ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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ジレるハートに火をつけて小説を頑張って書いてます


第13話 エンジェロイドは電気羊の夢を見るか?

アイリ「んふんふんふんふんふ♪ あ、やっと来た! リョウ君おっそーい!」

 

リョウ「待たせたな(イケボ)」

 

廊下の壁に凭れ掛かってその場で待機していたアイリはリョウが来るのを待っていた。

リョウは翼を羽ばたかせ廊下を凄まじい速さで移動し、某伝説の傭兵が言いそうなフレーズをアイリに掛けた。

 

アイリ「3分間待ってやるって言ったのに、5分以上経ってるよ。 あたし暇すぎてこのまま眠り続けて死ぬかと思ったんだから。

それで、ムッキーに確認することがあるって言ってたけど、もう終わったの?」

 

リョウ「あぁ。 そこまで大した用ではなかったんやけど、念のために、な。 もう終わったから大丈夫や。 睦月も終わり次第此方に向かって来るよ」

 

リョウは先程起こしたことについては発言はせず、何も事情を知らないアイリに偽りのことを話した。

 

アイリ「問題なさそうなら良かった♪ ところで、マップはないけど道は分かってるの?」

 

リョウ「だいたいは頭の中に入ってるからダイジョーブ」

 

アイリ「そんな記憶力で大丈夫なの?」

 

リョウ「大丈夫だ、問題ない」

 

リョウの記憶を頼りに相変わらず何もない廊下を進んで行く。

研究所の最深部とも呼べる場所まで来ているようで、護衛のエンジェロイド達の姿も見えず、貴重品を保管してあるであろう部屋が多数存在しているが全てロックが掛かっており入室が不可能となっている。

静寂が辺りを支配する廊下をひたすら進み続けていると、ライトグリーンのラインが入った今まで見てきた中でも一回り大きい扉の前へと辿り着いた。

 

アイリ「いかにもって感じの扉だね」

 

リョウ「うん、此処がそうや。 気を引き締めろよ。 恐らくこの部屋にベレトもいる」

 

アイリは頷きガーンデーヴァを召喚し手にした。

 

アイリ「覚悟はできたよ。 リョウ君、早く扉を開けようよ。 BOY♂NEXT♂DOOR」

 

リョウ「おい、♂マークを付けるなw」

 

リョウは扉の中央にある窪みに手を当てると、扉がライトグリーン色に輝きを放つと徐々に開きはじめた。

 

広大な部屋は灯りが灯っており、全体を容易に見渡すことができるようになっていた。

部屋自体は他の部屋に比べかなり巨大で、何も物が置かれていない、Typeβがいた部屋と同様な雰囲気だ。

そして部屋の中心には目を瞑ったライトグリーン色のショートヘアーの少女が凛々しく立っていた。

 

?「…遂にここまで来ましたか、侵入者」

 

ベータの片言な喋り口調とは違い、人間と同じ様に喋る少女は目をゆっくりと開け、鮮血の様に赤い瞳でリョウとアイリを見据えた。

 

リョウ「ここでわしらを待っていたのか、Typeα。 いや、シャティエル」

 

名前を呼ばれたTypeα、シャティエルは眉をピクリと動かし、少しではあるが驚いたような表情を見せた。

 

シャティエル「何故、博士が私に名付けてくれた名を知っているのですか?」

 

リョウ「以前調べた資料を閲覧したときに分かったんよ。 この先がE資源を製造する装置がある部屋なんやろ?」

 

シャティエル「そうです。 ですが、ここから先を通すわけにはいきません。 博士との御約束、奥にある部屋をお守りするという使命があるので、あなた方を通すわけにはいかないのです。 もし、強制的に通ろうと言うのならば、そこに横たわっている悪魔のような有り様になってもらいます」

 

シャティエルが目線を向けた先には、壁の隅の方で身体中に傷を負い服が破けてある状態のベレトが倒れ伏していた。

死んでいるわけではなく、気を失っているようで、ピクリとも動く気配がない。

 

アイリ「あの赤い服の悪魔だよ! まさかとは思うけど、Typeαがたった一人で?」

 

シャティエル「えぇ、勿論私一人で倒させてもらいました。 悪魔族の幹部だそうですけど、私の火力を持ってすれば、大した実力ではありませんでしたが」

 

吐き捨てる様に言い再び目線をアイリとリョウの方へと向ける。

 

シャティエル「今すぐこの場から立ち退くなら、深傷を負わすことは決してしません」

 

リョウ「それ脅してんの?」

 

シャティエル「そのような野蛮な事は言ってはおりません。 ただ私はこの研究所から出てもらえればいいんですから」

 

リョウ「悪いが、先を通らせてもらうよ。

わしらはこの研究所を調査しに来ただけなんやから、機械やデータに、勿論お前にも危害を加えるつもりは一切ないんやから」

 

シャティエル「信用するに値しません。 この悪魔族の者も同じ様な事を述べ、私の隙を付き先へと進もうとしましたからね。 退くつもりがないというのであれば、敵として認識させていただきます」

 

シャティエルは右手を静かに前に出すと、手の甲からライトグリーン色の光の刃、『光粒子ライトソード』を出し切っ先をアイリとリョウへ向けた。

更に後方からライトグリーン色の魔法陣が2つ出現し、魔法陣から扇形の機械が姿を見せ、1つはシャティエルの左に、もう1つは右に浮遊しながら移動した。

弧になっている部位からは細長い砲身が見えており、アイリとリョウに向け構えられていた。

 

リョウはアイリの盾になるように前に出てアルティメットマスターを抜刀する。

 

リョウ「今のアイリじゃ絶対に勝てない。

わしが戦う、アイリは下がってな」

 

アイリ「うん、分かった。 無茶はしちゃ駄目だからね」

 

援護ができるほどの力を備えていない自分の無力さに嫌悪感を抱いたが、今日起きたサタンフォーの一人、リリスとの出来事を思い出し、少しでも手助けしたい、援護をしたいという気持ちを抑えながらも後ろへと下がった。

 

リョウ「すまない、待たせてしまった。 始めようか」

 

シャティエル「…………」

 

リョウ「…黙りこんで仕掛けて来ないなんて、どうした?」

 

シャティエル「あ、失礼致しました。 動力炉に異常と思われる様な現象が起きたため軽いメンテナンスを行っていたので」

 

リョウ「もし異常があるのならば無理に戦わない方がいい。 わしはお前を破壊しに来たわけではないんやから」

 

シャティエル「いえ、問題はないので戦わせていただきます。 …自分でも可笑しいと思うのですが、一つお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」

 

リョウ「ん、なんや?」

 

シャティエル「私の記憶フォルダの中にはあなたの存在は確認できなかったのですが、あなたとは以前会ったことがあるのでしょうか?」

 

リョウ「っ、…いや、一度も会ったことはないな。 どうしてそう思ったんだ?」

 

唐突な質問に驚愕し一瞬狼狽えたが、冷静さを保ちつつ逆に質問を投げ掛ける。

 

シャティエル「私のデータの計算です。 計算で出たとはいえ、私には理解不能な結果ですが。 全ての箇所に異常はなかったのですが、何故だか分かりませんが、動力炉が…何と、表現したら良いのでしょうか。 あなたを見ていると、動力炉が温かくなるような現象が起きたのです」

 

リョウ「そうか…」

 

シャティエル「話が長くなってしまいましたね。 では、始めましょうか」

 

リョウ「できれば穏便に済ませたいところなんやけど、まぁしゃあないか」

 

シャティエル「博士との御約束を守るため、全力でいかせてもらいます。では、参ります!」

 

左右に浮遊していた砲台、『多連装レーザーバックル』の数多の砲口からレーザーが射出された。

 

リョウ「こんな攻撃、そうめんみたいなもんだぜ、てね」

 

その場から大きく上へ跳び退きレーザーを回避し着地、直ぐ様走りだしその勢いを利用しスライディングをして体制を低く保ちレーザーを回避しながら接近しアルティメットマスターの切っ先を向け『ソードバレット』を数発放った。

 

右に浮遊していた『多連装レーザーバックル』が攻撃を中止し、盾となるようにシャティエルの中央へ動いていき光弾を全て防いだ。

今の状況では遠距離戦は不利と考えたリョウはアルティメットマスターでレーザーを斬りながらも徐々に距離を縮めていくと、左に浮遊していた砲台がシャティエルの体を斬りつけようとしていたアルティメットマスターの刃を受け止めた。

続いてシャティエル本人が動き右腕から伸びる光の刃をリョウの心臓目掛け突き出した。

咄嗟に砲台を掴み力任せに引っ張りシャティエルの右腕にぶつけたことで攻撃を回避したが、もう一つの砲台が放ったレーザーが横腹に直撃し、数メートル飛ばされ床を転がり倒れた。

 

アイリ「リョウ君!」

 

リョウ「大したダメージやない、安心しんさい」

 

レーザーの直撃を受けた横腹に傷はでき損傷はしていたが、思ったより大きなダメージを受けてはいなかったようで、まるで何事もなかったかのように立ち上がった。

 

シャティエル「目視による損傷は認められますが、然程効果がないようですね。 攻撃を続行します」

 

全く効果がない、と言えば嘘になる。

浮遊砲台から放たれるレーザー自体はあまり威力はなかったのだが、ダメージを受けたことに変わりはないため痛みは勿論感じている。

アイリに心配させまいと極力平然とした態度を取っている、痩せ我慢というやつだ。

 

シャティエルは間髪いれずに砲口をリョウに向け、レーザーを射ち続ける。

 

リョウ「おいおい、わしにも攻撃させてくれよな」

 

リョウは翼を展開させ宙を飛び回り、技を仕掛ける間もないほど無数に放たれるレーザーを避け続ける。

シャティエルはその場から動くことなく

感情が籠っていない目でリョウを捉え続けている。

 

アイリ「こんなのずっと俺のターンみたいなもんだよ!」

 

アイリが場外から愚痴を飛ばすが、反撃の隙を与える事を許さない程の数多のレーザー攻撃が止むことはない。

シャティエルは逃げ続けるリョウを視認しつつ『光粒子ライトソード』を納め、目の前に魔方陣を出現させた。

魔方陣の中からライトグリーン色のラインがあるデザインの巨大な白色の銃、『光粒子ライトブラスター』を取り出した。

見るからにその大きさに相当な重量があると思われるが、シャティエルは片手で持ちながらも重さで腕が震えることなく、表情を変えることなく銃口をリョウへ向け標準を合わせ始める。

 

シャティエル「あなたの動きは計算により読み取れました。 エネルギー充填、フルパワーでの射撃を行います」

 

銃口からライトグリーン色のエネルギーが今にも溢れ出さんとばかりに出始める。

標準を合わせたシャティエルが引き金を引くと、銃口からライトグリーン色の光弾が放たれ、真っ直ぐにリョウへ向かっていく。

リョウは高速で迫る光弾をアルティメットマスターで防ぐが、重く速い一撃により体勢が大きく崩れ、何発ものレーザーが体に直撃してしまった。

険しく苦しい表情を浮かべながらも翼を羽ばたかせ床への追突を避け、銃の威力が強力だったため反動により標準を揃えていない一瞬の隙を狙いシャティエルの懐へ潜り込もうと低空飛行で接近を試みる。

流石は機械と言ったところか、人間とはかけ離れた力を持っているため反動は極僅かで即座に狙撃できる状態へ戻り、早くも二発目の光弾を放った。

止まることなく真っ直ぐに突き進む様に飛行するリョウは間一髪のところで光弾を避けることができ、アルティメットマスターの切っ先を向け『ソードバレット』を放つ…筈だったのだが、ダメージを与える初の攻撃は不発に終わり、後方へと吹き飛ばされ壁に叩き付けられた。

 

シャティエル「『ソニックプラズマ』命中。 エネルギー再充填、目標を追撃します」

 

リョウを吹き飛ばしたのは当然ながらシャティエルだ。

シャティエルの両方の肩からは細く長めな砲身が姿を見せており、砲口は今も壁に叩き付けられたリョウへ向いておりいつ何時でも発射可能な状態にあった。

 

シャティエルは魔方陣から召喚される武器以外にも、自身に内蔵されてある武器も多種多様で、遠距離戦に関しては有りとあらゆる状況において対応できる装備を備えており、数多の光線技や兵器を用いて相手を翻弄する戦闘スタイルで、接近戦をさせることなく完封させる。

仮に接近戦に至ったとしても、接近戦用の武器も多数存在するため不利な状況に陥る事がまずないように装備、武装が充実しているので死角がない。

 

シャティエルは無慈悲にも壁に叩き付けられ動かないリョウに向け『光粒子ライトブラスター』と『ソニックプラズマ』を連射する。

痛みに顔を歪めたリョウは機械である右足の足裏からジェットを噴射させ真横に避けることでシャティエルが放つ光弾の直撃を免れた。

攻撃を避けられたからか、シャティエルはすぐに射撃を中止しリョウを真っ直ぐに見据えていた。

 

リョウ「…どうした? また何か言いたそうな感じがするが」

 

シャティエル「あなたの義足、何処で製造された物なのですか? 私が目視し分析したところ、その義足は博士の知識と技術を用いて製造された物と推測しますが」

 

リョウ「……さぁ、どうやろうね。 答えられない、とだけ言っておくわ」

 

過去を知られたくないためか、話を反らすためアルティメットマスターの切っ先をシャティエルに向け『ソードバレット』を連射した。

攻撃を開始したと同時に素早い動きで『多連装レーザーバックル』が宙を舞いシャティエルの前で浮遊し盾となり攻撃を全て防いでいく。

 

リョウ「やっぱり自動的に防御するようプログラミングされてあるようやな。 でも、それを待っていたんよ」

 

リョウはアルティメットマスターを鞘に納め、手中にある鞘を突き出しエネルギーを溜め始めると、空気が乱れ始め電撃状のエネルギーが身体中を駆け巡る。

 

アイリ「りょ、リョウ君! その技は一日に一回しか使えない筈でしょ!?」

 

リョウ「あぁ。そうやけど、威力を下げれば行動ができる程度の力が残る安全圏のレベルやから、問題あらへんよ。 40%くらいの力でいかせてもらおう。 『ソードスパーク』!」

 

リョウの行動に心配の色を浮かべたアイリを宥めると、溜めたエネルギーを解き放った。

先日ラミエルに向けて放った光線と比べて太さは半分以下と命中率は下がってはいるものの、それでも決して狭いとは言い難く威力も相当なものだ。

光線はシャティエルが射ち放った光弾を打ち消し『多連装レーザーバックル』に直撃し光線の中へと飲み込まれ、更に直進していき避ける時間すらも許されることなくシャティエルにも直撃し、光線の中へ姿は消えていった。

光線は部屋の壁に直撃すると、光の粒子となり消えていった。

 

部屋全体には強力なシールドが張られており、爆発物が不意に爆発しまうような事故が起きたとしても、他の部屋や部屋に保管されてある物資や研究資料に被害が及ばないようになっているため無傷だ。

 

アイリ「ふえ~、昨日も見たけど凄い威力だよ」

 

リョウ「まぁ残念ながらほぼノーダメージみたいやけどな」

 

リョウの目線の先にはシャティエルが表情を変えることなくその場に立っていた。

何もせず立っていたわけではなく、シャティエルを囲むかのようにドーム状のバリアが張られており、ダメージを最小限に抑えたようだ。

バリアには亀裂が走っており、数秒経つと張られていたバリアはガラスが割れた音を鳴らし崩れた。

 

シャティエル「敵であれ、称賛の拍手を送りたいところです。 私の『クリスタルミラーバリア』で防ぎきることができる限界までの高出力のある技を出せるのですから」

 

リョウ「恐悦至極やわ。 ご希望であればもう一発ぶっ放してもええんやで」

 

シャティエル「先程の攻撃の直撃を受けてしまうと、私のボディに多大な損傷に加え、直撃のする部位によっては完全に破壊される可能性があると推測しました」

 

シャティエルは隣でまともに光線を防ぐため直撃を受け火花を上げ動くことがなくなった『多連装レーザーバックル』、破壊された『クリスタルミラーバリア』を見て瞬時に分析した。

半分以下の出力で防御に特化した装備が撃ち破られたのは脅威だ。

最大出力での攻撃ならば人間、エンジェロイドを問わずにただでは済まないだろう。

 

ラミエルはその攻撃を直に受けたが、体が頑丈なのか打たれ強いのか、翌日である今日には完全に復帰しているようだが。

 

リョウ「冗談やったのにめっちゃ正確に分析してるな。 さっきも言うたけどわしはお前を破壊するつもりはないんや。 それと、シャティエル、わしも人のことは言えないが、ぜんぜん本気を出してないやろ?」

 

シャティエル「…何故、そう思うのですか?」

 

リョウ「レーザーをわしに射ち続けていたけど、追尾機能を付けてなかったし、わしが壁に叩き付けられていた間にもっと強力な武器を準備して射つこともできた筈やのに、威力が低めの牽制用に使われる『ソニックプラズマ』を使用した。 更に言うと、同じ侵入者であるアイリは今現在でも無防備でいつ何時でも攻撃を与えられた。 視覚に入っている筈なのに攻撃を加えなかった。 フサキノ博士に命じられ守護者としてここに立っているなら、侵入者であり敵を討つためなら全力を用いて阻止する筈のエンジェロイドが、何故本気を出さないんだ?」

 

シャティエルの疑問に可笑しく思えた点を淡々と答えていく。

 

シャティエル「………」

 

リョウ「黙りか? それとも、何か考えを纏めてるのか?」

 

シャティエル「私にも良く分からないのです。 何度コンピューターで計算しても、理解できないのです」

 

俯いた顔を上げたシャティエルの顔は今までの無表情のものとは違い、少し悲しげに見えた。

 

シャティエル「博士からこの奥にある部屋を、研究所を守るよう命じられ、いつ何時でも全力を出せるようエネルギーや弾薬の補給は完璧に行われています。 メンテナンスも受けており異常は何処にも見当たりません。 それなのに何故だか体が重く、思考回路が正常にいかず判断が遅れ、動力炉が今まで感じたことのない、締め付けられると例えればいいでしょうか、そのような異常まで感じ取れるのです。 私がメンテナンスカプセルを出てから博士のお姿が見当たらず、幾年もの間、一人で研究所を管理し、監視を続けていた時も、似たような現象が起きていました」

 

シャティエルは仕草はしないものの、顔を見ると明らかに困惑している表情をしており、最初に見た無表情な顔が嘘のように崩れていた。

 

シャティエル「何故このような現象が起きているのか原因が分かりません。 今戦っているこの状況でも起きている。 まるで戦いを拒んでいるかのようで、エンジェロイドである私の存在する理由がなくなってしまいそうな…このような事を思考してしまう私自身が可笑しく思えてきてしまい…」

 

リョウ(シャティエル、やっぱりお前…)

 

リョウはシャティエルの行動を見て何か思うことがあったのか、手に持っていた鞘に納めたアルティメットマスターを腰へと戻し無防備な状態となった。

突然のリョウの行動にアイリとシャティエルは驚きの表情を浮かべた。

 

シャティエル「っ、どういうおつもりですか?」

 

リョウ「これはあくまでもわしの予想なんやけど、シャティエル、お前はわしとは戦いたくはないんやろ?」

 

シャティエル「い、いえ、そんなことはありません。 エンジェロイドとして、この研究所をお守りし、博士の約束を守るために、戦います!」

 

柔らかな優しい口調から一変し、声を荒らげて『光粒子ライトソード』を出し素早く腕を振り上げ切っ先をリョウに向け、鋭い目付きで睨みを利かせ歩みを進め近寄って行く。

 

リョウ「…そうか。 だが、今のお前じゃわしを、いや、誰かを傷付き倒すことはできへんやろなぁ」

 

シャティエル「私を侮辱するようなことはしないでください。 叡知に溢れた博士が作り上げた最高傑作のエンジェロイドである私を侮辱することは、博士を侮辱するのと同じことです!」

 

シャティエルは怒りの感情を露にし、リョウに徐々に詰めより『光粒子ライトソード』の刃をリョウの喉元へ突き付ける。

主に遠距離戦を得意とするシャティエルが自ら接近戦に切り換える選択は、然程追い詰められた場合でしかない。

リョウはその行動を特に不思議と思うことなく、退ける様子を見せることなく、表情を変えることなくその場に立ちシャティエルの瞳を真っ直ぐに見据えている。

 

シャティエル「…何故逃げようとしないのです」

 

リョウ「さっき言ったやん。 今のお前じゃ誰かを傷付けることはできない、決してな」

 

シャティエル「そ、そんなことは…!」

 

リョウ「なら、やってみろ。 その刃を振るってわしの首を飛ばしてみなよ」

 

挑発的な言葉を投げ掛けられシャティエルは歯を噛み締め、更に光の刃を近付ける。

リョウの喉元にはコンマ1㎜でも動かせばかき斬られそうな距離にまで迫ってはいるが、相変わらず表情を崩すことなくその場に立っているだけで抵抗する意思を見せようとしない。

 

遠くで観戦をしていたアイリは手を口に当て不安げな面持ちでいて、不安と心配で胸の鼓動が早鐘のように鳴っていた。

リョウは何かしらの考えがあって相手を使嗾させたのだろうが、いつ首を掻き切られてもおかしくないような状態で、心配しない方が無理だった。

大事な人が危機的状況に陥っているのに居ても立っても居られなくなり、ガーンデーヴァを召喚し、震える手で矢を取り弦を引く。

 

リョウ「アイリ、弓を下ろして」

 

アイリ「で、でも! それじゃリョウ君が!」

 

リョウ「わしを信じてくれ」

 

アイリの方を向くため首を少し横に動かした時に肌が刃に触れ血が出ている事も気にせず、優しい口調でアイリの気を沈める。

アイリは渋々言われた通りにリョウを信じて弓を下ろしたが、万が一のためか、矢は消すことなくりいつでも救出できる準備をしている。

 

シャティエル「仲間に助けを求めなかったことを後悔しますよ?」

 

リョウ「後悔することはないよ。 お前は斬ることはできないからな」

 

シャティエル「あなたも執拗に意見を変えないのですね。 何処からその自信が湧いてくるのでしょうか」

 

シャティエルは睨み付けながら腕を勢い良く振るう。

リョウの首を斬り飛ばす、その直前で寸止めし凄惨な事にはならずに済んだ。

 

シャティエル「くっ! な、何故…!」

 

リョウ「やっぱり。 わしの思った通りやな。 まさか本当に自分では気付いていなかったんやな」

 

シャティエル「ど、どういうことですか?

私に何をなさったのですか?」

 

リョウ「いや、何もしちゃいないよ。 お前が目覚めた時には既に起こっていた事なんかもしれへんけどな」

 

シャティエルはリョウが述べていることの意味が理解できず混乱している。

リョウは自然と震えていたシャティエルの手を掴みゆっくりと下に下ろした。

不意な行動にシャティエルは少し驚いたようだったが、本人が不思議と思っているように、何故だか抵抗はしなかった。

 

リョウ「シャティエル、ここで博士が研究していた物の中で、一つだけ知らないものがあるんやない?」

 

シャティエル「わ、私には博士が研究していたもので知らない事はございません」

 

リョウ「悪い、言葉が足りなかったな。 研究内容で実用された物がどのような形で存在しているか、知らない物があるんやないかな?」

 

シャティエル「何故、その様な事を今聞くのですか?」

 

リョウ「データを読ませてもらったところ、博士がいない今現在、目覚めて以来は管理してたのはシャティエルになっていた筈やから、当然何を製造されていたのかは知っているやろ。 ココロプログラムってのはどういう物なのか分かる?」

 

シャティエル「ココロ、プログラム…」

 

リョウが発言した単語を聞いた途端、シャティエルは俯き沈黙を保っていたが、暫くするとリョウが口を開きコンピューター室で閲覧した資料の内容を話し始めた。

 

ココロプログラム。

 

フサキノ博士が誰からの協力を得ることなく独自で開発していたプログラム。

その内容とは、心を持たない機械であるエンジェロイドに心を植え付けるというもの。

フサキノ博士は生涯研究を続けたが成功には至らなかったもので、突如姿を消してしまったそれ以降エンジェロイド達も手を付けなかった。

 

いや、手を付けられなかったデータだった。

 

何故なら、エンジェロイドや当時の関係者や知人等の援助を受けることなく、フサキノ博士がたった一人で設計、製造していたものだったからだ。

シャティエル本人もココロプログラムに関わる作業に携わったことは一度もないらしく、名前だけを聞いたことがある程度だと言う。

 

リョウ「名前しか知らないとは思わんかった」

 

シャティエル「博士は、『これは僕自身の力で作らなければ意味がない。』と仰り、私は勿論、他のエンジェロイド達の手も借りていませんでした。 私が目覚めて以来、博士のお姿が見当たらず、この先にある部屋を御守りするよう最後に命じられたことを続けていたので、まだ部屋には一度も入っておりません」

 

リョウ「……成る程、大体分かった。 まだ博士がどうなったのか気付いていないみたいやな」

 

リョウはデータにあった資料とシャティエルの発言で何か分かったようで、シャティエルの手を引き、先程まで通すまいと守護していた更に奥へ続く扉へと導く。

 

リョウ「この先に答えがある筈や。 正確にはE資源製造装置の側にある博士の部屋に、かな。 お前に起きている不可思議な現象や、ココロプログラムとは一体なんなのか。 博士が何故突然姿を消してしまったのか。 わしの勘が間違ってなければ、全てが分かる」

 

シャティエルはリョウの言葉を聞き迷っていた。

 

博士の命令には従い、最後まで全うしなければならない。

そうプログラムされているわけではないが、機械であるエンジェロイドが命令を聞きその通りに動くの至極当然のことであろう。

だが、目覚めて以来博士が行方知らずとなっており、安否が気になり部屋に入りたいという思いが強くあった。

命令は優先されるものではあるが、主人である博士の身に何か起きたのであれば、主人を守ることを、人命を守ることを最優先という考えが組み込まれたコンピューターが導き出した。

シャティエルは博士の命令と、最優先と導き出された安否による確認、どちらを実行し続けるか非常に迷い悩んでいた。

 

リョウ「自分が今行動したいと思った方を、選んだらええんやないか? 命令も大事やけど、博士はシャティエルが自分自身の意思で行動することを願ってたんやと思うで。 わしの喉元に刃を突き付けてきたのも自分の意思でやったことやと思うから、何て言うのかな…その時の感覚っていうか、自分が導き出した答えを信じる。 そんなんでええと思うで」

 

黙り込んでしまった彼女の表情から心情を察したのか、言葉が思う具合に選べなかったが優しい口調で言葉を掛けた。

リョウの言葉でシャティエルは再び考えが変わったのか、先程よりも明るい表情になったように見える。

 

シャティエル「何でしょう…動力炉の内にある何かがなくなり、体全体が軽くなったような感覚があります」

 

リョウ「…そうか。 じゃあ、どうするかはもう答えは出たってところなんやな」

 

シャティエルは俯いていた顔を上げ、真っ直ぐと前を見つめ扉の方へと歩いていき、E資源製造装置のある部屋であり、フサキノ博士の部屋でもある扉を開こうと手を伸ばした。

 

だが、伸ばされた腕は届くことはなかった。

 

突如赤く光る鞭が不規則な動きでシャティエルの腕を弾いた。

鞭は生き物のように動きシャティエルの体に瞬時に巻き付いた。

シャティエルの機械の体がいとも簡単に持ち上がり、宙を舞いながら壁や床に何度も叩き付けられた。

リョウは鞭を操る人物に目を向けると、シャティエルとの戦闘により倒された筈のベレトが不敵な笑みを浮かべており、鞭状に変形した愛用のフルーレを無茶苦茶に振るい巻き付かれたシャティエルを壁や床に叩き付け攻撃を繰り返している。

 

リョウ「てめぇ…!」

 

ベレト「おっと、下手に動かないでくださいよ? 動くとこの機械人形がどうなるか、言わなくとも分かりますよね?」

 

アルティメットマスターに手を伸ばしかけたリョウの行動を見たベレトは振り回していた手を止めシャティエルを自身の方に引き寄せ、フルーレを元の剣へと変形させ、片手で髪を掴みサーベルの切先を喉へ当て、人質として捕らえることでリョウの行動を封じた。

機械とは言え、流石のシャティエルも喉に剣を突き付けられては下手に行動することはできないようで、一切動く気配がない。

シャティエルを傷つけられるわけにはいかないため、リョウは腕を下ろし汗ばむ手を握り締め、ベレトの卑劣な行動と、救出する術がない己の無力さに苛立ちを覚えた。

 

アイリ「人質取るなんて、卑怯千万!」

 

ベレト「我々悪魔にとっては褒め言葉にしか過ぎませんよお嬢さん? 機械を破壊した後でゆっくり嬲り殺してあげますので、お待ちしていてくださいね」

 

口角を上げ不気味な笑みを浮かべるベレトを見てアイリは初めて恐れを感じたのか、歯を噛み締めながら一歩下がり、ガーンデーヴァを持った震える右腕を左腕で抱き締めるように掴む。

ベレトはシャティエルを捕らえたままゆっくりと歩き始め、徐々に扉へと近付いていく。

このまま何もできず終わることは避けたいところだが、いかんせん救出方法が見つからず行動を起こすことができない。

 

リョウ(部屋に入った直後に安堵したところを叩くか? 部屋の中での戦闘を避けたいところやから素早く仕留めないとな。 やむを得ない時には、あの力を使うしか…)

 

ベレト「ふふふっ、悩んでいますね、世界の監視者」

 

リョウ「…お陰様でね」

 

ベレト「助けることなどできやしませんよ。 今まで多くの仲間を救え切れなかった、貧弱で腑甲斐無いあなたにはね。 世界の監視者というのは名前だけですね」

 

ベレトの言葉に反論できないのか、リョウは苦虫を噛み潰した様な顔になる。

 

アイリ「リョウ君の事をそんな風に言わないで!!」

 

部屋中にアイリの怒声が響き渡った。

リョウは発せられた大声に驚き振り向くと、先程まで怖じ気付いていた風姿から一変し、憤怒していたアイリがいた。

 

ベレト「まったく、五月蝿いですね。 態々大声を出すほどでしょうかね。 あなたはこの男の過去を知っているのですか?」

 

アイリ「そんなことあたしが知るか!」

 

リョウ・ベレト「えぇ…」

 

アイリ「そりゃリョウ君とは会ってから1日しか経ってないんだから全部は分かんないよ。 でもさ、少なくともリョウ君はあたしの事を救ってはくれてるよ。 天使になる前に起きた出来事は思い出せないけど、リョウ君があたしを助けようとしてくれなかったら、あたしは天使になるどころか死んじゃって終わっちゃうところだったんだから」

 

ベレト「魂が崩壊する前に救うことができなかったのですから、結果的には救えなかったと同じことですよ」

 

アイリ「あたしが救われたと思ってるからそれでいいの! リョウ君をこれ以上悪く言ったらあたしが許さないんだからね!」

 

揺るぎのない瞳でベレトに自身の強い思いをぶつけた。

普段大声を上げることのないせいか、多少息が上がっている。

 

ベレト「やれやれ、戯れ言を聞くだけ時間の無駄でしたね」

 

シャティエル「いえ、彼女の行った行為は決して無駄ではありません」

 

刃を突き付けられてから動くことなく沈黙を貫いていたシャティエルが口を開いた。

ベレトは無駄口を言うシャティエルに苛立ちを覚え髪を引く力を強め、何故無駄ではなかったのかを問い掛ける。

 

シャティエル「何故かと申しますと、時間稼ぎをしてくれたからからです」

 

ベレト「時間稼ぎだと?」

 

リョウ「…アイリ、わしが合図したら矢を射て」

 

アイリ「え、う、うん分かった」

 

ベレトがシャティエルの言葉に疑問を浮かべていたとき、リョウは全てを察したのか、アイリに掠れるような小さい声で矢を射るように指示し、ベレトに不審な動きが気付かれないよう利き腕である右腕ではなく左腕をに少しずつアルティメットマスターへ手を伸ばしていた。

 

シャティエル「準備が整ったので、攻撃を開始致します」

 

ベレト「なっ、ぐあっ!?」

 

シャティエルは両方の肩から『ソニックプラズマ』の砲身を出し砲口を後ろに回転させベレトに向け光弾を発射した。

不意を突かれたベレトは至近距離からの攻撃を避けきれず細長い光弾が肩に直撃し、手に持ったフルーレを落とし後方へと吹き飛ばされる。

 

シャティエル「『多連装多目的誘導ミサイル』、発射!」

 

シャティエルの周囲に魔方陣が多数出現し、中から正方形のユニットが姿を見せた。

ユニットの前側には小型ミサイルが縦に4発、横に4発装填されており、弾頭がライトグリーンの光を帯びている。

 

シャティエルの合図と共にミサイルは射出され、標的であるベレトへ向け飛んでいく。

武器を失ったベレトは自身の前方にバリアを展開させミサイルを防ぐ。

小型のミサイルではあるが、火薬の量が尋常ではなく威力はそれなりにあるようで、バリアに直撃した瞬間に大爆発を起こし、爆音と爆風が辺り一帯に轟いた。

 

リョウ「アイリ! 矢を射て!」

 

アイリ「う、うん了解! いくよ、『ストレートアロー』!」

 

耳をつんざかんばかりの爆音に耳を塞いでいたアイリはリョウの大声に応えガーンデーヴァを構え光の矢を召喚させ、自身の必殺技である『ストレートアロー』を放った。

光の矢は直進しバリアに直撃したが弾かれることはなく、バリアを貫通する勢いで未だに直進しようとしている。

リョウは矢が放たれたのと同時に走り始め、ミサイルが飛び交う危険地帯に自ら潜り込み小さく細かい動きのみで降り注ぐミサイルを避け、翼を展開させ飛び上がり機械である右脚を前に出しキックの体勢に入り、脚からジェットを逆噴射させ速度を上げ光の矢の後ろ側を蹴りつけた。

光の矢は後方から受けた衝撃により折れることなくバリアを貫通し、ベレトの腹に命中した。

怯んだベレトは後ろによろけ自身で生み出したバリアが消え失せ、ユニットから放たれた無数のミサイルが体に命中する。

 

ベレト「ぐあああああああ!!」

 

ベレトの悲痛な叫び声が発するが、それは爆発による音で掻き消されていた。

役目を終えたユニットは魔方陣の中へと消えていき、全てのユニットが消えたと同時に魔方陣も消えていった。

黒く立ち込める爆煙によりベレトの姿は視認はできないため、シャティエルの攻撃で倒されたのか把握はできない。

 

リョウ「…やったか?」

 

アイリ「リョウ君それフラグ…」

 

アイリが不安そうな顔をしリョウに顔を向けたその時、爆煙から体の至る箇所に先程よりも傷ができたベレトが赤いオーラを纏いながら猛スピードで低空飛行し扉へと直進していった。

あれほどの数のミサイルを受け未だに行動できるベレトの粘り強さと、如何なる手段を用いても成すべき事を成そうとする誠意には感服するところだが、敵であるのならば相当厄介なものだろう。

ベレトの行動に反応が少々遅れたリョウはアルティメットマスターを引き抜きベレトを追うため飛翔するが、聊か距離があるため扉を突破される前に追い付くかどうか五分五分といったところだった。

 

ベレト「どんな手を用いようと使命を果たすことをできればいいのです! では失礼致しますよ!」

 

リョウ「逃がすか! 『ソードバレット』!」

 

シャティエル「博士の部屋に悪魔を入室させるなどあってはならぬこと、先に行かせたりはしません」

 

シャティエルは『光粒子ライトソード』を出し、接近するベレトへ向け力強く降り下ろした。

光の刃はベレトの体に深く刺さることなく体に覆われてあるオーラにより弾かれ、バランスを崩し大きく体を後退させてしまった。

リョウが放った光弾も避けられてしまい、ベレトは扉の数メートルという場所まで迫る。

 

?「ちょっと待てやコラー!」

 

それは一瞬の出来事だった。

何者かがアイリとリョウが入室するために通った扉を突き破り、リョウの飛行速度をかるく凌駕する速度で宙を駆け抜けベレトの前へ姿を現した。

勢いよく突き出された右手は体を覆い尽くしていた赤いオーラをすり抜けるようにしてベレトの頬へ命中、悲鳴を上げる間もなく後方へと吹き飛ばされ地面を転がる。

 

アイリ「あっ…ラミエル君!」

 

ベレトを殴り飛ばしたのはラミエルだった。

Typeβとの戦闘を終えた後、機能停止になる直前に言い残した言葉、約束を守るため彼はアイリ達が何処へ向かったのか分からず研究所をひたすら飛び回り探索していたところ、偶然にもこの部屋へと辿り着いたようだ。

 

ラミエル「悪い、待たせちまった。 どうやらナイスタイミングだったみたいだな。 あいつとの約束を守らないといけなかったんでね。 俺は約束は破ったりはしないからな」

 

ベレト「まったくですね。 おかげで私の完璧な計算は駄々崩れですよ」

 

予想外の来客に、ベレトが頭の中で計算されていた計画は音を立てて崩れていた。

息も絶え絶えになりながらも立ち上がり、何か手立てがないか確認するため周囲の状況を見渡す。

 

未だに戦闘が慣れていないアイリ、世界の監視者であるリョウ、底知れぬ破壊力を持つエンジェロイドのシャティエル、戦闘能力がそこそこ高いラミエルの四人。

圧倒的に不利な状況に、ベレトは両腕を上げ降参のポーズを取った。

 

ベレト「今回は私の完敗のようですね。 あまりにも分が悪いので潔く退くと致しましょう。 忘れないでくださいよ? 私は諦めたわけではありません。 必ずや成すべき事を成すため、戻ってきますからね」

 

先程よりも濃い赤いオーラがベレトの全身を覆い尽くし、数秒経つとベレトの姿はオーラと共に消え去っていた。

緊張の糸が切れたのか、アイリはガーンデーヴァを納め腕をだらりと下へ降ろした。

 

シャティエル「敵の消失を確認、戦闘体制を解きます」

 

シャティエルは腕から伸ばした『光粒子ライトソード』を納めリョウへ顔を向ける。

 

リョウ「もうわしらを敵としては見てないみたいやな」

 

シャティエル「結論から言えばそうなりますね。 真の敵は先程の悪魔のようでしたから。 それと、何故かは私にも理解は不能ですが、貴方の事を信用しても良いと思ったので」

 

リョウ「…そうか。 ありがとう、シャティエル。 じゃあ、部屋に入ろうか。 真実をこの目で確かめるために」

 

リョウが扉へと歩いていき、次にシャティエル、アイリとラミエルが続いて後を付いて歩く。

 

ラミエル「何がどういう状況なんだ?」

 

アイリ「話せば長くなっちゃうんだよね。

次の話に行くまではラミエル君に話してるってことにしといて☆」

 

おけ、了解。

 

ラミエル「おい、仕事しろお前ら」

 

 

 




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