い球を二つ合わせて棒状に伸ばして硬質化させた。その時に棒の先を少しちぎってテニスボールくらいの黄色い球を残して側においた。

 

「おい、もういい加減にしろよ!」

 

 チクルンが叫んでも、マジカルもダークネスも戦いに集中していて聞こえていなかった。そして、それぞれの武器を手に駆けだし再び激突する。氷の槍と黄金の棒が目にもとまらぬ速さで打ち合い、飛び散る氷と黄金の破片が陽光できらめく。その戦いが始まるとウィッチは興奮した。

 

「わたしナシマホウ界でああいうの見たよ! カンフー映画っていうんだよね!」

「カンフーでもなければ映画でもないよ……」

 

 ウィッチがおかしなことを言うのでミラクルは汗がでてしまった。

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