僕の彼女は曜ちゃんです⚠再編集中 詳しくはあらすじへ 作:ゆうきoog3
《曜》
その名前に、なんとなく胸がくすぐったくなる。
雄飛「…も、もしもし」
曜「もしも〜し♪ ゆうくん、いま大丈夫?」
雄飛「うん。部屋に戻ったところだよ。」
曜「ふふっ、一応確認しとこうと思って!」
雄飛「確認?」
曜「今日の“勧誘”! ちゃんとできたかどうかってやつ!」
雄飛「曜もか!千歌と同じこと言ってたぞ…」
曜「そりゃあ気になるよ〜。結構、重大ミッションだもん。」
雄飛「まあな。…なんとかはできたかな。話は聞いてくれた。でも、まだどうなるかは何とも…」
曜「そっか……でも、うん、ゆうくんのことだから、ちゃんと伝えたんだろうなって思ってた!」
雄飛「ははっなんだよ、それ」
曜「ふふっ、なんでも〜♪」
しばらくの間、スマホ越しに波音のような静けさが流れる。
そして、曜が少し声を潜めるように言った。
曜「今ね、十千万の前のバス停にいるの。ちょっとだけ、話せないかな……?」
雄飛「え?いま?」
外を見ると、街灯に照らされた歩道が静かに伸びていた。
雄飛の家(十千万旅館)からバス停はすぐそこにある。
しかし、曜の家からはかなり距離がある。
夜にわざわざ来るには何か理由があるはずだ。
雄飛「……わかった、すぐ行く」
スウェットの上に軽くパーカーを羽織って玄関を出ると、夜風が火照った頬を撫でた。
旅館の裏口から回ってバス停まで行くと、街灯の下に曜の姿があった。
制服の上にパーカーを羽織っていて、ふわりと夜風になびく髪が街灯に照らされていた。
雄飛「こんばんは、曜」
曜「おっ、こんばんは♪」
笑顔だ。あの、太陽みたいな笑顔。
けれど、どこか少しだけ不安を隠しているようにも見えた。
雄飛「バス、もう出ちゃってるんじゃないか? 沼津駅のほうから来たんだろ?」
曜「うん、本当は最終バスに間に合うはずだったんだけど……ちょっと悩んでたら出ちゃってて」
雄飛「それって……もうバスは来ないかってことか?」
曜「……そうかも」
曜は、目を伏せたまま、ぽつりとこぼす。
曜「変だよね。学校でも会えるのに…。でも、今日の放課後、あんまり話せなかったからなんとなく話したくって……それで、気づいたら、ここまで来てたの」
その言葉の奥にある想いは、あまりにも素直で、そして、あたたかい。
雄飛「……曜。なんかうれしいよ、ありがとな。」
曜「へへっ……どういたしまして!」
ふっと笑い合ったそのときだった。
――ぽつ。
冷たい水が頬を打つ。
雄飛「……雨?」
見上げた空から、細かな雨粒が降り始めていた。
すぐにその勢いは増し、空気は一気に湿った夜の匂いに変わる。
曜「あっちゃー……傘、持ってないや」
雄飛「旅館も今バタバタしてて、送ってもらうのは難しそうだな。……しょうがない、俺の自転車、使うか。」
曜「え、でも……」
雄飛「大丈夫。旅館の貸出用のやつ。俺が漕ぐから、後ろ乗れよ。」
曜「う、うんっ!」
曜は小さく跳ねるようにうなずくと「よいしょっ」と自転車の荷台に座った。
雄飛は後ろを軽く確認し、ペダルを踏み込む。
雨脚が強くなる中、街灯の下を二人乗りの自転車が走り出す。
タイヤが濡れたアスファルトを滑るように進み、照明の光が水たまりに揺れていた。
曜「……ねぇ、寒くない?」
雄飛「いや、意外と平気。曜こそ大丈夫?」
曜「んー、ちょっとだけ寒いけど、でも……なんか、あったかい」
背中越しに伝わる体温と、雨の冷たさが入り混じった不思議な感覚。
やがて、曜の家の近くまで来たとき、雨は本格的な土砂降りに変わっていた。
雄飛「やばいな……これじゃ、帰れそうにないかも」
徐々に服に重みがでてきた。ズボンが脚に張り付きペダルがこぎにくくなっている。
雄飛「曜、制服、濡れたりしてないか?」
曜「んー、パーカー羽織ってるからそんなにだと思うよ!」
雄飛「そうか。よし、飛ばすぞ!」
しばらく走っていると前の信号が赤になった。
二人乗りで止まりにくい自転車をスムーズに止め後ろを振り返った。
風が吹き抜け、曜の髪がふわりと揺れる。
濡れた前髪が頬に張り付き、月明かりに濡れるその横顔は、普段よりずっと大人びて見えた。
(……曜、いつもより、なんか色っぽい……)
曜「ん?どうかした?」
雄飛「い、いや!なんでもない!」
ぼんやりと見惚れてしまったあと、ようやく我に返る。
雄飛(いかんいかん、今のは水に濡れたせいだ。たぶん。)
そうしているうちに渡辺家に到着した。
玄関の灯りに照らされた曜は、パーカーのフードを手で絞るようにして脱ぎ、軽く肩をすくめた。
その下から現れた制服は、思っていた以上に濡れていた。ブレザーは雨を含み、シャツの色がうっすらと透けて、下に着ていた白いキャミソールのラインが浮かんで見える。
雄飛「っ……!」
思わず目を逸らした。
でも――ほんの少しだけ、視線が戻ってしまったのは否定できない。
(や、やばい……。見ちゃいけないのに……でも、曜……綺麗すぎるだろ……)
曜「ん?どうかした?」
雄飛「い、いや!なんでもないっ!」
曜の髪の先から落ちる水滴が、頬や鎖骨を伝って制服の襟元へと吸い込まれていく。
濡れた制服が肌にぴったり張り付いて、布越しに形を主張してくるのを、雄飛は気づかないふりをするのに必死だった。
曜「…あっ…もしかして、透けてる?」
曜が自分の胸元に視線を落とすと、急いで胸元を隠すように腕でガードした。
曜「ちょ、ちょっと、見たー!?///」
雄飛「い、いや、見てない!マジで見てないから!!」
曜「~~っ、ゆうくんのバカー!!」
そう叫びながら曜は顔を真っ赤にして、家の中に入っていった。
タオルを持って出てきてくれたのは、良かったがしばらく膨れたまま俯いている曜の姿に、雄飛は思わず頬をかいた。
先程よりも雨脚は、さらに強くなっていた。
曜「ゆうくん……ママからきいたんだけど、大雨・洪水、波浪警報、出てるって」
曜の声には、わずかな不安がにじんでいた。
曜「だから今日は、うちに泊まっていった方がいいと思うんだけど……どうする?」
雄飛「……ああ、今回はお言葉に甘えさせてもらうよ」
曜「やった!」
自然に浮かぶ笑顔。それが妙に嬉しそうで、雄飛の胸が少しだけ熱くなった。
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曜の家に入ると、曜の母親が曜に似た明るい笑顔で出迎えてくれた。
曜ママ「まあまあ!曜をこんな雨の中、自転車で送り届けてくれるなんて、素敵だわ!」
雄飛「ぼ、僕には勿体ないお言葉ですよ。お母さん」
曜ママ「あらあら、将来は曜のお婿さんかしら~?」
曜「ま、ママっ!?なに言ってるのよっ!///」
曜は、顔を真っ赤にしてタオルで髪を隠すように抱えた。その様子がまた可愛らしくて、雄飛は笑いをこらえた。
夕食と入浴を終え、曜の部屋で過ごす静かな夜。
曜「さて……そろそろ寝る?」
雄飛「おう。で、俺はどこで寝ればいいんだ?」
曜「わたしと一緒に――」
雄飛「それはダメ」
曜「なんでよ!」
雄飛「当たり前だろ。俺は床で寝るから、曜はベッドでちゃんと寝ろ」
曜「むーっ……」
ぷくっと頬を膨らませる曜。その姿が、雄飛の理性を試すかのように可愛い。
(……やばい。これは、かわいすぎる……)
雄飛「あー、わかったわかった!ベッドで寝るから、その顔やめてくれ…。その…可愛すぎるから…。」
曜「っ~~~!!///」
曜は布団を顔に被って反対を向いてしまった。
(ああ、やばい。ほんとに可愛いな……)
静かに照明を落とし、部屋が闇に包まれる。
曜「……おやすみ、ゆうくん」
雄飛「おやすみ」
そう言って目を閉じたとき、ほんのり温もりを感じる距離に曜の気配を感じながら、心地よく眠りに落ちた。
翌朝。
(ん……?)
雄飛は、手の中に柔らかい感触があることに気づいた。目を開けると、自分が曜を後ろから抱きしめる“あすなろ抱き”の状態になっていた。
(ま、まずい……!これ、完全にアウトじゃ……!)
慌てて手を放した瞬間――
曜「ゆ、ゆうくん……?///」
…まさかの曜が起きてしまった。
雄飛「あっ、い、いまのは違くてだな、その、たぶん寝てる間に……!」
曜「……もうちょっと、触っててもよかったのに……」
曜の小さな声に思わず固まる雄飛。
雄飛「……えっ?」
曜「な、なんでもないっ! は、はやく朝ごはん食べよっ!」
曜は真っ赤になって逃げるように部屋を出ていった。
曜の後を追って俺も部屋を出てリビングに向かった。
曜ママ「おはヨーソロ~!」
雄飛「お、おはようございます……」
朝から曜のようにハイテンションなお母さん。こういうところは特に曜に似ていると感じた。
曜ママ「昨日はよく眠れた?」
雄飛「はい。ベッドが柔らかくて、気持ちよかったです。」
曜ママ「…曜が柔らかかったんじゃなくて?」
曜のお母さんはいたづらっぽく笑った。
雄飛「え……?それってどういう――」
曜ママ「だって朝起こそうと思って部屋を覗いたら、ゆうくんが曜に抱きついて寝てたから、もしかしたら~って♪」
雄飛「ち、違いますよっ!たしかに柔らかかっ……じゃなくて!ゲフンゲフン!」
(あっぶな……!!)
曜「も、もうっ!ママあああああ!!!ゆうくんも!!」
曜の目線が鋭く突き刺さる。逃げなければ。
雄飛「あー、ちょ、ちょっとトイレ!トイレ行ってきます!」
曜ママ「そっちは玄関よー」
雄飛「あ、間違えちゃいました~!」
朝食後――
雄飛「お母さん、朝ごはん、本当に美味しかったです!ありがとうございました!」
曜ママ「まぁ、ゆうくんったらお上手ね~!なんなら曜と家族になっちゃう?」
雄飛「そ、それは曜が嫌がると思いますよ……」
曜ママ「そんなことないわよね、曜?」
曜「そ、そんなことないに決まってるじゃん…。って、も、もうっ!ママぁ!」
また頬を膨らませる曜。本当にかわいい。
曜ママ「ふふ、嬉しくないの?」
曜「……そ、そりゃ嬉しいけど……」ボソッ
雄飛「曜が困ってますよ……それじゃ、十千万に戻ります。泊めていただき、ありがとうございました!」
曜ママ「はーい!またいつでも来てね!」
玄関を開け、外に出る。
雨はもうすっかり止んで、晴れている。
曜「ゆうくん!あ、あのね!」
雄飛「ん?」
振り返ると、曜が少し頬を染めて立っていた。どこか落ち着きなく雄飛の袖をきゅっとつかみ、ちらりとこちらを見てはすぐに目をそらす。
雄飛(なんだ?なんかソワソワしてる?)
曜「……あのさっ、明日、、なんだけどっ」
雄飛「うん?」
曜「その……明日、、一緒に出かけない?」
一瞬、時間が止まった気がした。
(えっ……い、今なんて……)
曜「べ、別に深い意味はないんだけどっ!?昨日はバタバタしてたし、ちゃんとお話したいなーって思って……その……」
曜の声が徐々に小さくなっていく。顔は真っ赤で、髪をかきあげたり、靴先で床をつついたり、完全に落ち着きがない。
雄飛「い、いいよ!行こう!」
思わず即答してしまった。
(ちょっと、やばい……心臓が……)
まさか自分が、曜にこんなふうに誘われるなんて。
目の前の曜は、部活のときのキリッとした姿とはまるで別人で――どこか女の子らしくて、ちょっと儚げで、でもすごくかわいく見えた。
そんな空気を察したのか、曜のお母さんが玄関から顔を覗かせて、ふふっと笑った。
曜ママ「まぁまぁ、曜ったら朝から色っぽい顔してると思ったら……そういうことなのね?」
曜「な、なに言ってるの!」
曜ママ「だって、わかりやすいんだもの~。ゆうくんも顔真っ赤じゃない?ふふっ、かわいい二人ねぇ♪」
雄飛「あ、あの、それじゃあ、ぼ、僕はそろそろ行きますね!!」
と、照れ隠しをするように自転車をこぎ始めた
その後ろで「もー、ママのばかぁ!」という曜の声が響いていた。
でも、どこか心の奥がふわっとあたたかくなる。
そんな朝のひとときだった。