僕の彼女は曜ちゃんです⚠再編集中 詳しくはあらすじへ 作:ゆうきoog3
今回は梨子ちゃん回!
ここにきて、急展開!!
それではどうぞ!!
――十千万・裏口付近――
「ごめんねっ。明日本番なのに、こんな暗い話しちゃって……」
梨子は少し困ったように笑い、浜辺へ視線を落とした。
夜風が、ふわりと彼女の髪を揺らす。
雄飛は少しだけ考え込み、それから静かに口を開いた。
雄飛「……梨子」
梨子「ん?」
雄飛「梨子はさ、“Aqoursに迷惑かけたくない”って思ってるんだろ」
梨子「っ……」
図星だったのか、梨子の肩が小さく揺れた。
雄飛「やっぱりな」
梨子「……だって、今はみんなで頑張ってる途中だし……」
雄飛「でも、それって本当に“逃げたい”顔してるやつの顔じゃないぞ」
梨子「え……?」
雄飛「俺、最近わかるようになってきたんだ。
本当に諦めたやつって、その話題を口にしない」
「夢が気になるってことは、まだ終わってないってことだろ」
梨子「……」
梨子は驚いたように目を見開いたあと、ふっと小さく笑った。
梨子「ゆうくんって、たまにずるいこと言うよね……」
雄飛「そうか?」
梨子「うん。
そういうこと、真正面から言われると……なんか、泣きそうになるから」
雄飛「泣くなよ? 明日本番前だぞ」
梨子「ふふっ、わかってる♪」
少しだけ空気が軽くなった。
その時――
千歌「梨子ちゃん!」
梨子「?!」
後ろから聞こえた声に振り返ると、そこにはAqoursのみんなが立っていた。
曜「やっぱりここにいた!」
花丸「戻ってこないから心配したずら~」
ルビィ「ふんばルビィ!」
善子「フッフッフ……夜の気配を感じて来てみれば、やっぱりここだったわね」
花丸「絶対あと付けてきただけずら」
善子「ヨハネよ!」
わいわいと騒ぎながら集まってくるみんなを見て、梨子は少し目を丸くする。
ダイヤ「話はだいたい聞こえてしまいましたわ」
鞠莉「海辺だと声、意外と響くのよね~」
果南「まあ、盗み聞きするつもりはなかったんだけどね」
梨子「み、みんな……」
千歌は梨子の前まで来ると、まっすぐ彼女を見つめた。
千歌「ちかはね、梨子ちゃんに夢を諦めてほしくない」
梨子「……!」
曜「うん。私もそう思う」
花丸「夢って、思い続けてる限り終わらないって本で読んだずら!」
ルビィ「ルビィも応援したい!」
ダイヤ「夢を持ち続けることは、決して悪いことではありませんわ」
果南「むしろ、そういう気持ちって大事だと思うよ」
鞠莉「ピアノもAqoursも、どっちもリコの大切なものなんでしょ?」
善子「堕天使ヨハネが特別に応援してあげてもいいわよ!」
花丸「上から目線ずら……」
梨子はみんなの顔を順番に見つめた。
その表情は、さっきまでとは違っていた。
不安だけじゃない。
どこか、救われたような顔だった。
梨子「……ありがとう、みんな」
雄飛「ほらな。説得なんか必要なかっただろ?」
梨子「ふふっ、そうみたい♪」
そして梨子は、少しだけ言いづらそうに口を開いた。
梨子「……実はね」
全員「?」
梨子「この前、昔のピアノの先生から連絡が来たの」
雄飛「先生?」
梨子「うん。
今度ある若手演奏会で、“もしまだピアノを続ける気持ちがあるなら、一曲だけでも弾いてみない?”って」
曜「演奏会……?」
梨子「本格的なコンクールじゃなくて、小さなステージなんだけどね。
でも、昔の私にとってはすごく大事な場所で……」
千歌「それっていつなの?」
梨子「……地区予選が終わった次の週」
「しかも、練習期間もほとんどなくて……」
ダイヤ「なるほど……」
雄飛は静かに頷いた。
さっきまでの“急すぎる話”ではなくなった。
ずっと梨子の中で引っかかっていた“もう一つの夢”。
それが今、少しだけ顔を出したのだ。
雄飛「だったら簡単だな」
梨子「え?」
雄飛「地区予選を突破して、そのあと全力で梨子の演奏会も成功させる」
千歌「おおー!」
曜「ゆうくんらしい!」
雄飛「Aqoursは九人でやるもんだろ。
だったら、誰か一人だけ夢を我慢する必要なんてない」
梨子「……っ」
その言葉に、梨子は少しだけ目を潤ませた。
でも今度は、ちゃんと笑っていた。
梨子「……うん!」
――ラブライブ!地区予選当日・舞台裏――
会場の空気は、独特だった。
ステージ袖を歩くだけで緊張が伝わってくる。
スポットライトの熱。
遠くから聞こえる歓声。
控室を行き交うスクールアイドルたち。
その全てが、“本番”を嫌でも実感させていた。
ルビィ「ひゃぁ……す、すごい人……」
花丸「動画で見た場所ずら……」
善子「フッ……ついに堕天使ヨハネが降臨する時が――」
曜「善子ちゃん、声震えてるよ?」
善子「ヨハネよ!!」
緊張を誤魔化すようなやり取りに、少しだけ笑いが起きる。
だが、その空気もすぐに静まり返った。
次はいよいよAqoursの出番。
九人全員が自然と雄飛の方を見る。
雄飛はそんなみんなを見渡し、小さく息を吐いた。
雄飛「……よし、最終確認するぞ」
全員「!」
雄飛「今回のライブ、一番大事なのは“想いを届けること”だ」
千歌「うん!」
雄飛「だから無理に完璧を目指さなくていい。
多少ミスしても、気持ちだけは絶対止めるな」
ダイヤ「ええ」
果南「了解」
鞠莉「オッケー♪」
そして雄飛は、ゆっくり梨子を見る。
梨子はピアノ用の白い衣装の袖を、少しだけ握りしめていた。
雄飛「……梨子」
梨子「っ……」
雄飛「本当にやるんだな?」
曜「……!」
千歌「……」
その言葉に、その場の空気が少しだけ変わった。
実は今回のライブ。
直前になって、ある演出変更が行われていた。
――梨子が、ステージ上で生演奏をする。
最初に提案したのは雄飛だった。
---
――数日前・部室――
雄飛「なあ、ひとつ思ったんだけどさ」
千歌「?」
雄飛「“想いよひとつになれ”って、梨子のピアノがあって完成する曲じゃないか?」
梨子「え……?」
曜「それはそうだけど……」
雄飛「だったら、音源じゃなくて生演奏にした方が絶対伝わる」
全員「……!」
ダイヤ「確かに、インパクトはありますわね……」
果南「でも本番で弾くのって相当大変じゃない?」
梨子「そ、それは……」
当然だった。
ピアノを弾きながら、ライブの流れを合わせる。
普通のスクールアイドルライブとは難易度が段違いだ。
しかも梨子には、昔の“本番で弾けなくなった記憶”がある。
雄飛「もちろん無理には言わない」
梨子「……」
雄飛「でも俺は、梨子のピアノには人の心を動かす力があると思ってる」
梨子「っ……」
千歌「ちかも聞きたい!」
曜「私も!」
ルビィ「ルビィもです!」
花丸「絶対素敵ずら!」
善子「堕天使ヨハネの儀式にも相応しい旋律ね……!」
花丸「よく分からないずら」
鞠莉「リコのピアノ、好きよ♪」
果南「やるなら全力で支える」
ダイヤ「わたくしも賛成ですわ」
全員の視線が梨子へ向く。
梨子は少しだけ俯き――
それから、小さく笑った。
梨子「……やってみたい」
雄飛「!」
梨子「怖いけど……でも、逃げたくないから」
その瞬間、雄飛は確信した。
Aqoursは、また一歩前へ進んだのだと。
---
――現在・舞台裏――
雄飛「怖いか?」
梨子「……ちょっとね」
雄飛「そりゃそうだ」
梨子「でも、不思議と前より怖くないの」
雄飛「え?」
梨子はゆっくりメンバーを見る。
梨子「一人じゃないから」
曜「梨子ちゃん……!」
千歌「絶対成功させよう!」
梨子「うん!」
その時。
スタッフ「Aqoursの皆さん、スタンバイお願いします!」
全員の表情が引き締まる。
雄飛「円陣組もう!」
九人が輪になる。
雄飛は一人ひとりの顔を見た。
最初はバラバラだった。
悩んで。
ぶつかって。
泣いて。
それでもここまで来た。
雄飛「……ここまで来たら、もう楽しめ」
千歌「!」
雄飛「お前たちが頑張ってきたこと、俺が一番知ってる」
曜「ゆうくん……」
雄飛「だから胸張って行ってこい」
ダイヤ「ふふっ……」
果南「ほんと、変わったね雄飛」
鞠莉「もう立派なリーダーよ♪」
雄飛「茶化さないでくださいよ……」
千歌が真ん中へ手を伸ばす。
千歌「Aqours!」
全員「サーンシャイン!!」
そして――
ステージの幕が上がった。
---
歓声。
眩しいライト。
観客席を埋め尽くすペンライトの海。
一年生組は一瞬だけ息を呑む。
だが。
イントロが流れた瞬間。
会場の空気が変わった。
ステージ中央。
白いグランドピアノに座る梨子。
スポットライトが彼女だけを照らしていた。
観客がざわめく。
「え、ピアノ……?」
「生演奏?」
「すご……」
梨子は静かに息を吸い――
鍵盤へ指を置いた。
最初の一音。
透き通るような音色が、会場全体へ広がる。
その瞬間だった。
観客の空気が、一気にAqoursへ引き込まれる。
雄飛(……いける)
ピアノの旋律に合わせて、メンバーたちが動き出す。
千歌の真っ直ぐな歌声。
曜のキレのあるダンス。
一年生たちの全力のパフォーマンス。
三年生の圧倒的な安定感。
そしてその全てを繋ぐ、梨子のピアノ。
九人の想いが、本当にひとつになっていた。
サビへ入る。
ペンライトが大きく揺れる。
歓声が増していく。
梨子は演奏しながら、一瞬だけ視線を横へ向けた。
ステージ袖。
そこには、真剣な表情で自分たちを見守る雄飛の姿があった。
――“お前のピアノには、人の心を動かす力がある”
数日前、雄飛に言われた言葉が頭をよぎる。
あの時は、半信半疑だった。
また失敗するかもしれない。
また弾けなくなるかもしれない。
そんな不安の方が大きかった。
でも今は違う。
怖いのに、不思議と指は止まらない。
逃げたいはずなのに、もっと音を届けたいと思っている。
梨子(……ゆうくんのおかげだよ)
もし、Aqoursに入っていなかったら。
もし、彼が背中を押してくれなかったら。
きっと私は、“またピアノを好きになる”ことすらできなかった。
梨子(だから――)
鍵盤へ想いを込める。
この音で。
このライブで。
今の自分を、全部届けたい。
梨子(……届け!)
最後の音が、会場へまっすぐ響き渡った。
そして。
一瞬の静寂のあと――
会場を揺らすほどの拍手が響いた。
――数日後・ピアノ演奏会当日――
小さなホール。
客席は決して多くない。
けれど、静かな緊張感が漂っていた。
舞台袖で、梨子は小さく深呼吸する。
手が少し震えていた。
そんな彼女の前に、雄飛が立つ。
雄飛「緊張してるか?」
梨子「……うん、ちょっと」
雄飛「そりゃそうだ」
梨子「ふふっ」
雄飛「でもさ」
梨子「?」
雄飛「俺、知ってるぞ」
梨子「え?」
雄飛「梨子、本番になると一番すごい顔する」
梨子「なにそれ……」
雄飛「努力してきたやつしかできない顔」
梨子「……っ」
その言葉に、梨子は少しだけ目を潤ませた。
でも次の瞬間には、ちゃんと前を向いていた。
ステージへ向かう直前。
曜「梨子ちゃん!」
千歌「がんばれー!!」
ルビィ「ふんばルビィです!」
花丸「応援してるずらー!」
善子「堕天使ヨハネの加護を授けてあげるわ!」
ダイヤ「落ち着いていけば大丈夫ですわ」
果南「楽しんできな」
鞠莉「リラックスよ、リコ♪」
仲間たちの声が背中を押す。
梨子は静かに頷いた。
梨子「……いってきます!」
舞台へ出る。
照明が彼女を照らした。
ピアノの前へ座る。
静寂。
そして――
最初の一音が響いた。
その音は、どこまでも澄んでいた。
――ピアノ演奏会終了後・ホール裏口――
演奏会が終わり、外へ出ると、夕暮れの空が静かに街を染めていた。
緊張から解放されたせいか、梨子は小さく息を吐く。
梨子「……終わったぁ」
曜「お疲れ様!すっごくよかったよ!」
千歌「ちか、鳥肌立っちゃった!」
ルビィ「ルビィ、感動して泣きそうでした……!」
花丸「ほんとに綺麗な音だったずら……」
善子「フッ……さすがヨハネの契約者ね」
花丸「違うずら」
ダイヤ「とても堂々としていましたわ」
果南「途中から完全に自分の世界に入ってたね」
鞠莉「最高だったわよ、リコ♪」
みんなに囲まれながら、梨子は少し照れくさそうに笑った。
梨子「えへへ……ありがとう♪」
でも。
その視線は、自然とある人物を探していた。
少し離れた場所。
自販機の横で、缶コーヒーを片手にこちらを見ている雄飛。
いつも通りの、どこか気の抜けた立ち方。
だけど――
誰よりも真剣に、自分を見ていてくれた人。
梨子「……ゆうくん」
雄飛「ん?お疲れ」
梨子「それだけ?」
雄飛「え?」
梨子は少し頬を膨らませる。
梨子「もっとこう……あるでしょ?」
雄飛「いや、だってめちゃくちゃ良かったし」
梨子「!」
雄飛「正直、途中から鳥肌止まんなかった」
梨子「……っ///」
雄飛「やっぱり梨子のピアノすごいな」
その言葉は、まっすぐだった。
変に飾らない。
だからこそ、胸に刺さる。
梨子「……ゆうくんってさ」
雄飛「?」
梨子「ほんと、人の心に入ってくるの上手いよね」
雄飛「なんだそれ」
梨子「ふふっ♪」
梨子は少しだけ前へ歩く。
そして、雄飛のすぐ隣へ並んだ。
夕暮れの風が、静かに二人の間を通り抜ける。
梨子「ねえ」
雄飛「ん?」
梨子「私ね、前までピアノのこと考えるの怖かったの」
雄飛「……」
梨子「また失敗するんじゃないかとか、また逃げたくなるんじゃないかって」
雄飛は黙って聞いていた。
梨子「でも、Aqoursに入って……ゆうくんに出会って……」
「また好きになれた」
雄飛「……そっか」
梨子「うん」
その声は、とても優しかった。
梨子はふと、自分の胸に手を当てる。
最近、自分でも分かる。
雄飛が笑うと嬉しい。
褒められるとドキドキする。
近くにいると安心する。
そして――
他の誰かと仲良くしていると、ちょっとだけモヤモヤする。
梨子(……もう、完全に好きなんだ)
曜への気持ちを知っているからこそ、簡単に言えない。
でも。
想いは、どんどん大きくなっていく。
梨子は少しだけ寂しそうに笑い、それを隠すように前を向いた。
梨子「……ねえ、ゆうくん」
雄飛「なんだ?」
梨子「これからも、ちゃんと隣で見ててね?」
雄飛「当たり前だろ」
即答だった。
その返事が嬉しくて、苦しくて。
梨子は小さく笑った。
梨子「……そっか♪」
その横顔を見ながら。
雄飛はまだ気づいていなかった。
梨子の想いが、もう“憧れ”では済まなくなっていることに。
堕天使のほうもがんばります!