「お前がこのイカれた組織のボスか?」
カナミから聞いていたボスと呼ばれる男は、歳は30代くらいだろうか服の上からでも分かる鍛え上げられた体に、不気味な笑顔で勧誘してくる。
僕は、すぐにその勧誘を断ろうとしたとき間にさっきの男が横切ってくる。
「おいおい、イカれてるのはどっちだよ。魔女を守るってことはどういうことか分かってんのか?まぁあ、わかんねーだろうな。教えてやるよ。それは...」
「人類の敵になるということだ。坊主」
「おいゲン、おまえ俺のセリフを奪ってんじゃね!」
「別にいいだろ。さっきからキョウばっかり話しすぎだ。」
「何だとぅ!?」
シリアスな雰囲気だったのに、ついつい和んでしまうような会話が繰り広げられ、いがみ合う二人を見ていた僕と美玖さんは唖然とする。そんな緩み切った空気は居心地が悪くなったのか、四人目の魔女狩りであろう女の子が立ち上がり扉のほうへと歩いていく。
「ちょ、ちょいアナちゃん!?どこに行くの?」
驚いたカナミはその娘を引き留めようと声をかける。が、女の子は振り向くことなく手を振って、
「妹たちがそろそろ保育園から帰ってくる頃なので先に失礼しまーす。」
そう言ってこの場から去ってしまった。
目的は一致しているから組織として成り立っているだろうけど、なんていうか...バラバラ?
「バラバラと思っただろ?それは私も思うんだ。だけど、そこがいい。バラバラということは個性はもちろん、得意分野に苦手分野も一人一人が異なる。それらで互いの欠点を補い合って、一人じゃなれない完璧に近い存在へとなることができる。そうして初めて、絆という見えない繋がりができ、組織として成り立つんだと私は思うんだ。」
急にしゃべりだし、隣に立ってきた。そして何気にいい事を言っている。
「この組織の目的が美玖さんを殺すという目的じゃなかったら僕は貴方と組織にいい印象を持てたと思います。」
こいつらは、美玖さんを殺そうとしている。だから、僕はいい印象を持てない。
「なら、その子は殺さないと言ったら入ってくれるのかな?」
「えっ?」
殺さない?美玖さんを?どうしてそんな急に。このボスと呼ばれる男は何を考えてる?
さっき、僕が男たちを止めていなかったら確実に美玖さんは殺されていた。
男たちの殺気は間違いなく本気だったのに...なんでそんな提案を?
「はっはっはっはぁ、そんなに驚かなくていいよ。私はもともとその娘を殺すつもりなんてなかったんだ。私が魔女狩りに要求したのは、殺さず捕獲し、私が来るまで手出しはしないこと。なのに、彼らはその命令を無視して殺そうとした。」
男は表情には出さなかった。だけど、彼らに向ける視線は冷たく、圧力を感じた。
背筋が凍ってしまうほどの悪寒は教会内全体を埋め尽くす。
揉めていた二人はもちろん、カナミも男のほうに視線を向け膝をつき「「申し訳ありません」」と声をそろえて謝った。
「何者なんだ」
私は間違っているのだろう。ある国に生きていた人や動物、植物を殺しているのにも関わらず、いざ自分が死ぬと直感した時《まだ生きていたい》そう願ってしまった。
なんて自分勝手なんだろう。私は私自身が再度最低な女だと認識した。
それに、ゲンと呼ばれていたガタイのいい男の人が、相馬くんに言った言葉。
「人類の敵になる」
その言葉は、さらに私が間違っていると思い知らされる。
『魔女狩り』たちが向ける冷え切った視線。それが今相馬くんに向けられている。
私のせいだ。なんで、そこまで私をかばってくれるの?
「ん?どうしたの美玖さん?」
「...ごめん。私のせいで」
「えっと...なんのことか分からないけど、僕は美玖さんに謝られるようなことはされてないよ。」
「でも私は、相馬くんを人として歩む未来を奪おうとしている。」
こんな姿見せたくなかったんだけどな。もっと、穏やかに大人びた姿を相馬くんに見せたかったのに。
嫌われたかな?見捨てられるのかな?
「僕は、美玖さんを見捨てたりしない。なんていうのかな?初めて美玖さんに出会ったとき、初めて見た気がしなかったんだよ。声や雰囲気、あとは...そうだなぁ。背伸びをしているところとかかな。」
「えっ?えっえっ!?」
ばれてた。私は、頑張って背伸びをしていたことに気づかれていたことを本人の口から聞き、恥ずかしくなった。顔は熱くなって、今ごろ赤くなっているのだろう。
「美玖さんを守る。美玖さんが普通の人生を歩める方法があるのならば、僕はその選択を選ぶ。そのための、この力だと僕は思う。おっさn、いやボス。」
相馬くんは、ゆっくりと屈んでいく。
「僕は、魔女狩りになります。その代わり、美玖さんには手を出さないでください。」
「約束しよう。さぁ、魔女狩りの諸君!ようやく、5人の魔女狩りがそろった。さぁ、反撃の時が来た!これまでの犠牲者の思いを晴らせ!」
巻き込んでしまった。私の意思じゃないといっても人ならざる力を相馬くんに分け与えてしまい、
魔女“たち”と命の奪い合いをさせてしまう。次は私が相馬くんを守るんだ。守られてばかりじゃ私自身が許さない。相馬くんは死なせない。