僕の彼女は曜ちゃんです⚠再編集中 詳しくはあらすじへ   作:ゆうきoog3

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34話

翌朝――。

 

雄飛はホテルのベッドの上でゆっくり目を開けた。

 

カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しい。

 

昨日は結局、先生にこっぴどく怒られたあと、曜たちにも説教され、そのまま疲れ切って眠ってしまった。

 

慣れないベッドから身を起こし、窓の外を見る。

 

函館の朝は静かだった。 昨日まで見ていた夜景とは違い、朝日に照らされた街並みが穏やかな表情を見せている。

雄飛「よし、行くか。」

 

時計を見ると朝食の時間だった。 荷物をまとめ、食堂へ向かう。

 

食堂へ入ると、すでに千歌たち三人は席についていた。

 

千歌「あ、ゆうくん!遅ーい!」

 

雄飛「普通だろ。」

 

梨子「私たちが早かったのよ。」

 

曜「おはよーそろ♪」

 

曜が手を振る。

 

昨夜までの不機嫌そうな様子は少し落ち着いているようだった。

 

雄飛「おはよう。」

 

席に腰を下ろす。

 

テーブルの上には焼き魚や卵焼き、小鉢が並び、北海道らしい海産物も添えられていた。

 

千歌「見て見て!いくら!」

 

曜「朝から豪華だね~。」

 

千歌は早速ご飯の上にいくらを乗せ始める。

 

梨子「ちょっと千歌ちゃん、まだ取ってない人もいるから。」

 

千歌「あっ。」

 

慌てて手を止める。

 

雄飛「相変わらずだな。」

 

思わず苦笑した。

 

こういう光景を見ると、北海道で色々あったことが嘘みたいに思える。

 

曜「いただきまーす!」

 

四人で手を合わせる。

 

修学旅行最後の朝食。

 

楽しい時間は本当にあっという間だった。

 

食事中も話題は尽きない。

 

函館の夜景の話。

 

昨日の観光の話。

 

帰ったら始まるラブライブ本選の話。

 

気付けば朝食の時間はあっという間に過ぎていた。

 

そして――

 

修学旅行最後の移動が始まる。

 

ホテルを出た俺たちは、空港行きのバスへ乗り込んだ。

 

雄飛「……」

 

曜「……」

 

雄飛「曜?」

 

曜「……」

 

隣を見る。

 

曜は無言のまま俺の肩に頭を預けていた。

 

雄飛「やっぱり昨日のこと怒ってるのか?」

 

曜「怒ってない。」

 

即答だった。

 

雄飛「いや、その言い方は怒ってるやつだろ。」

 

曜「怒ってないもん。」

 

ぷくっと頬を膨らませる。

 

だが次の瞬間。

 

曜は俺の制服の袖をぎゅっと掴んだ。

 

曜「……でも。」

 

小さな声。

 

曜「心配した。」

 

雄飛「……。」

 

曜「約束したでしょ。」

 

雄飛「うん。」

 

曜「絶対帰ってくるって。」

 

雄飛「帰ってきただろ?」

 

曜「そうだけど……そういう問題じゃないの。」

 

少し震えた声だった。

 

昨夜は暗くてよく見えなかった。

 

だけど今なら分かる。

 

この子、本当に心配していたんだ。

 

雄飛「ごめん。」

 

曜「……。」

 

雄飛「次からはちゃんと連絡する。」

 

曜「うん。」

 

雄飛はそっと曜の頭を撫でた。

 

曜「えへへ……。」

 

途端に機嫌が直る。

 

本当に単純だ。

 

いや、単純なんじゃない。

 

それだけ俺を信じてくれているんだろう。

 

曜「でもね。」

 

雄飛「ん?」

 

曜「帰ってきてくれてよかった。」

 

そう言って曜は俺の肩に体重を預けた。

 

窓の外では函館の街並みが少しずつ遠ざかっていく。

 

昨日見た夜景。

 

Saint Snow。

 

鹿角聖良。

 

そして親父と見ていた世界。

 

色んなことがあった北海道だった。

 

でも――

 

今、俺の隣にいる曜の温もりが。

 

一番現実なんだと思った。

 

曜「ねぇ、ゆうくん。」

 

雄飛「ん?」

 

曜「沼津帰ったらさ。」

 

雄飛「おう。」

 

曜「またデートしようね。」

 

雄飛「それ修学旅行行く前にも行っただろ。」

 

曜「それとこれとは別ですー。」

 

曜は楽しそうに笑った。

 

雄飛「はいはい。」

 

曜「約束だからね?」

 

雄飛「ああ、約束だ。」

 

そう答えると、曜は満足そうに頷き、再び肩にもたれかかってきた。

 

その様子を後ろの席から見ていた千歌が、

 

千歌「朝から甘いなぁ~。」

 

梨子「本当ね。」

 

と呆れたように笑う。

 

曜「えへへ♪」

 

今回は否定しない。

 

むしろ少し誇らしそうだった。

 

北海道の旅は終わる。

 

函館空港に到着すると、出発まで少し時間があった。

 

千歌「お土産見たい!」

 

先生からも自由行動の許可が出ている。

 

俺たちは空港内の売店街へ向かった。

 

ところが――。

 

千歌「あれ?こっちだっけ?」

 

梨子「千歌ちゃん、それさっき通ったところよ。」

 

千歌「え?」

 

雄飛「もう三回目だぞ。」

 

曜「ふふっ。」

 

千歌は売店を見つけるたびに吸い寄せられるように歩いていく。

 

そして気付けば迷う。

 

いつものことだった。

 

梨子「ほら、搭乗口は反対方向。」

 

千歌「ごめーん!」

 

梨子が額に手を当てる。

 

完全に保護者だった。

 

雄飛「じゃあ俺、向こうの店見てくる。」

 

曜「私も行く!」

 

四人で売店を回り始める。

 

Aqoursのみんなへのお土産探しだ。

 

千歌「善子ちゃんにはこれかな!」

 

曜「絶対喜びそう!」

 

梨子「ルビィちゃんには可愛いお菓子がいいかも。」

 

雄飛「花丸には食べ物だろ。」

 

千歌「あー、それだ!」

 

全員が納得する。

 

ダイヤさんには上品なお菓子。

 

果南さんには海産物系。

 

鞠莉さんには少し変わった限定商品。

 

そんな話をしながら店内を回っていく。

 

修学旅行は終わりに近付いている。

 

だけど最後まで、こうしてみんなで笑い合える時間が嬉しかった。

 

曜「ねぇ、ゆうくん。」

 

雄飛「ん?」

 

曜「これ、お揃いで買わない?」

 

曜が手に取ったのは小さなキーホルダーだった。

 

雄飛「また増えるぞ。」

 

曜「いいの!」

 

曜は満面の笑みを浮かべる。

 

その笑顔を見ていると断る気も失せる。

 

雄飛「分かったよ。」

 

曜「やった♪」

 

そんなやり取りをしながら、俺たちは修学旅行最後の時間を楽しんだ。

 

搭乗案内が流れる少し前。

 

空港のロビーで休憩していると、ふと昨日のことを思い出した。

 

函館山。

 

聖良のGT-R。

 

そして、あの連中。

 

雄飛「そういえばさ。」

 

千歌「ん?」

 

雄飛「昨日の走り屋たち、その後どうなったんだろうな。」

 

すると梨子が思い出したように口を開く。

 

梨子「朝、先生たちが話してるの聞いたんだけど。」

 

雄飛「え?」

 

梨子「警察に捕まったみたいよ。」

 

曜「そうなの?」

 

梨子は頷いた。

 

梨子「函館山の道路を封鎖したり、違法改造車の件もあったみたい。」

 

千歌「うわぁ……。」

 

雄飛「そっか。」

 

正直、少しだけ気になっていた。

 

あの男たちは本気だった。

 

危険だった。

 

でも――。

 

聖良が守ろうとしていた場所を汚していたのも事実だ。

 

しばらく沈黙が流れる。

 

すると曜が小さく息を吐いた。

 

曜「でも……本当に良かった。」

 

雄飛「何が?」

 

曜「何がって……。」

 

曜は呆れたような顔をした。

 

曜「ゆうくんと聖良さんのことだよ。」

 

雄飛「あー……。」

 

その瞬間、梨子も深く頷いた。

 

梨子「本当にそう。」

 

千歌だけが首を傾げる。

 

千歌「?」

 

昨日の夜。

 

先生に怒られたあと、俺は千歌たち三人だけに函館山であったことを話した。

 

聖良が足を怪我していたこと。

 

走り屋たちに勝負を挑まれていたこと。

 

そして――聖良自身も走り屋であること。

 

最初は三人とも信じられないという顔をしていた。

 

Saint Snowのリーダーで、あんなに真面目そうな聖良が走り屋だなんて無理もない。

 

だが、父さんの走りに憧れてGT-Rを作ったことや、昨日の出来事を説明すると、ようやく納得してくれたのだった。

 

曜「もし警察の人が来てたらどうなってたと思うの?」

 

千歌「え?」

千歌はわかってなさそうに首を傾げた。

 

梨子「聖良さんもゆうくんも免許持ってないのよ?」

 

千歌「あ。」

 

ようやく理解したらしい。

 

だが次の瞬間。

 

千歌「でも勝ったんだから結果オーライじゃ――」

 

梨子「よくないわ。」

 

曜「全然よくない。」

 

二人同時だった。

 

千歌がびくっと肩を震わせる。

 

曜「事故とかしてたらどうするの?」

 

梨子「それにほんとに警察に見つかってたら大問題だったのよ?」

 

千歌「そ、そうなの?」

 

雄飛「そうなんだよ。」

 

俺も苦笑するしかない。

 

昨日はそんなことを考える余裕もなかった。

 

聖良の想い。

 

GT-R。

 

そして父さんの背中。

 

目の前の勝負に集中していた。

 

だけど冷静に考えれば危ない橋を渡ったのは間違いない。

 

曜「もう二度とあんなことしないでね。」

 

曜はそう言いながら俺の袖をぎゅっと掴んだ。

 

その表情は怒っているというより、本気で心配している顔だった。

 

雄飛「善処します。」

 

曜「善処じゃなくて約束。」

 

雄飛「……約束。」

 

そう答えると、曜はようやく少しだけ安心したように笑った。

 

梨子もほっとしたように息を吐く。

 

梨子「聖良さんも無事だったし、本当にそれだけが救いね。」

 

雄飛「ああ。」

 

もし少しでも歯車が狂っていたら。

 

昨日の出来事はもっと大きな問題になっていたかもしれない。

 

だからこそ――。

 

函館山での出来事は、これで本当に終わりだ。

 

俺はそう自分に言い聞かせた。

 

そして俺たちは、それぞれの場所へ帰る。

 

 

搭乗案内のアナウンスが空港内に響いた。

 

 

だけど――

 

俺たちの日常は、まだまだこれからだ。

 

 

ガタン――

 

飛行機のタイヤが滑走路に接地する。

 

機体が大きく揺れ、機内に着陸を知らせるアナウンスが流れた。

 

飛行機を降り、空港のロビーを抜ける。

 

ガラス越しに見える空は、北海道よりも少しだけ暖かい色をしていた。

 

空港からバスへ乗り換え、東へ向かう。

 

車窓から流れる景色を眺めながら、俺はぼんやりと外を見ていた。

 

やがて見慣れた駿河湾が姿を現す。

 

青く穏やかな海。

 

その向こうにうっすらと見える伊豆半島。

 

北海道の雄大な景色とは違う。

 

だけど――。

 

どこか安心する景色だった。

 

千歌「あっ!」

 

突然、千歌が窓に張り付いた。

 

千歌「見て見て!」

 

曜「もう見えてきた?」

 

千歌が指差した先。

 

遠くに沼津の街並みが見えていた。

 

高くそびえるビル群。

 

そして海沿いに広がる港町。

 

何度も見てきた景色なのに、不思議と懐かしく感じる。

 

雄飛「帰ってきたな。」

 

ぽつりと呟く。

 

バスは市街地へ入っていく。

 

見慣れた道路。

 

見慣れた店。

 

駅前の風景。

 

そして――。

 

沼津駅南口。

 

曜の家がある方向だ。

 

曜「あー……帰ってきたぁ。」

 

曜が大きく伸びをする。

 

その表情はどこか安心しきっていた。

 

梨子も窓の外を見つめながら微笑む。

 

梨子「やっぱり落ち着くわね。」

 

千歌「ね!」

 

修学旅行は楽しかった。

 

函館の夜景も。

 

Saint Snowとの再会も。

 

聖良との出会いも。

 

全部忘れられない思い出だ。

 

だけど。

 

俺たちが帰ってくる場所はここだった。

 

やがてバスは海沿いの道へ入る。

 

穏やかな波。

 

防波堤。

 

そして内浦へ続く道。

 

見慣れた景色が次々と現れる。

 

十千万旅館。

 

曜の家。

 

学校。

 

Aqoursのみんなが待っている場所。

 

俺は窓の外を見ながら静かに息を吐いた。

 

北海道で見た父さんの世界。

 

それは確かに俺の中に残った。

 

だけど今は――。

 

ラブライブ本選が待っている。

 

俺たちの戦いは、まだ終わっていない。

 

むしろここからだ。

 

そう思うと自然と口元が緩んだ。

 

千歌「ゆうくん?」

 

雄飛「ん?」

 

千歌「ニヤニヤしてる。」

 

雄飛「してない。」

 

曜「してるよ?」

 

梨子「してるわね。」

 

三人同時だった。

 

雄飛「……。」

 

反論できなかった。

 

そんな俺たちを乗せたバスは、ゆっくりと内浦へ向かって走っていくのだった。

 

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