僕の彼女は曜ちゃんです⚠再編集中 詳しくはあらすじへ   作:ゆうきoog3

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がんばるルビィ!!

        




25話

 

ブーン……

 

ポーン♪

「次の信号を左折してください」

 

雄飛「あ、このナビの道は無視していいよ。こっち行った方が近いから。」

 

志満「こっちね、わかったわ。それにしても雄飛、詳しいのねぇ。」

 

雄飛「まあ、昔この辺に住んでたからさ。親父とよくドライブしてたんだ。」

 

助手席の窓から見える景色は、どこか懐かしかった。

 

神戸の街並み。

坂道。

海の匂い。

 

何もかもが、昔の記憶を少しずつ引っ張り出してくる。

 

志満「そうなのね。親父さん、優しそうな人だったのね。」

 

雄飛「うん。無口だったけどな。でも車の話になると止まんなかった。」

 

志満「ふふっ、雄飛に似てるじゃない。」

 

雄飛「え、俺そんなに喋る?」

 

志満「Aqoursのことになるとすごいわよ?」

 

雄飛「……否定できない。」

 

二人は顔を見合わせ、小さく笑った。

 

そして少しして。

 

雄飛「そういえば、志満姉のお父さんってどんな人なの?」

 

志満「え? 私たちのお父さんは十千万の料理人よ?」

 

雄飛「えっ!? あの全然しゃべらない人が!?」

 

志満「そうそう。」

 

雄飛「マジか……。」

 

志満「昔はもっと喋ってたんだけどね。事故に遭ってから、声が出にくくなっちゃったの。」

 

雄飛「……そうだったんだ。」

 

志満「だから今は、料理で気持ちを伝えてる感じかしら。」

 

雄飛「……そっか。」

 

少しだけ車内が静かになる。

 

その空気を変えるように、志満が前を見ながら聞いた。

 

志満「で? 次はどっち?」

 

雄飛「あー、この先から六甲山の方入って。」

 

志満「山道?」

 

雄飛「ちょっとだけ! だめ?」

 

志満「うふふ♪ かわいい弟のお願いだもの。もちろんOKよ♪」

 

雄飛「やった!」

 

積載車はそのまま山道へ入っていく。

 

今回借りたのは、車を積める大型の積載車だった。

 

最初に見た時、志満はかなり驚いていた。

 

『なんでこんな大きいの借りたの!?』

 

そう聞かれても、雄飛は「秘密」としか答えなかった。

 

――六甲山・展望デッキ。

 

志満「わぁ……!」

 

展望台へ降りた瞬間、志満が目を輝かせた。

 

神戸の街並みが、一望できる。

 

海。

ビル群。

遠くの橋。

夕日に照らされた景色が、まるで宝石みたいだった。

 

志満「綺麗ねぇ……!」

 

パシャッ

パシャッ

 

スマホで写真を撮りながらはしゃぐ志満を見て、雄飛は小さく笑う。

 

雄飛「ここも、親父とよく来てた場所なんだ。」

 

志満「思い出の場所なのね。」

 

雄飛「うん。」

 

風が吹く。

 

潮の匂いと、少し冷たい夜風。

 

その景色を見ながら、雄飛は静かに目を細めた。

 

――親父。

 

今、何してんだろうな。

 

俺さ、新しい家族できたよ。

 

結婚したわけじゃないけど、

“家族だ”って言ってくれる人たちがいるんだ。

 

最初は正直、不安だった。

 

親父たちが死んで。

全部どうでもよくなって。

自殺しようとして。

 

それを警察に止められて。

 

「静岡に行ってみないか」って言われて。

 

半信半疑だった。

 

でも今なら言える。

 

沼津って、本当にいい場所だ。

 

千歌たちがいて。

Aqoursがいて。

十千万のみんながいて。

 

俺は――幸せだ。

 

気づけば、頬を温かいものが流れていた。

 

志満「……雄飛?」

 

慌てて袖で涙を拭く。

 

雄飛「お、俺は大丈夫! ほら、そろそろ行かないと――」

 

その瞬間。

 

ふわっ、と温かい感触に包まれた。

 

雄飛「……っ。」

 

志満が、優しく抱きしめていた。

 

昔。

泣いた時に母親がしてくれたのと、同じ感覚。

 

志満「我慢しなくていいのよ?」

 

雄飛「……。」

 

志満「懐かしくなっちゃったんでしょう?」

 

雄飛「……なんでわかるんだよ。」

 

志満「私もあるもの。」

 

志満は、優しく背中を撫でながら笑った。

 

志満「昔のアルバムとか見るとね。急に寂しくなる時。」

 

雄飛「志満姉でも泣くんだ。」

 

志満「当たり前でしょ? 人間だもの。」

 

そして少しだけ、優しい声になる。

 

志満「何回も泣いて、少しずつ強くなっていくのよ。」

 

雄飛「……じゃあさ。」

 

志満「うん?」

 

雄飛「少しだけ、甘えてもいい?」

 

志満「もちろん。」

 

その言葉に、雄飛は力が抜けたように志満へ寄りかかる。

 

静かな展望台。

夕焼け。

風の音。

 

雄飛は志満に頭を撫でられながら、静かに涙を流した。

 

――しばらくして。

 

志満「落ち着いた?」

 

雄飛「……うん。」

 

少し赤くなった目を隠すように笑う。

 

雄飛「ありがと、志満姉。なんか……前よりちょっと強くなれた気がする。」

 

志満「ふふ♪ それはよかったわ♪」

 

そして悪戯っぽく笑う。

 

志満「かわいい弟の泣き顔も堪能できたし、Win-Winね♪」

 

雄飛「はぁ!? それ本音?!」

 

志満「うふふ♪ どうかしら?」

 

雄飛「絶対本音だろ……。」

 

二人は笑いながら積載車へ戻った。

 

――そして。

 

住宅街の一角。

 

積載車が静かに止まる。

 

志満「ここ?」

 

雄飛「うん。こっち。」

 

古びた門。

錆びた鍵。

雑草の伸びた庭。

 

雄飛は懐かしそうにその家を見上げた。

 

そして奥にある大きなガレージの前へ立つ。

 

雄飛「……久しぶりだな。」

 

グググ……

 

木製の扉を力いっぱい引く。

 

ギィィィィィ……

 

重たい音と共に、シャッターが開いた。

 

その瞬間。

 

志満「……えっ。」

 

ガレージの中には――

 

青いスポーツカーが眠っていた。

 

低い車高。

流れるようなボディライン。

埃を被っていても、特別な車だとわかる存在感。

 

志満「すご……。」

 

雄飛「親父の車。」

 

雄飛はゆっくり近づき、ボディを撫でる。

 

雄飛「MAZDA RX-7。」

 

志満「これが……。」

 

雄飛「親父が一番大事にしてた車なんだ。」

 

RX-7。

 

親父と何度もドライブした。

助手席で景色を見た。

車の音を聞いた。

 

その思い出が全部、この車に詰まっていた。

 

志満「……これを積むために、積載車を?」

 

雄飛「うん。」

 

志満「でも、前に“捨てる”って言ってなかった?」

 

雄飛「……そのつもりだった。」

 

雄飛は少し困ったように笑う。

 

雄飛「でもさ。」

 

静かに車を見る。

 

雄飛「やっぱ無理だった。」

 

志満「……。」

 

雄飛「これ、親父との思い出だから。」

 

しばらく黙って聞いていた志満が、ふっと微笑んだ。

 

志満「じゃあ、沼津に連れて帰りましょ。」

 

雄飛「……いいの?」

 

志満「当たり前でしょ?」

 

志満は胸を張って言う。

 

志満「弟の大事な思い出なんだから。」

 

雄飛「……っ。」

 

志満「それに。」

 

ニコッと笑う。

 

志満「雄飛、絶対この車見てる時、幸せそうな顔するもの。」

 

雄飛「……。」

 

志満「だったら置いとく価値、十分あるわ♪」

 

雄飛「……ほんと、敵わねぇなぁ。」

 

志満「さぁ! 早く積みましょ!」

 

雄飛「テンション高っ?!」

 

その後。

 

二人で協力しながらRX-7を積載車へ載せ、沼津へ持ち帰った。

 

ちなみに。

 

十千万の駐車場にRX-7が現れた瞬間。

 

千歌「えぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」

 

と、旅館中に響くレベルの悲鳴が上がったのは、また別の話である。

 




志満姉回おしまいです!

https://www2.mazda.com/ja/stories/history/rx-7/

↑雄飛の車
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