僕の彼女は曜ちゃんです⚠再編集中 詳しくはあらすじへ 作:ゆうきoog3
見てくださっていた方々もほぼストーリーを忘れてしまっていると思うので、ぜひ見返してご覧ください!(笑)
私も見返してから書きました(笑)
…その後の喫茶店(茶房 菊泉)…
雄飛「ここだな。」
目的の喫茶店についた。外観は木造でおそらく一階建。十千万旅館のような風情がある外観に、入り口には日本を象徴する松の木(多分)が植えられており、昔ながらの雰囲気を纏っている。
曜「梨子ちゃんの言う通り知る人ぞ知るって感じだね。」
千歌「でもでも!雰囲気良さそうだよ!安心するというか〜」
梨子「千歌ちゃんの家も木で出来ているからじゃないかな?」
千歌「あ!そっか!どうりで落ち着くわけなのだ。」
雄飛「とりあえず、入ろうか?」
曜「そうだね!」
???「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
曜「四人です!」
雄飛(ん??なんだろう。どこかで聞いたことあるような声だ。)
???「かしこまりました。それではこちらにどうぞ。」
声の主は案内してくれた店員さんである。
髪は紫色。そして、右に一つ括りしたきれいな人…。
雄飛「あっ!!!」
千歌「えっ?!ど、どうしたの?」
雄飛「あの、、あなたは…。」
聖良「ふふっ、覚えていてくれたんですね。雄飛さん。2ヶ月ぶりほどでしょうか?」
曜「えっ?ゆうくん知り合いなの?」
雄飛「知り合い…だな。地区本戦の会場で隣の席だったというか…。」
曜&千&梨「えー!!!!!!」
静かな店内に3人の驚愕の声が響き渡った。
聖良「み、みなさん。驚くのはわかりますが、もう少しお静かにお願いしてもいいですか?」
曜&千&梨「ご、ごめんなさい。」
雄飛「北海道の方だったんですね。」
聖良「はい、実はあのときみなさんのパフォーマンスがどんなものか見させていただきました。」
千歌「皆さんって、わたしたち?」
梨子「Aqoursのってこと?」
聖良「はい。MV(夜空、見させていただきました。あれは、沼津の方々が協力してくださったのですか?」
千歌「はい!そうなんです!私達のことを応援してくれたんです!」
聖良「なるほど。そういうことだったんですね。」
彼女は余裕そうな笑みを浮かべた。
雄飛「けど、聖良さん。あなたは私達のファンではない。そうでしょう?」
曜「え?わざわざ沼津まで見に来てくれたのに?」
梨子「どうしてそう思うの?」
雄飛「この人の目を見たらわかる。この人もきっとスクールアイドルで、俺たちの
ライバルだ。」
千歌「へ?」
聖良「はい。よくわかりましたね。私達もスクールアイドルです。」
彼女がそういった直後、喫茶店で流れているテレビでスクールアイドルのCMが始まった。
テレビ(今年もラブライブは盛り上がりそうですね!なぜなら北海道から期待の新星!今回で2回目のラブライブ本選出場者の鹿角聖良、理亜の姉妹チーム!Saint Snowがいるからです!最強の歌唱力、パフォーマンスを備えた彼女たちに立ち向かえるのはどのグループなのでしょうか!!ほかのg…)
それ以降の内容は聞くまでもなかった。
ラブライブ本選出場者。しかも、二回目…。
俺は、理解した。この人の余裕そうな笑みの意味を。
そして、強敵だということに…。
絶句する俺たちの静寂を切り裂いたのは千歌の一言だった。
千歌「楽しみましょう!!」
そう言い、千歌は自分の手を差し出した。
聖良「え?」
流石の聖良さんも千歌の突然の発言に困惑しているようだった。
聖良「ライバルとして牽制したつもりだったんですが…なるほど。」
千歌「けんせい?」
聖良「いえ、なんでもありません。いい勝負をしましょう。Aqoursの皆さん。」
千歌の差し出したその手を握りながらいった。
何となくメラメラした雰囲気になったその場の口直しも含め、白玉の入ったぜんざいを四つ注文した。
雄飛「う、うまい!」
聖良「口に合ったようでよかったです。」
腕に自信があるのだろう。聖良は余裕の笑みだ。さすがは老舗の娘である。
梨子「私、ぜんざいを作ったことがあるんですけど、こんなに口どけがよく、甘くなりませんでした。これってどういう風にやっているんですか?」
聖良「それは…、企業秘密といううことでお願いします。」
梨子「そ、そうですか…」
あからさまにがっかりする梨子。
そんなに知りたいものなのだろうか。
料理をあんまりしない雄飛にはよくわからない感覚であった。
その後も、ラブライブの本選出場者の先輩としてのアドバイスやどんな練習をしているのかお互い意見交換をした。
すると奥から「姉様」という声が聞こえた。
聖良「どうしたんですか?」
理亜「こっちの手の内をそんなにやすやすと教えていいの。」
カーテンの奥から出てきたツインテールの少女は抗議のの目を向けながらいった。
おそらくさっきの姉様という言葉からおそらく彼女が鹿角理亜である。つまりSaint Snowの鹿角聖良のパートナーである。
聖良「この方々は実力者です。理「だったら!」
聖良「理亜、最後まで聞きなさい。」
理亜「…。」
聖良「私は、本気でこの人たちと戦いたい。そう思ったんです。正々堂々と。」
理亜「でも、姉様は…。」
聖良「理亜、いいの。私はできる限りのことをやるだけ。」
理亜はなにかをいいだけだが、それは決して言葉にはしない。
きっと俺たちにも言えない事情があるのだろう。
千歌「あ、あn…【ピピピピピ!!!!】
千歌がなにかを話そうとした途端、集合時間を忘れて間に合わなかったなんてことがないように設定していたアラームがなった。
聖良「時間ですか?」
雄飛「そのようです。」
聖良「次は決勝で会いましょう。Aqoursの皆さん。」
俺たちはありがとうといい、店を出た。
ちなみに代金はタダでいいと言ってくれた。優しすぎる。
曜「聖良さんなにかあったのかな?理亜ちゃん、なにか言いたげだったけど。」
梨子「そうよね。私達に知られたらまずいことなのかな?」
雄飛「まあ、今はとりあえず集合場所にいこうか。」
…集合場所(函館山展望台)
曜「うわぁ!きれいだね!」
雄飛「これは、、すごいな。」
目の前にはいわゆる100万ドルの夜景が広がっていた。
曜「うんっ、こんなにきれいな夜景、初めて見たよ……!」
曜は目を輝かせながら、俺の隣にぴたりと寄り添った。
彼女の横顔を見ながら、俺も思わず微笑む。
雄飛「……函館、すげぇな。」
梨子「写真撮ろう、みんなで!」
千歌「うんうんっ!インスタ映え間違いなしだよぉ~!」
そんな中。
ふと、俺の視界に違和感が入り込んだ。
展望台の隅――
街灯の届かない暗がりに、何台もの車が並んでいる。
どれもエンジンを切らず、低く唸るような音を響かせている。
雄飛(あれは……)
一台一台、無骨にチューンされたマシンたち。
ただの観光客が集まる展望台とは明らかに異質な空気。
曜も気付いたのか、俺の袖を引っぱった。
曜「ねぇ、ゆうくん。あれって……レース?」
雄飛「かもしれないな。…あれ、たぶん地元の走り屋たちだ。」
俺は低くつぶやきながら、あの異様な集団から視線を外さなかった。
千歌と梨子も、その様子にただならぬ空気を感じ取っているようだった。
梨子「ゆうくん、なんか、怖い……」
千歌「う、うん。ちょっと、近づかない方がいいかも……」
雄飛はふっと笑った。
雄飛「だよな。俺たち、観光で来てるんだし。
ここで余計なトラブルに巻き込まれたら、先生たちに怒られる。」
俺は、あえて軽い調子でそう言った。
千歌と梨子を、できるだけ自然に、早くここから離したかった。
雄飛「もう夜遅いし、そろそろ旅館戻ろうぜ。展望台も、十分楽しんだし。」
千歌「……そ、そうだね!」
梨子「うん、うん! 帰ろう!」
二人は安心したようにうなずき、足早に展望台の出口に向かっていく。
だが、
曜だけは、俺の袖をぎゅっと掴んだまま、動こうとしなかった。
曜「……ゆうくん、ウソついてる。」
小さく、でも確かな声だった。
雄飛「……」
曜「行くんでしょ?あっちに。」
彼女の瞳は、震えながらもまっすぐ俺を見つめている。
隠せない。
たとえどれだけ言葉を並べたところで――曜には、きっとわかってしまう。
雄飛「……ちょっとだけ、用事ができたんだ。」
曜「……戦うの?」
雄飛は答えなかった。
だが、その沈黙が何よりも雄弁だった。
曜は、ぎゅっと握った拳をほどき、そして、ほんの少しだけ笑った。
曜「……絶対、帰ってきてね。」
雄飛「……ああ、約束する。」
曜は静かにうなずき、千歌たちの後を追っていった。
振り返りもせず、だけど――最後まで、俺のために心配してくれているのが、痛いほど伝わった。
夜風が、少しだけ冷たく感じた。
雄飛「……行くか。」
そう呟き、俺は一人、走り屋たちが集う暗がりへと向かっていった。
近づくたびに好奇心に押されるようで、歩幅が自然と大きくなる。
でも、近づくにつれて分かる。
この空気――
ただのお遊びじゃない。
本気で、命を懸けるような連中が集まっている。
そして――
その中心に立っていたのは、鹿角聖良だった。
聖良は、真剣な表情で俺を見た。
もう、先ほどの柔らかな微笑みはない。
聖良「雄飛さん……来てくださったんですね。」
雄飛「……聖良さん? これは――」
聖良はうなずく。
聖良「……私は、この函館の夜を背負っています。ですが、もう……自分の手では走れない。」
足に視線をやると左足には包帯が。何かの事故、またはスクールアイドルの練習か…。
おそらく前者だと直感が言った。
彼女は、そっとポケットからキーを取り出し、俺に差し出した。
雄飛「こんなところで会うなんて思ってませんでしたよ…。聖良さん。」
雄飛が受け取りながら言う。
言わなくてもわかる、彼女がなにを思っているのかが…。
この空気感がすべてを物語っている。
そして、雄飛もそれに引き寄せられた一人だ。
懐かしく感じる。走り屋だった親父との思いでが…。
聖良「雄飛さん、こんばんは。ようこそ、函館の夜へ。」
聖良が視線を向けた先、そこに立っていたのは――
ド派手なジャケットを羽織り、煙草をふかす男だった。
チンピラ「へへっ、そっちのボウズが今日の相手か? 見た目だけはイイじゃねぇか。」
雄飛は無言で男を睨んだ。
だが聖良は、一歩前に出て、涼しい声で告げる。
聖良「ルールは確認済みですね? 負けたら、車はいただきます。……それで、構いませんね?」
チンピラ「おうよ! ビビったら今からでも逃げていいんだぜ? オレは待ってやんねぇけどな!」
聖良は小さくため息をついた。
聖良「……せめて、正々堂々と走っていただけると嬉しいのですが。」
チンピラはニヤつきながら、愛車――
黒いボンネットにスカルマークが描かれた、改造だらけのマシンに乗り込む。
チンピラ「勝てば正義よ。負け犬の遠吠えは聞きたかねぇんだ、シロウトが!」
雄飛は、静かにエンジンをかける。
聖良の愛車、青色のマシンが、夜の空気を震わせた。
雄飛「日産GTRか…、こんな高価な車どこで…」
室内を見渡すと、DCT(本来ならAT車)ではない…。クラッチペダルがある。
センターコンソールには、6速のマニュアルミッションが搭載されている。
聖良は質問には答えまいと車の窓越しに、ふっと微笑み話を変える。
聖良「雄飛さん、あの男……運転は荒いですが、速いです。油断なさらないで。」
雄飛は軽く笑った。
雄飛「大丈夫です。俺、負けるつもりなんか、これっぽっちもありませんから。」
質問の答えを聞くのは今ではないようだ。
雄飛(聖良さんも話す気がなさそうだし…、とりあえず今は目の前の勝負…だな。)
二台の車が、スタートラインに並ぶ。
審判役の若者が、夜空に向かって手を上げる。
一瞬の静寂。
そして――
若者の腕が振り下ろされた。
夜を裂くように、二台のマシンが飛び出した――!
ギャ━!!
タイヤが路面を引っかき、硝煙のような匂いが立ち込める。
雄飛は素早くクラッチを蹴り込むと、エンジンの回転数を一気に引き上げた。
ガクン、と車体がわずかに沈み込んだ次の瞬間――
シフトを一速に叩き込む。
リアタイヤがギリギリと悲鳴を上げながら、路面を捉えた。
「いい加速……!」
はじめての乗る車とは思えないスタートダッシュを決める雄飛を聖良は見守っていた。
聖良「さすがですね…。雄飛さん」
出会った時にも聖良はなんとなく感じていた。
雄飛には何かしらの才能があることを…。
チンピラのマシンも、豪快にホイールスピンさせながら並びかけてきた。
黒い車体がギラつき、雄飛の視界を塞ごうとする。
チンピラ「ヘッ、のろいんだよ小僧がァッ!」
雄飛は冷静だった。
次のカーブを見据え、軽くアクセルを抜き、シフトダウン。
クラッチを切ると同時に、ブリッピング――アクセルを一瞬あおって回転数を合わせる。
ガチッ――。
完璧なシフト操作。
ギアが気持ちいいほどスムーズに噛み合った。
雄飛「まだまだ、これからだ……!」
だがその瞬間。
チンピラの車が、わざと雄飛のラインを塞ぐように斜めに割り込んできた!
ガキィン――!
バンパー同士がかすかに接触する。
雄飛のマシンが一瞬だけバランスを崩す。
「……ッ!」
すかさず雄飛は、左足でクラッチを軽く踏み込みながら、ステアを細かく修正。
車体を立て直すと、アクセルを抜かずに――むしろ一段深く踏み込んだ。
高回転域、パワーバンドに入り、エンジンがさらに咆哮を上げる。
チンピラ「チィッ……!」
チンピラは苛立ち、さらに無理なブロックを仕掛けようとするが――
雄飛は次のギアを迷いなく叩き込んだ。
クラッチ操作と同時に、車体は一瞬もたつくことなく前へ。
雄飛「そこは俺が通るラインだ!」
そう呟きながら、チンピラのマシンのわずかな隙を突き、インに飛び込んだ!
ギリギリの車間、ブレーキング勝負――
雄飛はギリギリまでアクセルを開け、クラッチを切り、4速から3,2速へシフトダウン。
エンジン回転数とタイヤ速度が、完璧に一致する。
タイヤはスキール音を上げながらも、ブレることなく路面に吸い付いた。
夜景を背景に、青色のマシンが黒い車体を鮮やかに抜き去る。
チンピラ「な、なにィッ……!?」
背後で、チンピラの荒い運転が空回る音が聞こえた。
だが雄飛は、振り返らない。
ただ前だけを見据えて、ギアを繋ぎ続けた。
雄飛のマシンは、夜の函館山をゴールまで駆ける。
…吉田雄飛の勝利。
ゴールラインを抜け、スタート地点に戻った。
そこには、親父の見ていた世界、親父と見た世界が吉田雄飛の前に広がっていた。
喜ぶ者や、負けたことを悔しがる者。いろいろな人がいた。
雄飛「この景色、やっぱり見たことある…。」
兵庫に住んでいたころの過去の記憶がフラッシュバックする。
親父は、兵庫の中、いや、日本中でもかなり名の通った走り屋であった。
青のRX7を操り、どんな路面状況でもぶれない精度のブレーキング、一般人では耐えられないほどのすさまじい旋回スピードで数々のコーナー、山を攻略していった。
車好きの裏雑誌(正式ではないもの)では、よく取り上げられ、表向きには戦闘機パイロット、裏では一流の走り屋と乗り物というものに関しては、並ぶものはめずらしく、まして抜かすものはかなり限られるような人だった。
そんな父親に連れられ、雄飛も幼少期から山や空に連れ出され、かなりの英才教育を受けた。
今、この景色と昔の記憶がかぶって見えたのは、父親がレースに勝利し、スタート地点に戻った時の記憶である。
聖良「やはり、あなたは突如存在を消した、吉田‘武’さんの息子、、なのですね。」
雄飛「え、なぜ親父の名前を…」
聖良「この界隈では有名人ですからね、それに彼の走りに影響されて私も‘これ’を始めたのです。」
フッと笑っていった。
聖良は、インターネットにアップされていた昔の車載映像をたまたま見たそうだ。
聖良「この車のセッティング、どうでしたか?」
雄飛「え?とても乗りやすかったと感じました…。不思議と初めて乗る車ではないような、そんな感覚ですね。」
聖良「ふふ、そうですか。実は、沢山見ました、あなたのお父さんの映像。エンジンの回転の伸び、制動力、異次元の旋回力、あれを目指してこの車を作ったんです。」
と嬉しそうに言った。
スタート地点から人の気配が消え、静けさが戻ってきた。空には星が瞬き、東側から徐々に明るくなり始めている。路面にはところどころレースの痕跡――タイヤの焦げた跡や、砂利の巻き上がった跡がまだ残っている。
聖良「それでは……ホテルまでお送りいたしましょうか。」
雄飛「すみません、助かります。」
二人は駐車エリアに停められている車へと歩く。暗がりの中でも、ひときわ存在感を放っていた。
青のR35 GT-R――深いブルーのボディは夜の光に溶け込むようでありながらも、シャープなエッジに星の光を弾き返している。
タイヤはサーキット仕様のハイグリップスポーツタイヤ。その分、アスファルト上の細かな砂利を敏感に拾い、硬質な足回りから伝わるわずかな振動が車体全体を通じて響く。
車内に乗り込むと、エンジンがかけられ、低く野太いアイドリング音が静寂を切り裂いた。重低音と共に、巻き上げた石がホイールアーチにぶつかる音が、コトコトと内装を叩くように聞こえる。まるで、走る度に「これは戦うための車だ」と告げているようだった。
雄飛「……やっぱり、この車、ただ者じゃないですね。」
聖良「ええ、街乗りにはちょっと不向きかもしれませんけど……走るために作りましたから。」
車は滑るように発進し、夜の峠道を下っていく。足回りは硬く、路面の段差を拾うたびに身体に微かな衝撃が伝わってくる。それでも、ステアリングからは「意志」のようなものが感じられいた。自分の手の動きに、寸分の狂いもなくついてくるような感覚。
雄飛は再び、父の青いRX7の記憶を思い出した。
あのとき助手席から感じていた、恐ろしいまでの安定感と、機械を超えたような運動性能――それと酷似していた。
ホテルに着く頃には、雄飛の中で何かが静かに決まっていた。
車を止め、聖良はエンジンを切る。
聖良「……雄飛さん。」
彼女の声が、車内にぽつりと落ちた。
聖良「この車……あなたに受け取ってほしいんです。」
雄飛「え……」
聖良「あなたのお父様に憧れて、この車を作りました。でも、今日、あなたがハンドルを握ってくれたとき……この車は初めて、本当の意味で“答えて”くれた気がしたんです。」
雄飛は黙って聖良の瞳を見つめる。その瞳に、ほんの少しだけ寂しさが混じっていた。
雄飛「……じゃあ、一つだけ。」
聖良「え?」
雄飛「ちゃんと、この車にふさわしい自分になる。その覚悟ができたら、正式に受け取ります。」
少しの間、静寂が流れた後、聖良は静かに笑った。
聖良「ふふっ……誠実なんですね、雄飛さんは。」
彼女の手が、ギアノブを軽く撫でるように触れた。
聖良はドアを開けて外へ出た。
雄飛も車を降り、ホテルのエントランス前で聖良と向かい合う。
聖良「今夜は私が連れて帰りますね。大切な子ですから……ちゃんとあなたの覚悟が固まるまでは、私が預かっておきます。」
雄飛「はい、お願いします。」
聖良「じゃあ、おやすみなさい、雄飛さん。」
彼女はもう一度だけ微笑み、R35のドアを静かに閉めた。
再びエンジンがかかると、あの低く芯のある音が夜の中に響き渡った。
テールランプの赤が、夜の道路に一筋の光を残して、車は轟音と共に走り出した。
雄飛はホテルの入り口に立ったまま、それを見送った。
「こんだけでかい音させたらさすがに先生にばれるかな…、下手したら曜たちにも…。」
その背中に、R35が撒き上げた小さな砂利が、かすかに風とともに当たっていた。
“あの音と一緒に、今度は俺が戻ってくる。”
そう心の中で呟きながら、彼はそっとドアに手をかけ、ホテルの中へと入っていった。
その後、ほぼ寝かけていた先生から、曜から、千歌、梨子にまでこっぴどく叱られた。
(つづく)