二時と三時の間。彼女らは何を望むか   作:口十

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ただの一つの失敗で

 それから幾日か経過して、見事マンドラゴラの育成に成功した私は、それを用い、すぐさま錬金術に取り掛かった。悲鳴を抑える方法も本に載っていたので、採用。見事、目標にしていた錬金に成功した。

「やった・・・!」

 私は嬉しさと疲労のあまりにその場に仰向けになって倒れてしまった。

 そうだ、と私は寝転がったままのそのそと動き、スマートフォンを取り出す。それからすぐさま、彼に連絡を入れた。

『ありがとう!君の本のお蔭で成功した!』

 打ち終わり、スマートフォンを持ちながら立ち上がり、冷蔵庫の方へ向かった。

 早速ジュースを取り出して、ぐびぐびと喉を鳴らす。

 それから約一時間が経過して、ようやっと彼から返事が届いた。

『それは良かった。また欲しい本がありましたらご来店お待ちしております』

 彼との連絡ももう何度目になっただろうか。色々困ったところを彼の知識で助けてくれた。だから私もタメ口にできた。ただ。彼の心はまだ開いていないようだ。

 敬語に少し寂しくなるものの、だったら、と打ち始める。

『良かったと思うなら、奢るぐらいしてくれてもいいんじゃない?』

 それには、すぐに返事が来た。

『えぇ、いいですよ。どうせならいいとこ行きましょう。明日の夜なんてどうでしょう?』

『いいよ』

 私はすぐさまオーケーを出した。

 さて、今日は新作のゲームでも買いに行こうか、それとも、溜め込んでいたゲームをやろうか。いや、最近気になっていた作品があったな。買いに行こう。

「あ、しまった・・・」

 己の失態に気付き、額に手を当て、顔を顰める。

 最近殆ど洗濯をしていなかった。お気に入りの服は明日の為に取っておきたいし、かといって、あまり可愛らしい服が残っているわけでもない。

 仕方ない、と古着を着て、外に出る。

 ゲームを買って、それからファッションビルにも立ち寄り、服を品定めなどしていて、正午に出て帰ってきたのは結局、夕食時だった。とはいえ、夏真っ盛りな今日(こんにち)では、陽は落ちていない。

 仕方ない、とそのままの服でコンビニに向かい、夕食を買う。明日の為に少しでも腹を空かしておかねば、というよく分からない考えにより、いつもより量の少ない弁当をレジに持っていくのだった。

 さて、その待ちに待った日がやってきた。否、実際はそれほど時間は経っていないのだが、心持ちとしては、ずっと焦らされていた餌がやって来たようなものだ。

 何度も家で髪型はチェックしたし、服のしわもちゃんと伸ばした。いつもはつけていないリボンだって付けた。少々周りの視線が気になるが、この後の事を思えば何でもない。

 私は待ち合わせ場所からすぐ近くにあるビルに置いてあるショーケースのガラスで最後の身だしなみチェックを終え、待ち合わせ場所に辿り着く。どうやら、彼はまだ到着していないようだ。到着した旨を伝えるメッセージを送って、行儀よく待ってみる。待ち合わせ時間よりも十分ほど早く着いてしまった。

『もうそろそろ僕も到着するよ』

 そんな返信が来て私の心はより一層踊る。

 男性と食事なんて初めてだ。上手く振舞えるだろうか。(いや)、そんなことを気にするような男ではないとは思うが、もしものことがある。念のためスマホでチェックをしておこう。このような場面でどうやっていればいいか。

 十分が経過して、周りを見渡してみる。だが、彼らしき姿はどこにも見当たらない。まぁ、信号が赤だったり、キャッチに絡まれていたら遅くもなるか。

 そう考えて、不安になる己の心を落ち着かせてみた。

 それから、十分、三十分、一時間と待ってみた。メッセージも何度も送ったが、一向に返信が来ない。

 私は涙が零れそうになる瞳を上に向けながら、家路を辿っていた。

 その最中、速報がスマートフォンに表示された。

 結局、三時間ほど待っただろうか。流石にこれ以上待っても成果は得られないだろう。

 まさか、忘れていたのか? それとも、最初から私をからかっていたのだろうか? いや、そんなことをするような人じゃないと思う。ならば、何か問題があって・・・?

『〇〇県〇〇市・・・、男性がトラックにはねられ死亡』

 そこに表示されていた住所は奇しくも私が先ほどいた待ち合わせ場所の近くだった。こんな偶然もあるんだな、と記事をスライドしていく。

「・・・ぇ?」

 名前を見て、愕然とした。

 そこに書いてあったのは、彼の名前だった。何度も見直した。何度も縮小拡大を繰り返して確認した。けれども、そこに書いてあるのは紛れもない、彼の名前であった。

 堪えていた涙が別の理由によって溢れ出てくる。足に力が入らない。全身が崩れ落ちていくのを感じる。

 嗚呼、そうか、彼は忘れてなどいなかった。からかってなどいなかった。ただ、ただ単に神の気まぐれか悪魔の呼び出しか何かで来れなくなってしまっただけだったんだ。

 だけれど、それはあまりにも非情で、虚しく、酷い結末だった。

 それから幾日経って私が分かったのは、私は彼が好きだったということだけ。本を読む姿が、あの頁をめくる仕草が、ただ単に好きだったというだけだった。

 私は臆病だ。人体組成をやる勇気も気力も出てこない。それに、もし成功したとしても、果たしてそれが本当に彼だと呼べるのだろうか。私はしっかりと愛情をもって接することができるのだろうか。一つの後悔もなく。

 自責の念が、私を殺しにかかる。後悔が私を内側から支配する。

 そんな日々が、あとどれだけ続くのだろうか。そんなことを考えるのも、嗚呼、億劫になってきた。




 ありがとうございました。感想などありましたら、お気軽にどうぞ。また、次回のライバーは決まっております。次々回からは、またTwitterでアンケートでも取ろうかと思っております。
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