ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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ライザのアトリエにハマってます



第12話 ラミエルvsTypeβ

アイリ達が無事部屋を退出して数秒、ベータは意識を取り戻したように動きだし壁にめり込んだ体を無理矢理引き剥がし床へ降り立った。

 

ベータ「敵ナガラオ見事デス。 タダノ天使ニシテハ手強イデス」

 

ラミエル「おいおい、俺をただの天使扱いしてんじゃねぇよ。 今からただの天使じゃないってことを見せてやんよ」

 

ベータ「アレダケ私ノ攻撃ヲ受ケ続ケテマダ立チ上ガル力ガ残ッテイルノデスカ。 何処カラソノヨウナ力ガ出テクルカ、理解不能デス」

 

ラミエル「さぁ、俺にも分かんねぇよ。 ただ俺は負けたくないってだけだ。 倒すと決めた相手は己の力のみで倒す、これが俺の決めた戦いだ。 自分で言うのも可笑しな話だけどよ、絶対に勝てるっていう自信が心の底から沸いて出てくるんだよ」

 

ベータ「…ココロ? ヤハリ私ニハ理解デキナイヨウデス。 私達エンジェロイドニハ心ハ存在シナイ。 機械デアル私達ニハ必要ナイモノデス」

 

ラミエル「機械には心はない、か…。 悲しいもんだな。 どれほどいいもんなのかを伝えてやりてぇところだが、とりあえずは、」

 

拳を力強く握り、闘志を燃やす眼でベータの光のない瞳を真っ直ぐ見つめる。

 

ラミエル「てめぇを殴ってあいつの呪術を解かないとなぁ!!」

 

ベータ「エンジェロイドTypeβ、ココヲ守護スル者トシテ負ケル訳ニハイキマセン。 ココカラハ本気デ戦ワセテモライマス。 アサルトクロー、展開」

 

ベータの左腕に青い魔方陣が出現し、瞬く間に所々に青いラインがなぞられてあるデザインの銀色の籠手が装着させられた。

最も特徴があるのはベータの手に上から被さるように装着されてある光沢を放つ銀色の巨大な手だ。

指先は鋭利に尖っており獣の爪のようになっており、太刀と同様冷気を纏っている。

 

ラミエル「じゃあ俺も全力全開でいかせてもらうぜ! 先手必勝! おらぁ!! 」

 

地を蹴り弾丸のような速さでベータへ接近し強く握り締めた鉄拳を顔へ目掛け思い切り突き出す。

 

辺り一体に鈍い音が響いた。

ラミエルの放った拳はベータに届いてはおらず、顔に直撃する手前で銀色の巨大な手によって防がれていた。

 

ラミエルは相手に隙を作らせないために一歩手前に下がり体制を整え、両手に電撃を纏わせ『エレクトリックブラスト』を放った。

冷気をも無にする勢いの突風にベータは怯むことなく太刀を縦に振るい上げる。

渦巻くような動きで迫っていた突風は真っ二つに割れ、分かれた突風は軌道を変えベータの横を通り過ぎていき壁に激突した。

全力で放った技を糸も簡単に防がれてしまったことに驚くことすら許されず、太刀を振るうことで生まれた斬撃を避けることに専念しその場から跳躍、翼を広げ一度距離を保つ。

 

ベータはラミエルを逃がすまいと翼を広げ跳躍し、5本の爪を分離させた。

それぞれの爪からは光の糸が伸びており機械の手に繋がっており、ベータの指示通りに自由自在に動くようになっている。

生き物のように予期できない自在な動きを繰り返す爪がラミエルに襲い掛かる。

回避が難しく翻弄され続けており、体の至る箇所は鋭利な爪により引き裂かれ鮮血が飛び散る。

ラミエルは近距離戦に特化された多彩な攻撃を用いるが、遠距離戦の相手にはこれといった有効な攻撃手段がなく、防戦一方という状況、劣勢を強いられる戦いとなった。

 

ベータ「アナタニハ私ニ勝テル確率ハ限リナク低イデス。 諦メタ方ガ身ノタメデスヨ」

 

ラミエル「生憎と、俺の辞書には諦めるという言葉は載ってないんだよ!」

 

幾度となく迫り来る爪が体を斬りつけていくが気合いではね除け急降下し地面へと着地し、拳を床に当て電撃を溜め始める。

 

ラミエル「吹っ飛べー! 『エレキトリックフラッシュ』!」

 

ラミエルを中心に電撃がドーム状に展開され、ラミエルに迫っていた爪は全て電撃に弾かれ勢いよく床へと落ちていった。

爪からベータの手に繋がれていた線も切れてしまい、一時的ではあるが再起不可能となってしまったアサルトクローの使用を諦め、太刀を握り締め脇構えの姿勢をとり飛翔し攻撃を繰り出そうとする。

 

ラミエル「やっと真っ正面から来てくれたか。 正々堂々なのは良いが、今から出す技はとっておきだぜ! 『スパークウォール』!」

 

両手を前に出すと正方形の電気で生成された壁が出現し迫り来るベータの攻撃を防ぐ。

 

ベータ「回路、麻痺、行動、不能…」

 

壁に流れてある強力な電流が太刀の切っ先から流れ、太刀を握り締めた手から全身へと流れ全身が麻痺し動きを封じられてしまった。

 

ベータの所持する太刀は言うまでもなく金属で製造されてあるため電気が通りやすい。

ベータ自身も金属で製造されてあるので、電気が通りやすいためダメージが通りやすかった。

 

戦況的には不利な状態であったラミエルだが、相手に電撃が効果があるのは運が良かったのかもしれない。

 

ラミエル「もういっちょとっておきくらわせてやる! 『滅雷拳』!」

 

部屋全体を覆う程の電気が放出され、壁や床を覆っていた氷が電気の熱により溶け始め水へと融解される。

一度放たれた電気は融解された水と共にベータに集められ巨大な塊となる。

ラミエルは拳に『雷拳』の何十倍にもなる電気を溜め、電気の塊の中で脱出しようと試みるベータの腹部に向け渾身の力を込めた拳を振るった。

身動きを封じられたベータは成す術もなくラミエルの重い一撃を受け体がくの字に曲がった。

更に電気の塊はラミエルが放った拳の電気と反応し、中にある電気が火花が散るように乱れ飛び小規模な爆発が数十回と起きベータの体を傷付いていく。

塊になる前に周囲から吸収されるように集められた水が更に電気をより通しやすいものとなっており、ベータに与えられたダメージは倍以上に膨れ上がっていた。

何十回と小規模な爆発が起きた後、塊が光り輝き始め、塊の中で起き続けていた爆発の何十倍にもなる巨大な爆発が起き、強烈な爆風と共にベータは後方へもうスピードで吹っ飛んでいき壁に勢いよく激突した。

ベータは壁の中に瓦礫に挟まれ下半身は埋もれており、体の至る箇所からは火花が音を立て出ており、皮膚であるコーティングが所々剥げ落ち内部が見えるようになっていた。

 

ラミエル「流石にこの技を使うのは不味かったかな。 俺への負荷も半端ないし」

 

技を放ったラミエルの右手からは白煙が立ち込めており、強力な電気を使用したせいか、焦げた様に黒くなってしまっていた。

技の影響で右手が使えなくなってしまったわけではないが戦闘の続行は暫くは不能となってしまっていた。

黒くなった右手を上下左右に揺らしながらベータの元へ歩み寄って行き声を掛けた。

 

ラミエル「おい、大丈夫か? これであいつの洗脳は解けたとは思うんだが」

 

ベータ「エエ、オ陰様、デ、洗脳は、解ケマ、シタ。 アリガトウ、ゴザイマス」

 

ノイズが掛かった弱々しい声で礼を言った。

 

ベータ「アナタノ攻撃ヲ、クライ、私ノ、動力炉ガ、修理不可能ニナルマデ、損傷シテ、シマイマシタ」

 

ラミエル「何っ!? ど、どうにかならねぇのかよ! 俺には機械のことなんてこれっぽっちも分からねぇけどよ、別の電源持ってくるとか、他にも色々方法があるんじゃないのか!?」

 

ベータ「残念、ナガラ、予備ノ動力炉ハ、存在、シマセン。 アリガトウ、ゴザイマス、天使ノ方。 最後ニ洗脳ガ、解ケタ、ダケデモ、救イデス」

 

ラミエル「何締めっぽいことほざいてんだよ! 今からでも遅くはねぇ! ここから引き摺り出して救う方法を探してやる!」

 

ラミエルは下半身が壁に埋もれたベータを引っ張り出そうと周りの瓦礫を持ち上げ退かし始める。

 

ベータ「私ノ、動力炉ハ、モウ長クナイ、ノデ、無駄、デス。 助カル確率ハ、ゼロデス。 博士ガ、残シタ、コノ、研究所ト、技術ヲ、悪魔ノ手、カラ、守ッテ、クダ、サイ。 私ニハ、モウ、デキ、マセン、ノデ、ド、ドウカ、ヨロシ、ク、オ願イ…シマ…」

 

ベータの声が更に弱々しく、小さくなって途切れるようになっていき、遂に口が動かなくなり声を発さなくなった。

光が灯らぬ感情のない水晶の瞳はラミエルに向いていたが、その瞳は誰も見つめることはなく、ただ目の前にいるラミエルの顔を映すだけのものとなってしまった。

 

ラミエル「……あぁ、任せろ。 俺があのふざけた悪魔野郎をぶん殴ってやるよ。 だからお前はゆっくり休んどけ」

 

歯を食い縛り、爪がくい込むほど力強く手を握り締めたラミエルが返事が帰ってこないと知っていながらも亡骸となってしまったベータに言い、開いたままになっていた目を手で閉じた。

救えなかった悔しさと、卑劣な事を平気で遂げるベレトに対する怒りを胸に、ベータの願いを無駄にしないためにもその場を後にした。

 

 

~~~~~

 

 

アイリ「…でね、パルスのファルシのルシがパージでコクーンしてね」

 

リョウ「うん、分かる人じゃないと意味不明やわ」

 

ベータとの戦闘をラミエルに任せ先を急ぐアイリ達は未だベレトを追跡しつつE資源製造機(アイリが勝手に命名)がある部屋へと走って向かっていた。

 

睦月「ここらは扉がロックされてある部屋がやたらと多いな」

 

リョウ「重要な物でもあるんじゃないのか? この研究所には様々な物、たまにヤバい物が置かれていたりするみたいやから、厳重に保管されてある部屋に入るには別のパスワードやキーが必要になってくるはずやからね」

 

アイリ「エンジェロイドよりヤバい物とか置いてあるのかな。例えばT-ウイルスとかDG細胞とか」

 

リョウ「んなもんないよ」

 

アイリ「流石にないか~。 あっ、リョウ君コートありがとう、返すね。 コートに染み込んだあたしの匂いをくんかくんかして発情したりしないでね?」

 

リョウ「しないっつーの」

 

アイリ「リョウ君みたいなお年頃の人だったら襲い掛かってきて同人誌みたいな展開になるかもしれないよ。 狼さんに変身してあたしを…あ、リョウ君は狼さんと言うよりはお猿さんだね(笑)」

 

リョウ「やかましい!」

 

アイリ「こだっく!」

 

リョウ「次言ったら殴るぞ」

 

アイリ「もう殴ってるよ~(泣)」

 

睦月「また漫才やってるのか。 ん、リョウ、アイリ、ちょっと待ってくれ」

 

睦月がとある部屋の扉の前で急に立ち止まった。

扉の上の札には『メインコンピューター室』と光の文字で誰でも分かりやすいように書かれていた。

 

リョウ「ここがこの研究所のありとあらゆるデータが保管されてある場所やな。 ここなら時空防衛局にメッセージを送信した人物も記されてるはずや。 調査しに来たのなら、ここは様々な事を知れるうってつけの場所やで」

 

睦月「だな。 早速中に入って情報収集としますか」

 

リョウ「やっと時空防衛局としての仕事ってかんじがするな。 じゃあわしらはベレトの元へ急がんとあかんから、先に行っとくで」

 

アイリ「先に行ってるねムッキー。 サイボーグ009並の速さで追い付いてきてね~♪」

 

リョウ「睦月には加速装置なんてないからな? ほな、また後でな」

 

アイリとリョウはベレトの後を追うため再び走り始めた。

 

残された睦月は時空防衛局の本来の任務を果たすためメインコンピューター室へと足を入れた。

メインコンピューター室に入ると同時に電気が点灯し部屋全体を灯した。

壁には巨大な液晶画面があり、その前に身長によって高さを変えられる台にキーボードが置かれていた。

キーボードがある台にはコードが何本も出ており壁へと続いている。

それ以外は何もない質素な部屋だ。

 

睦月はコンピューターの電源を立ち上げ、USBメモリを取り出し台にある差し込み口に差し込んだ。

慣れた手つきでコンピューターを操作し、フサキノ研究所の全データが記されてあるファイルを開き目を通していく。

 

睦月「時空防衛局が初めて調査したときにはE資源のことしかデータが得られなかったらしいからな。 今回は隅から隅まで調べないとな…って、なんだよこの長さはよぉ」

 

画面にはフサキノ研究所で製造された物、実験内容、使用する薬品や材料の名称、失敗例、成功例、成功した年月まで詳しく書き記されており、実験の内容が記されたメモや画像等のデータも残されていた。

膨大すぎるデータを見て唖然としたが、根気よくデータを閲覧してゆく。

 

睦月「この研究所は約1000年前に建てられたものなのか。 E資源の開発もその頃に出来上がっていたものなのか。 …ん、これは…ナノ、マシン?」

 

ふと目に止まったのはナノマシンという単語。

ナノマシンの事について詳しく記されたデータが多数残されており、一通り目を通す。

 

ナノマシンとは、0.1~100nmの原子サイズレベルの機械装置のことである。

ナノレベル物質構造を入れ替える機能を有し、身体の損傷や病気を治療する為の医療分野、新素材の開発などといった工業目的への応用が期待されており、今現在、現実世界ではフィクションなどで描かれることが多いが、ガンや動脈硬化などの治療が困難であった病に対する遺伝子治療が可能となる可能性があるとも言われている。

だがその反面危険性もあり、ナノマシン特有の機能として周辺環境から不要な物質から必要に応じて取り出す自己増殖がよく取り上げられるが、それが何らかのバグによって人工的なウイルスに変異し人体に悪影響を与えたり、テロや戦争に転用される可能性もある、一歩間違えば大惨事に成りかねない代物でもある。

 

フサキノ博士はナノマシンを軍事目的としてではなく、医療目的で活用するためにあらゆる世界から物資や材料を調達し完成させたエネルギー、E資源を元に病に苦しむ人々を救うために独自でナノマシンの研究、実験を何年も繰り返していた。

 

だが成果は実る事はなく、フサキノ博士は28の歳で肺結核によりこの世を去り、ナノマシンは完成されることはなかった。

 

フサキノ博士は死の直前に自らの死を悟り、ナノマシン技術が万が一にも悪用しようとする者の手に渡らないためにもこの研究所を誰にも立ち入れさせないように人目に付かない場所へ自らが生み出した技術で研究所ごと移動させたのだ。

 

そして月日は過ぎ、一人の天使がフサキノ研究所を見つけ出した。

 

睦月「ここまで詳しく書かれてあるのか。

でも何でフサキノ博士が亡くなった後の出来事まで書かれてあるんだ? …あー、そういうことか」

 

画面を更に下にスクロールすると疑問に思っていた答えが表記されていた。

 

フサキノ博士が亡くなった後、研究は続けられていた。

無人となった研究所で研究を行っていたのは、フサキノ博士が作り出したエンジェロイド達だった。

フサキノ博士は作り出したエンジェロイド達と共にナノマシンの研究を行っており、研究内容や作業内容も全てそれぞれの個体にデータがインプットされていたため、フサキノ博士が亡き今でもエンジェロイド達がフサキノ博士に指示された通りに義務を真っ当していた。

エンジェロイドには自立型AIが組み込まれており学習する能力があったため、改善策を思考することもでき、エネルギー源は無限に精製されているE資源であるため機能停止することもなく、実験に必要な資源や材料はいくらでもあり余っていたので数百年という歳月の間でも研究を続けていくことが可能となっていた。

 

睦月「まだまだ読む項目が多くあるな。 E資源の製造方法、ナノマシン能力抑制粒子、ココロプログラム、Typeεの破棄…ん、これは?」

 

画面をスクロールしていると、睦月は再び目に止まるものがあった。

Typeεの破棄について表記されていた文章と共に載せてあった画像だ。

睦月は無表情でその画像を暫く見続けていたが、とある事に気付き目を大きく見開き驚愕した。

 

睦月「う、嘘だろ…どういうことだよこれ!?」

 

睦月は驚愕した表情を変えないまま操作を続け、データに残存してある画像を全て開き確認していく。

画像とはいえパソコンで纏めたグラフなどもあるが、多くあったのはフサキノ博士がカメラで撮影したと思われるものが多数存在した。

画面に年代順に撮られた写真や作られた表やグラフが載った画像が綺麗に並べられ、一つ一つが閲覧しやすくなる。

保存されてある画像と、画像に関する詳細が表記された文章を漏らすことなく確認していくと、睦月は我が目を疑った。

画面に映された画像、文章、その殆どの内容が信じ難いものだった。

 

睦月「あ、ありえねぇ…信じられねぇ…こんなの…あいつが…」

 

信じられない、いや、信じたくはなかった。

 

目の前に表記されたものが全て偽りのものだと自らに言い聞かす。

呼吸が乱れ身体中から汗が吹き出て体が小刻みに震え始める。

 

その震えは、恐怖を感じた時の震え。

 

キーボードに触れていた手は体を抱き締めるように腕へ伸び一歩ずつその場から離れ始める。

 

?「やっぱりこのデータは残っていたんだな」

 

睦月「うわっ!?」

 

睦月は突如後方から聞こえた声に驚き横へ飛び退き尻餅をついた。

声を発した人物は冷たい表情をしたリョウだった。

 

睦月(お、俺に気付かれずに後ろに立つなんて!? 気配を全くと言って言い程感じなかったぞ!? ということは、こいつ本当に…!)

 

本来の睦月なら直ぐ様銃を取り出し構えるのだろうが、今の睦月にはそんな余裕すらなく、尻餅をついたまま恐怖に顔を引き吊らせ後ろへ下がっていく。

異常なまで震えおののく睦月をリョウは表情一つ変えることなく光の灯っていない目で見下ろしていた。

 

リョウ「確認のために来て正解だった。 睦月がここまで取り乱すとは思ってなかったけど…まぁ普通なら話を聞くだけでも恐ろしいものだからな、当たり前と言えば当たり前の反応やな」

 

睦月「こ、こ、これに書かれてある、データは、全部真実、なのか?」

 

震える声で睦月はリョウに質問をした。

 

リョウ「そうやな。 全部実際にあった出来事やで。 そして、実際に存在しているものだ」

 

リョウは相変わらず表情一つ変えることなく淡々と返答した。

そして徐々に睦月の方へ歩み寄っていく。

睦月は目頭に涙を溜め必死に後方へと下がっていく。

 

睦月「いや…来ないで…!」

 

リョウ「この事実を知っているのは極僅かな人間だけや。 あまり多くの人に知られては困ることなんよ。 基本こういうことを無闇に探り知りたがる奴は、生きる価値もないようなゴミ屑みたいな輩が多かったから、わしは容赦なく殺して…いや、消し去っていたけど、睦月、お前はわしらの大事な仲間や。 だから…」

 

リョウの姿が瞬時に消えたと思うと、気付けば睦月の真横まで接近し、しゃがみ顔を近付けていた。

 

睦月「っ…!?」

 

リョウ「殺しはしない、安心しろ。 それだけ言っておく」

 

リョウは手刀を睦月の首へ振るった。

睦月は一瞬目を大きく見開くと崩れるように倒れた。

睦月が気を失う前に見たのは、黄金色に輝く左目をしたリョウの姿だった。

 

リョウ「…はぁー、こんな手荒な真似、仲間にはしたくなかったんやけどなぁ」

 

大きな溜め息をつき、右手を気を失った睦月の頭に置いた。

置いた手のひらが金色の光が溢れ、手の周囲には溢れ出た光の粒子が蛍の灯火の様に小さく輝きながら宙を舞っている。

 

リョウ「記憶だけは消しておかないとあかんからな。 …この作業は何回、何時とやっても辛いもんやな」

 

無表情だった表情が崩れ、悲しげな表情を浮かべながら睦月がデータを閲覧した記憶だけを消し去る。

 

リョウ「許してくれ睦月。 知らない方が幸せなこともあるんよ」

 

記憶を消し終えたリョウは立ち上がりキーボードの元へと歩いていく。

キーボードに手を伸ばし、慣れた手付きで素早い操作をし、データを改竄してゆく。

他人には見られてはならない、知られてはならないデータはリョウの手により違和感のない偽りのものへと書き換えられていった。

書き換えたデータを保存し、睦月が差し込んだUSBメモリへデータをコピーし、 USBメモリを引き抜き再び睦月の側へ近寄り力なく握られてある手にUSBメモリを置いた。

 

リョウ「後は自然と目が覚めるやろう。 アイリを待たせてはまずいし、早く戻らないとな」

 

リョウは罪悪感からか、倒れた睦月を振り返り見つめ、部屋から音を立てることなく去っていった。

 

 




リョウが何者なのか、その話を書くのはかなり後になりそうです
ラミエルがメインの筈なのにリョウのパートの方が内容が濃い権…まぁいっか☆
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