僕の彼女は曜ちゃんです⚠再編集中 詳しくはあらすじへ 作:ゆうきoog3
↑最近のmyフェイバレット
――Aqours部室――
昼の光が差し込む部室は、どこか緩んだ空気に包まれていた。
地区予選突破の高揚感はまだ残っている。だが、その一方で“次”への実感がどこか薄い。
机の上には楽譜、みかん、読みかけのノート。
誰かが動かなければ、この空気はしばらく続いてしまう――そんな雰囲気だった。
そのときだった。
雄飛「さて、そろそろ決めるぞ!!」
空気を切り裂くような声だった。
千歌「なにを?」
呑気に返す千歌に、雄飛は即答する。
雄飛「曲だよ!曲!次の地区本選用の!」
千歌「あー……」
雄飛「“あー”じゃねぇよ!!」
少し強めの言葉に、部室の空気が一気に引き締まる。
雄飛「先週は休みにしたけどさ、気が抜けすぎだろ。勝ったまま終わる気か?」
ダイヤ「雄飛さんの言う通りですわ!皆さん、弛んでいますわ!」
果南「まあまあ、でも確かに休み明けだしね」
部室は一瞬で“日常”から“戦闘準備”へと切り替わっていく。
だがその中で、曜だけは少し違っていた。
曜は机に手をつきながら、ぼんやりと雄飛を見ていた。
いや、“見ている”というより――追っている。
その視線には、以前よりもはっきりした熱が混じっている。
梨子は楽譜をめくるふりをしながら、その視線に気づく。
梨子(……曜ちゃん、やっぱり)
言葉にはしない。
けれど、胸の奥で何かが静かに繋がっていくのを感じていた。
千歌「あ、そういえばさ」
雄飛「ん?」
千歌「今回の曲ってどうするの?」
雄飛「そこだよ問題は。だから今決める」
そのときだった。
曜「……ねえ、みんな」
いつもより少しだけ静かな声。
曜「今回の曲さ、私に作詞やらせてほしい」
全員「えっ」
空気が止まる。
雄飛「曜?衣装もやってるだろ」
曜「うん。でも、やりたいの」
はっきりしていた。
いつもの曜の“勢い”とは違う。
何かを決めた人間の声だった。
梨子はその横顔を見て、理解してしまう。
梨子(ああ……曜ちゃん、ほんとはずっと)
雄飛の隣で、何かを伝えたくて仕方なかったのだと。
果南は腕を組みながら、軽く目を細める。
果南(なるほどね……)
鞠莉はニヤッと笑う。
鞠莉「Oh……これは面白くなってきたじゃない?」
雄飛はまだ気づかない。
ただ“仕事の提案”として受け取っている。
雄飛「……理由は?」
曜は一瞬だけ言葉を詰まらせる。
曜「えっと……私、自分の気持ちをちゃんと曲にしたくて」
その言葉に、梨子の胸が少しだけ締まる。
梨子(……やっぱり)
千歌「いいじゃん!曜ちゃんすごい!」
ルビィ「曜さん、頑張ってください!」
ダイヤ「やる気は買いますわ」
雄飛「……わかった。任せる」
雄飛は短く頷く。
その瞬間、曜の胸の奥で何かが跳ねる。
(ちゃんと見てくれてる)
それだけで十分だった。
雄飛「じゃあ曲の方向性だが――」
ダイヤが立ち上がる。
ダイヤ「練習メニューも含めて再構築しますわ!」
果南「体力面は前より上げた方がいいね」
鞠莉「じゃあスパルタね♪」
千歌「また地獄トレーニング!?!」
こうして部室は一気に“戦闘モード”へ戻っていく。
だがその中で、曜だけは少し違う場所にいた。
雄飛の背中を見ながら、心の中で静かに思う。
曜(ちゃんと、伝えなきゃ)
そしてその横顔を見た梨子は、小さく息を吐く。
梨子(曜ちゃんは、もう“ただの曜ちゃん”じゃないね)
果南は窓の外を見ながら呟く。
果南「青春ってやつだねぇ」
鞠莉「Yes……かなりエキサイティングね」
その日の議論の末、次の地区本選の曲は決まる。
「恋になりたいAqours aquarium」
雄飛はそのタイトルを見て、少しだけ眉を上げた。
雄飛「……いいな、この曲」
曜は何も言わない。
ただ、少しだけ指を握りしめていた。
その視線の先にいるのは――いつも通り、雄飛だった。
――深夜・渡辺家――
カチ、カチ――。
部屋に響くのは時計の針の音だけ。
曜の机の上には、書きかけのノートと、何枚も丸められた紙が散らばっていた。
窓を少しだけ開けているせいで、夜風がカーテンをふわりと揺らす。
その風は、どこか海の匂いがした。
曜「……うぅ~……」
ペンを口元に当てながら、曜は椅子にもたれかかる。
曜「作詞ってこんな難しいんだ……」
普段は思ったことをそのまま口にできる。
けれど、“好き”だけは違った。
言葉にしようとすると、急に怖くなる。
曜「……」
ふと、今日の練習中の雄飛の姿を思い出す。
みんなの前に立って、必死にメニューを考えて。
誰より先に走って。
誰よりみんなを見ていた。
曜「……かっこよかったな」
思わず口から漏れて、曜は慌てて顔を伏せる。
曜「って、なに言ってるの私ぃぃ……!!」
ベッドに顔を埋めて足をばたつかせる。
でも、熱くなった頬はなかなか冷めない。
少しして。
曜はもう一度机に向かった。
ノートの上には、大きく書かれたタイトル。
『恋になりたいAQUARIUM』
曜「……恋、かぁ」
指先で文字をなぞる。
その瞬間、自然とある言葉が浮かんだ。
曜「“空色カーテンOpen! 海色ゲートWelcome!”……」
小さく口ずさむ。
すると、不思議と情景が浮かんだ。
海。
光。
きらきらした世界。
そしてその中に――
雄飛がいる。
曜「……っ」
胸が跳ねる。
曜「や、やばい……これ完全にゆうくんじゃん……」
でも、止まらない。
曜はペンを握り直した。
曜「“あ・そ・び・ま・しょ♪”……」
曜「……うん、これはみんなで楽しむ感じ」
さらさらと書き込む。
だけど次の瞬間、手が止まる。
曜「“ゆらゆら揺れながら真珠の時計”……」
曜「……これ、恋してる時みたいだなぁ」
頭の中に浮かぶのは、やっぱり雄飛だった。
ハグされた時の温もり。
頭を撫でられた時の感覚。
自分を見る時の優しい目。
曜「……だめだ、全部ゆうくんになる……」
机に突っ伏す。
けれど、その声はどこか嬉しそうだった。
曜「“だって水の中だし?”……」
ふと、小さく笑う。
曜「これ、今の私みたい」
好きって気持ちがふわふわして。
苦しいのに楽しくて。
息ができないくらいドキドキするのに、離れたくない。
まるで海の中。
曜「……AQUARIUMって、恋のことなんだ」
そう呟いた瞬間。
胸の奥が、すとんと落ち着いた。
曜「そっか……」
曜「私、“恋になりたい”んだ」
“恋をしたい”じゃない。
“恋そのものになりたい”。
雄飛の心の中に、自然に溶け込めるくらい。
近くにいたい。
そう思っている自分に、曜はようやく気づいた。
曜「……ゆうくん」
ぽつりと名前を呼ぶ。
もちろん返事なんてない。
それでも曜は、小さく笑った。
曜「この曲……絶対届けるから」
そして再びペンを走らせる。
今度は、迷いなく。
その横顔は、地区本選へ向かうAqoursのメンバーとしてではなく――
ひとりの女の子として、“好き”に向き合っていた。
…
――浦の星女学院・音楽室――
夕方の音楽室。
窓から差し込む夕日が、机の上の紙を橙色に染めていた。
静かな部屋の中で、曜はようやく書き終えた歌詞を見つめながら、大きく息を吐く。
曜「……できたぁ」
机には何枚も書き損じた紙。
徹夜した跡が、そのまま散らばっていた。
曜「うぅ……恥ずかしい……」
思い返すだけで顔が熱くなる。
書こうとすると、どうしても雄飛の顔が浮かんできた。
みんなで笑っている時の顔。
真剣に指示を出している時の顔。
自分を見て笑ってくれた時の顔。
気づけば全部、歌詞になっていた。
曜「……これ、もう告白じゃん」
そう呟いて、机に突っ伏した瞬間だった。
ガラッ。
梨子「あ、曜ちゃん」
曜「り、梨子ちゃん?!」
曜は反射的に歌詞を隠そうとする。
だが、梨子はもう見つけていた。
梨子「完成したの?」
曜「えっと……まあ……」
梨子は曜の向かいに座る。
その表情はいつも通り柔らかい。
でも曜は、なぜか少しだけ落ち着かなかった。
曜「……見る?」
梨子「うん♪」
曜はおそるおそる歌詞を差し出した。
梨子は静かに読み始める。
---
“空色カーテン Open! 海色ゲート Welcome!”
“あ・そ・び・ま・しょ?”
“もっと知りたいの 君のこと”
“ゆらゆら揺れながら 真珠の時計”
“君と私で泳いでいきたいな”
---
梨子「……」
曜「ど、どうかな?」
返事がない。
梨子は真剣な表情で歌詞を見つめていた。
その視線が、一つのフレーズで止まる。
---
“近づきたいな I miss you!”
---
梨子の胸が、少しだけ締め付けられる。
梨子(……ああ)
分かってしまった。
これは曜の“恋”だ。
ただのアイドルソングじゃない。
誰か一人に向けた、本物の気持ち。
曜が最近ずっと頑張っていた理由。
練習中、無意識に雄飛を目で追っていた理由。
全部、この歌詞に繋がっていた。
曜「り、梨子ちゃん?」
梨子「あっ、ごめん」
曜「へ、変だった?」
不安そうに揺れる曜の瞳。
梨子は優しく笑った。
梨子「ううん。すごく素敵」
曜「ほんと?」
梨子「うん。曜ちゃんらしくて……真っ直ぐで」
少しだけ間を置く。
そして、小さく続けた。
梨子「……すごく、“好き”が伝わってくる」
曜「っ?!///」
曜の顔が一気に赤くなる。
曜「そ、そういう意味じゃなくて!!」
梨子「ふふっ♪」
曜「梨子ちゃん絶対わかってるでしょぉ……///」
梨子は笑う。
でも、その笑顔の奥で。
胸の中に、小さな波が広がっていた。
梨子(曜ちゃん、すごいな)
自分の気持ちを、こんなに真っ直ぐ言葉にできる。
怖いはずなのに。
恥ずかしいはずなのに。
それでも前に進もうとしている。
梨子は歌詞を見つめながら、静かに思う。
梨子(……羨ましい)
その瞬間、自分でも驚いた。
羨ましい?
曜ちゃんのことを?
梨子(私、なんで……)
答えはすぐ近くまで来ていた。
けれど、まだ認めるのが怖い。
雄飛の顔が浮かぶ。
海辺で話を聞いてくれた夜。
「逃げてもいい。でも、夢は捨てるな」って言ってくれた声。
自分の背中を押してくれた手。
梨子(……ゆうくん)
胸が少し苦しくなる。
曜ちゃんみたいに真っ直ぐにはなれない。
でも。
もし自分も――
“誰かにこんな風に想われたい”
じゃなくて。
“自分も想いを届けたい”
そう思ってしまったら?
梨子「……っ」
自分の胸を軽く押さえる。
鼓動が少し早い。
曜「梨子ちゃん?」
梨子「あ、ううん!なんでもない!」
慌てて笑う。
でも、心は誤魔化せなかった。
そのとき。
ガラッ!
鞠莉「Hey!恋する作詞家さん達~♪」
曜「げぇっ?!」
果南「お、やっぱここにいた」
鞠莉は歌詞を見るなり、にやっと笑った。
鞠莉「ふふ~ん♪これは完全に“恋する乙女ソング”ねぇ?」
曜「ち、違うもん!!///」
果南「いや、かなり分かりやすいよ?」
曜「うぅぅ~~~!!///」
顔を真っ赤にして机に突っ伏す曜。
その様子を見ながら、果南はふと梨子を見る。
梨子は笑っていた。
でも――どこか少しだけ寂しそうだった。
果南(……なるほどね)
鞠莉も同じことに気づいたらしい。
ほんの少しだけ目を細める。
鞠莉(青春って、複雑ね)
曜「……ちゃんと届くかな」
小さく呟く曜。
その言葉に、梨子は静かに歌詞を見つめた。
梨子(曜ちゃんは、ちゃんと届けようとしてる)
だったら自分は?
自分はどうしたい?
その答えはまだ出ない。
でも。
胸の奥で、小さな気持ちが確かに生まれていた。
それはきっと――
曜と同じ、“恋”だった。
頑張った自分をほめます(笑)
肩がとんでもなく痛い…。