魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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第21話 闇から生まれし新たな光! 魔法と慈愛のリンクルストーン!
襲来、ダークナイト!


 マジカルとダークネスが気を失っている二人の女性をそっと地面に寝かせて立ち上がる。

 

「ダークネスよかったね!」

「何がいいというの……」

 

 笑顔で語りかけるウィッチにダークネスは顔をそむけていった。冷たくされてウィッチはしょんぼりしてしまう。ウィッチはダークネスとミラクルがようやく分かりあえて嬉しかったけれど、そんな簡単に終わる話ではなかった。

 

 空気が何となく重い。物陰に隠れていたモフルンとリリンがプリキュアたちの前に出てきて様子を窺うと、

 

「みんな仲良しになったモフ?」

「まだちょっと微妙な感じデビ」

 

 ダークネスは無言で誰も言葉が見つからない。いつもまっさきに口を開くウィッチまで黙ってていた。

 

「おーい! 君たち!」

 

 遠くから声が聞こえてきた。全員の目がそちらに向くと、魔法の絨毯に乗って校長先生が空から近づいてくるのが見えた。

 

「校長先生モフ、お~い!」

「お~い、こっちデビ!」

 

 意気消沈しているプリキュアたちの代わりに、ぬいぐるみたちが元気に手を振った。やがて校長先生が絨毯を低空で止めて降りてくると彼にマジカルが近づいていく。

 

「校長先生がどうしてこんな所に?」

「わしも出来るだけのことはしたいと思ってのう。戦うことはできずとも、君たちの補助くらいならやれるぞ」

 

 今度はダークネスがマジカルの横に並んで校長に頭を下げる。

 

「とても助かります。早速で申し訳ないのですが、リズ先生とエリーさんを安全な場所まで連れていってもらえませんか」

 

「相分かった。それにしても君たち雰囲気が変わったな。ようやく分かりあうことができたのかな?」

 

 そんな校長の言葉から逃げるようにダークネスは視線を泳がせる。

 

「そう簡単ではないのは分かっている。君たちの場合は時間をかけなければ解決できなことも多かろう。焦らぬことだ」

 

「校長先生、ありがとうございます」

 

 マジカルはここに校長先生がきてくれて本当によかったと思う。みんなどうして良いかわからない状態だったのに、彼が緩衝材となって的確な言葉で導いてくれた。

 

 その時に風が止まって空気が沈み異様な静けさが訪れた。

 

「なにか来るデビ! とても恐ろしい奴デビ!」

 

 リリンが突然騒ぎ出して急激に異常な空気が広がる。

 

 地面に漆黒の円が広がり、円の中に黒い線で瞬時に魔法陣が描かれる。現れたのは六芒星でその中心には黒盾に斜になった黒い剣が重なる文様がある。魔法陣から黒い霧が吹きだしその中に何者かが現れた。

 

「フンッ!」

 

 黒い大剣の一振りで霧を吹き飛ばし現れしは黒き鎧の騎士。

 

「ダークナイト!?」

 

 いきなりフレイアの側近が現れたのを見てダークネスは恐れを抱いた。ダークナイトは全身を覆う鎧を黒光りさせながら大剣をダークネスとウィッチに突き付けた。

 

「キュアダークネス、キュアウィッチ、お前たちには失望した。フレイア様に対する忠義は本物だと思っていたが買い被りであったか」

 

「校長先生、早く逃げてください! リズ先生とエリーさんをどうかお願いします!」

 

 ダークネスが黒い騎士の前に立ちはだかるように出てきて叫ぶ。

 

「わかった。二人は任せてもらおう」

 

 マジカルとウィッチが二人の女性をそれぞれ抱き上げて絨毯の上に乗せると上昇を始める。校長先生は離れていくプリキュアたちと黒騎士の姿を下に見て渋面を浮かべた。

 

「あの黒い騎士は只者ではないな……」

 それが分かっても今の校長先生にどうにかできる相手ではなかった。

「どうかみな無事に戻ってきてくれよ」

 

 モフルンとリリンは近くの岩陰に隠れると頭だけだしてそれぞれのパートナーを心配そうに見つめる。するとダークナイトが剣を真上に振り上げた。

 

「ダークネス、ウィッチ、お前たちはもはやフレイア様にとって不要の存在だ。だが、まずは最もダメージを受けているお前から消えてもらおう!」

 

 ダークナイトが剣を振り下ろすと黒い斬撃が海面に出て獲物に向かっていくサメのヒレのように地面を裂きながら飛んでいく。その先にはミラクルがいた。

 

 爆発が起こってミラクルの姿が粉塵の中に消えてしまった。

 

「ミラクルっ!!?」

 

 マジカルの悲痛な叫びが起こり、ウィッチはどうしようもできなくて体が震えてしまう。やがて吹いてきた風に粉塵がさらわれていくと、赤や緑の遊色を含んだ黒い盾が現れ、それを掲げる黒い乙女にミラクルは守られていた。

 

「ダークネス!」

 

 ミラクルはダークネスが自分を守ってくれたことが嬉しくてつい笑顔になる。それとは真逆にダークネスはフレイアを裏切る自分の行為に苦悩が隠せなかった。

 

「ミラクルを守ったか。前言を撤回しよう。お前たちはフレイア様にとってもはや危険な存在だ。ここで消えてもらう」

 

「ミラクル、逃げなさい! 今のわたしたちにダークナイトと戦う力は残されてはいない!」

 

「逃げるなんて、そんなことできないよ!」

 

 ミラクルがダークネスの背中に強く言葉をぶつけると、相手を思いやる静かな音律の声が反ってくる。

 

「ミラクル聞いて、ダークナイトは闇のエレメントの騎士だから光のエレメントを持つミラクルとマジカルでなければ倒せないの。そしてロキも同じなのよ。わたしとウィッチでは決してあの男には勝てない。あなた達だけがこの世界を救える。だから二人は生き残らなければいけない」

 

「ダークネス……」

 

「最初から全部わかってた。自分がどうすることが正しいのかもわかっていたの。でも、お母さんのことを諦めきれなかった……」

 

 ダークネスの赤い瞳から一粒の涙が零れ落ちた。その一滴にはミラクルとマジカルに対する悔恨や母に対する無念の思いなど様々なものが込められていた。

 

「わたしとウィッチで時間を稼ぐ。その間に二人で逃げるのよ」

 

「いやだよ! わたしは絶対に逃げない! ダークネスと一緒に戦う!」

 

「このわからずや! マジカル、ミラクルを連れていって! あなたなら、わたしの言っていることがわかるでしょう!」

 

「わかるわ。あなたの判断が正しいということもね」

 

 マジカルがミラクルの隣にくると、ダークネスは感謝の意を頷きであらわす。

 

「けれどわたしもミラクルと同じ気持ちよ」

 

「なんですって!? あなたまでそんなことを……」

 

「この先にさらに強大な敵がいるのなら、友達を見捨てて逃げるような人に勝つことなんてできない! 4人の力を合わせてこの難局を乗り越える、それしか道はないわ!」

 

 ダークネスはマジカルのその言葉に胸を撃たれた。

 

「あなたの言う通りだわ。プリキュアが誰かを見捨てて逃げることなんてできるはずもないわね」

 

 ダークネスに呼応するようにウィッチも来て4人の魔法つかいプリキュアが集まった。

 

「4人で力を合わせれば怖いものなんてないよね!」

 

 ウィッチが言うとみんな頷いてから敵の黒騎士を見定める。

 

「来るか」ダークナイトが剣と盾を構えた。

 

「ここはミラクルとマジカルの魔法にかけるしかないわね。わたしとウィッチで時間を稼ぐからその間に準備を!」

 

 ダークネスとウィッチは爆発的な勢いで走り出してダークナイトに向かっていく。

 

「行くわよウィッチ!」

「うん! がんばっちゃうよ~っ!」

 

 ダークナイトが自分の体ほどもある巨大な盾を構えると、そこにダークネスとウィッチのダブルパンチが衝突し、黒曜の騎士を後ろに押し出す。

 

「無駄だ! 闇の魔力ではわたしは倒せない!」

 

 二人はダークナイトの盾で押し返されると即座に敵の左右に回って攻撃を仕掛けた。

 

「はあぁーっ!」

「とおーっ!」

 

 それに対してダークナイトは腕を上げただけで、片方ずつの腕だけではダークネスとウィッチの攻撃を半分も防げない。ダークナイトを挟み撃ちにした二人の連続攻撃は黒い鎧を小刻みに震えさせた。

 

「フンッ!」

 

 ダークナイトが攻撃を受けながら無造作に大剣を大振りする。黒い剣が走った後に残る残影が円に近い形に残り、ほとんど同時に斬撃を受けたダークネスとウィッチが左右に吹き飛んだ。

 

「キャッ!?」

「うああぁっ!?」

 

 二人同時に砂地に叩きつけられて、同時に二つの砂煙が高く上がった。すぐに立ち上がったダークネスが胸を押さえて表情を歪める。

 

「同じ闇のエレメントならダメージが半減するはずなのに、それにも関わらずこれだけの衝撃を受けるなんて……」

 

 この攻撃をミラクルとマジカルが受ければ一巻のおしまいである。何としても二人を守り切る必要があった。

 

 一方でダークネスの反対側に飛ばされたウィッチはまた立ち上がらないで蹲っている。

 

「ふううぅ……」

 

 ウィッチの苦しんでいる姿に気づいたダークネスは考えるよりも先に走り出していた。

 

「ウィッチはマジカルとの戦いで大きなダメージを受けているから、もう耐えられないんだわ!」

 

 ダークネスが跳躍して上からダークナイトに蹴り込むと、それは軽く片腕で止められた。しかし、ダークネスの狙いは攻撃することではない。彼女は黒騎士を踏み台にしてさらに跳躍し、いっきにウィッチの目の前まで降りてきた。

 

「ウィッチ、しっかりしなさい」

「大丈夫だよ。まだまだがんばれるっ!」

 

 ウィッチは元気に答えるが、ダークネスには近くにきて彼女が限界に近いことがはっきりと分かった。

 

 

 

 その頃、作戦が失敗して玉座の上で歯軋りしていたロキは予想外の展開を見て奇声をあげていた。

 

「おいおい、面白いことになってるじゃねぇか!」

 

 ロキは闇色のバックスクリーンに映し出される映像を見て口角を上げた。

 

「フレイアの奴め、あいつらを見捨てたのか。お互いにやりあってダメージを受けているプリキュアどもではダークナイトには勝てまい。こうなると俺様の策は失敗ではなかったといえるな」

 

 ことはに邪魔された口惜しさが一転して、ロキは楽しくてたまらない気持ちになった。

 

 

 

『リンクルステッキ!』

 

 ダークネスとウィッチが戦いを始めると、ミラクルとマジカルはリンクルステッキを呼び出して手にした。ステッキにセットされたダイヤが輝き、二人は一緒に高く跳躍すると、

 

『ダイヤ! 永遠の輝きよわたしたちの手に!』

 

 二人は手をつないで蝶のように華麗に舞い地上に降り立つ。彼女らの周囲から光のウェーブが波紋のように広がっていく。

 

 マジカルがリンクルステッキを斜め上に構えるとモフルンの左手がリボンの中央のダイヤに触れて、ミラクルがリンクルステッキを頭上にかざすとモフルンの右手がダイヤに触れる。そしてふわふわの両手に包まれたダイヤからまばゆい光が広がっていくと、ミラクルとマジカルはリンクルステッキからあふれる光で線を描いていく。

 

「フル、フル、リンクルーッ!」

「フル、フル、リンク…ル……」

 

 ミラクルの意識が遠のいて呪文の途中で崩れ落ちてしまう。倒れる前にマジカルがその体を受け止めた。

 

「モフーッ!? ミラクル、しっかりするモフーッ!」

「ミラクル、あなた……」

 

 モフルンが今までにない取り乱しようで意識を失いかけているミラクルを下から見上げていた。

 

 ――無理もないわ。ダークネスの攻撃を無防備な状態であれだけ受けたのだから。

 

 ミラクルが意識を取り戻してマジカルを見て微笑する。心配かけまいと無理をしているのが丸わかりで見ている方も辛くなる。

 

「ミラクル、無理はしないで」

「大丈夫、みんなで帰ろう魔法学校に」

 

「何をやっても無駄だ! 諦めるがいい!」

 

 ダークネスたちと戦っていた黒騎士がマジカルたちに向かって剣を振り下ろす。黒い衝撃波がが3人に向かってくると、ダークネスは弱っているウィッチの首根っこをつかんで一緒に跳躍っした。そしてダークナイトとマジカルたちの中間に降りるとウィッチを放して呪文を唱える。

 

「リンクル・ブラックオパール!」

 

 ダークネスの手のひらから広がった黒い障壁が衝撃波を打ち消して霧散させた。

 

「またその魔法か、こざかしい!」

 

 ダークナイトが刺突の構えで突撃し、ブラックオパールのバリアに黒い剣を突き立てた。固い音が響き渡って火花が散る。

「ぬおおおおおっ!!」

 

 ダークナイトの怒号のような声と共に凄まじい力が剣に込められて魔法のバリアに亀裂が入った。そしてバリアを突き破った剣の先端がダークネスの頬の間近を通り過ぎた。さらに腹の底から震えるような気合があって、ダークナイトは振り上げた剣をダークネスに袈裟懸けに振り下ろした。ダークネスはウィッチを背中に隠しながら身を低くして斬撃を避けると、素早く前に出て黒騎士の懐に入り、胴部の鎧に右手をあてる。

 

「リンクル・ジェダイト!」

 

 ダークネスのブレスレッドに深緑色の丸い宝石が宿り風の魔法が発動した。とてつもない風圧を腹部の一転集中で受けたダークナイトが重い鎧を引きずって両足で砂地に線を描きながら後退した。彼は止まった場所に剣を突き立て柄の上に両手を乗せた。

 

「ダークネスよ、魔法の完成にはまだ時間がかかりそうだぞ。はたして守り切れるかな?」

 

 ダークネスはミラクルがマジカルに支えられているのを見て下唇をかんだ。すべて自分自身がまねいたことだ。

 

 ――4人の中でわたしだけがほとんどダメージを受けていない。わたしが盾になってみんなを守る!

 

「ダークネス、わたしまだ戦えるよ!」

 

「ウィッチ、あんたはわたしの後ろで体力を温存しなさい。本当に危なくなったら一緒に戦って」

 

「うん、わかった……」

 

 ダークナイトが突き刺した剣を引き抜いて縦一文字に構える。

 

「はあぁっ!」

 

 虚空を斬った大剣から黒い斬撃が放たれ、ダークネスに迫った。

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