僕の彼女は曜ちゃんです⚠再編集中 詳しくはあらすじへ 作:ゆうきoog3
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――1年生の階――
放課後の校舎は、昼間の喧騒が嘘みたいに静かだった。
階段を上がるたび、床に反響する足音がやけに大きく聞こえる。
雄飛(とりあえず…1年生の意見、ちゃんと聞かないとな)
そう自分に言い聞かせながら、雄飛は1年生の教室が並ぶ廊下へ足を踏み入れた。
すると――
善子「……っ」
花丸「あ、雄飛くん……」
ルビィ「……」ビクビク
教室の前で、三人が微妙な距離感のまま固まっていた。
雄飛「お、ちょうどよかった」
その一言に、三人が一斉にこちらを見る。
善子「な、なによ……!あたし、別にサボってたわけじゃ……!」
花丸「い、今から部室に行くところだったずら……」
ルビィ「ル、ルビィも……」
雄飛は思わず苦笑する。
雄飛「いやいや、責めに来たわけじゃないって」
その声のトーンに、三人の肩から少しだけ力が抜けた。
雄飛「ちょっと聞きたいことがあってさ。練習メニューのこと」
花丸「練習……?」
ルビィ「え……?もう決まってるんじゃ……」
雄飛「それがさ。まだ“決めてる途中”なんだ」
善子「……え?」
雄飛は廊下の窓際に立ち、外をちらっと見やる。
雄飛「上級生は経験者だし、すごいのは間違いない。でも――」
一瞬言葉を選び、ゆっくりと続ける。
雄飛「Aqoursは、1年生も含めて全員でやるグループだろ?」
花丸「……」
ルビィ「……」
善子「……それで?」
雄飛「だからさ。体力的にきついとか、不安なこととか、正直な意見が聞きたい」
ルビィ「……ほんとに、言っていいの?」
雄飛「もちろん」
迷いなく答えた雄飛に、ルビィが小さく息を吸った。
ルビィ「……ルビィ、正直……ランニング、ちょっと苦手で……」
花丸「ずら……途中で息が上がっちゃって、振りが遅れることもあるずら」
善子「……あたしも。最初から全力だと、後半ついていけなくなるわ」
雄飛は三人の顔を一人ずつ見て、ゆっくりとうなずいた。
雄飛「そっか。ありがとう、ちゃんと言ってくれて」
その一言だけで、空気がふっと軽くなる。
善子「……怒らないのね」
雄飛「怒る理由ないだろ」
花丸「……雄飛くん、優しいずら」
ルビィ「……ほっとした……」
雄飛「じゃあ、こうしよう」
三人が自然と身を乗り出す。
雄飛「最初はペース分け。無理せず走れる組と、少し負荷かける組。途中で入れ替えもあり」
善子「……それ、できるの?」
雄飛「できるようにする」
言い切る声は、思ったより自信に満ちていた。
雄飛「それと、振りが遅れたって気にするな。止まらず続ける方が大事だ」
ルビィ「……うん」
花丸「……ありがとうずら」
善子「……ふん。悪くない采配じゃない」
雄飛「はは、評価どうも」
そのやり取りを、廊下の少し先から見ている影があった。
果南(……あーあ)
腕を組み、にやりと笑う。
果南(もう完全に“まとめ役”じゃん。本人、気づいてないけど)
一方の雄飛はというと。
雄飛(よし……これで、少しは役に立てるかな)
そんなことを考えながら、教室の時計を確認する。
雄飛「じゃ、部室で合流しよう。遅れたら俺が怒られるからさ」
善子「……あんたが?」
雄飛「たぶんね」
花丸「ふふ……」
ルビィ「雄飛くん、ありがとう」
その言葉に、雄飛は少し照れたように頭をかいた。
雄飛「どういたしまして」
そして踵を返す。
廊下に残された1年生三人は、顔を見合わせてから――
善子「……あの人、ただのマネージャーじゃないわね」
花丸「うん……」
ルビィ「……リーダーさん、だよね……」
その頃、本人はまだ気づいていなかった。
雄飛(……俺にしかできないこと、少しずつだけど……見えてきたかもな)
…練習後 千歌の部屋…
千歌は腕を組みながら、唸るようにノートを睨みつけている。
千歌「うぅ〜〜……」
曜「千歌ちゃん、考えすぎじゃない?」
梨子「さっきからずっと同じところで止まってるね……」
机には書いては消した跡が大量に残っていた。
消しゴムのカスだけがどんどん増えていく。
雄飛「……ちょっといいか?」
千歌「え?」
雄飛「落ち着け」ペシッ
千歌「はい……」
軽く頭を叩かれ、千歌はしゅんと肩を落とした。
曜「ふふっ、千歌ちゃん怒られてる」
千歌「だ、だってぇ〜!」
雄飛「そんなに気負うなって。やっぱりアイドルなんだから、ラブソングとかなんじゃないのか?」
その瞬間、千歌の目がぱっと輝いた。
千歌「ラブソング! それだよ! それ!」
曜「おおっ、急に元気になった」
千歌「やっぱり名案だよね!」
雄飛「だろ? やっぱり名案だろ」
梨子「たしかにアイドルっぽい!」
雄飛「とりあえず、これで書けそうか?」
千歌「やってみる!」
勢いよくノートを引き寄せ、千歌はペンを走らせ始めた。
カリカリと響く筆記音。
その横顔は真剣そのものだった。
曜と梨子はベットに座り、そんな千歌を見守る。
雄飛も自分の部屋の机に腰掛けながら、小さく息を吐いた。
雄飛(……こうやって何かに夢中になってる千歌、やっぱすげぇな)
――15分後――
千歌「うーん……」
雄飛「はやっ?!」
曜「もう行き詰まったの?」
千歌「だって……恋愛経験ないんだもん……」
梨子「あ……」
曜「あー……」
雄飛「なるほどねぇ」
千歌は机に突っ伏しながら、ペンをぷらぷら揺らす。
千歌「ラブソングってどうやって書けばいいの〜……」
曜「千歌ちゃんらしいかも」
梨子「だったらさ……ラブライブを目指す意気込みみたいなのを歌詞にしたらどう?」
千歌「いきごみ?」
梨子「そう。千歌ちゃんは、なんでラブライブ!に出たいって思ったの?」
千歌「輝きたかったから! それからラブライブ!が大好きだから!」
雄飛「うんうん」
梨子「それから?」
千歌「えっと……普通怪獣ちかっちーから……変わりたかったから!」
一瞬、部屋が静かになる。
雄飛「……普通怪獣ちかっちーってなんだよ」
曜「そこは突っ込むんだ」
千歌「えぇ?! 大事なとこだよ?!」
雄飛「まあいいや。それをもっと――」
千歌「わかった!!」
全員「?!」
千歌が勢いよく立ち上がる。
千歌「思いついたよ! それだったら書けるかも!」
雄飛「お、それはよかった」
曜「さすが千歌ちゃん!」
梨子「ふふっ、よかった」
千歌「明日までに絶対完成させてみせる!」
雄飛「ああ。今晩は付き合ってやるよ」
千歌「やったー!!」
曜「夜更かししすぎちゃダメだからね?」
梨子「無理しすぎないでね……?」
千歌「大丈夫大丈夫!」
そう言って笑う千歌の姿は、どこかいつもより輝いて見えた。
その様子を見ながら、雄飛は静かに目を細める。
雄飛(……俺は曲を作れるわけじゃない)
(ダンスを教えられるわけでもない)
(でも――)
千歌が前を向く。
曜が笑う。
梨子が背中を押す。
その空気が、確かに動き始めている。
雄飛(……こういう瞬間を、形にするのが俺の役目なのかもな)
胸の奥にあった“自分の存在意義”への迷いが、ほんの少しだけ晴れた気がした。
――翌朝――
千歌の部屋には、3人分の静かな寝息と、朝の鳥のさえずりが響いていた。
テーブルの上には、端に寄せられた大量の消しゴムのカス。
そして、何度も書き直されたB4の紙が何枚も散らばっている。
夜通し悩み続けた跡が、そこには残っていた。
カーテンの隙間から差し込んだ朝日が、
そのうちの一枚を静かに照らす。
そこに書かれていたのは――
千歌が初めて作詞し、
本気で“輝きたい”と願い、
ラブライブ!へ踏み出すきっかけとなった曲名。
雄飛はそれを見つめ、そっと微笑んだ。
雄飛「……大丈夫だ」
雄飛「ちゃんと、前に進んでる」
「決めたよHand ㏌ Hand」
それではまた、次回お会いしましょう!!