ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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今年最後の投稿です!


第98話 アイリ爆誕

リサ「あれから色々あって10年経ったぜ☆」

 

アレク「ちょ、待てよ(キム○ク)」

 

リョウ「流石に雑すぎるんじゃい!回想というか説明入れんと!」

 

リサ「分かったわよ。それではどうぞ!」

 

 

~~~~~

 

 

リサの強く固い意志を受け取ったリョウの行動は早かった。

 

本来ならば、自身の世界を滅ぼされた、若しくは崩壊してしまい行き場を無くした者達は時空防衛局により保護され、居住区で生活を過ごすことになっている。

リサも規則通りに居住区に移動する予定だったのだが、リョウが時空防衛局のトップであるユンナは勿論、様々な部署の幹部に頭を下げ自分が身元保証人になると申し出た。

異世界の人間を身元保証人にする事例はこれまでの歴史上でも幾つも存在したため、手続きは問題なく完了した。

 

もし仮に却下されたり物事が滞りなく運ばなければ、リョウは強引に権力や『力』を使用し脅していただろう。

時空防衛局を脅したという過去もあるため、ユンナはそれを危惧したため特に言及はせず了承した。

ユンナがリョウとリサの関係を理解していたからというのもあるが。

 

正式な手続きが完了したその後は、リサはリョウと行動を共にした。

立場上異世界を転々とすることになるため、毎度リサを異世界に移動するわけにもいかないため、一つの世界を拠点とし、リサを鍛え上げることにした。

 

拠点となるその世界は、過去にユグドラシルメシアであるアレク達が未曾有の危機から救った世界。

その世界で莫大な資金と絶大な権力を持つ総帥が国を陥落させ、政界を支配する勢力を持っただけでは飽き足らず、エクリプスと同盟を結び異世界への進出を企んだ。

後々語ることになるため、詳しい内容は割愛させてもらうが、あらゆる全てを我が手中に納めようとする傲慢と強欲な総帥の行動は、ユグドラシルにも影響を与え兼ねない、全世界の危急存亡に関わる事態に発展したため、ユグドラシルメシアが看過する訳にはいかなかった。

総帥とエクリプスが率いる1000万の軍勢を相手に、たったの10人で果敢に挑み勝利を掴み取り、その世界だけでなくユグドラシルを未曾有の危機から救った。

総帥の卑劣な手口により追いやられていた国の姫、アセビは感謝の意を込め、ユグドラシルメシアは未来永劫無償で援助することを約束され、この世界を救った英雄達として今尚語り継がれる伝説とされている。

 

国を治める現在の姫に事情を説明すると、二つ返事で国の滞在を了承し、住居するための家を建造した。

ユグドラシルメシアという肩書きがあるだけで事が順調に運びすぎなのではと思ってしまったが、折角のもて成しを無下にするのも申し訳なく、有り難く受け取ることとなった。

 

リサ「ユグドラシルメシアってホントに凄いんだね。国が一丸となってあたし達の要望に答えてくれるんだから」

 

リョウ「ホンマありがたい限りよね。もう500年くらい前の話になるのに伝説として語り継がれてるけど、何か問題があって助けを求めることがあれば援助するというアセビ姫の伝言まで語り継がれてるんやもんな。お陰で今わし達は助かってるわ。まあ国を奪還する時にはわしはいなかったからちょっと申し訳ない気持ちはあるけど、使えるものは使っとかんとな」

 

リサ「え、500年前って…リョウって今何歳なの!?」

 

リョウ「さあ…もう何歳かも覚えてへんよ。わしが異世界に転移させられたあの日から1000年近く経過してるじゃろうし」

 

リサ「1000年!?見た目は20歳前半くらいにしか見えないけど…人間、だよね?」

 

リョウ「正真正銘の人間やで。ちょいと他の人とは異なる運命を辿ったってだけじゃ」

 

リサ「物凄く気になるんだけど…」

 

ピコ「また追々話してくれると思うよ。今は自分を鍛えることに集中しないとだよ」

 

リサ「話を逸らされたような気もするけど、そうだね!えっと、とりあえず何をするの?フォースの力を高めるために瞑想とか?」

 

リョウ「ジェダイの騎士じゃないんやからそんなことはせぇへんよ。先ずは基礎体力を高める。封眼の影響で身体能力は著しく向上しとるじゃろうけど、戦うにはまだまだじゃろうからね」

 

リサ「成る程~。基礎体力を高めるって、まさかこの前アレクとアリスがやってたビ○ーズブートキャンプを24時間やるとか!?」

 

リョウ「せぇへんって。あいつらを基準にしちゃダメじゃ」

 

ピコ「ユグドラシルメシアの中でもぶっ飛んでるからね~色々と」

 

リョウ「頭のネジがぶっ飛んどるんじゃ」

 

アリス「ババーンと推参!言いたい放題言ってくれるね~」

 

アレク「俺達がいつ聞いていないと錯覚していた?」

 

リョウ「うわ出た」

 

リサ「うわあ!?ホントに急に出てきた!?」

 

アレク「俺達の悪口を言ったからには容赦はしねぇぞ。俺達と24時間耐久鬼ごっこをしてもらう」

 

リョウ「ZOMG………」

 

ピコ「うわあ凄い引き攣った顔してる。リョウのこんな顔見るの久々で新鮮だよ」

 

リサ「どうでもいいから早く話続けようよ。作者もただでさえ書くこと多くてカツカツなんだから」

 

ピコ「メタいんだよね~」

 

住居するために必要な家具等も全て揃え、食材の買い出しを行い全ての必需品が揃い、準備を終えたところで本格的にリサの鍛練が開始された。

 

先ず行ったのは、戦闘を行う際で最も必要であり基本となる体力作り。

封眼の影響で常人の何倍もの力を発揮できるとは言え、リョウ達と肩を並べるには程遠い。

ただ、成長も常人と比較しても著しく早く、幼さの割には尋常ではない身体能力を短期間で身に付けていた。

予想外という言葉が当てはまってしまう。

封眼があるとは言え、時空防衛局の戦闘員達と肩を並べるのは数年は掛かると概算していたが、本人は弱音一つ吐かずに淡々とこなしてしまい、予想が良い意味で外れてしまったため、アレクとアリスも目を見張ったほど。

 

 

基礎体力作りは日頃怠らず続ければ問題ないと判断したため、予定より早い段階にはなってしまったが、戦闘訓練も開始された。

戦闘を行うのに必須とも言える、対人戦で使用する武術を徹底的に叩き込む。

ヴィラド・ディアのような怪物には無論、通用はしない。

だがリョウ達と行動を共にするのであればエクリプスとの遭遇の割合の方が格段に高く、大体の種族が人間であるため、対人戦を想定し空手、柔術を基本とした武術の習得は必須となる。

合気道、躰道、ジークンドーと言った武術も網羅したいというリサからの要望に答え、武術による接近戦が主な結愛が師範となり徹底的に伝授されることになった。

 

リサの主な武器となるのは身体強化の元となる封眼。

封印の能力に特化されているとアリスに解析されたが、封印と言っても一言で表せられるものではなかった。

文字通り、魔の者や能力を封じるのは当然だが、相手の能力や技、スキル等も封じられることが、封眼の鍛練をしている内に新たに発見された。

更には相手の行動すらも封じることが可能で、一種の金縛りとも言える状態にすることも分かり、使い勝手がかなり良く強力な武器と言える。

 

しかし万能で完璧と呼べるわけではない。

永遠に封印の効果が持続されるわけではなく、魔力を消費しなければならないため、心身共に疲労することになり、維持するのは極めて困難と言える。

魔力を持たないリョウとピコは封眼の使い方や魔力の調整を教えるのは不可能なため、アリスが担当することとなった。

魔法を扱うのに右に出る者はいないと自負するだけあって、アリスの魔力量は無尽蔵と言える。

いつものように軽口を叩いてはいるものの、指導する事柄は的確で真面目そのものなので、リサの封眼を使いこなす技術も着実に上達し、錬度が高いものとなっていった。

 

日々怠ることなく鍛練を積み重ね、早くも10年が経過した。光陰矢の如しとは正にこのことだろう。

 

リサ「やっと冒頭まで来たね!」

 

リョウ「まだまだ話すことはあるけぇもうちょい待ってくれ」

 

アリス「そんなことよりおうどんたべたい」

 

リョウ「勝手に食ってろ」

 

アレク「コッペパンを要求する!」

 

ピコ「自分で買ってきなよ」

 

閑話休題。

 

ユグドラシルメシアに10年の時を掛けた甲斐があり、リサは時空防衛局の幹部クラスにも引けを取らない実力を身に付けていた。

封眼と持ち前の身体能力だけでなく、自分で設計、制作した戦闘に特化した杭打ち機と呼ばれる武器、アガートラムを駆使し、リョウ達と共にエクリプスを駆逐していく活躍を見せた。

 

封眼で強化された肉体とは言え、生身では流石にヴィラド・ディアと言った怪物相手では心許ないと思っていたのは、リョウだけでなくリサ本人の悩みの種でもあった。

時空防衛局から拝借した手頃な剣や槍も試してみたのだが、どれもリサが扱うのには馴染まない結果に終わる。

何がいいかと武器を絞り混んでいたところ、リサがとある提案を出し使い始めたのがアガートラム。

 

アレクとアリスに勧められた某アニメを見た影響だが、強力で絶大な威力を誇る一撃を繰り出すパイルバンカーにロマンを感じてしまったようで、使いたいと志願したのだ。

アレクとタクト、時空防衛局の関係者の手と知恵を借り自らで設計、製造し、制作期間は2年を要し完成され、今ではなくてはならない愛用の武器となっている。

 

アガートラムによる打撃と封眼による封印術の相性は抜群で、相手の行動を封じつつ、細身の体で扱えるとは思えぬ巨大なパイルバンカーによる一撃で確実に仕留める。

最初の頃はリョウ達を幇助するだけの立場であったが、今では率先して戦闘に参加し、リョウ達がいない場合では戦場での突破口の要として目覚ましい活躍を遂げている。

リサは時空防衛局に属していないながらも、あらゆる方面で活躍するリサは局内からも注目視される存在となっていった。

 

順風満帆に戦闘経験を積み実力を付けてきたある日のこと。

リサは体調不良を訴え、エクリプスの殲滅の任務に同伴できなくなった。

微熱や腹痛、目眩、食欲の低下や吐き気を催す症状も見られ、暫くは養生することになったのだが、リョウはこの体調不良に違和感を覚え、時空防衛局の医療機関で検査するよう申し出た。

封眼による影響かどうかは不明瞭ではあるが、10年もの間共に過ごしてきた中でリサは風邪を引く等と言った体調不良を訴えることはなかった。

ただの風邪だと片付ければ済むのかもしれないが、体調を崩すことのなかったリサが様々な症状が表れたのを異常と捉え、念のため検査するよう半強制的に時空防衛局に赴くことになる。

リサ本人は過保護すぎるや大袈裟だと言っていたが、検査した結果、誰もが予想だにしない結果が出されることとなる。

 

リサ「妊、娠………?」

 

ユンナ「えぇ、そうです…」

 

数時間と掛からないうちに結果は出た。

様々な検査の結果出されたのは、リサが妊娠していたということ。

身に覚えのない事柄にリサは呆然としており、リョウは衝撃が大きすぎたのか、口を半開きにし目に見えて狼狽えている。

 

リョウ「ど、どういうことなんよ…。一応聞くんやけど…リサ、誰か男ができたってことは…」

 

リサ「ち、違う!あたし男なんていないし、性行為だってやってない!ホントだよ!」

 

確認のため聞いたとはいえ、疑惑を抱かれたことと未だに信じられない事実に困惑しているのが表情と目を見れば嫌でも伝わってくる。

ほぼ四六時中行動を共にしているリョウはリサのすがるような目を見ただけで嘘を付いていないと見抜けたため、これ以上質問をすることをやめた。

元より確認のために聞いただけで最初から疑っていることは微塵もなかったのだが。

 

リョウ「じゃあ、何で…検査ミスじゃないんか?」

 

ユンナ「わたくしも真っ先に考えましたが、どの検査も嘘偽りなく正常の結果でしたわ。リサさんが妊娠しているのは、紛れもない事実ですわ」

 

リョウ「そんな……でも、一体なんで…なんで妊娠したんや?切っ掛けも前兆も何もなかったっていうのに」

 

リサ「あたしにも、さっぱり…。男性と絡むような仲なのはユグドラシルメシアの人くらいだし。…あたしも、分かんないよ」

 

アレク「一応言っとくがユグドラシルメシアの男性と恋仲になったってことはないぜ。今回の件に関しては、確証とは言えないが心当たりはある」

 

リョウ「また急に現れて…で、その心当たりってなんや?」

 

アレク「専門家じゃねぇから憶測でしかないが、亜空流に巻き込まれた影響かもしれない」

 

リサ「あたしが、10年前に亜空間で巻き込まれたあれのこと?」

 

リョウ「じゃけど10年もの月日が流れてるんやで。今更その影響が人体に現れるなんて、況してや生命を誕生させるなんてことが…」

 

ユンナ「生命を誕生させることに関しては有り得なくはありません。亜空流に呑まれた者は、新たな種族へと変化、転生する場合もありますもの。それは新たな生命の誕生とも捉えることが可能ですし、亜空流自体が謎多き現象。どのような事例が出現しても何の違和感もありませんわ」

 

リサ「そう、なんだ…。実感湧かないな~。あたしの体の中に新たな命があるなんて」

 

アレク「無理もないことだ。亜空流の影響は常識が通用しないと認知はしているが、巻き込まれた奴なんてそうそういない。だから正直俺も驚いてる。で、リサはどうするか答えは出てるんだろ?」

 

リサ「…うん。あたし、産もうと思う」

 

リョウ「………リサが決めたことなら、わし達は否定する権利はない。でも、大丈夫か?」

 

亜空流の影響だと思われるが未だに不確定要素が過多な状況に混乱し困惑の表情が見え隠れしながらも、様々な不安を抱えた意味で問う。

 

原因不明な謎の妊娠を果たした子を出産できるのか。

母親となる覚悟があるのか。

 

リサ「決めたから。決めたからには、この子を産みたい。堕とすなんて選択肢なんてない。確かに不明な点は多いけど、でも、この子には何の罪もない。きっと、訳があって、何かあるから、あたしを選んでくれたんだと思う。だからあたしは、この子を産む!」

 

不確定要素も原因不明な要素も多く謎に包まれているが、恐れることなんて何もない。

結果を告げられた時は、身に覚えがない事実に動揺し混乱もしてしまったが、自身の身に宿った命を見放すという無慈悲なことをする選択肢は毛頭浮かばなかった。

どんな理由があっても、自分の子供にあることに変わりはない。誰に否定されようが、それだけは変わらない事実。

揺らぐことの強い思いは眼差しに表れており、一切迷いの色はない。

 

リョウ「…そうか、分かった。わしもこれまで通り全力でサポートするからな」

 

ピコ「勿論僕も!」

 

アレク「あ、何だいたのか」

 

ピコ「いたよ!ずっとリョウの上着のポケットにいたんだって!」

 

ユンナ「同じ女性としてわたくしも援助することを約束致しますわ。ただ、わたくしは子供を授かったことのない独り身故、子育てに関してはほぼ無知も同然ですが」

 

アレク「なら知るために先ずは子供を授からないとな。ユンナ、俺との子を作ろう(イケボ)」

 

リョウ・ピコ・リサ「うわあ…(ドン引き)」

 

ユンナ「な、ななな、は、ハレンチです!!///」

 

アレク「ぜぶらいか!?」

 

相も変わらず息をするかの如くセクハラ発言をしたアレクはユンナのビンタを受け空となっているベッドの上に倒れ伏した。

 

医療的にも問題がないと証明もされているため、リサは自身に宿った新たな生命を産むことを決意した。

 

アレク(しっかし、何でか俺とアリスに似たような何かを感じるんだよな~。…気のせい、なのか)

 

 

~~~~~

 

 

子供を産むと決意した日から、極力リョウや時空防衛局の任務に同行する回数は減らすよう心掛けるようになった。

もし体に万が一のことがあれば、お腹に宿る子供にも影響が出かねない。

戦闘を行う際は、スタイル的に率先して前に出て戦っていたが、無茶はせず後方支援に回るようにしており、子供の安全の最優先を考え立ち回っている。

リサの保護者同然のリョウも相当敏感になっており、危険が及ぶ前に対処し、少しでも負担を減らそうと奮闘した。

 

リョウ達に先導されていたのは妊娠が発覚し一ヶ月も経過していない頃までで、それからは体を休めることに専念することとなった。

つわりの症状も確認され始め、任務の同行は勿論、戦闘訓練や鍛練も休止となり、体調が優れる日のみ体を鍛える運動を行うようになり、リサも自分の身万が一がないよう案じるようになっていった。

 

徐々に腹部の膨らみが大きくなっていくのを感じ、何事もなく順調に育っていっているだと実感しリサは悦ばしく思い、愛おしく自身の腹部を撫で、安静に日々を送っていく。

リサ達が拠点としている世界はモンスター等と言った怪物は存在せず、存在するとしても賊やテロリストと言った輩ばかりで、リサ達の敵ではないため対処は容易い。

だが、リサが住んでいた世界のように、ヴィラド・ディアやエクリプス等の異世界からの者の襲来により平穏だった時間が不条理に、理不尽に崩れ去る可能性はゼロではない。

私情を挟んではいるものの、大切な存在を守るためなら手段を選ばないリョウは無理矢理空いてる時間を作りリサの側に寄り添い生活のサポートをし続けた。

時空防衛局内にいる妊娠、出産を経験した局員達からアドバイスを聞きつつ為すべき事を行い、時間が空かない場合はアレクやアリス、ピコが変わりにリサの側に付くような体制となっていた。

 

何事もなく月日が流れ、妊娠40週が訪れた。

雲一つない、気持ちが良い程の快晴。

いつものように朝食の準備を取り掛かろうとしていたその時、陣痛が始まった。

遂に産まれようとする喜びが出る暇もなく、異常を発見したリョウは焦ることなく即座にワールドゲートを開き、迅速に時空防衛局の医療施設へと運んだ。

 

リョウ「………いよいよ、か」

 

アレク「俺達は待つことしか出来ねぇんだし、何事もないのを祈るだけさ。ほれ、コーヒー」

 

リョウ「屋内の待合室でコーヒー淹れるな」

 

アレク「そう堅いこと言うなって。飲むだろ?」

 

リョウ「…そりゃ勿論」

 

待合室のベンチに座り、リサの出産を終えるのを待ち続けていたところ、いつの間にか隣で豆を挽いていたアレクが淹れたてのコーヒーを差し出してきたので、遠慮なく受け取り火傷しない程度に一口啜る。

 

淹れたばかりの香ばしい豆の香りが鼻を通り抜け、程良い苦味が口内に広がる。

リサが何事もなく順調に出産を終えることが出来るのか、赤ちゃんは無事に産まれてくるのだろうかという不安に駆られていたが、コーヒーのコクのある味わいと香ばしい香りのお陰か、若干不安が和らぎ冷静さを取り戻せたような気がした。

もう一口飲んだところで、何の変哲のない天井を見上げポツリ一言呟く。

 

リョウ「これで…良かったんよね?」

 

横にいるアレクに言ったわけでもない、哀愁が込められた小言。

 

アレク「また迷ってんのか?自分の決断を。人生なんて迷ってなんぼのもんだぜ。探り探り、自分の正解を見つけていくもんだ」

 

リョウ「さすがに1000年近く生きとるから分かってはいるつもり。ただ、分かってはいても、正解かどうかはわしにも分からん。後悔しないようにと立ち回ってるつもりなんじゃけど、上手いこといかへんのよねぇ…」

 

アレク「自分の歩もうとした道が、信じた道こそが正解なんだと俺は思うぜ。あと、どんな形だろうとリサが産むと決めたんだし、気にしないことだぜ」

 

ピコ「そうそう。亜空流の影響なのか真実は分からなくても、父親はいないかもだけど、リサの子供ってことに変わりは何一つないんだから。ただ、授かり方が他の人とは違っただけなんじゃないかな?」

 

リョウ「…ありがとうよ。たまにはええこと言うじゃん。ってか、いたのか」

 

ピコ「だからいたってば!影薄いキャラにするのやめて!」

 

アレク「ピコ、病院内では静かにしてろよ」

 

ピコ「病院内の待合室でコーヒー淹れてる人に言われたくないよ!!」

 

リサの平穏できる生活を願ってもいたが、望みを叶えてもあげたかった。

傷付けずに争いとは無縁な平穏を過ごさせてあげたいリョウの願いと、自ら死地へと飛び込んででもリョウの手助けをし、異世界で理不尽な勢力により苦しむ人々に手を差し伸べるため戦いたいリサの願い。

対照的な双方の願いを同時に叶えるなど困難極まりない。

リサの想いを尊重するのならば、当然リサの方の願いを叶える傾向となるのは必然。

ならば自分に出来ることは、可能な限り彼女に寄り添い支えてあげることだろう。

リサの幸福を願うならばそれが正しい選択なのかは自問自答しても答えは分からない。

 

ただ一つ言えるとすれば、リサの側にいて支えてあげることは自分の使命だと思っている。

罪悪感の方が勝っていたからかもしれない。

ヴィラド・ディアに両親が喰われる前に救えなかったことや、必ず守ると豪語したにも関わらず亜空流に飲まれ、本来得る筈のなかった特殊な力が覚醒してしまったことがあったから。

悔やんでも運命が変わるわけではない。

ならば少しでもより良い未来になるよう身命を賭して奔走するべきなのだろう。

 

アリス「リサだって覚悟を決めて、責任を持って産むと決めたんだから、私達はそれを受け入れればいいの。子供を産むってのは、生半可な想いじゃできないんだから。同性だからこそ、私には分かるから」

 

ピコ「また急に出てきたよ…」

 

アリス「リサの陣痛が始まったって聞いて星晶獣達をさっさとぶっ倒して飛んできたよ!」

 

リョウ「そりゃわざわざご苦労さんやで」

 

アレク「ほれ、アリス、コーヒー淹れたてだぜ」

 

アリス「お、ありがと~!」

 

アリスも合流し、淹れたてのコーヒーを飲みながら出産の時を待ち続ける。

コーヒーを飲みながら駄弁ったりするような、決して優雅な時ではない。

無事に子供が産まれてくるのか、リサが無事に産むことができるのか、唯々心配でしかなかった。

重々しい雰囲気ではないものの、想う気持ちは皆一緒で、安否を案じている。

 

数時間が経過した頃、『手術中』と書かれた赤いランプの光が消えた。

リョウが真っ先に待合室を飛び出し手術室の前まで来たところで扉が開き、担当医が退室した。

 

リョウ「先生、リサと子供は?」

 

待合室から手術室まで大した距離ではないが、緊張と不安のせいか、リョウの息は上がっている。

 

「無事に産まれましたよ。母子共に健康ですよ」

 

リョウ「そうですか。良かった…」

 

無事に出産出来たことを知り、一気に緊張の糸が切れ力が抜け落ちていく感覚に陥り体を壁に預ける。

後から小走りで来たアレク達も安堵の表情を浮かべていた。

 

無事に出産を終え、暫く時間が経過した頃になり面会となった。

 

リサ「やっはろ~。無事にあたしのベイビー産まれたよ」

 

病室に入ると、リサは出産直後とは思えぬ、疲弊していない朗らかな笑みを浮かべリョウ達を出迎えた。

その腕の中に優しく包まれているのは、産まれたばかりのリサの子供。

母の温もりに安堵仕切っているのか、すやすやと可愛らしい顔で眠っている。

 

アレク「お前がママになるんだよ!」

 

リョウ「間違ってはないけどそのセリフはやめろ。リサ、おめでとう。よぉ頑張ったね」

 

リサ「ちょ、頭撫でるなって。もうそんな歳じゃないんだし、一児の母親なんだから」

 

リョウ「わしにとっちゃ何年経とうが子供の頃と変わらん可愛らしい存在なのよ」

 

リサ「よくそんな恥ずかしい言葉が言えるね~。可愛いのは今はあたしじゃなく、この子でしょ?」

 

ピコ「ホント可愛いね~。僕には子供を産むことはできないけど、リサがこの子を産んだんだって思うと感動しちゃうね」

 

アリス「ピコは男云々の前に消しゴムだから人間の子供を産むことはないだろうね。自分の体から出る消しカスとかじゃない?」

 

ピコ「なんか酷い!」

 

アレク「取り敢えず出産祝いとして10万ドルPON☆と渡しとくぜ。あとタンコブ500個くらい準備しといたぜ」

 

リサ「あら、そんなにくれるなんて嬉しい…と言っていいのか微妙ね。どれだけのコブロンが犠牲になったんだろ…」

 

アレク「怒って数十体が襲いかかって来た時はほぼイキかけたぜ。コッコ百数羽に襲われたトラウマが蘇る。アフガニスタンを思い出す」

 

リョウ「わしは忘れたい。ってか何故にアフガン?」

 

ピコ「そんなことより、この子の名前は決めてあるの?」

 

アリス「待って、私が名付け親になるよ。『ミュミャリャツァオビュビュンピピュプリャプピフンドシン』とかどうかな?」

 

リョウ・リサ「殺すぞ?(ガチ)」

 

アリス「じょ、冗談だよぉ♡」

 

リサ「答えだけど勿論名前は決まってるよ。この子の名前は…『愛莉』よ」

 

アレク「愛莉か…良い名前じゃないか」

 

優美で、可憐で、清楚で、太陽のように明るく笑顔を振り撒く、愛のある子に育って欲しいという、リサの想いが込められた名前。

リサの母親として愛が最大限に込められている。

 

リサ「あたしの元に産まれてくれてありがとね、愛莉」

 

愛おしく愛莉の頬を撫で微笑むリサの表情は幸せ以外のなんでもなかった。




来年も『ユグドラシルメシア』をよろしくお願いします!
皆さん、よいお年を!
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