「はっ…なんだ夢か」
悟は滝のような汗をかきながら我にかえる。どうやら、玉座に腰掛けたのち少し眠ってしまったようだった。正直目覚めは悪い。
「疲れているようだな。まあ、ここ数日ろくに寝ていないのだから、さもあろう。」
ランポッサはそういって笑みを浮かべる。重荷を下ろした前王は、スッキリした顔をしている。以前とは別人のようだった。
「ふー」
悟は首を左右に振って悪夢を振り払おうとする。
「おっ、どうやら産まれたようだな。元気な声が聞こえてきた」
確かに赤ん坊の泣き声が聞こえている。
「陛下、おめでとうございます」
夢と同じように中年の侍女が階段を降りて報告にやってくる。
「ありがとう。どっちかな?」
「ふふ、可愛らしいですよ」
あえて侍女は性別を告げない。
「お楽しみは自分でか·····」
悟は、階段をあがり妻のところへ向かうことにした。
「サトル·····私頑張ったわ。褒めてくださるわよね?」
「もちろん。ありがとう、ラナー。よく頑張ってくれたね。愛しているよ、本当にありがとう」
悟はラナーの髪をなで、若干顔色の悪い妻にくちづける。
「サトル、私幸せです。さあ、顔をみてあげて·····」
悟は、ドキドキしながら赤ん坊の顔を覗き込み安堵する。
(パンドラじゃなかった。よかったー)
そこにいたのは、ラナーに似た美しい顔立ちの男の子だった。
「これで、約束を果たせますわね。ねえ、サトル·····ありがとう。少し眠ってもよいかしら」
悟が答える前にラナーは眠りに落ちた。
「ありがとう、ラナー。おやすみ·····さて、この子の名前を決めないといけないんだけどなぁ·····うーん、一番の難問だよなぁ·····俺のネーミングセンス·····壊滅的だし。子供の名前とか、ヤバいな。一生モンだぞ·····サトルとラナーの子だから、サトラナー·····いや、トルナ·····ナルト·····女の子だったらルナで決まりだったんだけどなー。ルラとか。·····男の子·····ラルートとかかな?」
結局名前は決まらず、悟は朝を迎えることになるのだった。
ちなみに名前は、ラナーの意見が採用されることとなり、悟のネーミングセンスは発揮されることはなかった。
「あー良かった·····本当にこの世界にこれて。ありがとう、パンドラズアクター。お前が願いを叶えてくれるアイテムを使ったのだろう?。さっきの夢で、やっと理解したよ。俺をここに連れてきてくれて、ラナーに出会わせてくれたこと、感謝する」
悟は、そう呟き我が子を抱き上げる。
「私は誓おう。お前のために良き父親よき国王となる·····もちろん、ラナーにとってよい夫であることが前提にあるけどな·····」
決意を新たにする悟であった。