ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

16 / 115
行きつけの和菓子屋さんの団子が上手いんじゃー


第15話 クエスト終了! 報酬:プロテインクッキー

アイリ「シャティエル、少しは落ち着いた?」

 

シャティエル「はい。 申し訳ありません。

お見苦しいところを見せてしまって」

 

感情が高ぶり、嗚咽の声を漏らしながら数分間泣き続けていたシャティエルを見守っていたアイリ達は落ち着きを取り戻しつつあったところで声を掛けた。

 

シャティエル「皆さん、ありがとうございます。 皆さんのおかげで、私には博士が望んでいた心があるということを知ることができました」

 

リョウ「わしらはただ真実を知りたかっただけ。 そして、シャティエルに真実を知ってもらいたかっただけやから。 …真実を知れたのは良かったけど、謝らないといけないな。 残酷な事を知らせてしまうことになって」

 

残酷な事とは、数年間という孤独を味わっていたことを知ったこと、そしてフサキノ博士の死。

自分にとって全てだったと言える人を亡くせば、誰でも精神的ショックは大きく、喪失感を抱くだろう。

 

シャティエル「悲しいというこの気持ちは大きいですが、悲しみと言う感情を教え、与えてくれたのは博士です。 この悲しみは博士が与えてくれたもの。 大事な心の一部なので、大事に胸に抱いてこれからもこの研究所を守っていきます」

 

悲しみも苦しみも、全て博士が与えてくれた心。

シャティエルは全ての感情を自分の宝として、これから歩んでいくと決意した。

 

喜びがある限り、悲しみもある。

幸福がある限り、不幸もある。

 

心を持ったばかりのシャティエルにはまだ難解な問題かもしれないが、人と同じ強い心を持つシャティエルなら、きっといつか分かる時が来るだろう。

 

アイリ達は心を持ったばかりで大きな悲しみを味わってしまったシャティエルを気掛かりに思っていたが、その心配は皆無だった。

 

心を持てた喜びに笑みを浮かべるシャティエルがいたから。

 

 

~~~~~

 

 

全ての事が終わった後、睦月が遅れてフサキノ博士の部屋へとやって来た。

 

睦月曰く、突然気を失ってしまったらしく、気が付いたらを床に突っ伏せておりメモリを手にしていたそうだ。

メモリの中身を確認し、研究所のデータの確認を終え部屋を出て急ぎ足でフサキノ博士の部屋へ駆け付け、今に至る。

リョウが憶測で語るには、研究所の防衛システムの一つである電気ショックにより意識を失ったものだと言う。

あくまで憶測なので実際に起きた出来事ではないので断言はできず、睦月も気を失う前の記憶がなかったため誰にも分からないままこの件の話は終わった。

 

睦月の身に何が起きたのかは、記憶を消した張本人であるリョウしか知ることはなく、真実は闇の中へと消えた。

 

時空防衛局としての任務を終えた睦月は本部に戻らなければならないため、研究所を出るようアイリ達を促すと、シャティエルがフサキノの作り上げたテレポート装置を使用し研究所の入り口まで移動することができた。

フサキノが登録した場所(研究所内だけ)を自由に行き来できるようになっていた。

迷路の様に複雑な構造ととてつもなく広大な研究所には必須な物であろう。

 

ラミエル「それで、お前はこれからどうするんだ?」

 

シャティエル「私はこれからもこの研究所を管理し続けます。 もし、また悪魔族が攻めて来るような事があれば、私がここをお守りしなければいけませんし、それに…」

 

ラミエル「それに?」

 

シャティエル「…私は、博士の後を継ぎたいと思っています。 博士が完成させることができなかったナノマシンを、作り上げたいと思います」

 

アイリ「心を持てて、早速立派な夢ができたんだね」

 

シャティエル「夢、というのは、寝ている時に見るものでは?」

 

アイリ「その夢とはまた違うんだなぁ。 う~んとね、将来実現させたいと心の中に思い描いている願い、かな? かな?」

 

リョウ「何故二回言ったし」

 

アイリ「フサキノ博士がシャティエルに心を持ってほしいって思っていたこと。 これも夢ってのと同じだよ」

 

シャティエル「夢…まだ、私には理解するには難しいですが、実現できたら素晴らしいものなのですね」

 

シャティエルは口に手を当て小さく微笑んだ。

 

アイリ「夢に向かって頑張って、実現するかもって考えただけでもワクワクしちゃうもんね。 夢はでっかくスターダム! シャティにはこれからも笑顔で夢に向かっていけるよう応援するね!」

 

睦月「シャティ? 俺をムッキーって呼ぶようにこいつにもニックネーム考えたのか?」

 

アイリ「うん! 勿論、シャティエルがこの呼び方で良かったらなんだけど」

 

シャティエル「私はその呼び方でも構いませんよ。 愛着があって良いと思います。 ありがとうございます、アイリさん」

 

全てを包み込むかの様な優しい笑みを浮かべるシャティエルを見ていると、何故か此方も笑顔になってしまう、そんな魅力があった。

アイリは初めて名前で呼ばれた事に歓喜しシャティエルに笑顔で寄り添った。

 

睦月「んじゃそろそろ行くか。 俺も本部に戻って報告しに帰らなきゃいけねぇし」

 

アイリ「カイ君が心配して待ってるだろうからそろそろ帰らないとだし」

 

シャティエル「では皆さん、お気を付けて」

 

リョウ「シャティエル、今後はこの研究所、と言うよりこの洞窟を出るときとかはあるのか?」

 

今日以降も独りとなってしまうシャティエルが心掛りだったのか、帰ろうとした直前に声を掛けた。

アイリ達四人の中でもリョウが特に気に掛けているようで、懸念を抱き独りにしてしまうことが心に重くのしかかってくる程だ。

再び独りになった時、孤独感や不安に苛まれないか心配でしょうがないと言ったようだった。

 

シャティエル「特に出る用がないので、研究所から出ようとは思っていません。 私は博士に言われたように、これからもE資源製造装置を守り続けます。 それと、ここは私が生まれた場所であり、私の家でもある大切な場所ですから」

 

リョウ「…そうか。 もし、何かあったり…未だ見たことのない外の世界へ出て見てみたいと思ったら、洞窟の外へ行けばええよ。 洞窟の入り口に結界が張られてあるからそれに触れたらええ。 そしたらわしがすぐに向かうから」

 

シャティエル「はい、分かりました。 寛大なお心遣いありがとうございます。 …色々と、私の事を考えて下さってくれて、感謝の言葉しかありません」

 

リョウ「まぁなんだ、わしにはそれくらいしかできへんからね。 何かあったら、いつでも構わへんからね」

 

シャティエル「はい。 リョウさん、それでは、『また』会いましょう」

 

リョウ「おう、『また』、な」

 

リョウは名残惜しさを堪え、アイリ達とグニパヘリルの出口へと歩んでいく。

岩肌に隠れ姿が視認できなくなる前にアイリは立ち止まり、振り返り大きく手を振るとシャティエルは微笑みながらアイリに手を振り返した。

 

普段静寂が支配する洞窟に四人の足音が響き渡る中、ラミエルが口を開いた。

 

ラミエル「そういや、結局あのメールを時空防衛局に送信したのはシャティエルなのか?」

 

睦月「いや、あのエンジェロイドが送信したわけじゃなさそうだったぜ」

 

気を取り戻した睦月はメモリにデータが保存されてあるか確認するため直ぐ様メモリをパソコンに繋ぎ閲覧した。

 

膨大なデータが存在する中で興味を引かれ目に入ったのが、通信履歴だった。

受信履歴、送信履歴の全てが記されており、いつ誰が何時見ても分かり安いよう綺麗に整理されていた。

送信履歴のフォルダを開き画面を下へ下へとスクロールしていき、最後に送信された

メールを見つけた。

 

送信された日付は現在から約1000年前。

データを開くと時空防衛局宛てに送信されたものだった。

異世界の言語で『見つけてくれ…』と簡潔な言葉が記されていた。

シャティエルにココロプログラムをインストールし始めてから数日が経った日付に送信されていたとなると、メールを送信した人物は研究所にいたフサキノ博士しか考えられない。

 

約1000年前に送信されたものが、何故現在に至るまで時空防衛局へ受信されなかったのか記載されてはいなかった。

そして、フサキノ博士は研究所で何を見つけだしてほしかったのかの記載もない。

あらゆる事が謎だらけで全員が腑に落ちないといった思いが顔に出る。

メールを送信したフサキノ博士本人の思いを知る由がないため、真実には辿り着ける事はないだろう。

 

アイリ「うーん…これはあくまであたしの考えだけど、フサキノ博士が見つけだしてほしかったのって、シャティエルじゃないのかな? フサキノ博士はシャティエルが幸せになることを望んでいた。 沢山の人と触れ合って、心をもっと知ってもらいたいって日記にも書いてあったし」

 

リョウ「そう…かもしれないな。 きっと、そうなんだろう。 博士は優しい人やからな」

 

リョウは静かに儚げに呟き哀愁を漂わせていた。

 

睦月「まるで博士の事を知ってるみたいな言い方だな」

 

リョウ「…いや、知ってるわけやないよ。 ただ、博士に同感したなってだけよ。 大切な人の事を最後の最後まで想っている温和な人だなぁって分かったからよ」

 

睦月「…そっか」

 

睦月はリョウの表情を見て察したのか、それ以上の事は論及しなかった。

 

リョウ(ごめんな、シャティエル…)

 

何故リョウがシャティエルに対し謝罪の念を抱いているかは、仕事上付き合いが長い睦月でも分かることはないであろう。

 

その話はまた遠い後にアイリ達も知ることになる。

 

暫く歩き続けていると、グニパヘリルの出口が視界に入ってきた。

何時間という短い間だったが懐かしく感じる日の光が眩しく、目を瞑り大きく開いた洞窟の入り口を通り抜けた。

時刻は夕暮れ時、空は夕日により赤く染まり、橙色に染められた雲海はこの世のものとは思えない程の絶景だった。

 

リョウ「ガブリエルが結界を通れるよう細工をしてあるから、わしらが触れても大丈夫な筈やで」

 

リョウはゆっくりと手を伸ばすと、弾き返されることなく結界を通り抜けた。

害がないことを確認した一同は結界を通り抜け、振り向きグニパヘリルの入り口を物寂しげに見つめた。

 

アイリ「また、会えるよね?」

 

ラミエル「きっと、また会えるときが来るだろ。 ガブリエルの許可を取らなきゃいけねぇのが面倒だけどな」

 

リョウ「まぁ事情を言えばちゃんと結界を解いてくれるよ。 あんなんでも四大天使の一人なんやし」

 

ガブリエルは四大天使の中でも防御に優れた能力を備えており、主に都市シェオルやグニパヘリルの周辺に結界を張る役目を負っている。

 

穏便で安閑としている彼女だが、修復すべき結界は張り直し、異常が発見されれば直ぐ様解決のため迅速に行動を開始する、案外働き者だ。

 

結界の管理以外には他三人の四大天使と共に天界の政治、経済等を纏めたりもしており、異世界との交流を図るための会議や時空防衛局とのやり取りを行っている。

四大天使は天界を統一する存在として君臨しており、民である天使達からの人望もとても厚い。

 

ガブリエル「はーい皆さんお疲れ様~」

 

アイリ「ホいつの間に!?」

 

ガブリエル「私の実力をもってすればここまで飛んでくるのに1分と掛かりませんよ。 門を通る時にザキエルに突撃してしまい負傷させてしまいましたが…」

 

四大天使の実力を聞いて感心していたのも束の間、都市を守護する者を負傷させた無用な出来事に呆れ返った。

 

ラミエル「俺達のところに来る前にお前の力で癒してやれよな」

 

ガブリエル「もし仮にあなた方達ではなかった場合、最悪な結末に成り得る可能性もないとは言えませんから致仕方なくザキエルを置いて早急に来たんですよ」

 

割りとまともな事柄を話していたので、全員先程の呆れ返った表情は風に飛ばされたかのように消え、再び感心の色が戻り称揚した。

 

リョウ「流石、と言っておくよ」

 

ガブリエル「世界の監視者であるあなたにそう言ってもらえるなんて、恐悦至極にございます、なんて♪」

 

見た目は20後半の超絶の美女だが、やはり技とらしくすると誰であろうと痛々しいと思い口走ってしまいそうになったが、吸い込んだ息と共に飲み込んだ。

言った途端に騒々しくなるのは容易に想像できたから。

 

ラミエル「結界のことは分かったけどよ、俺達に何か用でもあるのか?」

 

ガブリエル「労いの言葉を掛けてあげようと思い駆け付けて来たんですよ」

 

睦月「だからって門番吹っ飛ばしてから来んなよな」

 

ガブリエル「起きてしまった事をあれこれ述べていても仕方のないことですから、忘れてしまいましょう」

 

アイリ「匙を投げちゃったよこの人」

 

ガブリエル「冗談ですよ♪ 私が後でしっかり治療しておきますから、御安心ください。 私は慈愛に満ちた天使、あらゆる難解で困難な事が溢れ出ようが、必ず解決への道を開いて差し上げましょう」

 

胸を張りかっこよくきめているつもりでいるのだろうが、今回の件に関しては思い切り自分が撒いた種だろうとこの場にいる全員が心の中で呟いていた。

 

ガブリエルは結界が張られていることを再度確認をし終えたところで、アイリ達一同はシェオルへ帰還することとなった。

アイリにとってはリョウ達と初めて行動をを共にし戦闘を繰り返してきたので、疲労が蓄積していたのか、疲れきった表情で翼を羽ばたかせリョウ達に遅れを取らないよう飛んでいる。

そんなアイリを見てか、睦月を背中に乗せたリョウは速度を落としアイリの横に付き飛んでいた。

 

門を通り過ぎる際にガブリエルにより負傷したザキエルが目を回し仰向けに倒れており、何人かの衛兵達が集り介抱をしていた。

ザキエルの治療をするためガブリエルは残り、アイリ達は苦笑いしつつ門を通過し帰路に就いた。

帰る場所が別方向だったラミエルも途中で別れることになり、「また会おうぜ!」と笑顔で手を軽く振り、こちらが手を振る間もなく猛スピードで去っていった。

 

家へ帰るために上昇していくと、建造物が放つ電気の光が星の様にきらびやかに光っており、夕日が沈みかけ薄暗くなる空と相まって綺麗で神秘的な光景を生み出していた。

 

アイリ「凄く綺麗…東京とはまた違った魅力があるんだね」

 

リョウ「結果的にやけど、アイリはこの光輝くこの街を守ったことになるんよ。 胸を張って、誇りに思ってええよ」

 

アイリ「そ、そんな、あたし特にこれといってできたことなかったし」

 

睦月「研究所の途中で防衛システムやエンジェロイド達が襲いかかってきたときに、アイリのフォローで俺は助けられたからな」

 

リョウ「危険な目に会わせたくはなかったけど、ベレトとの戦いでアイリが放った矢があったからあの状況を打破することができた。 実戦を得て成長してきてはいるし、自信を持ってええと思うよ。 世界の監視者としての任務ではなかったけど、時空防衛局の任務に初めて同行してここまで成果を出せれば大したものやと思うぞ」

 

アイリ「そ、そんな褒められると照れるな~/// アイリの好感度がUPしました!」

 

リョウ「どこのギャルゲーだよ」

 

褒められ鼻の高くなり上機嫌となったアイリは疲れの色が顔から消え、いつものように現実世界で使用されるようなネタを発言しており、飛ぶ速度も上がっていた。

喜怒哀楽が激しく調子が良い人だと思えるが、それがアイリの良い点なのかもしれないとリョウは薄々と感じていた。

 

暫く上昇し続け、漸く我が家の土地である庭へと足を着けた。

数時間振りだと言うのに、何故だかとても久しく思えてしまい、地面の感触を確かめるかの様に一歩一歩進んでいき、アプローチを通りドアノブに手を掛け扉を開いた。

 

カイ「アイリ! リョウ! おかえりー!」

 

玄関で靴を脱いでいると、リビングへ続く扉が開き、カイが笑顔を満開にさせ走り寄ってきた。

足に抱き付いてきたカイの頭をアイリは優しく撫でながら「ただいま」と笑顔で答えた。

 

アイリ(あたし、誰かにただいまって口に出したの初めてかも)

 

現実世界で一人暮らしをしていたアイリは生まれて此の方ただいまと言ったことがなかった。

孤児院では一人ではなかったが、外出せず部屋に籠り遊んでいたアイリはまずただいまと挨拶をしたことがなかった。

 

ーーー今の自分には、帰るべき場所があるんだ。

 

今まで感じたこともない新鮮さを感じ、『おかえり』という一言に暖かさを感じ胸が高鳴った。

アイリの過去を知るからか、なんとなくだが思っていることが分かったリョウは思わず微笑んだ。

 

ピコ「みんなおかえり~。 以外と遅かったね」

 

人間サイズのピコがリビングから出てきた。

出てきたピコの姿を見てリョウは吹き出した。

ピコの消しゴムである真っ白な体は赤や青、緑、黄色と様々な色のクレヨンで落書きされた染められており、アイリ達以上に疲労困憊と言った様子だった。

 

アイリ「ピコ君、ピエロみたいなモンスターになってるよ」

 

ピコ「カイの遊び相手になってあげてたんだけど、リョウ達が帰ってくる前にお絵描きしたいって言い出して…」

 

リョウ「それで身体中にお絵描きされたということか。 まぁ、何て言うか…お疲れ様」

 

リョウはピコの滑稽な姿を見て笑いを堪えており鼻の穴が膨らんでいた。

 

アイリ「疲れちゃってるけど、取り敢えず晩御飯作らないとね! リョウ君、リクエストある?」

 

リョウ「なんでもええで」

 

アイリ「屋上に行こうよ…久し振りに、キレちゃったよ…」

 

リョウ「え、何で?」

 

アイリ「今、この瞬間、全世界のお母さん達を敵に回したよ! なんでもいいってのが一番難しいんだから!」

 

リョウ「す、すまん。 じゃあ簡単に済ませられるラーメンにしようかな」

 

社会常識なのかどうかは兎も角、世間一般の主婦達を敵に回しそうな一言を発言したことに頭を掻きながら反省の色を浮かべ、簡単に調理できるものを上げた。

 

アイリ「オッケー任せといて! 『納豆ラーメンねばるっしょ』でいい?」

 

リョウ「いや、へんちくりんなのやなくてマルタイラーメンで頼むわ」

 

リビングへ入ったアイリは早速キッチンへ向かい調理を始めた。

途中、冷蔵庫の中にあった納豆を取り出そうとしていたところをリョウは椅子から転げ落ちる勢いで鬼の形相になりながら止めに入っていた。

 

晩御飯を食べ終えた後、アイリは入浴の準備をするため一旦自室へ戻った後バスルームへと向かった。

バスルームでは既にリョウが湯船を張るために入室しており、他にもバスタオルやマットの準備も済まされていた。

 

リョウ「よう、来たか。 湯船入れながらシャワー浴びてな」

 

アイリ「は~い。 あ、昨日は言ってなかったから一応言っておくね。 覗かないでよ?」

 

リョウ「覗かないっての。 わしが漫画で良くありそうな風呂を覗く変態に見えるか?」

 

アイリ「うん(即答)」

 

リョウ「地味に、いや、それなりに傷付くな…。 わしがそんな変態さんなら昨日の時点で覗いてるって」

 

アイリ「まぁそれもそうだよね。体が勝手に動いて覗かないことを祈っておくね」

 

リョウ「某大帝国劇場のモギリや有るまいし、んなことはないよ」

 

悪戯心丸出しで疑惑の目を向けられながらもバスルームを後にし、扉を閉めたのを確認し、服を脱ぎ始めた。

 

アイリ「残念ながら映像ではないのであたしの裸は拝めないよ☆ …って、あたしは誰と話してるんだろ」

 

 

~~~~~

 

 

リョウ「さて、仕事に入りますかね」

 

リョウは地下にある自室へ向かっていた。

フォオンは地下に部屋があると言っていたが、どうやらリョウのために用意していたものだった。

 

リョウは世界の監視者という重要な役割に就いており、赤の他人に見られてはまずい資料も多数存在し、何より明るみに出来ない肝要な点もある。

時空防衛局の局員達でも閲覧することを厳禁されてある資料も保管されてあるため、仮に来客が謝ってリョウの部屋に入室することがないようフォオンなりに考慮を払い地下室にしたようだ。

 

周囲を照らす灯火がない暗闇が支配する地下へと続く階段を下りていき、パスワードを打ち込むことで開く扉の前に立った。

リョウは手をパスワードをうつための機械に被せるように置くと、パスワードを一桁もうつことなく扉は開いた。

手を置いた一瞬、リョウの左目の瞳が金色に怪しく輝いていた。

 

リョウ「今日は何処まで見ようかな」

 

独り言を呟きながら部屋の電気を付けるためのスイッチを入れた。

暗闇だった部屋はライトにより照らされ全体が見渡されるようになる。

 

部屋には収納型のベッドに様々な本がぎっしりと敷き詰められた本棚にお洒落な木製の机、55インチという一人で見るには大きめのテレビとその大きさに合わせたテレビ台が置かれてある、変哲のない至ってシンプルな部屋だ。

 

リョウはキャスター付きの椅子に座り机に肘に付け何かを考える仕草を取る。

 

?「フサキノ研究所で何かあったの?」

 

突然の声にリョウは少々驚き声のする方向へ顔を向けると、消しゴムサイズのピコがいた。

リョウが扉を開いた隙に部屋へと入ってきたようだ。

因みにカイに落書きされた汚れはリョウ達が食事を採っている間に落としたようで、消しゴムらしい白色に戻っていた。

 

リョウ「はぁ、びっくりした」

 

ピコ「その割にはリアクション薄いな~」

 

リョウ「ピコだからそんなに驚かないんだよ。 ピコにならこの部屋にある物とか見られても問題はないからな」

 

ピコ「それもそっか。 よいしょっと」

 

ピコはテトテトと床を机の側まで歩み寄ると、跳び上がり机の上へ降り立った。

 

ピコ「さっきの答えを聞いてなかったね。

フサキノ研究所で起こった出来事。 …もしかしてと思うけど、シャティエルの事?」

 

リョウ「御明察。 ちょっと後悔みたいのがあってね」

 

ピコ「研究所に置いていってしまったから?」

 

リョウ「やれやれ、ピコには全てお見通しみたいやな」

 

降参といったように両手を上に上げ作り笑顔を浮かべた。

普段はニコニコと笑顔を浮かべ朗らかな性格で、活発に動き回る正に自由奔放と言える子供だが、以外にも周囲の人の事を良く観察しているようで、不安や悩み等を抱えていると表情で分かる洞察力を持っており、いざとなると真剣な顔になり話をする、抜かりのない場面がある。

 

リョウ「連れ出せなかったことは後悔してるよ。 シャティエルには色んな事を知ってもらって、色んな人と接して貰いたかったからね」

 

ピコ「フサキノ博士とまったく同じ考えだ」

 

リョウ「そう、なのかね? まぁわしは最後に会ったときに任せたと頼まれただけやからね。 勿論、シャティエルを幸せにしたいと思ってるのは自分の思いでもあるよ。 でも、心を持ったシャティエルは自分の意思で残りたいと言ったんやから、無理に引っ張り回す事もないんじゃないかなって。 一番大事なのは、自分の意思を強く持つことやからな。 もし、研究所を離れ外の世界を見たいと思ったら、きっと、自分から来てくれる筈さ。 その時はとびっきりの笑顔で迎えてやらないとな」

 

ピコ「なんかリョウの口からそんな言葉が出るなんて気持ち悪いな~」

 

リョウ「それがわしなんでね」

 

ピコ「ふふふ…。 そういや、リョウ、今日はまた何であの力を使ったの?」

 

笑みを浮かべながら穏やかに話していたピコの表情が一変し、険相なものとなった。

 

リョウ「流石にバレたか。 睦月に使った。 記憶を消すためにね。 理由はフサキノ研究所で色々と知られては困る資料があって、それを見てしまったから」

 

ピコ「それって、僕達の…」

 

リョウ「あぁそうや。 この世にあってはならない、全世界から禁忌と呼ばれ、誰もが恐れ戦く力を持つわしらに関係する事が少なからず表記されていた。 もうデータの改竄は終わったから問題はない」

 

ピコ「そっか…。 極力使わないようにはしてるみたいだけど、今回は仕方ないか」

 

リョウ「仕方ないで事が済むならええんやけどねぇ。 わしも人の記憶を何回も消したくはない。 だけど、やらないといけない。

わしらの存在を知れば、きっと人々は恐怖する」

 

自分を哀れむ様に言い額に手を当て項垂れた。

 

ピコ「そう、だよね。 本来なら、決して世には出てはいけない存在…と言うより、存在すらしてはいけないもの、だよね」

 

リョウ「まぁ、そうやな。わしらのようになってしまう発端となる者の存在がいない以上、わしら以外に生まれる事はないのが唯一の救いやな。 …さて、暗い話なんてやめて、わしは仕事に入らせてもらおうかね」

 

ピコ「うん、分かった。 邪魔してごめんね」

 

リョウが顔を上げ目を瞑り世界の監視を行うため集中したのを確認すると、ピコは机から飛び降り床へと着地し扉の方へと歩いていき、音を立てぬよう注意を払いながら退室した。

 

ピコ「…アイリにも、本当の事を言えないのは辛いだろうね」

 

誰に話すわけもなく儚げに呟き、暗い階段を登り始めた。

 




クエストっていう会社のプロテインクッキーがあるらしい
食ったことないですけど、皆さん買ってみてね!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。