「ん…?」
輪花はゆっくりと目を覚ました。そして―
「え」
十字架に貼り付けられていた。
「…お目覚めかしら?」
そこにはレミリアが。さらに、
《目覚めた?》
(あ、沙紀、戻ったの?)
《ええ。》
沙紀も輪花の体にいた。
(これ、どういうこと?)
《大丈夫よ。後は咲夜次第よ。》
(はあ?)
輪花はなんのことか一切分からない。
「さあ、沙紀を殺したこと、命を持って償ってもらおうかしら?」
そう言ってレミリアはグングニルを構えた。
(わー、亜紀がかわいそう。)
《全くね。》
二人はそんなことを話していた。レミリアのことではない。咲夜の方にかけていた。
「じゃあ、最後に言うことは?」
レミリアはそう言って構える。
《ちょっとまた体借りるわね。》
(え?)
《そろそろ時間切れみたい。》
(え…。どうすればいいの?)
《私が一度レミリアを蹴り飛ばしたあと、後は…。言葉の説得。》
(…はい?)
輪花はきょとんとする。表情に出してないが。
《私には説教は無理よ。》
あっさりと言われた。
(なーに言ってるのぉ!?)
《あなたなら、大丈夫。そのお人好し同然の性格なら、ね。》
(………。最後の一言余計じゃない?)
《あら、ごめんなさい。》
と、レミリアが睨んでいるのに気がついた。
「…なに笑ってるのよ?」
(…人を小馬鹿にするのもやめたほうがいいよ。)
《まあまあ、いいじゃない。…後は、》
(《咲夜次第。)》
そう言って、輪花と沙紀は咲夜の方を見る。すると、咲夜は何かを決意したような表情になり、手を指を鳴らす形にした。
「まあ、いいわ。死になさい。」
そう言ってレミリアは、グングニルを投げた―と同時に、咲夜が指を鳴らした。
―そうして、グングニルが貫いた。
「…!?」
レミリアは咲夜が指を鳴らしたことに気がつかなかったようで、目を見開いている。なぜなら―
グングニルが貫く直前、輪花は地面に落ちたのだから。
―と、目に入ったのは、十字架に刺さっている、4本のナイフ。
「……咲夜。なんでこんな真似を…………!」
レミリアは咲夜の方を向き、咲夜を睨みつける。
「「…お嬢様。後ろを見てると、やられますよ?」」
「!?」
咲夜の声とともに、もう一つ、別の声が聞こえる。慌ててレミリアは後ろを向く―が、既に遅く、蹴り飛ばされた。
「がはっ…!」
そうして蹴り飛ばした、輪花―沙紀が取り付いているが、咲夜の方を見て、
「…ギリッギリすぎるわよ、本当に。」
苦笑する。
「…あと、お願いね。」
咲夜はそういった。
「さあね。後はこの子に任せましょう?」
そう言った刹那、
「…おっと。」
沙紀は抜けたようで、輪花が出てきた。
「……僕にレミリアの説教を押し付けてきた。」
そう言うと、ゆっくりとレミリアの方に近づいたと思うと、胸ぐらを掴み、壁に叩きつけた。
―そして、深呼吸をしたかと思うと、
「あああああああ!」
ひとつ、大声で叫んだ。
レミリアと咲夜はその声量に驚く。―そして。
「―レミリア。…君は考えが甘かったんじゃない?」
そう言い始めた。
「…なんで?」
レミリアはそう言って、輪花のつかんでいる腕を掴む。
「………じゃあ。どんな運命が見えていたの?‥亜紀達はどんな決断をすると思っていたの?」
「…いろいろありすぎて忘れたわよ、そんなこと。」
レミリアは腕を掴んでいる手に力を入れていく。
「…嘘。」
「!?…なぜよ。」
「………本当は、何らかの形で
「…………!」
レミリアは、掴んでいる腕に爪を食い込ませる。…輪花の腕から血が少しずつ流れ始める。
「例えば…」
「やめて。」
「自殺とか…。」
「やめてって…。」
「…今回のように、『殺してくれ』って言ったりとか。」
「やめてって言ってるでしょ!」
レミリアは叫んだ。
「その…。」
が、輪花の言葉はおわらない。
「その運命から、目を背けていた。…違う?」
「………ええ。そうよ。」
すると、レミリアは空いている手を握り締めた。
「…私の能力をもってしても…変えられなかった…!」
「…変えられなかった理由。」
「え?」
「変えられなかった理由。…僕はこう思う。」
そう言って、またひとつ深呼吸をすると、こう言った。
「みんな孤独なんだよ。」
「…え?」
「みんな、一人で決めようとしたでしょ?レミリアだって、なんでも一人で決めようとした。亜紀達だって…。」
「………それで?」
「ほかの運命も見えていたんじゃないの?」
「…ええ。」
「みんなで話し合えば、変わっていたんじゃないの?」
「…………。」
レミリアが望んだ運命。ほかの運命には、みんなが集まって、笑っていた。いまの紅魔館とは正反対の、明るい仲だった―
「……でも。」
そう言ってレミリアは爪を立てて、
「沙紀は…あなたが殺したのよ!」
そうして、左に向かって突き刺した―
「…なんで。」
レミリアは目を見開いていた。
「……なんでよけなかったの?」
レミリアから見て左側に手を突き刺したので、心臓は免れた。が、輪花の右側の背中からは、血だらけになったレミリアの手が出ている。‥貫通したのだ。
「…よけられたでしょ?」
震える声でレミリアは言った。
「…良かったよ。」
輪花はそういった。
「………え?」
「レミリアが本当に優しいことが分かって。」
ゆっくりと輪花から手を引き抜く…。
「あ………‥。」
その手を見つめて、
「…うわああああああぁぁぁぁぁ!」
膝をつき、下を向いて、泣き出した。
その様子に、輪花は微笑みながら、
「…もっと相談しなよ。美鈴や、咲夜、パチュリー、小悪魔、フラン…。大丈夫。レミリアのことなら、必死に考えて…くれ……る…………。」
と、何かが倒れる音がした。
「…え?」
レミリアは真っ赤になった目を向ける。そこには、輪花が仰向けで倒れていた。
右側の傷口からは血が大量に出ていき、血だまりができていく。
「…輪花?輪花ぁ!」
レミリアが駆け寄る。が、輪花の顔は白い。
「…お嬢様!」
咲夜が駆け寄る。
「咲夜!…みんなを!輪花は私が運ぶから!」
「……わかりました!」
作者「輪花は倒れて出血多量。朱莉たちは随分と回復して目が覚める頃です。」
朱莉「まあ、このあとも終わらないのだけど。」
作者「章タイトル変えときます。」
朱莉「次回、#57『怪しげな満月』ここまで見て下さりありがとうございました!」
作者「では!」