魔法つかいプリキュア!♦闇の輝石の物語♦   作:四季条

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誕生! 青きダイヤのプリキュア!

 ダークネスは腕でクロスガードして全身で斬撃を受け止めた。衝撃が彼女の全身を駆け抜け、黒いマントがウィッチの目の前で激しくはためき真っ赤な裏地が鮮明に映る。ダークネスは微動もせずに立ち続けていた。

 

「どこまで耐えられるかな?」

 

 ダークナイトの剣から黒い斬撃が次々と放たれて、それがすべてダークネスに叩きつけられる。

 

「このわたしの攻撃の前では同じエレメントによるダメージの半減など問題にはならん。むしろ苦痛が倍になって苦しみが増えるだけだ」

 

「くううぅっ…………」

 

 ダークネスは片目を閉じ、歯を食いしばって黒い斬撃をその身に受け続ける。それを目の当たりにしたミラクルは最後の力を振り絞って立ち上がった。

 

「大丈夫、まだいけるよ」

「わかったわ。これが最後のチャンスよ」

 

 マジカルにミラクルは頷き、そして足元で心配そうに自分を見つめているモフルンにいった。

 

「モフルンもお願いね」

「わかったモフ! 必ずみんなを助けるモフ!」

 

 モフルンがそういうとミラクルもマジカルも不思議と勇気と力がわいてくる。二人は寄りそい再びリンクルステッキを構えた。

 

 岩陰から戦いを見ているリリンは酷くやられているダークネスを見て黒騎士に怒りを燃やしていた。彼女は怒った顔で小さな岩の上に立った。首元の青いリボンの中心にあるブラックダイヤがリリンの気持ちを鼓舞するように輝いた。

 

 ダークネスはどんなに傷ついても、何度攻撃を受けても、その場を一歩も動かずに立ち続けていた。その姿は敵の黒騎士にまで感銘を与えた。

 

「ぐうぅ……まだ……まだっ!」

 

「見事な覚悟だ。お前がフレイア様と(たもと)を分かったことを残念に思うぞ。その覚悟に免じてこの一撃で楽にしてやろう」

 

 ダークナイトは大剣を空に突き立てるように高く上げた。日の光が黒い刃を怪しく輝かせる。

 

「リンクル・スターサファイア!」

 

 ダークネスの背後で声がしてウィッチが飛び上がる。そして空中で鋭角に曲がって一気にダークナイトに接近した。

 

「ウィッチ!? 無茶をしないで!」

 

 ダークナイトが剣を下におろし、上から来たウィッチの飛び蹴りを盾で防御する。

 

「だああぁーっ!!」

 

 ウィッチは盾の上から何度も踏みつけて、その衝撃でダークナイトの足元は砂に埋もれていく。

 

「こざかしい!」

 

 ダークナイトはあえて盾をどけて兜でウィッチの蹴りを受ける。そして驚いたウィッチの足をつかんで引き寄せ、剣の柄で少女の腹部を強打した。

 

「くはぁっ!!?」吹っ飛んできたウィッチがダークネスの近くに墜落して砂煙が上がる。

 

「ウィッチ!?」

「はあううぅ……」

 

 大ダメージを受けたウィッチが仰向けに倒れていると、彼女の視界を黒い影が横切っていく。

 

「え? 今のって?」

 

「いっちゃだめモフーッ!!」

 

「だめよリリン! 戻ってきなさい!」

 

 モフルンとダークネスのただならぬ声があってウィッチが起き上がると、黒い騎士にリリンが接近していた。

 

「うわあ、リリン危ないよ!」

 

「ダークネスとウィッチに酷いことばっかりして、もう許さないデビ!」

 

 リリンがダークナイトの兜の前面に張り付くと、ぬいぐるみの手で固い兜をポカポカと何度も叩いた。ダークネスもウィッチもすぐに助けにいきたかったが体が思うように動かない。

 

「なんだお前はうっとおしいぞ」

 

 ダークナイトがリリンを無造作につかんで引き離して空中に投げ捨てる。ダークネスとウィッチにはその一瞬が止まったように感じた。そして、リリンは黒い盾で叩き落とされた。

 

「ふぎゃ!!?」

 

 リリンはピンポン玉のスマッシュのように地面に強烈に叩きつけられ、大きくバウンドしてダークネスの足元に転がった。

 

「うああぁーーーぁっ!!?」

 

 ウィッチの悲鳴に撃たれてダークネスの体が震える。リリンの変わり果てた姿を前にして声が出なかった。何が起こったのか理解できずに呆然としてしまう。

 

 リリンはもう動かなかった。両方の目がバツの字になって黒い翼の片方はなくなり、右手と左足が千切れる寸前で引き裂かれた場所から白い綿が飛び出していた。形も半分つぶれて歪(いびつ)になっていてもはや見る影もない。黒いダイヤのリンクルストーンだけが元のままリリンの首元で輝いていた。

 

「うわああぁぁっ!! リリンがぁーっ!!」

 

 ウィッチは地を這うような格好でリリンに顔を近づけて号泣する。ダークネスは全身の力が抜けてリリンの目の前で両膝をついた。すると二人の胸にある黒いダイヤが消えて、二人とも変身が解けて元の魔法学校の制服姿に戻ってしまった。

 

 ラナがリリンを抱きながら小さな子供のように泣きじゃくる。

 

「うわあーん、さゆりぃ、リリンが死んじゃったよぅ……」

 

 死んだという言葉を聞いて小百合の瞳から(せき)を切ったように涙があふれ始める。小百合は震える手でラナからリリンを受け取って、自分の腕の中で変わり果てたリリンを見つめる。リリンの体に二人の涙が雨のように滴り落ちていった。

 

「死に急ぐとは愚かな。そう悲しむな、お前たちの命もすぐにそのぬいぐるみの元に送ってやる」

 

 ミラクルとマジカルは衝撃的な光景と敵の心ない言葉によって怒りと悲しみでいっぱいになった。だからこそぐっとこらえて魔法の構築に努めた。この機会を逃せばリリンの犠牲も無駄になってしまう。

 

 ずっと言葉をなくしていた小百合が声を紡ぎはじめる。

 

「……わたしのするべきことがやっとわかった。過去を取り戻すことじゃない。今ある大切なものを、家族を、友達を守ること! それが正しい道だったんだわ……何もかも手遅れになってから気づくなんて……わたしはバカだわ……」

 

 ラナがいっそう声を上げて泣いた。二人の涙の雫がリリンの黒いダイヤにいくつも滴り落ちてはじける。その時、ダイヤが光を放った。今までに見たことがない青白い輝きが涙にくれる少女たちを包み込む。

 

「この輝きは!? これは闇の魔力ではない!」

 

 ダークナイトの兜の奥から発せられた驚愕の中には、野生の動物が本能で天敵を見分けるような恐れが含まれていた。

 

 光の中でリリンの姿が変わっていく。その光は小百合とラナに悲しい気持ちを忘れさせるほどに懐かしい温かさに満ちていた。やがて光がダイヤに吸い込まれるように引いていくと、元の姿に戻ったリリンが小百合の腕の中で閉じていた目を開けた。

 

「リリンが元にもどったぁ!」

「信じられない……」

 

 リリンが小百合の腕から離れて空中で手足を伸ばして元気になった姿を見せてくれた。

 

「二人の思いがダイヤに通じたデビ」

「リリン、そのダイヤは?」

 

 リボンの中にあった黒いダイヤが青いダイヤに入れ替わっていた。

 

「ブレスレッドのダイヤも青くなってる~」

 

 ラナが左手を見つめて言うと、小百合も右手のブレスレッドを確認する。

 

「本当だわ、どうなってるの?」

 

「今はとにかく変身するデビ!」

 

 二人一緒に頷くと小百合とラナは右手と左手を合わせて強く握る。その瞬間、赤い三日月に黒い魔女のとんがり帽子が重なるエンブレムが現れ、小百合は白い輝きのローブに包まれ、ラナははレモン色の輝きのローブをまとう。そして、つないだ手を後ろに二人で同時にブレスレットが輝く手を高く上げて魔法の呪文を唱えた。

 

『キュアップ・ラパパ!』

 

 二人のブレスレッドのダイヤから青白い光が氾濫して、それが全てリリンの青いダイヤに吸い込まれて輝きを放った。

 

『ダイヤ!』

 

 リリンが飛んできて小百合とラナと手を繋げば聖なる天使の輪の形になる。

 

『セイント・マジカル・ジュエリーレ!』

 

 輪になった3人で回転するとリリンのその身に青白いハートが現れて点滅し、そして青いダイヤから放たれた閃光が新たな世界を照らし出す。

 

 無限に広がる宇宙の闇に聖なる白い三日月が輝き、星の形をした無数の光が落ちてくる。その光と闇が共演する世界で少女たちの姿が変わっていった。

 

 小百合の黒髪はさらに長くなり、前髪の一部が三日月型に伸びる。服は襟に沿って薄水色のファーの付いたオフショルダーの白いドレスで二の腕にリング状の袖が付いている。背中に青いマントが広がり、右の足元から左足の太腿部へと切り上がるシャープラインのスカートは外側から青、ライトブルー、淡い水色で三重フリルになっている。

 

 胴回りには青銀の三日月のオブジェが付いた銀のリング、足には左右に白い翼が付いた青のブーツ、黒髪に赤い三日月のヘアピン、それとは逆側の側頭部に小さな銀色の王冠が乗った。開いた瞳は深紅、右胸に百合の花のような形の青いリボン、続いてその中央に青白い宝石が現れる。

 

 ラナのレモンブロンドのポニーテールは長く大きくなり、合わせて耳から頬にかかる横髪も伸びて先端がカールになった。白いフリルの付いたパフスリーブの黄色いドレスが身を包み、白いフリル付きのの黄色のミニスカート、背中にはオレンジ色の大きなリボンが現れる。足を揃えてかかとを打てば上部に白いリボンが付いた黄色いブーツ、ポニーテールに白のリボン、頭の上には鍔本に黄色いストライプが入った赤い星付きのミドルサイズの黒いとんがり帽子、そして胸に大きなオレンジのリボンとその中央には青白く輝く宝石、最後に二人で手を重ねれば、小百合の手には白い手袋が、ラナの手には白いフリルの付いた黄色のフィンガーレスのロンググローブが現れる。

 

 二人の背後で白い三日月が輝きを放ち、聖なる光の中に姿を消した二人は、新たなプリキュアへと姿を変えて白く輝く月と星の六芒星の上に召喚された。魔法陣の左側にいた小百合は右に、魔法陣の右側にいたラナは左に向かって同時に飛んでクロスを描く。変身した小百合は右、ラナは左に着地して二人は寄りそうように並んだ。

 

 小百合はたおやかに下から右の手で顔をなでるようにして腕を上げ、聖なる光で線を描いてしなやかに右手を横に振る。

 

「光さす慈愛の聖女、キュアプリーステス!」

 

 ラナが開いた左手を頭の上にかざすと、星の形をした白い光の雫が零れ落ちる。そして右手を前にウィンクして、

 

「メラメラの黄昏の魔法! キュアルーン!」

 

 プリーステスとルーンが後ろで左手と右手を繋ぎ、体を重ねてもう一方の手も合わせて目を閉じれば純真なる少女の息吹があふれる。二人は離れると後ろの手を放し、その手を前にかざして新たなプリキュアの産声をあげた。

 

『魔法つかい、プリキュア!』

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