「怨妖…?」
輪花は思わず口に出していた。
「そう。…わかりやすく言うと、恨みだけの妖怪、ってところかしら。」
「恨みだけの…?」
輪花はもはや呆然としていた。
「…そうよ。…人、獣、妖怪、霊、神…。様々な恨み、妬み…。それが積もりに積もって妖怪という形で出てきた種族。…名前は紫に付けられたわ。その種族名もね。だから、もう私は霊でもあるし、妖怪でもあるのよ。…だから、自分で言うのもなんだけど…。」
そして、一息ついて朱莉はこう言った。
「…私を差別しないで。」
「え?」
「勿論私の精神には何も響かないけど、言ったでしょ…?様々な種族の個々の恨みが積もっているって。…だからね、禁句を聞くと…暴走するのよ、私の体ごと。」
「禁句って、たとえば…。」
次の言葉を言おうとした輪花を止め、
「自分で言うから大丈夫。…辿えば、そうね…。『死ね』とか『消えろ』とか…?そんな言葉よ。…まあ、心の底から言われないと暴走はしないけどね。」
「暴走したら、どうなるの…?」
若干の悪寒を感じながら、輪花は聞いた。すると、
「そうね…わかりやすく言うと、その言った奴の五体のどれかを引きちぎらないと気がすまない…かしらね?」
少しのためらいも見せず、さらりと言い切った。
「‥暴走したこと、あるの?」
「いいえ。でもね、その人の恨みや妬みが脳内に流れ込んでくるのよ…。」
朱莉はそういう。と、
「さ、私の話はもうおしまい。で、この霧のことだけど、…これは、体内で形成されている気ね。」
「なんでわかるの?」
「‥言ったでしょ、色々転々としていたって。…だから妖怪を倒したりするのもあったのよ。」
輪花は話し始めてからの朱莉の言動に寒気を覚えていた。自分の種族を話してから、すべてを受け付けないような憎悪の目。
(…でも…。)
その中でも、輪花はわかっていた。憎悪の目の中に、これ以上誰かを傷つけたくない、そんな感情があるのを。
「…で、なんでかしら?」
朱莉の言葉で輪花はわれに帰った。
「なんで体内の妖気がこんなところにあるのかしら。」
「え、それは…。」
輪花はかなり単純な答えを言った。
「…この霧がその異変の首謀者だからじゃないの?」
「…………そうね。…じゃ、どうやって戦うの?」
「霧…霧…。‥そもそも霧ってなんなの?」
「さあ?」
二人共霧のことには無知らしい。
「じゃあ…。」
輪花の提案は―
「どうもー。」
―ここは図書館内。そう、紅魔館の大図書館なのである。
知識人のパチュリーなら何か知っているだろうということである。
…当然魔理沙とは違い、美鈴に事情を話してるので、
「いらっしゃい。」
パチュリーに会うのは容易だった。と、パチュリーが、
「悪いけれど、あなたの師匠に言ってくれないかしら?」
いきなりこのような事を言ってきた。
「…?なに?」
輪花は聞く。すると、
「本を勝手に持っていかないように、よ。」
きっぱりとそういった。
「…うん、そうするよ。」
と、話が一息ついたことで、
「ねえ、パチュリー…だったかしら?」
朱莉が聞いてきた。
「ええ。宴会以来ね。」
「3日前だけどね‥。」
輪花がそうつぶやく。
「知りたいことっていうのは、霧って…どんなの?」
すると、パチュリーはきょとんとし、
「…随分と大雑把な質問ね。いいわ、特徴を言ってあげるから、止めたい時には言いなさい。」
そう言って、ふたりを座るようにすすめ、パチュリー自身も座った。
「えっと、霧は、雲みたいに水蒸気が水滴になったもので…。」
「ストップ。」
早くも輪花がストップをかけた。
「…早いわね、どうしたの?」
パチュリーが早くも止められたことにつまらないようだ。
「…ひとつ質問。…ということは、蒸発できるんだね?」
「ええ、そうよ。…それだけ?」
「うん、それだけ。じゃあ、今日の宴会でね!」
あっさりと輪花は立ち上がった。
「あ、ちょっと!」
朱莉もあわててそれについていった。
―博麗神社。
「どうしたのよ、いきなり。」
朱莉が輪花に聞いてくる。すると、
「…朱莉。この異変、今日中に解決できるかもよ。」
そういったのである。
「本当なの!?どうするの?」
「…この霧を蒸発させる。」
輪花はそういったのである。
「は?……なんで?」
朱莉はまだ理解できていないようだ。
「だってさ、霧は水蒸気が水滴になったものでしょ?だったら蒸発させて消せばいい。」
「…分かったわ。じゃあ、スペルカード、朱雀『
そして、朱莉を中心に大きな炎の球体が広がっていった。すると―
「わー、あちー。止めてくれ。」
どこからか声が聞こえてきた。
「…?」
朱莉は炎を止める。そこにいたのは―
「君だね、この霧の正体は。」
人間に二本の角が生えている。…小さい鬼、という言い方が自然な少女だった。手首には鎖が巻かれている。
「そうだよ、私の名前は伊吹萃香さ。…どうしたのさ。こんな呼び出し方をして。」
「‥宴会を止めてくれない?」
輪花はそういった。
「なんで止めなきゃいけないのさ。楽しいだろう?宴会は。」
どうやら萃香に悪気はないようだった。
「楽しいけどさ…。」
輪花が言いよどんでいると、
「迷惑なのよ、はっきり言ってね。」
朱莉が話に割り込んできた。
「―ほう?」
萃香の目が鋭くなる。
「だったら出てきて言えばいいのよ。それくらいできないの?」
「…鬼という種族をお前らは愚弄した!」
いきなり萃香が叫ぶ。
「だから私は霧になってみんなを萃めたのさ。…卑怯な手を使う人間を―」
「―卑怯な手で集めたの?」
さらりと朱莉は言った。
「なんだと!?」
さらに萃香が怒った。―と、朱莉の口元が緩み、
「…つまりは楽しみたいってことでしょ?」
そういった。
「ああ。」
「じゃあ―」
そう言って朱莉は構えた。
「これで戦って、私たちが勝ったら止めてね。」
「―フッ。」
すると、
「ハッハッハ、面白いねえ!‥いいさ、二人できなよ!」
が、
「いや、正々堂々が好きなんでしょ?…輪花、先やっていいわよ。」
「えぇ!?」
いきなりの指名に驚く輪花だが、
「…わかったよ。僕は後来輪花。いくよ!」
「私は伊吹萃香。…鬼の力、思い知るがいい!」
第一ラウンドが始まった―
作者「久々に2000字超えたなー。」
朱莉「輪花がんばれー。(棒)」
作者「おいおい…。次回、#42『獣vs鬼』ここまでありがとうございました!」
朱莉「では!」
輪花「…僕、今回後書きでた?」