「相馬さんって『魔女狩り』って組織知ってますか?」
佳奈美にボスからの呼び出しで支度するように言われた僕は、起きてから1時間も経ってないというのに出向く支度をしている途中だった。
「知らないよ。でも名前からして魔女を殺す組織なん...だrっておい、まさかおまえ昨日の夜僕たちを襲ってきた...」
今まで忘れていた。頭を打ってたからなんて言い訳をするつもりはないが、起きてからすぐにこのロリとの緩み切った会話をして昨日の夜の事を思い出す暇がなかったからなのかもしれない。『魔女』という単語で昨日のことが脳内映像で流れた。夜ではっきりと顔は分からなかったが、月の光でほんの一瞬見た顔と一致する。
焦る僕は、ドアの外にいるロリと壁越しだが距離を離し身構える。しかし、声から警戒していることが分かったのだろう。壁越しからでも分かるようなため息を吐き、落ち着いた声で話す。
「相馬さん聞いてましたか?私たちは『魔女狩り』です。あなたは人間ですから殺そうとは思っていません。」
「でも、美玖さんを襲った。」
「あの女は魔女です。人間じゃない。」
「美玖さんを殺したのか...?」
「いいえ、殺してはいません。ですが、捕獲しました。今から行く場所に彼女がいます」
なんで彼女なのだろう。
10年前、美玖さんがやったことは許されるべきことじゃない。悪い印象を持たれてしまうのは避けられないことなんだろう。けれど、それらの感情を持つのは本当の彼女を知らないからなんじゃないか?笑って、趣味があって、感情がある。もっとこっちの彼女をみんなが知ろうとしてほしい、理解しようとしてほしい。
僕は心からそう思った。
僕は着替え終わり美玖さんがいる場所に行くため、一度外へ出ることになった。個室を出るとあたり一面コンクリート造りの廊下が続いていた。すれ違う人は、頭より体を使うような筋肉モンスターが歩いていてここはどういった場所なのか、魔女狩りについて、なぜ僕が魔女狩りのボスに会わなければいけないのかなどなど、佳奈美に聞きたいことは山ほどあるが、さっきのことで話しかけることをためらっていた。
「どうしたものか。貧相な筋肉だけど、これでこの冷め切った雰囲気がどうにかなるなら...よっし!なぁあ、僕のk」
「着きましたよ」
覚悟を決め、服を脱ごうとしたが、気づかないうちについたようだ。
目の前には、思わず口を開いてしまうような馬鹿でかい教会が建っていて、周りには教会を囲むように何本もの石柱が立っている。そのほかにも、見たこともないようなものがあり興味を惹かれるものばかりだった。
「さあ、気になる気持ちはわかりますがボスが待っています。早く行きましょう」
佳奈美は、見慣れているのだろう、周りの物に目もくれず教会の扉に手を添える。
僕も佳奈美の後を追いかけ教会内に足を踏み入れた。そして、入った瞬間目に入ったものは両端に並べられた椅子に3人の人影と祭壇に美玖さんが両腕を縛られ身動きが取れない状態でいる姿だった。
僕はその光景を見た瞬間走り出す。
「美玖さん!」
美玖さんの口はタオルで縛られ声が出せないようにされていたが、僕の名前を呼ぶ声がうっすらだが聞こえる。
知らない場所、知らない人に囲まれ怖かったんだろう。一秒でも早く。そう思い駆け寄り、あと数歩で助けてあげられる。そう確信した時だ。
「なにしてんだ坊主。」
いつの間にか男に背後に回られていた。僕は床にたたきつけられ、身動きが取れなくなってしまった。
なんとかして上に乗っている男を振り落とそうとするが、男はびくともしない。それどころか、さらに力を加えられ強引におとなしくさせようとしてくる。
手が届きそうな場所に美玖さんがいるのに助けてあげられない。そんな、もどかしい気持ちからか僕は大声で男に怒鳴りつける。
「離せよ!美玖さんが、美玖さんが助けを求めているんだ」
「坊主、これ以上抵抗するなら...殺すぞ」
男の顔は分からなかった。でも、声のトーン、威圧から冗談で言っているんじゃないと感じ取ることができた。興奮状態の思考もたった一言で冷静になり、これ以上は危ないと体も固まってしまった。
こいつも『魔女狩り』の組織の一人なのか?佳奈美を含め3人からどう美玖さんを救出すればいい?
脳のあらゆる部位を用いて考えるが、まったく案が思いつかない。
どうする、どうする、どうする。
そうして導き出された答えは一つだった。
(無理だ)
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