ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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暇すぎるゴールデンウィーク(泣)
喫茶店に籠って小説を書くことしかない!
いや~筆が乗るぜ~!(白目)


第101話 小さなてのひら

愛莉「んばばんばんば♪めらっさめらっさ♪」

 

カイ「……鬱陶しいな。なんだその踊りは?」

 

愛莉「きにいらなかった?じゃあべつのおどるね!ジェット、ジェット、ジェットマン♪」

 

カイ「違う、別のを踊れと言ってるんじゃない」

 

愛莉「あ、これおどりじゃなくてたいそうだった。てへっ☆」

 

カイ「……取り敢えず目障りだから向こう行ってろよ」

 

愛莉「やだ!まだほかのおどりみせてないもん!それじゃつぎいってみるよ!」

 

カイ「はあ~…面倒だな…」

 

一日中暇を持て余している愛莉は気が向けばカイの元へと訪れ遊んでおり、為す術がないカイは嫌々ながらも相手をするしかなかった。

 

何か特別なことをしたわけでもなければ、長い付き合いではないのに、何故こんなにも懐かれてしまったのか検討がつかない。

幼い人間の少女と交流など皆無な日常を送ってきたため、接し方など分かる筈もないため、困惑するなと言う方が無理というものだ。

矢鱈と絡んでくる鬱陶しさより、何故好意を持たれ関わろうとしてくる困惑と疑問が勝っていた。

 

愛莉「つぎにおどるのは、『Snow halation』!」

 

カイ「………もう好きにしろよ」

 

どういった意図があるが分からないが、眺めることしかできないため熟考するだけ無駄だと瞬時に悟る。

大きな溜め息を一つ吐き、愛莉の戯れを黙視することにした。

 

別の日。

 

愛莉「みてみて!あたしがつくったつちのおにんぎょう!」

 

カイ「あ?…まあ、ガキにしてはよく作れてると思うぜ。見たことねぇけど、なんかの動物か?」

 

愛莉「このまえアニメでみたようせいさん!モー○リっていうなまえ!」

 

カイ「聞いたことねぇな。ってか何個作ってんだよ」

 

愛莉「すごいでしょ!さいこうでしょ!てんさいでしょ!ほかのはサボ○ンダー、チョ○ボだよ!」

 

また別の日。

 

カイ「今日はなんだよ?」

 

愛莉「あたしのおきにいりのほんをもってきた!」

 

カイ「本?俺は愛読家でもなんでもないんだ。興味はねぇ」

 

愛莉「でもひまそうにしてるからよんであげる!おかあさんがよくよんでくれた『金色のマリオネット』ってなまえのえほんだよ!」

 

カイ「俺に拒否権はねぇのか…」

 

更に別の日。

 

愛莉「みてみて!きれいなおはな!」

 

カイ「花を見る趣味もねぇ。言っとくが花を食ったりもしねぇからな」

 

愛莉「おはなをかざりにきたの!おなじけしきばっかりじゃいやになるとおもって!」

 

カイ「んなこと気にもしてねぇ」

 

愛莉「おはなをみていればすこしはたのしくなるかもよ!このおはなは『ルルイエ』っていうおはな!」

 

カイ「はいはい綺麗だな」

 

愛莉「こっちはなんだっけ?アレクがもってきたんだけど、おはなじゃなさそう。『邪念樹』っていってたっけ?」

 

カイ「おい何だその物騒な植物は?禍々しい気配がするから近付けるな」

 

愛莉「こっちはいきてるおはなさん!アリスがおひげがはえたおじさんのいるせかいからもってきてくれた!」

 

カイ「今度は何のバケモンだよ!?牙生えてるし舌なめずりしてるし俺のこと食べる気満々だろこいつ!おいバカ近寄せてくるな噛まれるだろうが!」

 

また更に別の日。

 

カイ「流石に今日は来ないか」

 

この日は土砂降りの雨が降り注いでいる。

分厚い灰色の雲が空一面を多い尽くし、大粒の雨が地面を容赦なく打ち付けている。

木陰になっている場所とは言え、大雨を凌ぐ程ではないため、カイは雨に打たれ全身ずぶ濡れになってしまっていた。

当の本人は雨に濡れることなど気にする様子はなく、ただ俯き地面を眺めている。

 

カイ「………やけに、静かだな」

 

雨が降る音だけしか響かない。

元々自然が広がる閑静な場所だけあって、尚更雨の音が際立つ。

従来自分が生きていたこの世界はこんなにも静寂に包まれていただろうかと思える程に、静かだった。

 

カイ「愛莉…とか言ったか?あいつがいないからか」

 

リサに捕らえられて以降、特に用もなく戯れのために再三訪れていた幼女、愛莉のことが脳裏を過る。

毎日のように語り掛けられ、他愛もないことで笑っていたが、鬱陶しいと思い空返事をするか右から左へ受け流すだけだった。

 

喧騒だと思っていたが、現れなくなった途端、物寂しさを感じた。

生まれてこの方、誰とも関わることなく過ごしてきたからこそ、誰かと寄り添ってもらう、人の温もりが恋しく思えてしまった。

 

現在の曇天と同様、鬱屈になっている自分に少々苛立ちを覚えてしまう。

自分は人を喰らう妖怪で、相手は獲物となる人間。

敵対する、相容れぬ存在と絆を結ぶことなど有り得ない。

頭で理解しているからこそ、物寂しさを感じる自分自身にも苛立つと同時に、困惑し煩悶する。

 

カイ「俺、どうかしちまったのか…?」

 

魔法や幻術の類いを自身に掛けてきたんじゃないのかと、馬鹿げた妄想までしてしまう自分に失笑してしまう。

 

好意を持ち接してくれた人間と触れ合う機会など訪れなかった。

だからこそ接し方も分からず、適当に流しているだけだったかもしれない。

他愛もない話を聞き流すことはできても、純粋な想いまでは流れず、カイの心に蓄積していたのだろう。

夢にも思わなかったが、人間に対して心を許そうと葛藤していた。

 

カイ「まさか、この俺がな…」

 

未だに信じ難い真実から目を背けたいからか、ここに来て何度目かも分からぬうたた寝に入ろうとした。

瞑目し夢の中へと堕ちようとした砌、妨げをするかのように騒々しい音が嫌でも聞こえてきた。

雨が降り頻る自然の音の中に紛れる、力強く水を弾き駆け寄ってくる足音。

 

愛莉「うわぁ!びしょびしょになってる!」

 

全身を強く打ち付ける大粒の雨をものともせず家から直往邁進してきたのは、カッパを着た愛莉だった。

 

カイ「ふん…こんな大雨だってのに、ご苦労な奴だな」

 

愛莉の来訪を望んでいたわけではなかったが、騒がしくも心地好く感じる溌剌とした声に思わず頬が緩む。

 

愛莉「そんなにぬれてたらかぜひいちゃうよ!」

 

カイ「余計なお世話だ、って何すんだよ」

 

愛莉「だってかぜひいたらかわいそうだもん!おかあさんももっていってあげてっていってたよ!」

 

愛莉はカッパの中に入れていたタオルを取り出し、優しくカイの顔を拭いてあげた後に、精一杯背伸びをし頭の上に置き、更にこれ以上雨に打たれ濡れないよう大きめの傘を広げ、カイの側に倒れないよう調整し置いた。

 

愛莉「これでもうかぜはひかないよ!あたしえらい!」

 

リサ「傘を置いておくだけじゃ風で飛ばされちゃうわよ」

 

愛莉「あ、おかあさん!」

 

愛莉とは反対に静かに歩み遅れてやってきたリサが差していた傘を置き、自身が雨で濡れることすら厭わず、突風で飛ばされないよう幹に傘を紐で結び付けた。

 

カイ「何でてめぇまで…」

 

リサ「愛莉に感謝しなよ。愛莉が寒そうだし風邪を引いたら大変って何回も言うんだから。まああたしも体調を崩してほしくないとは思ってるから。べ、別にカイのことが心配ってわけじゃないんだからね!」

 

カイ「一々わざとらしいツンデレを発動しなくていい」

 

リサ「あたしは兎も角、愛莉には感謝しな。本気で相手を想っているからこそ、大切な存在だからこそ守ろうと行動してくれたんだから。想うのは簡単だけど、行動に移すってのは案外難しいことだからね。それができる愛莉は偉い!流石あたしの娘!」

 

愛莉「えへへ~。やっぱりあたしえらいって!カイもほめて!」

 

カイ「はいはい偉いですねお利口ですねよくできました」

 

リサ「想いが全く籠ってないわね。想いをしっかり伝えられるようになるまで『ヘルアンドヘヴン』を叩き込む…言いたいところだけど、あたしも愛莉もこれ以上雨に打たれていると体もだけど、晩御飯のチキン冷めちゃったってなっても嫌だから家に戻るわ。それじゃ、Hasta la vista, baby」

 

愛莉「カイじゃあね~!I'll be back!」

 

リサの手に引かれ帰っていく愛莉はやはり笑顔を浮かべ、一生懸命に手を振っている。

何処か名残惜しそうな瞳で二人が帰るのを見送る。

雨の降り頻る音が先程よりも寂しく聞こえるのは、恐らく気のせいではなかった。

 

 

~~~~~

 

 

カイが木に縛られ二週間の時が流れた。

相も変わらずカイは縛られた状態のままで、当初と比較しても変化した様子は見受けられない。

縛られた初日はどのような策を用いて逃亡を図るか

企てていたが、今は妙案を考える様子は一切見られなかった。

 

愛莉「おーい!カイー!」

 

今日も今日とて、元気溌剌な愛莉がカイの元へと訪れた。

項垂れていたカイは快活な声が聞こえると、カイは即座に目線を愛莉の元へと向けた。

 

カイ「今日も来たのか」

 

愛莉「もっちろん!」

 

カイ「それで、今日は何をしに来たんだ?」

 

愛莉「きょうはね!おかあさんといっしょにつくったおにぎりをたべてもらいたいの!カイ、ずっとなにもたべてなくておなかすいてるとおもったから!」

 

カイ「俺は人間と違って何日も食わなくても死にはしないっての」

 

無愛想に言った直後、ぐうぅ~と気が抜けるような腹の音が響く。

発言したことと相反する体の反応を見せたことに羞恥心を隠すように俯くカイに愛莉はくすくすと笑みを溢す。

 

愛莉「やっぱりおなかすいてるじゃ~ん!カイのおなかもはらペコった~っていってるよ!ということで、はい、あーん!」

 

持ってきた皿の上に並べられたおにぎりを一つ掴み、カイの口元へと近付ける。

人間が好む食べ物を食わずとも勿論生きてはいけるのだが、強情に振る舞うより今は空腹感が勝っていた。

拒んでも無理矢理口の中へと捩じ込んでくるような気もするので、仕方なくという面持ちで差し出されたおにぎりを一口食べる。

 

具は何も入っていない、塩のみで味付けされたシンプルなもの。

空腹感を満たすしょっぱさが口内に広がる絶妙な塩加減だった。

 

愛莉「どう?おいしい?」

 

カイ「あぁ。美味いぜ。ホントに…」

 

愛莉「まだいっぱいあるからいっぱいたべてね!」

 

手が縛られているため自分で食事をすることができないため、愛莉がおにぎりを一つ一つ落とさないよう丁寧にカイの口へと運んでいく。

喉を詰まらせないよう途中で水を与えてくれる愛莉の純粋な優しさにも触れながらも、カイはおにぎりを食べ進めていく。

 

愛莉「あたしもいっこたべよ!いただきます!…うん!デリシャスマイル〜!」

 

カイ「……おい、頬に米が付いてるぞ」

 

愛莉「ん~?あ、ホントだ!でもカイのほっぺたにもおこめいっぱいついてるよ!」

 

カイの口元や頬にも米粒が付いている様子に愛莉は朗らかに笑みを浮かべている。

人の顔を見て笑うなんて不躾だなと、以前のカイなら思ったのかもしれない。

だが今は、常に笑顔を絶やさない少女が輝かしく思えている。

 

愛莉「あれ?カイ、なんでないてるの?」

 

カイ「え…?」

 

愛莉に指摘されるまで気が付かなかった。

自身の目から涙が零れ落ちていることに。

何故泣いているのか、理解するのに時間は掛からなかった。

 

平穏な時間と場所、誰かの温もりを欲していたから。

 

常に生と死が隣り合わせの殺戮が耐えぬ日常。

生きるために人を喰らうことで闇を接種する必要がある。人間という種族は餌でしかない。

それがカイの妖怪としての種族の食物連鎖の形。

 

生物としての理仕方ないと言えばそれまでだが、カイは倦厭とした想いを胸に秘めていた。

望んでもいない殺戮を繰り返す日々に嫌気が差さないわけがない。

聞く耳を持たぬ人間の理不尽な力を振るわれ続け、自身の心が日に日に荒んでいくのが嫌でも感じてしまう。

 

願うならば、可能であれば、人間と、誰かと寄り添い歩んでいきたい。

頭の片隅には叶う筈もない願望があった。

現実に形にすることなど不可能な悲願。

歩み寄ろうにも拒まれる運命にあるならば、最初から要らぬ妄想などするのではなかったと後悔した。

 

人間との闘争、異世界への漂流等と荒れ狂う激動な日々の中で出会った、リサと愛莉の親子。

今まで邂逅してきた人間とは明らかに違う対応を見せ、困惑を隠さずにはいられなかった。

殺意の色を一切見せず、歩み寄ろうとしてくる存在に、警戒せずにはいられなかったが、次第に人の温もりに触れ警戒が緩まっていった。

最初はリサや愛莉の対応を毛嫌っていたが、この何気ない日常こそが、特に意味もなく喋り戯れる時間と場所こそが、自分が求めた到達点なのではないか。

 

カイ「俺は、ここにいて、いいのか?」

 

愛莉「ん?どういうこと?」

 

カイ「俺は…人を殺しすぎた」

 

純粋な愛莉を見ていると、自分は穢れすぎている。

無辜な者達を、自身が生きるために喰らってきた。

人間に仇をなす自分が赦免されることなど有り得るのだろうか。許されるのだろうか。

 

リサ「愛莉の前で言うのもあれだけど、そんなこと言ったらあたしだってこれまで沢山の人を殺してきてるよ」

 

愛莉「あ、おかあさん!」

 

カイ「お前とは、訳が違う」

 

リサ「そうだろうね。でも、殺めてることに何ら変わりはない。エクリプスっていうあらゆる世界を乗っ取ろうと企む悪い奴等と戦ってきて、何人もの人をこの手で殺してきたよ。その殺してきた人の中にはあたしみたいに家庭を持つ人もいるかもしれない。守るべき人が、壊したくない何かがあった人もいるのかもしれない。だからと言って悪事を働く人を看過することなんて到底できないから、あたしは戦っている。沢山の殺めてきた人の十字架を背負ってね」

 

カイ「…お前の殺めてきた理由は、正当なものだと、俺は思う。だが俺のは…」

 

リサ「他人であるあたしからすれば、カイのも正当なものだよ。前提として殺しは良くないとしても、カイのは生きていく上で欠かせない食を補うためであり、自己防衛でその力を振るっている。種族は人間じゃなく妖怪なんだから、人間の理と大きく異なるなんて当たり前なんだから。あたしはリョウ達のお陰で見聞を広めることができたからこそカイの立場も心情も理解できるし寄り添うこともできるからこそ、断言できる。カイは何も悪くなんてない」

 

カイ「っ!有り難いが、俺は許されていいのか…?」

 

リサ「もし自分自身が許せないってのなら、今ここから始めていけばいいんじゃないの?イチから、いいや、ゼロから!」

 

カイ「………」

 

愛莉「おかあさん?」

 

リサ「我ながら色々と台無しね。ここから始めていけばいいってのはホントよ。誰かを殺したっていう罪は消えない。一生付き合って生きていくしかない。だったら、償う生き方をしていけばいい。一人で無理なら、誰かに頼ればいい。今のあんたは、一人じゃないでしょ?」

 

愛莉「カイはひとりぼっちじゃないよ!あたしたちがいる!ずーっといっしょ!」

 

カイ「……あぁ、そう、みたいだな」

 

涙を流しながらも浮かべる笑みは、人を喰らう邪悪な妖怪のものとは思えぬ輝かしく優しい笑みだった。

 

リサ「今のカイ、良い顔してるよ。…さて、もういいかしらね。解除っと」

 

完全に動きを封じていたカイを縛っていた縄がほどかれた。

拘束から解放され久々の自由を手に入れたせいか、大分動きが鈍っており、立ち上がるのも若干ぎこちない動きをしている。

 

カイ「何で解放したんだ?お前達を殺す可能性だってあるかもしれねぇのに…」

 

リサ「必要ないって思ったからよ。カイは心の底から望んでいたものを見つけたみたいだから、あたし達に攻撃を加えないって確証があったってだけ。女の勘みたいなものだけどね。それに、襲うんだったら拘束を解かれた瞬間に襲ってるでしょ?」

 

愛莉「やっとあそべるね!そのまえに、ほっぺたについてるおこめとってあげるからしゃがんでー!」

 

解放されたカイ本人よりも歓喜していたのは愛莉だった。

何処までも純粋で優しい愛莉の笑顔に釣られ、カイも自然と笑みが溢れてしまう。

カイが人の温もりに触れ、知ることができたことが喜ばしく思うリサも二人の様子を見て女神のような慈しみのある微笑みを見せていた。

 

愛莉「おこめとれたよ!はやくあそぼ!ほら、こっちこっち!おかあさんもいっしょにあそぼ!」

 

リサ「今日は予定はないし、一日遊ぶわよー!うちの愛莉はガン○ルガー並に元気爆発してるからカイもしっかり遊んであげてよ」

 

カイ「あぁ…いくらでも相手になってやるぜ」

 

二人の笑顔が太陽よりも輝いて見える。

この表現はカイにとって、比喩でもなんでもないだろう。

自身達の敵だと独断し襲い来る人間を殺し喰らうだけの殺伐とした陰々滅々なこの濁世に照らす暖かな光のような存在。

どれだけ苦肉しようが、どれだけ手を伸ばそうが、決して手に入ることのないと思っていた温もりが、確かに目の前にあった。

 

温かさと心地好さを感じる小さな手に握られながら走り始める。

中腰になりながらも、愛莉の手を離さないよう握り締め愛莉の後に続くカイの後ろからリサが微笑みながらついていく。

その様子は紛れもなく、家族のようだった。




皆さんはゴールデンウィークは何して過ごされてますか?
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