続くかもしれないし続かないかもしれない。
ましろが好きだから書いただけなんで。
「えへへ……これで私だけを見てくれるね」
少女が微笑む。
薄暗くじめっぽい部屋とは裏腹に僕を固く抱き締める彼女から香る匂いはお日様の様だ。
本来こんな美少女に抱擁されているなんて羨ましいと言われそうだけれど悲しい事に、瞳に光はなく僕の手首には金属の冷たい感触を感じる。その時点であまり喜べない状況だという事が読者の貴兄らにも分かるだろう。
えーつまり簡潔に現在の状況を纏めるとだね、
監禁されちゃったぜ☆テヘペロ☆
……現実逃避はここまでにしておこう。
目の前の銀髪を見つめながら少しずつ物事を整理、思い出していく。
自分の名前は『華泉皐月』。
数年前共学になった花咲川学園中等部の3年生。
好きなものは糠漬け、嫌いなものはピーマン。
次に覚えているところまで遡ってみる。
まず僕は昨日、最近大人気のガールズバンド、ポピパことPoppin'partyのライブがバイト先のCiRCLEであったからそれの準備を手伝った。
ライブは無事大成功。
そのあと香澄先輩に告白されて......
うん?
香澄先輩に告白......?
「うわぁぁぁ!!」
「っ!?ど、どうしたの?!痛かった!?」
違う、いや違わないけど違うんだよ。
僕は今嬉しさとか恥ずかしさとかで頭がいっぱいになっているんだ。監禁されてるけど。監禁されてるけど......!
ふぅ......話を戻そう。
こ、告白されて頭がさっきみたいにパンクしかけていた僕がなにか返そうとしたらそこには既に香澄先輩はいなかった。
どうやらあちらも羞恥心でいっぱいになって逃げるように有咲先輩達の方へ駆けて行ってしまったらしい。
あんな年中花火大会みたいに賑やかで明るい先輩でも恥ずかしがるんだなぁと自分の事を棚にあげ考えていると後ろからいきなりハンカチのような物を顔に押し付けられて目が覚めたらここだった。
うん、立派な誘拐だね。
肝心のその犯人だが......
「ごめんね痛かったよね......はぁ、私やっぱダメだなぁ......」
僕の胸板に顔を押し付け半泣きになっていた。
『倉田ましろ』。少なくとも僕にとっての一番の理解者にして親友。
そして今回の誘拐犯。
「だ、大丈夫だよ僕は。それよりなんでこんな事したの?」
「だって......だって皐月君が私から逃げたから!皐月君がいてくれたから私頑張ってこれたのに......!」
「......っ!」
逃げた。
確かに間違ってはいない。
僕はましろちゃんを拒絶し自ら遠ざかったのだ。
彼女はモルフォニカという彼女自身の居場所を見つけた。
なら僕は彼女にはもう必要ない、そう考え1ファンとして応援し続けていくと決めたのだ。
「私にとって皐月君が全てだったんだよ?今はつくしちゃん達もいるけれどそれでも君がとっても大事な存在だって事は変わらないよ。なのに......よりにもよって香澄さん達の方へ行っちゃうなんて......!」
あぁ、どうしてこうも僕は選択を間違えてしまうのだろう。
外しか見ないで本当に大事な事をいつも見落とす。
薄暗い部屋を鉄格子ごしの窓から射す月光がうっすらと照らす。
光が空気中の埃をくっきりと照らし出し、その埃達はまるでちょうちょのように空を舞う。
その光景を彼女の肩越しにぼんやりと見つめながらましろちゃんと初めて出会った時を僕は思い出していた。
あぁ、あの時もちょうどこんな青白い月の夜だったなぁと。
因みにタイトル、サブタイトルに意味はありません。
全くありません。