「コッチに逃げたぞ!追え!」
「ハァ、ハァ、ハァ…」
何故私は追われているのだろうか。
レユニオンに父を殺され、天災で母を亡くした私は生き残っただけでも運が良いと言えるだろうか。
「こんなことになるなら生き残らなければよかったのに…」
身寄りもなく、鉱石病にかかった子供を助ける様な人はもうこの町にはいなかった。
元々鉱石病に対してとても厳しかったこの町は滅んだ後も今まで通りに鉱石病患者を排斥しようとしていた。むしろ、レユニオンに襲われたからか、今までよりも当たりは強くなっだだろう。
実際、食べる物を探し回ってようやく缶詰を見つけたと思えば他の生き残った人に追われている。
「その缶詰を渡しやがれ!このガキが!鉱石病にかかってるお前なんかより俺らの方が有効活用できるだろうが!」
「大人しく渡せば命だけは助けてやるよ!」
大の大人が子供に対して二人がかりで一個の缶詰を奪い取ろうとしている。そんな事が当たり前になっている事にどうしようもない絶望を感じる。
「オラッ!散々逃げ回ってくれたじゃねぇか…これは缶詰一個じゃあ割に合わないなぁ。」
遂に追いつかれてしまった。既に缶詰は奪われ、私は男に暴行を受け続けていた。
天災の後に自分というものが希薄になっていて良かったと初めて思った。痛いことは痛いが自分が殴られている感覚は希薄だった。おそらく、今目を瞑ればもう二度と目覚めなくなれるだろう。それもいいかもしれない。生き残ってもいい事はなかった。助けてくれた両親には申し訳ないがここで終わってもいいだろう。
あぁ、でももう一回だけオムライスを食べたかった…。
「大の大人が女の子をいじめてカッコ悪いとは思わないわけ?」
天使がいた。オレンジ色のパーカーを着て、緑色の剣を持った天使だった。
「なんだお前?俺達はコイツに奪われた食糧を取り戻してただけだ。」
「缶詰一個取り戻すのにそこまでボコボコになる?ならないだろ。」
「うるせぇぞ!お前もこのガキみてぇになりたいのか!」
「それはコッチのセリフだ。」
そう言うと天使は持っていた剣を構えた。
次の瞬間、謎の音と共にピンク色のビームが男達の間を通り抜けた。ビームは壁に大きな穴を開け、その威力をものがたっていた。
「次は当てる。死にたくなければここから立ち去れ。」
「クソが!こんな物くれてやるよ!」
男は缶詰を地面に叩きつけそそくさと去っていった。
「フー。大丈夫だった?もう安心だからね。」
「この状態を見てよくそんなことが言えますね。大丈夫なわけないでしょう。」
「あっ、ごめんね。確かに大丈夫じゃなかったね。」
でももう安心だから。
そう言うと天使は私に手を差し出してきた。
私はその手を掴んだ。
それが彼との出会いだった。