今回は短めですが、記念すべき本編100話目の投稿です!
ピコ「まさか今回の任務の主犯を連れて帰ってくるなんて夢にも思わなかったよ」
リョウ「同感じゃ」
カイ「くっ…殺せ!」
リサ「捕虜になった女騎士みたいなセリフ言った奴初めて見たよ」
リョウ「…で、こいつホンマにこのまま捕らえたままにしとくんか?」
リサ「もちろんさ(某教祖様)」
激闘の末に敗北したカイは手頃な木の側に座った状態で縄で縛られ拘束されていた。
任務を無事にやり遂げ、住んでいる世界に帰還した。
暴威を振るわれたり逃走を図る前に早々にリサがカイを拘束した。
予想の斜め上を行く珍客にリョウは難色を示し、時空防衛局に差し出すか処刑するよう提案した。
本来任務で討つべき筈の存在を連れ帰るなど言語道断。
況してや闇を摂取するために人を喰らう存在、万が一取り逃がすことがあろうものなら、住居している世界の人間にも危害が及ぶ。
未然に防ぐためにもリョウが処分を下そうとしたが、リサが必死に待ったをかけカイを庇った。
必死に懇願する態度を見て、渋々ながらも事情を聞き入れたため殺戮が行われることはなくなった。
カイ「てめえ、俺を縛り付けて何するつもりなんだ!」
リサ「悪い妖怪さんには反省してもらわないといけないからね。そこで自分の罪を数えてなさい」
カイ「罪だと?今更数えきれるか!ぐぬぬぬ…くそっ、ほどけねぇ…!」
リサ「あたしの封眼の力が込められた縄はそう簡単には振りほどけないよ。あと闇の力を使うこともできないから」
カイ「くそ…ホントに人間かよ。化け物め…」
リサ「化け物?違う、あたしは悪魔だ…!(ブ○リー)」
リョウ「殺すのはやめにしといちゃるけど、こいついつまで拘束するつもりなんよ?時空防衛局にこいつを保護していることが漏洩されるのも時間の問題やで」
リサ「ごめん、無理を言ってるのは分かってる…でも、お願い…あたしと、カイに、時間を頂戴…!」
ピコ「流石に今回は…」
リョウ「……いや、リサを信じてみよう。リサがこいつが変われる希望があるから、確証があるからこそ生け捕りにしたんやから、それに賭けてみちゃるわ」
ピコ「はあ…リサには甘いんだから。今回の任務はリョウに一任されてた筈なんだから、時空防衛局に何か言われても知らないよ?」
リョウ「今更どうこう言われようが嫌われようが頗るどうでもええわ。嫌いになりたきゃお好きにどうぞじゃ。ピコは知らぬ存ぜぬで貫き通しててええからな」
ピコ「お目付け役としてほぼ行動を共にしてるから無理があるんじゃ…」
リサ「ありがとう、リョウ。いつもあたしの我が儘を聞き入れてくれて。でも、あたしを救えなかったことを悔やんでやってくれてるなら…」
リョウ「それもある。でもの、わしはリサのことが大好きじゃけえ、大切な存在じゃけえ一緒にいたいし、守りたいって思っとるんよ」
リサ「わぁ~お、大胆。ありがとね、素直に嬉しいよ」
カイ「おいてめぇら、俺の前でイチャついてんじゃねぇよ」
リョウ「恋人のような関係じゃないわい。それよりもっと深い縁で繋がっとるんじゃい。あーそうじゃ。一応伝えておくんじゃけど…」
カイ「な、なんだよ…」
リョウ「もしリサと愛莉に何かあったら、死ぬより惨い目に合うから…その時は覚悟しとけ」
全身に鳥肌が立った。
耳元で囁かれた脅しの言葉。
地の底から膨れ上がってきたかのような低声。
人間から発せられてるとは思えぬ純粋な殺意を間近で感じ取り、カイは思わず身震いした。
今まで何度も殺意を向けられたが、リョウが放つ殺意は尋常ではなかった。
20代前半の見た目で出せるものではない殺意は、最早狂気とも呼べる。
冗談抜きで、リサと愛莉の身に危害が及ぶようであれば殺しに来ると確信できる。できてしまう。
リョウ「それじゃ頼むで、人喰い妖怪さん。リサとわしが望む、そして何より、お前自身が納得できるような結末になることを祈っとるよ。リサ、一応気を付けてな」
リサ「えぇ、分かった。ありがとね」
リョウ「あいよ。ピコ、行こうか」
ピコ「了解!リサ、また来るからね!」
エクリプスの壊滅に向け、召喚したワールドゲートを潜り二人は去っていった。
リサ「さて、あたしは家に戻って家事をしなくちゃいけないから、カイは大人しく反省してな。あたしは優しいから水でもかぶって反省しなさいとは言わないから、座っとくだけでいいわよ」
カイ「だったら縄で縛る必要ねえだろ!さっさと離しやがれ!」
リサ「あ、バイトの時間だ!それじゃ、チャオ!」
カイ「今さっき家事って言ってただろうが!…って、ホントに行っちまった…」
屋内へと駆け足で走り去っていくのを傍観し終え、その場に残されたカイは考えることを諦め、大きく溜め息を吐きながら真上に首を傾ける。
風に揺られる木の枝葉、淀みが一切ない澄み渡る空、自由気ままに翼を広げ青空を翔る鳥。
平和という二文字が浮かぶ、変哲もない風景を何か考えることなく無心で見つめる。
カイ「なんか、こうやって何も考えずにボーッとするの久し振りだな。戦いばっかりだったからな…」
人間を喰い散らかし、人間から忌み嫌われ、常に狩るか狩られるかの日々を送ってきた。
好き好んで人間を喰っているわけではない。
闇を摂取しなければ生きてはいけない。
生物として栄養を摂取し、生きるために食事を行う、この世を生きる生物の理としては当然のこと。
そういう種族として誕生してしまったのだから仕方ないのかもしれない。
そうだとしても、同種を喰らう脅威の存在が出現すれば人間は黙っている筈がなく、抵抗するために有無を言わさず真っ先に殲滅しようと武器を持ち立ち上がった。
争いは新たな争いの種となり、憎しみは新たな憎しみを生む、血で血を洗う戦いが勃発した。
人間と共存を望んでいたわけではなかったが、無益な殺生を望んで行いたくもなかった。
カイの想いなど露と知らない人間は、生活の妨げとなる存在を排除しようと武器を振るう。
襲い来る武力に抗おうと力を行使し殺戮を犯すしかない。
無益な殺戮を行い続け心は荒んでいき、生きるために必要な食事を否定されている嫌悪感が募り、理不尽な武力に晒されカイの心は徐々に自身でも気付かぬ真っ黒な闇に覆われていく。
襲い来る者は全て敵と捉え、形振り構わず殺し、喰っていく。
殺しては喰い、殺しては喰う。
毎日その繰り返し。
生物として当然の狩りだと言い聞かせ、したくもない無駄な殺戮を繰り返す。
何者も信用せず、近寄る者は全て敵だと捉え、力を行使し殺し喰らう。正しく妖怪へと成り上がってしまった。
破壊と殺戮を繰り返す日々に、本来関わることのない異物がカイの住まう世界に出現した。
『世界を喰らう者』、ヴィラド・ディア。
何の前触れもなく現れた異形の怪物は、無差別に人々を喰らい散らかし、世界をも喰い尽くしていく。
カイの暴食とも呼べる食人が戯れだと思える程に。
ヴィラド・ディアが喰い散らかし生じた時空の裂け目に落ちてしまったカイは、別の世界へと流れ着いてしまう。
その世界ではピシャーチャと呼ばれる怪物が跋扈しており、人間達の生活を蝕んでいた。
ピシャーチャは妖怪であるカイも獲物の対象と捉えたのか、世界に流れ着いた途端に襲い掛かってきたが、自慢の闇の力の前に残虐に殺されてしまう羽目となった。
禍々しい力で惨たらしく完膚なきまでに殺戮を行うカイを見ていたこの世界の人間は、カイを新たな脅威と見なし早々に始末しようと武力を振りかざしてきた。
───やはり、どの世界に居ようが、人間は俺のことを忌み嫌い、武力を振りかざしてくるのか。
何処にも馴染めず、誰からも拒絶され続ける。
今に始まった話ではないが、理由も知らず振るわれる武力に心底うんざりさせられる。
人間は、手を取り合うことなど叶わない野蛮な種族であり、自身の餌でしかない。
カイ「まさか人間に捕まっちまうなんてな…まったく、笑えてくるぜ」
武力を持ったとて、非力な人間に変わりはない。
闇の力を駆使すれば簡単に滅することが可能な、群れを成すだけの種族。
そんな劣等種族に、況してや男性よりも非力な女性に敗北を喫した。
信じ難い結果ではあるが事実でしかない。
驚愕や屈辱を最早通り越してしまい、笑えてきてしまう。
カイ「慌てたって仕方ねぇし、ゆっくり抜け出せる機会を伺うとするか」
足掻いたところで仕方ないため、時間経過を稼ぐのと同時に体力の回復のために一眠りしようと瞑目する。
夢の中へと入ろうとしていたが、自分に接近する一つの気配を感じ、嫌々ながらも開眼する。
愛莉「トゥットゥルー!キャンディたべる?」
無邪気な笑顔を浮かべる幼女、愛莉が視界に入った。
紙に包まれた飴を渡そうとする愛莉からは敵意は感じ取れず、興味本位で歩み寄ろうとしている様に捉えられる。
カイ「……いらねえ」
愛莉「え~、おいしいいのに。じゃああたしがたべちゃうね!」
飴を口に入れ美味しさに頬に手を当て跳び跳ねている様子はとても可愛らしい。
見ず知らずの誰かとお遊戯する積極的で活発な幼子なのだろうと思ったが、それ以上に引っ掛かることがあり声を掛ける。
カイ「お前、俺のことが怖くねぇのか?」
愛莉「え?」
カイ「俺みたいな存在が怖くないのかって」
愛莉「え?」
カイ「いやこんな近くにいるなら聞こえてるだろ?」
愛莉「あんだって?(ひ○みばあさん)」
カイ「やっぱり聞こえてるだろ!おちょくってんのかブッ飛ばすぞ!!」
愛莉「ごめんなさい、たのしかったからついふざけちゃった。えっと、おにいさんのこと、こわくもなんともないよ!」
カイ「……言っとくが、俺は人間じゃねえ。妖怪だ」
愛莉「ようかいさん!?」
純粋な疑問。何故目の前の幼女は恐れを抱いていないのか。
外見は普通の人間と何ら変わりはないのだろうが、発せられる雰囲気から人間ではないと察せられることが殆どだ。
老若男女問わず、自分の姿を見るや否やある者は敵意を抱き武器を振りかざし、ある者は恐怖を覚え自己防衛のために逃走を図る。
きっとこの幼女も同様の反応を示す。
得体の知れぬ人間に似た怪物に襲われる純粋な恐怖に支配され逃げ惑うだろう。
愛莉「すっごーい!(フレンズ並感)」
カイ「え?」
愛莉「ようかいにあったのはじめて!」
カイ「お気楽すぎだろ…。俺は人を喰っちまう妖怪なんだぞ。それでも怖くないのか?」
愛莉「そんなわるいようかいにはみえないからこわくないよ~。あたし、しゃべるけしゴムとか、エルフとか、まおうにもあったことあるから、なおさらこわくないよ!」
カイ「お前の知人がヤバそうな奴ってのは分かった…」
愛莉「ようかいさんはわるいことしちゃったからおかあさんにつかまっちゃったの?」
カイ「悪事を働いたつもりはねえが、そういうことらしい」
愛莉「じゃあ、はんせいすればじゆうになれるんだね!はやくあそびたいからはんせいしてね!」
カイ「反省することなんてないんだがな。それにお前と遊ぶつもりなんて微塵もない。喰う気も失せるぜ…うざいから向こう行ってろ」
愛莉「え~ようかいさんとあそびたいのに~。あ、そうだ!ようかいさんつかまってるじかんひまだよね?あたしがあそんであげるね!」
カイ「はあ?俺は視界から消えろって言ったんだぞ」
愛莉「あたししってるよ。そういうこというのってさみしいからなんだよね?」
カイ「幼いながらにして要らん知識を叩き込まれてるな。お前のバカな親の顔を見てみたいもんだぜ」
リサ「そのバカでアホでギギ○ブラ並に気持ち悪い親はあたしなんだけど?」
カイ「うわっ!?いつの間に俺の背後に…ってかこいつの母親お前かよ!あとそこまで侮辱してねえ!捏造すんな!」
リサ「そうです、あたしが愛莉の母親です。あたしと愛莉の悪口言うと理不尽にも吹き飛んだおっさんみたいな目に合うよ。あ、そういやあの作品の主人公の名前もカイだったね。なんたる偶然!いとおかしwww」
カイ「なんかよく分かんねえけどムカつくな」
リサ「ほら愛莉、お昼ご飯にするから家に戻るわよ」
愛莉「はーい。じゃあようかいさん、またくるからね~!」
リサに手を引かれながら家に戻るまでの間、無邪気に笑みを浮かべながら空いている片方の手を振り続けていた。
カイ「俺のことを恐れないのか…」
予想外の反応をされ鳩が豆鉄砲を食らった顔になってしまった。
愛莉と言う幼女の周囲に人間以外の人種が存在しているという点もあるが、恐れを知らぬ、危機回避能力がない馬鹿とも言える。
純粋に接してくれるのは幼さ故の無知と、初見の妖怪という存在を知りたい探求心があるからかもしれない。
カイ「悪くは、なかったな…」
峻拒され続けてきたが、愛莉は純粋に友好関係を築こうと近寄ってくれた。
初の対応に困惑は勿論だが、それ以上に、感じたことのなかった、心の温もりを僅かに感じたことの方が困惑が大きい。
心臓が浮かび上がるような、締め付けられるような、奇妙な感覚。
カイ「……でも、罠かもしれないからな。油断は出来ねえ」
子供を利用して懐柔してくる可能性も充分有り得るため、気を許してはならない。
捕らえられている理由も真実か定かではないため、信頼するのは危険が伴う。
カイ「兎も角、今は様子見だな」
特殊な力が込められた縄は全力を注いだところで梃子でも動かないため、脱出する機会を伺うことしか出来ないのが現状。
愛莉が来たことにより阻害されてしまった睡眠を取るため再度カイは瞑目するのだった。
リサと愛莉と出会ったことにより、人間と共に歩みたいという萌芽がとなったことに、現在のカイは気付く由はない。
次はいつの投稿になるか分かりませんが首を長ーーーくして待っててください!
では一狩り行ってきます!笑