ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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これでようやくリサの過去についての話は終わりです!
いや~短いようで長かった~!
それではどうぞ!


第102話 青き清浄なる世界のために

リョウ「流石と言うべきなんじゃろうけど……さて、どうしたもんかのう」

 

リサ「やっぱり厳しいかしら?」

 

ユンナ「可能ではあるのですが、かなり無理を押し通せなければなりませんわ」

 

リサは現在リョウと共に時空防衛局本部へと訪れユンナと対面をしていた。

当然だが談笑をしに来たわけではない。

カイと共に生活することが可能かどうか交渉をしに訪れたのだが、二つ返事で通るような単純な問題ではなかった。

 

ユンナ「ヴィラド・ディアの被害者とは言え、異世界の人間を喰い殺す野蛮な所業を繰り返す、その世界の均衡と平穏を崩し兼ねない存在。任務の抹殺対象であった存在を捕らえ異世界に移動させ匿っただけでも問題ですのに、同棲するなど是認できない事象ですわ」

 

リサ「ユンナの権限でもやっぱり難しい?」

 

ユンナ「可能ではありますが、先程も申したようにかなり無理を押し通すしかありませんの。本来ならわたくしだけではなく、様々な部署の幹部達の署名も必要になってきますの。全ての部署からの承諾を経て実現できるものですが、そのような横暴に似た案を飲むと思います?」

 

リサ「………確かに、そうね。でも、必ず実現してみせる。あたしが重鎮達を説得する。カイのために、そして愛莉のためにも」

 

ユンナ「意気込みは大変よろしいのですが、リサさんの立場を考えると不可能に近いと思いますわよ?あなたは局員ではなく、ヴィラド・ディアによる被害に遭い保護された身です。それに…申し上げにくいですが、リサさんに対して他者の目はよろしくはないですから」

 

リサ「うん…分かってる。来た時から変わってはいないし、慣れたつもり…」

 

リサの戦闘能力はユグドラシルメシアの面子に鍛え上げられたこともあり、時空防衛局の局員達とも見劣りしない、いや、それ以上の実力を誇ることから、任務の突破口を開く重要な人物でもある。

だが、戦力になるだけで、異物を見るかのように奇異な目で見られることが大多数だ。

 

未だに謎の多い亜空流に巻き込まれながらも生還し、特殊な力を得た、稀に類を見ない存在。

特殊な力を得てしまったが、種族が変化してはおらず、自我があるあたり異常は見られないため正常という結果が出ている。

だが、局員達の中にはリサを良しとしない者が多数存在する。

途中で救助されたとはいえ、ただの一般人が亜空間に放り出され亜空流に呑まれ生還する例など歴史上存在しない。

今は何事もなく平穏に過ごせてはいても、後々重大な事態へと発展する可能性も決してゼロとは言えない。

危惧して遠目から眺めるだけなのが現状ではあるが、中には実力行使で強制的に排除しようとする過激な思想の局員もいると噂されている。

手が出せないのは、ユグドラシルメシアの面々と縁があるのに加え、リョウが保護者として付いているからだろう。

 

リサが第三者から余計な手出しをされない要因ではある反面、更に異形だと思われる要因にもなってしまっていた。

リョウがユグドラシルメシア同様、世界を救うためとはいえ、相当滅茶苦茶な行動を実行してしまうのもあるが、それ以上に過去に犯してしまった行動が程度を越える大罪だったから。

千年近く前の出来事だが、時空防衛局の記録や全世界の記憶が保管されてある『コア・ライブラリ』にもリョウの犯した大罪は記されているため現代を生きる局員でも認知している者は少なくない。

リョウが庇護し共に行動しているという理由だけでリサの風評被害となってしまっていた。

 

理不尽極まりないことだが、当の本人は何処吹く風といった様子。

実際、時空防衛局に迷惑を被っているわけではないため、周囲の目や真実でもない声を気にするだけ無駄と思うようにしていた。

 

リョウ「………あまりよろしくはあらへんけど、良い方法はあるで」

 

ユンナ「心を読まなくともリョウさんの考えは大方予想はできますわ。強引な手段を用いるようですが、再度あなたの評判が下がることに…」

 

リョウ「構わん。わしの周りの評価は千年前から元々マイナスじゃ。今更悪くなろうが知ったこっちゃないわ」

 

リサ「何するかは分かんないけど、あたしのために身を削ろうとするならやめてほしい。自分を大事にしてほしいし、ユグドラシルメシアの名に泥が着くんじゃ…」

 

リョウ「わしはメシアの一員ではあるけど別物みたいな扱いやから気にせんといて」

 

リサ「別物ってどういうことなの?前から千年前とか言ってるけどぜんぜん歳も取ってないし、何かあたしに隠してることあるよね?」

 

リョウ「それはまた追々話すけぇ今はリサの…」

 

リサ「そうやって今まで何度もはぐらかしてきたじゃん!いい加減教えてよ!あたしもう子供じゃないし、何も真実を知らないままこれから過ごしていくなんて嫌だよ!リョウとあたしは何か関係があるんだよね?局員達の反応を見てれば嫌でも分かってきた。だから、お願いだから教えて!」

 

ユンナ「リョウさん、隠し通すには潮時ではありませんの?今世紀まで特別関与せずに済みましたが、今回は異例ですわ。真実をお教えになった方が話も進捗するのではありませんか?」

 

リョウ「いや、そうかもしれへんけど…」

 

リサ「話してくれないならいい。あたしはあたしの力でなんとかしてみせるから」

 

どのような理由があり真実を語ろうとしないのかは知らぬリサは逡巡しているリョウに痺れを切らし踵を返し扉へと歩んでいく。

 

リョウ「…待て。分かった、話すわ」

 

リサ「何で急に話す気になってくれたの?」

 

リョウ「正直、あらゆる部署から承諾を得るなんて不可能かと思うてな。勘違いせんといてほしいのは、リサの実力では無理というわけやなくて、理不尽、不公平、不合理な理由で話が通らず抹消させられる可能性があるからや」

 

ユンナ「そのようなことは…」

 

リョウ「本気でないって言い切れるんか?昔より改善させられただけで、権力を振りかざし物を言わせる輩は時空防衛局の中にいくらでもおるじゃろ。何年何十年、何百年経過しようが、どの種族にもある心の醜さは消えることはないんじゃけえ」

 

憤怒が込められたリョウの言葉にユンナは言葉が出なかった。出そうとはしなかったと言うべきか。

 

リサ「その言い方だとリョウは時空防衛局と何か一悶着あったってこと、だよね」

 

リョウ「一悶着って言葉で片付けられるのかねぇ~。それも含めて、リサには話すとするよ。話してた方が後々に色々と都合が良さそうやし」

 

先程の会話で憤りの念を沈めるためか、深呼吸をし一息つく。

意を決した瞳でリサに全てを語り始めた。

何故リョウ達が人の寿命を遥かに越える年月を生きているのか。

過去に何があったのかを。

リョウとリサの関係を。

 

リサ「………そう、だったんだ。確かにそれなら納得しちゃう。だからリョウはあたしをこんなにも気に掛けてくれたんだね」

 

口を挟むことなくリョウの話を静聴した。

様々な驚愕する情報に暫し呆然としていたが、一つ一つの話が全ての経緯に繋がり納得した。

特に自身とリョウの関係には。

 

リサ「もっと早く言ってくれても良かったのに。子供の頃だったらまだしも、今のあたしは大人なんだからちゃんと理解できるのに…」

 

リョウの胸元に額をこつんと縋るように当てた。

今まで甘えるような仕草も言動も見せることのなかった気の強いリサがするような行動とは思えない行動は、親愛なる存在にようやく出会えたかのような幸福感から来たものだろう。

過去のことと自分との関係性を頑なに語らなかった不満より、満足感と安堵の方が数倍上回り心を満たしていく。

 

リョウ「わしが忌み嫌われる存在だから、受け入れてくれると思わなかったから言い出せなかったんよ。どんなに恐ろしい存在かは、話を聞いて分かったじゃろ?」

 

リサ「うん。正直リョウは怖い存在だということは分かったよ。でも、リョウは望んでそんな存在になったんじゃないし、望んでその力を得たわけじゃないのは話を聞いて分かったから、怖くなんてないよ。あたしの知ってるリョウは、どんな時でもあたしと愛莉のことを気に掛けてくれる、優しくて誰よりも頼れる存在だから」

 

リョウ「…ありがとう。その言葉だけで、救われた気がするわ」

 

嘘偽りのない、心からの感謝の言葉。

自らの忌むべき過去を知りながらも、拒絶することなく受け入れてくれる存在は多くはない。

だからこそ嬉しかった。

家族同然とも言える、リサから言われると尚更だった。

千年近く戦い続けてきた苦労が報われ、治まることない苦痛が僅かでも和らいだ気がして、目尻に涙が浮かぶ。

 

ユンナ「話して正解でしたわね。自身の過ちを友人や知人に話すことはとても勇気がいることですが、話さなくては理解はしてもらえませんもんね。リョウさんに必要だったのは、話せるきっかけと、話せば理解してくださる方を信じることですわ」

 

リョウ「確かに、その通りじゃね。大体の人は忌み嫌うか恐れるかやったから、信じようにも信じられなくなってきてしもうたからね」

 

リサ「リョウの過去を聞いたら人間不信になるのも無理ないって思っちゃうな…」

 

リョウ「わしの話はもう終わったんじゃし、わしがやろうとしたことを話そうかね。結局自己犠牲になるんやけど、許してほしい」

 

リサ「…釈然とはしないけど、リョウが身を削る理由も分かったから、今回はリョウの案を飲むよ」

 

ユンナ「それで、リョウさんの案というのは?」

 

 

~~~~~

 

 

カイ「まさかこの世界に戻ってくるとは思わなかったぜ」

 

愛莉「いせかいにきたのはじめて!ワクワク!」

 

リサ「元居た世界より物騒だけど、結界を張ったから大丈夫だし、いつもの暮らしはできそうね」

 

リョウ「ただ前と違って応援も何もないから完全に全ての物が自給自足になるけえ、そこだけは許してほしい」

 

リサ「何言ってんのさ。カイと一緒に過ごせる状況を作り出すために知恵を絞ってくれて、それに…またリョウの評判を落とすことになってまでしてもらったんだから、リョウにはホントに感謝しかないよ」

 

カイ「リョウ…だったよな。俺のために身を犠牲にしてくれたこと、感謝するぜ」

 

リョウ「お前のためやない。リサと愛莉のためじゃ。二人がお前を許し必要としてなかったらとっくに時空防衛局に差し出しとるわ」

 

リサ達は元々暮らしていた世界を離れ、別の世界へと移住していた。

その世界とは、カイが時空の裂け目を通じ訪れてしまい、リサと邂逅を果たし激闘を繰り広げた世界。

ピシャーチャという怪物が跋扈する、現実世界の人から見れば決して平穏とは言えぬこの世界に何故移住することになったのかは、リョウが考案した策によって決定した。

 

先ず前提としてリサの時空防衛局の幹部達に承諾を得る案は絶対に通らないと却下した。

リョウが苦肉の策として行ったのは、自身の権限を行使してリサ達を強制的に異世界へと送還することだった。

 

リサは結果的に見れば、時空防衛局から与えられた任務を放棄したようなものになるだろう。

本来ならば抹殺しなければならなかった対象を捕虜にして、更には懐柔して共生をしようとするなど、時空防衛局からすれば許し難い論外なもの。

どのような理由を述べようとリサの主張は認められないとリョウは最初から踏んでいたため、リョウ自らがリサ達を異世界へと送還したという体で話を進めることとなった。

 

任務を放棄し利己的に判断して捕虜にするだけでなく異世界へと連れ出すなど言語道断。

最悪の場合世界の平穏と均衡を崩す事態へと発展しかねない重大な事態として罰則を設けた。

その内容は、カイが飛ばされてしまった世界に跋扈する怪物、ピシャーチャを討伐しその世界の人々を守護するというもの。

更にリサとカイの二名はいかなる理由があろうおその世界からの移動を許可しないという条件も付け加えられている。

任務を放棄し異世界に危害を与えかねない行動を犯したリサに相応の対処をするため、時空防衛局から直接判決を下さず『世界の監視者』であるリョウが罰則を科すことを条件とした結果決定した事項だった。

本来ならば時空防衛局がリサに裁きを下す筈だったのだが、リョウが監視者の権限を活かし会議も行わず、局内の幹部達にも話を一切通さず了承を得ることなくほぼ強制的に決定された。

そのため局内の中ではリサの件以上にリョウの独断専行に異を唱える者が多く批判が殺到したが、当の本人は局員達から今更峻拒されたところで痛くも痒くもないようで、無頓着、と言うより聞き流していた。

幹部達や局員の中にはリョウの所持する『力』を熟知している者もいるため、提唱しようにも、異論を呈しようにも意味を為さないと理解しているので何も言えない結果に終わってしまう。

仮に異議を唱えられようが、一睨みするだけで弾圧される形となってしまった。

局を束ねる立場であるユンナもリョウの立場やリサの現状を理解していたため、特に追及することなく今回の件はリョウの独断による制裁に終わった。

 

カイ「俺が前みたいにあの怪物が作り出した時空の裂け目とかに落ちて異世界に行っちまった場合はどうなるんだよ?」

 

リョウ「その時はわしがこの世界に連れ戻すことになるのう。まあそうならんようわしがヴィラド・ディアをこの世界に接近させることなく殺すから」

 

カイ「そうしてくれ。取り敢えず俺はこの世界でリサと愛莉と平和に暮らすためにピシャーチャとか言う怪物を倒せばいいんだな?」

 

リョウ「そうじゃ。ピシャーチャの体内には闇となるエネルギーもあるみたいじゃけえ、闇の供給に困ることはないじゃろう」

 

カイ「人間を喰らう必要はないってことか…」

 

リョウ「そういうことじゃ。時空防衛局を少しでも無理矢理納得させられる理由、リサでも勝てる程度のばけもんが住む世界、カイの闇を効率良く供給可能な世界、全ての条件を満たしてる世界を見つけるのは大分苦労したんやで」

 

カイ「…何から何まですまねえな」

 

リョウ「さっきも言ったように、リサと愛莉のためじゃ。それに礼を言うならリサに言うてくれ。リサの優しさがあったけえ今日まで生き延びていられるんやで」

 

リョウの言う通り、リサが匿ってくれなければ、カイは今頃時空防衛局に捕らえられていただろう。

最悪その場で処刑され、人生を終えることとなっていたかもしれない。

 

カイ「リサ、本当にありがとう。俺が生き延びられて自由にいられるのは他でもないお前のおかげだ」

 

リサ「あたしはただしたいことをしただけだよ。これからはあたしのサポートしながら愛莉の相手をして護ってくれるだけで充分よ」

 

愛莉「いっぱいかいぶつさんたちたおして、あたしをまもってねー!」

 

カイ「ああ、勿論だ!」

 

大勢の人を殺め喰らってきたにも関わらず決して攻めたりしない寛恕なリサにも感謝しなければならない。

 

綺麗に腰を曲げ感謝を述べる様がらしくないと思い、リサは苦笑いを浮かべながらも気にするなと言わんばかりに手をひらひらと振っていた。

新たな生活に心踊らせている愛莉はカイの足に抱き付き純粋無垢な笑顔を浮かべている。

 

リサ「さあ、あたし達の新しい生活はここからよ!」

 

カイ「おー!」

 

リョウ「打ち切り漫画みたいなセリフ言わんといてくれ…」

 

 

~~~~~

 

 

リサ「…以上、あたしの過去でした~」

 

雨が降り頻るBGMを背に、リサは自らの過去を淡々と語った。

その際途中で口を挟む者は誰一人としていなかった。

 

タクト「…過去のことを知りたいと聞いといてなんだが、軽く話せるよう過去じゃねえじゃねえか」

 

レア「思ったより激ヤバに重かった。なんつーか…軽々しく聞いてごめん」

 

リサ「謝る必要ないって。あたしが自分から話すって提案したんだし、みんなが気にする必要ないよ」

 

タクト「リサがそう言うならいいけどよ…。しっかし、リョウとそういう関係があったのは驚いたぜ。あいつが血眼になってでもリサを護ろうとするのにも納得がいくぜ」

 

アシュリー「リサちゃん、リョウのことを嫌いにならないでくれてありがとね」

 

リサ「嫌いになんてなるわけないって。あたしの命の恩人なんだし、今まで、いや、今でも時折心配して様子を見てくれる、実質家族のような存在なんだから」

 

タクト「ただこの世界で戦うことになったのもリョウのせいってなっちまうけどな」

 

アシュリー「ちょっとタクトそんな言い方良くないよ!リョウなりに不利な立場にありながらも最善を尽くした結果なんだから!」

 

タクト「言い方が悪くなったのはすまねえ。ただ、あまりにもリサに与えられた負荷が大きいって思えちまってな」

 

この世界の趨勢を決めていくのは他でもなくリサ達に掛かっていると言っても過言ではない。

カイの幸福と愛莉の願いを叶えるために、自分は別世界に移住することになりその世界に蔓延る異形の存在を殲滅するために戦い続けなければならない。

天秤に掛けるにしては、あまりに重く不均衡。

不幸な出来事の結果、得たくて取得したわけでもない特殊能力を得たとは言え、22歳という若さで背負う運命にしては重荷と言わざるを得ない。

 

タクト達も援助したい気持ちは山々なのだが、決して暇とは言えないため限度があるのが心苦しくあった。

 

リサ「あたしを思って言ってくれてるのは嬉しいけど、心配いらないよ。あたしも愛莉もカイも今の生活で満足してるし、たまにリョウ達も顔を見せに来てくれてるし。何より、カイと愛莉が笑顔を絶やさずにいてくれることが嬉しいし、その居場所を用意してくれたリョウには感謝しかないから」

 

タクト「…リサが満足してるんなら、俺がどうこう言う必要はねぇな。ただ、後悔はしないようにしろってことは言いたい」

 

リサ「後悔?」

 

レア「今のリサに後悔するようなアクシデントは起きてないっぽいね。でも、生きてりゃ後悔する場面なんて腐るほどあっちゃうのよね。そうならないようガンバ~って話なわけ。ちょびっとでも良い未来になるよう選択するのがちょー大事っつーこと」

 

リサ「確かに、大事なことだね。でも、もしも、だよ。もしも…どれを選択しても後悔するようなことしかなかったら、その時はどうするの?」

 

タクト「……その時は、自分にとっても、周りにとっても最良な選択をするしかない。例えそれが自身が望む最良でなかったとしても、自身が傷付くことがあったとしても、その場でしか選択の叶わない最良を選ぶしかない時だってある」

 

リサ「…成る程、ね。苦境に立たされようが、望まない結末だったとして、成し遂げなきゃいけない時があるってことだね」

 

レア「ドンパチ戦ってたらいつかはそういう場面に出くわすかもしれないってだけだから、重~く受け止めちゃダメダメよ~。心構えとして覚えといてくれたらいいってかんじだから」

 

タクト「まあ、ジャスティスエミッサリーという一人の戦士の助言ってやつだ」

 

リサ「ありがとうタクト。流石本物のヒーローの言うことは違うね」

 

タクト「惚れるなよ?」

 

レア「タ~ク~ト~?あーしというフィアンセを目の前にしてよぉーそんな言葉吐けるね?」

 

タクト「じょ、冗談で言ってんだから落ち着けって。俺はレア一筋だって。言葉にしなくても分かるだろ?」

 

レア「言葉にしてくれないと分かんない時もあるっつーの」

 

タクト「いくらでも言えるぜ。俺はレアのことを愛してる。この数多の世界がある中で一番な。レアがいない人生なんて有り得ないくらいだ」

 

レア「タクト……あーしも激マジで愛してるよ~♡」

 

アシュリー「はうぅ…また始まったよ///」

 

リサ「アシュリー、良かったらブラックコーヒー飲む?」

 

アシュリー「甘々すぎる空間には持ってこいだし、頂こうかな」

 

アレク「コーヒーなら俺に任せろ!」

 

アシュリー「うわびっくりした!?」

 

レア「ま~たバビュンって出てきた。いつからおったん?」

 

アレク「リサが過去を話し始めたあたりからいたぞ」

 

レア「めちゃ最初の方からじゃん…」

 

カイ「話終わったか~…って、何でアレクがいるんだよ」

 

アレク「よおカイ。おいおいびしょ濡れじゃねぇか。水も滴るいい男とは正にこのことだな」

 

カイ「うるせぇのが増えたな。参ったな、折角近くの和菓子屋さんで饅頭買ってきたのに一つ足りないな…」

 

愛莉「まんじゅうあるの!?」

 

リサ「あら、愛莉起きてたの?」

 

愛莉「おかあさんがはなしてるとちゅうからおきてた!じゃましちゃわるいとおもってねたふりしてたの!」

 

タクト「この歳で空気が読めるとは良くできた子だぜ」

 

愛莉「まんじゅうほしい!あ、カイびしょぬれー!おかぜひいちゃうよ!」

 

カイ「俺は妖怪なんだから簡単に風邪なんて引かねぇよ」

 

愛莉「ダメー!いますぐふかないと!」

 

居ても立ってもいられなかった愛莉は衣類が入った引き出しから適当にタオルを取り出しカイに差し出した。

折角の心遣いを無駄にするわけにもいかないし、髪や服から滴り落ちる水滴で床を濡らすわけにもいかないのでタオルを受け取りわしゃわしゃと水分を含んだ髪を拭き始める。

 

愛莉「これでだいじょうぶだね!」

 

カイ「あぁ。ありがとな愛莉」

 

身を屈め愛莉の頭を撫でると、愛莉は朗らかに笑みを浮かべた。

そんな二人の暖かなやり取りを見てるとリサ達は自然と笑みが溢れていた。

 

アレク「カイ、饅頭が足りないってのはもしかして俺の分のことか?」

 

カイ「他にいると思うか?」

 

アレク「なん…だと…!?よし、取引しよう。女の子だけしか入ることのできないアリスピアに入れる特別なチケットがある。これをやろう」

 

カイ「いらねぇ」

 

アレク「ぐぬぬ、桃源郷には興味はないか。それなら、わくわくざぶーんの年間パスポートを!」

 

カイ「それもいらねぇ」

 

アレク「それならそらみスマイルのライブチケットを…!」

 

カイ「何を渡されても譲らねぇぞ」

 

アレク「ちぇっ、ケチ!いいも~んだ。穂むらで買ったほむまん食べるし」

 

カイ「食うもんあるじゃねぇか…」

 

一日中雨が降り注いでいた中でも、リサ達は賑やかに話を進め、退屈しない一日となった。

 

怪物が闊歩する世界に移住することになったが、何気ない平和な一時が過ごせる。それだけで充分すぎる。

愛莉とカイと過ごすこの幸福に満ち溢れた時間がいつまでも続くことを祈るばかりだった。

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