アレイオンと名乗った女性はあっさりとレユニオンのメンバーだった事を明かした。
「なんで素直に話したのですか?町でレユニオンの装備を使ってる奴は少なくないです。誤魔化す事もできたはずです。」
「ここで嘘をつくのは命の恩人に対して失礼にあたってしまう。だから素直に明かさせてもらった。」
「じゃあ何故自分達の物資のある場所に案内するんです。アーシェルは感染者だが、俺は違います。お前達にとって敵のはずです。」
「私にとって敵とは感染者に対して差別を行う者達の事だ。非感染者を無差別に襲うような過激派が多いのは認めるがそんな輩とは違う。少なくとも受けた恩はかえさせてもらう。」
それなら少しは安心できる。アーシェルは既に新しい装備の事で頭がいっぱいのようだ。
本人は大人っぽく振る舞おうとしているらしいがこういったところは年相応らしい。欲しがっているのが銃なのはどうかと思うが。
「やはり、レユニオンのメンバーでは信用されないのでしょうか…。」
言葉が少し崩れている。これが素なのだろうか。
「すみません。あの騒動の時にレユニオンに襲われたもので。」
「あぁ、そういう事ですか。私の隊ではないといいのですが…」
「貴方の様な装備は見なかったので別の隊だったのでしょう。」
「なら少しは安心できますね。天災がこの光景を起こしたとはいえ、私たちはこの町に危害を加えすぎましたから。」
やはりこの人はあの騒動には反対だったのだろうか。
「貴方はあの騒動に反対だったのですが?」
「いえ、あの作戦は必要なものだったと今でも思っています。ただ、人への被害はもっと抑えられたと思います。」
「何故その作戦は必要だったのですか?」
「私も多くは知りません。ですがあの作戦はロドスとの競争でしたから。」
競争?あのロドスと?ロドス製薬は感染者に対する治療や研究を行なっているはずだ。
親父もロドスとは協力関係にあった。主な取引先や研究はライン生命と行っていたが、ロドスからのデータは貴重だったらしい。
「ロドスとの競争とはどういうことですか?」
「ロドスのメインドクターを知っていますか?」
「いえ、誰ですかそれ。」
「とても優秀な研究者だったと聞いています。鉱石病治療の第一人者だと。」
「それでレユニオンはその人が欲しかったと。」
「そうですね。彼がいればいつか鉱石病を治す事もできると言われていましたから。」
「では何故その人はロドスではなくチェルノボーグにいたのですか?」
「すみません、それは私も知りません。」
「大丈夫ですよ。それよりもすみません、質問責めにしてしまって。」
「ではこちらからも質問があります。何故貴方は彼女と一緒にいるのですか?家族ではない様ですし。」
「そうですね。彼女が暴徒に襲われている所を助けて、以来成り行きで一緒に生活しています。」
「フフッ。成り行きですか。これは予想外でした。」
「いえ、自分はこの町の住人ではないので、町の事を教えて欲しかったというのもありますが…」
「それでもとても面白い理由ですよ。そんな事で感染者と一緒にいる人は初めて見ました。」
「父は鉱石病の研究者でしたので感染者とはよく会っていましたから。それにサンクタ族は感染しにくいですし。」
「それでも差別や偏見はあるものです。貴方にはそれがありません。それは我々にとっては喜ばしい事です。」
「ありがとうございます。それで目的地には、後どれほどで着きますか。」
「もうすぐです。ガレキなどで埋まっていないといいのですが。」
こうして3人は目的地に向かって歩いて行った。