ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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今年もぶれずにいきます


第20話 エクリプス来襲

アイリ「前回までのあらすじ! チ◯コが生えた」

 

リョウ「やめんかアホ!」

 

アイリ「いわーく!」

 

卑猥な発言をしたアイリに制裁を加えるため、何処から取り出したのかは不明な白いハリセンを持ったリョウは思いきり頭をひっぱたいた。

スパンッという快音がダンススタジオに鳴り響く。

二人のやり取りを見ている数人は苦笑いを浮かべている。

 

シギア「凄い音がしたね。 アイリとリョウは普段からこんな調子なのかい?」

 

リョウ「まぁそうやな。 このアホが発端で漫才紛いなやり取りが始まるんよ」

 

アイリ「アホとは失礼な! さっきのネタは知ってる人は知ってるネタなんだから!アリスちゃんは勿論聞いたことあるネタだよね?」

 

アリス「私聞いたことあるよ! 記憶は曖昧だけど、女子小学生の漫画だっけ?」

 

リョウ「んな情報提供はいらへんから」

 

リュート「…そろそろ始めてもいいか、呆気者の諸君」

 

アリス「意味は分からないけど凄く馬鹿にされた気がする」

 

痺れを切らしたリュートは焦燥とした態度で開口した。

嘸当たり前のようにリョウがこの場にいるが、もう一人のディーバであるミケナが漸く到着したため、楽屋からダンススタジオに移動してきたのだ。

遅刻した張本人であるディーバの一人、ミケナはアイリ達のやり取りが馬鹿馬鹿しかったのか、ケタケタと笑っている。

 

中学生くらいの容姿に茶髪のショートヘアーからは猫耳が生えており、腰の後ろからは長めのしっぽも生えている。

現実世界にいる人々からすればコスプレの類いに見えるだろうが、頭から生えた猫耳も腰から生えているしっぽも本物である。

彼女は獣人族と呼ばれる人型と他の動物の外見を合わせ持つ種族で、ミケナは猫の獣人だ。

 

ミケナを守護する存在であるディーバナイト、ニャミイも獣人族でミケネと同様猫の獣人だ。

ニャミイは身長が高くモデルのような体型で、身長が172㎝もあり女性にしては高い部類に入るだろう。

端から見ればミケナとニャミイは歳の離れた姉妹に見えてしまう。

ニャミイは白髪のロングヘアーを靡かせながらリュートの前まで行くと、腰に手を当て顔を近付け物申した。

 

ニャミイ「何言ってるのか理解はできないけど、謝らないとダメにゃー」

 

ミケナ「そうにゃそうにゃ~謝るにゃー」

 

リュート「相も変わらず騒々しい獣人達だ」

 

リョウ「諦めろ、リュート。 これ以上厄介にならぬ内に素直に謝っておくんやな。」

 

リュート「……はぁ、言い過ぎてしまって悪かったね。」

 

アイリ・アリス「分かれば宜しい!」

 

渋々であったが無愛想な態度で謝ったが、アイリとアリスの不遜な態度にリュートは苛立ちを抑えられず手を前に出し、メラメラと燃え上がる炎を出現させ二人を睨み付ける。

 

リュート「どうやら君達は消し炭にされたいようだね」

 

アリス「わあぉ冗談きついよ~。 私もやっちゃおうかな! 消し炭で済めばいいけどね!」

 

アリスはユグドラシル・アルスマグナを召喚させた。

杖の先端の宝玉が怪しく赤い光を放ち始め、一番近くにいたミケナはあたふたと八の字に動き回るとニャミイの後ろへと隠れた。

 

凶ノ助「…双方やめろ」

 

目にも止まらぬ疾風の速で凶ノ助が二人の間へと割って入り、アリスの持つユグドラシル・アルスマグナを弾き喉元へ苦無の先端を向けた。

リュートにも同様に喉元へ苦無を向けており、完全に動きを封じていた。

 

凶ノ助「今は仲間内で争っている時ではない。この時間こそが無駄そのもの。 成すべき事を放棄し自らの手で成さねばならぬ事を潰してしまうところだったのだぞ」

 

アリスとリュートの持つ魔力は相当なものだ。

二人の力が真っ正面から衝突すれば、楽屋どころかドーム周辺の建物をも巻き込み木っ端微塵に吹き飛ばされるだろう。

そうなってしまえば任務どころの話ではなくなってしまうのは明らかだ。

 

リュート「凶ノ助の言う通りだな。 俺も頭に血が上りすぎてしまったようだ」

 

自らの行いの愚かさに気付き、手から出現させた炎を消した。

リュートが退いたのを確認するとアリスも杖を消し苦無が喉元へ刺さらないよう後方へ一歩後退った。

二人の戦意が削がれたことを確認し終えると苦無を持った手を黒い布の中へと戻していった。

 

ミケナ「ふ、ふぅ、収まったみたいにゃ」

 

サリエル「もう、何やってるんだか…」

 

争いが起きなかったことにミケナは安堵し、サリエルは呆れた表情で溜め息をついている。

 

リョウ「ありがとう凶ノ助。 さて、早いとこミーティングを始めようやないか。」

 

 

~~~~~

 

 

ミーティングを終え、それぞれ警備する担当となった場所へと移り警戒態勢に入っている。

第一時空防衛役員以外の時空防衛局の面々と天界のSP達が各場所に数名配置されており、アイリが警備の担当となった地下駐車場にも何名か配置されている。

アイリはリョウと結愛、カイと共に行動することになっており、自分はまだまだ未熟だと承知の上のアイリにとっては戦闘経験が豊富な二人がいるのはとても心強かった。

 

結愛「ライブ開始まであと5分。 何事も起こらなければいいんだけどね」

 

リョウ「何者かがこの世界に入ってこようものなら空間の歪み等が生じるだろうから、すぐにでも反応できるよう意識は集中させてるから」

 

世界移動の技術を得ているエクリプスはいつ何処へ出現するか予測不能だ。

 

彼等は馬鹿ではないのでいきなりステージの上や客席に突然登場するような、派手な演出染みた行動はしない。

客の中に紛れ込んでいる可能性もあるのではないかと考えるが、ドームに入場する際、観客全員が金属探知機で重火器類等がないか検査を受けているため、ライブ中に発砲されることもなければ、リモコン操作による爆弾の爆破も起きることはまずない。

無論、建物内は隅から隅まで血眼になり事前に調査されているため、爆弾が隠されていることはない。

 

エクリプスの中に重火器を使用しないリュートやアリスのように魔法を使用する輩が潜り込んでいては、金属探知機では発見はできないという点も挙げられるが、然程問題にはならない。ディーバが踊り歌うステージには、リュートや他の魔導士が携わり完成させた強力なバリアが張られているため、魔法による攻撃が放たれたとしても、リュートを超える魔法を放たれない限りは破られることはない。

この絶対防御のバリアにより、ディーバに危害が加わることはない。

 

仮にバリアが破られる、ステージ上に不審者が上がろうものなら、即座に舞台袖で身構えているディーバナイトが不審者を捕らえる、若しくはディーバの避難をさせるため行動を開始する。

 

ディーバのライブは毎回このように防御面に関しては正に完璧とも言える態勢で行われている。

世界の均衡を保つ存在であるディーバに傷一つ付けないために、時空防衛局はライブが行われる世界と連携を取り粉骨砕身の覚悟で警護を行っている。

 

リョウ「……にしても」

 

溜め息混じりに視線を移すと、カイと楽しそうに戯れているアイリがいた。

緊張感の無さに呆れるところではあるが、逆に緊張で体が強張ってしまうよりは良いだろう。

 

リョウ「お気楽なこった。 カイも良くアイリに着いて行こうと言ったもんよ。駄々を捏ねて聞こうとせぇへんかったからな」

 

結愛「ホントに仲が良いわよね。 付き合いが長い私よりもなついてる気がするもの。やっぱり、出会うのは必然だったのかしらね」

 

リョウ「結愛がこの世界に連れて来たんやろうが。…分かってるとは思うが、アイリにはくれぐれも話すなよ? もし口を滑らせたら…どうなるかは御想像にお任せしよう」

 

結愛「釘を刺さなくても大丈夫よ。 私が嘘をつくことがあった?」

 

リョウ「星の数ほどな。 流石にそれは言い過ぎたかな。まぁ何にせよ、気ぃ付けてな。」

 

警戒を怠ることなく雑談を続けていると、大勢の人々の歓声が僅かにだが地下駐車場まで零れ聞こえてきた。

観客達の声によるライブ開始の合図が発せられ、無事に始まったことに、警護に当たっていた者は皆、自然と安堵の息を吐いた。

ライブの最中に襲い掛かってくるとも限らないので、まだ安全と言い切るには早く、警戒態勢は決して緩むことはない。

 

ライブが始まった今、更に警戒心を高め挑まなければならない。

 

アイリ「お、遂にライブ始まったんだね! いいな~あたしも見たいな~」

 

リョウ「別の世界で行われるライブの抽選に当たったら連れていってやってもええで」

 

アイリ「ホントに!? 約束だからね? 約束破ったらダブルニードル200発飲ますからね?」

 

リョウ「合計400発か。 痛々しいのはごめんやから約束するわ」

 

アイリ「イェイ♪ カイ君も一緒に行こうね!」

 

カイ「うん! アイリ、カイ、いっしょ!」

 

仲睦まじくアイリとカイは両手を繋ぎ再び戯れ始める。

 

リョウ「微笑ましい限りなんやけど、そろそろ心の準備しといた方がええで。あいつらいつ何処に出てくるか分かったもんやないからね。もしかしたら目の前に現れたって不思議やないんやで。」

 

アイリ「了解です! 世界の監視者!」

 

無駄に洗礼された敬礼を見せ、カイを抱きかかえリョウの隣へと足を運んだ。

4人とも特に話すような話題があるわけでもないので、暫くの間口が開くことなく沈黙が流れる。

正確には沈黙の時は訪れておらず、微かに観客達による歓声と、サリエルの歌声が地下駐車場全体にBGMとして流れていた。

暫しサリエルの歌声に魅了されていた一同であったが、アイリが不意にリョウに疑問を投げ掛けた。

 

アイリ「ねぇリョウ君、色々聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

リョウ「ん? まぁ答えられる質問なら」

 

アイリ「うーんと、何から聞こうかな」

 

リョウ「質問ってそんなに多いんか?」

 

アイリ「まあ、ね。 正直聞きづらいけど、じゃあ先ずは…リョウ君の右脚って何で義足なの?」

 

リョウが戦闘をする際、何度か使用していた義足である金属の右脚。

多少興味本意ではあったが、何故義足になってしまったのかアイリは懸念しており、その成り行きを聞いておきたかった。

 

リョウ「…ちょっと色々あってしくじったのよ。簡潔に纏めて言うと、大切な人を護るために右脚を犠牲にした。敵の攻撃が大切な人に直撃しそうになったところに真っ正面から飛び込んで、手段を選んでる暇がなかったから、攻撃から防ぐために咄嗟に出たのが右脚だった」

 

アイリ「護るために…」

 

大切な人を護るために、自らの身を顧みず突き進み、体の一部を失ってしまった。

生半可な覚悟では到底できないだろう。

 

アイリ「怖くなかったの? 自分の身に危険が迫ろうとしているのに?」

 

リョウ「恐怖は感じなかったな。 大切な人が目の前で死んでしまう方が怖かったから。わしは護るためなら、この身を挺して庇う覚悟がある」

 

真面目な表情で語るその瞳に、嘘偽りのない、覚悟の色が染まっていた。

 

アイリ「あたし、そこまでの覚悟はないかもしれない。今はサリエルちゃんを護るために時空防衛局の任務に同行してるけど、リョウ君みたいな覚悟もなしで戦えるのかって思っちゃった」

 

結愛「覚悟なんて個人によって違うわ。私は流石にリョウ程重い覚悟はしてはいないけど、必ず護りきるという信念ではいるわ。 誰も傷付くことなく事を終わらせる。 勿論、自分も余程の怪我を負わない程度にね。自惚れている訳ではないけど、私が大怪我をしたり死んでしまえば、悲しむ人はいる。私は周りの人が悲しむ姿なんて見たくはない。悲しむ原因が私が傷付くことならば、私は私を護りながら戦うわ。 誰も傷付かないために」

 

リョウ「結愛が言ったように、人はそれぞれ違う覚悟がある。だからアイリはわしと同じように自暴自棄のような覚悟なんて無理に持つ必要はないんや。今はまだ決まらなくてもいい。 これから探して決めりゃええんよ。 急ぐ必要はないさ」

 

アイリ「…そっか。 ありがとうリョウ君、結愛さんも。それとごめんねリョウ君、無理に脚の事を聞いちゃったりして」

 

リョウ「構わんよ。 答えれるものなら答えると言ったのはわしなんやから」

 

アイリ「じゃあ次の質問いくね?」

 

リョウ「遠慮しろよこの野郎」

 

アイリ「リョウ君の、たまーに感じられる力についてなんだけど…」

 

アイリが口にした途端、リョウと結愛の表情が一気に強張った。

突然表情が鋭くなったことを勘づいたアイリは聞いてはならない事だったのかと直感が警鐘を鳴らしていたため口を噤む。

アイリの腕に抱かれているカイもそんな二人の表情を見て涙目になってしまっている。

 

アイリ「な、何かいけない質問だったかな…?」

 

リョウ「いけなくはない…とも言えない、グレーゾーンかな。 …ただ、言うことはできない、まだ、今は」

 

結愛「リョウは時が来れば話してくれるわ。だから、今は聞かないであげてほしいの」

 

結愛の言い方からすると、結愛本人はリョウの力について何か知っているようだったが、二人はこの場で話すことを拒んだ。

一体どのような理由があるかは現時点では不明ではあるが、これ以上話に触れるのはタブーだと悟りアイリは話の続きをしようとはせず素直に謝罪した。

リョウは謝る必要はないと言いアイリの頭を優しく撫でた。

 

アイリ「えへへ。 ずっと一人で過ごしてきたから、誰かに頭を撫でられるなんて何年振りだろ」

 

リョウ「悪くないもんだろ? こんなことするのは恥ずかしいところではあるけどね」

 

アイリ「じゃあやらなきゃいいのに。 悪い気はしないからぜんぜんいいけど。べ、別に嬉しいわけじゃないんだからね!」

 

リョウ「何故にツンデレが発動したし」

 

アイリ「いや、まぁ、流れ的に。う~…胸のきゅんきゅん、止まらないよ!」

 

リョウ「キャラがブレてんだかブレてないんだか分からんなぁ」

 

談笑しながらも撫でる手は止まることなくアイリの頭を撫で続けている。

 

アイリ(なんだろう…この懐かしい感覚)

 

カイ「アイリ~、よしよーし」

 

カイは手を伸ばしリョウの真似をするようにアイリの頭を撫で始めた。

だが手が届いていないせいか、額を撫でてしまっている。

 

アイリ「ふわぁ~。 カイ君は、やっぱり天使だよ」

 

リョウ「やれやれ、カイにべったりやなぁ」

 

結愛「羨ましいわ…」

 

リョウ「ん? 結愛、何か言った?」

 

結愛「え、いえ、なんでもないわ」

 

仲睦まじいアイリとカイを嫉視していた結愛はつい口から零れた言葉をリョウに聞かれ恥ずかしかったのか、紅潮させた頬を見られまいと顔を背けた。

 

リョウ「このまま気楽に事が進んでくれる…わけないよな」

 

沖融な雰囲気に包まれていたが、正面に視線を移したリョウと結愛は身構えた。

アイリも何かを感じたようで、カイを地面へ下ろしガーンデーヴァを手に取る。

 

アイリ達の目線の先には時空の歪みが現れ始めていた。

最初は小さく渦巻くように動いていたが、瞬時に肥大化し、歪みの中から黒い服に身を包んだ集団が武器を携え続々と現れ走りだし、時空防衛局員や天界のSP達に襲い掛かった。

 

リョウ「おいでなすったか。 今回は力押しで攻めてきたみたいやけど、選択する場所も相手も悪かったな」

 

リョウはアルティメットマスターを引き抜き上着のポケットに入れていた無線機を取り出しエクリプスが出現した現状を警護に就いている全員に警戒するよう伝達した。

その間にも黒い服に身を包んだ集団、エクリプスの戦闘員達は声を荒げ走って向かってくる。

 

結愛「アルカディア、シャイニングリンク!」

 

結愛はネックレスを取り出し変身するための言葉を言うと、眩しい光に包まれる。

目映い光に戦闘員達は目を瞑り怯み足が止まる。

そして光が晴れたとき、翡翠色と白色を基調とした衣装を纏った結愛、ライジングアルカディアが立っていた。

 

アルカディア「ドーム内には誰一人通しはしないわ!」

 

アイリ「ジャンクにしてあげる!」

 

アルカディアは地面を勢いよく蹴り急接近し、戦闘員の一人の腹に拳をぶつけた。

加減を一切せず放たれた拳を受けた下っ端の体はくの字に曲がり後方へと数名を巻き込み吹っ飛んでいく。

 

「怯むな! 行くぞー!」

 

一人の戦闘員のはち切れんばかりの怒声に近い声にアルカディアの力に衝撃を受け棒立ちになっていた戦闘員達は我に返り、武器を強く握り締め再び走り始める。

ナイフを持った戦闘員達がアルカディアに迫るが、アルカディアは全ての攻撃を見切り、手首に手刀を叩き込みナイフを落とし無防備になった体に鋭い蹴りを入れ、着実に戦闘不能にしていく。

アイリもガーンデーヴァから放たれる光の矢を正確且つ素早く飛ばし戦闘員を攻撃する。

戦闘員の中には銃を所持してる者もおり、遠距離から攻撃を仕掛けてくるアイリを排除するべく標準をアイリに向け、引き金が引かれた。

アイリに銃弾が被弾するよりも早くリョウが動き、アルティメットマスターを振るい銃弾を斬り裂いた。

次々と休む間もなく引き金が引かれ銃弾の雨が降り注ぐ。

リョウはアイリとカイを護るべく銃弾を斬り裂き全て地面へと落としつつ次第に歩みを進め接近し始める。

 

「こ、こいつ、世界の監視者だ!」

 

リョウ「今更気付いたのかよ。 遅いっつーの」

 

戦闘員達が世界の監視者であるリョウの存在に気付くと仰天した表情を浮かべているが、知ったこっちゃないと言うように機械である右脚からミサイルを連射した。

着弾した戦闘員達は爆発により戦闘不能に陥り、数発のミサイルは地面へと着弾し、砂埃とコンクリートの破片を巻き上げ吹き飛んだ。

爆発により戦闘員達は紙切れのように飛び上がり地面へと叩きつけられていく。

 

アイリ「カイ君! 危ないからあの柱の後ろに隠れてて!」

 

カイ「う、うん!」

 

アイリはカイに危害が加わらないよう隠れるよう指示する。

恐怖でアイリの脚にしがみついていたカイはアイリの側を離れるのを最初躊躇していたが、頷くとコンクリートの柱の後ろへと走っていく。

 

カイの安全が保証されたのを確認し、アイリは戦闘へと集中すべき前を向き光の矢を5本召喚し強く引き始める。

引かれている矢はいつもの矢とは違い、電撃が矢全体に走っており、ビリビリと微弱ではあるが音を立てている。

 

アイリ「『サンダーボルトアロー』!」

 

放たれた矢は戦闘員達の頭上へと放たれ、天井に当たるスレスレのところで突然空中で停止し矢先が真下に向いた。

矢は一筋の稲妻へと瞬時に変化し戦闘員達の頭上へと降り注いだ。

雷鳴が轟いた時には稲妻を受けた戦闘員達は全身に電撃が流れ、直立する力を失い地面へと倒れ伏す。

 

アイリは結愛と修行を続けていく中で、雷属性の力を習得してしまっていた。

結愛が変身するライトニングアルカディアの雷属性による攻撃と、暇な時間帯にアイリ達の家に遊びに来たラミエルにも(強制的に)修行に付き合ってもらっているうちに、二人の雷属性の攻撃を受け続ける内に耐性が出来始め、何故だか自身も雷属性の力を扱えるようになってしまっていた。

空を飛行した時と同様に初めて力を発揮するにも関わらず、完璧とも言える程に力を制御できており、リョウは兎も角、結愛とラミエルは驚愕するばかりだった。

 

アイリ「うっし決まったー! まだまだいっちゃうからね!」

 

「この女、見掛けに依らず強いぞ!」

 

アイリ「人を見掛けで判断しちゃいっけませんな~旦那。ワンパンマンのサイタマを見てみなよ。 見た目はやる気なさそうな感じだけど強力な怪人をワンパンで吹っ飛ばしてるでしょ?

それと同じだよ。 あたしは主人公兼ヒロインなんだから、見かけ倒しってわけないじゃん!」

 

「なに訳分かんねぇこと言ってんだ!」

 

ナイフを持った一人の戦闘員が刃先をアイリに向け突き刺そうと走り出す。

リョウや結愛のような戦闘経験豊富な者から見れば闇雲に勢いだけで敵に向かっていく無謀な行動にしか見えないだろう。

アイリにはただ真っ直ぐに向かってくるだけだろうと思い心の何処かに油断という念が生まれていただろう。

修行する以前のアイリならば。

 

アイリ「パワーアップしたアイリちゃんの力、篤とご覧あれ!」

 

いつものおちゃらけな口調ではあるが、アイリは冷静に戦闘員の行動を読み取り小さな横ステップで回避し、光の刃を纏わせたガーンデーヴァで戦闘員の背中を斬り裂いた。

素早い一撃により戦闘員は地に伏せ戦闘不能へと陥った。

結愛達から接近戦を何度も行っていたため、対人戦に関してはエクリプスの戦闘員達では太刀打ちできないほどまで強化されていた。

 

アイリ「さぁどんどん来なさい! 一方的に殴られる痛さと怖さを教えてあげる!」

 

天使とは思えぬ残忍な言葉を投げ掛け戦闘員達を挑発する。

単純な挑発に乗ってしまった戦闘員達は怒声を上げ走り出した。

アイリは華麗に極力細かい動きで攻撃を避け、時にガーンデーヴァで受け流し、隙あれば相手を斬りつける、時代劇の舞台で使用される殺陣の様な動きで相手を翻弄している。

押されることなく善戦を続けている中、リョウが戦闘員達を斬りつけながらアイリの側まで駆け寄り後方に隙を作らせないよう背後に回る。

 

リョウ「怪我はなさそうやな」

 

アイリ「勿論です、プロですから」

 

リョウ「へいへい。 後ろはわしが対処する。前もわしが倒してもええところやけど、いけるか?」

 

アイリ「ったりまえじゃん! 泥船に乗ったつもりで任せといてよ!」

 

リョウ「そこは『泥船』ではなく『大船』と言ってほしかったよ。 んじゃ、いくで!」

 

アイリは前の敵に集中しつつ頷き光の矢を5本召喚し、『ファイブストレートアロー』を放ち数人を倒すと翼を広げ空中を飛び、戦闘員の横を通り抜け様にガーンデーヴァで斬りつけていき、次々と斬り倒していく。

銃を持った戦闘員達が銃口をアイリに向け銃弾を乱射させるが、撹乱飛行を繰り返すアイリには一発も当たることはなく、アイリの放つ弓矢に体を射ぬかれ倒れていく。

極め付きは、ガーンデーヴァを湾曲した光の刃へと化した『輝弓牙』による飛行による突進攻撃。

成す術も無く戦闘員達はアイリの情け無用の攻撃をくらい戦闘不能へとされていく。

 

アイリ「あたしTUEEEE! 精神と時の部屋に入って修行した並に強いんじゃない?」

 

リョウ「あまり自分の力に自惚れるんじゃないぞアイリ。 己を過大評価しすぎているといつか痛い目を見るかもしれへんからね」

 

アイリ「はーい、分かってます、よっと!」

 

背後から接近してきた戦闘員の攻撃を避け腕を掴み勢いよく一本背負投を決めると腹部にガーンデーヴァによる一撃を加え気絶させた。

 

アイリ、リョウ、結愛の3人による猛攻に戦闘員達は次々と倒されていき、残党達は攻撃の手を緩めつつあった。

 

アイリ「あたしだってできればライブ見たいんだから、護りきってみせるよ。エクリプスの皆さん! ライブの邪魔する奴は指先ひとつでダウンだからね!」

 

?「おもしろい。 大口を叩く余裕が俺達相手で言えるのかな?」

 

歪みの中から明らかに戦闘員達とは異なる雰囲気を醸し出している男女3人が姿を見せる。

圧倒的な威圧感を肌で感じとることができ、アイリの表情が一気に強張り、声の正体を知っていたリョウはアイリの盾と成るべく前に出た。

 

一人は赤い宝玉が装飾された黒いガントレットを装備した見た目がチャラそうな鮮血の様な赤い瞳の男性。

 

一人は全身が赤黒く両腕が鎌になっており、背中からは刺の様に鋭い突起物が生え、歯並びの悪い鋭い牙が並んでいる異形の存在。

 

一人は双頭刃式の槍を携えた黒いショートパンツに、ピンクのラインが縁取られた白いコートを羽織っているが、ボタンを全開にし黒い下着が露となった露出度の高い女性。

 

赤い瞳の男が前に出てアイリを指差しながら話始めた。

 

?「貴様がアイリだな? 不慮な事故により人間から天使へと転生した少女。強大な光の力を秘めており悪魔族にとっては驚異となる存在でもあるというわけだったかな?」

 

アイリ「いつの間にあたしの情報を!?はっ、まさか、盗聴? 盗撮? この変態!」

 

?「うふふ、セラヴィルク、あんた変態扱いされてるわよ? 笑えてきちゃうわ」

 

セラヴィルク「おいおい、俺の能力も知らずに変態扱いされるのは困るぜ」

 

アイリ「知らないってことはないよ。 あたしの能力でなんとなくだけど分かったと思うし。力を吸いとられるような感覚がするから、憶測だけど、相手の力を吸い取る能力かな?」

 

セラヴィルク「惜しいな。 正確には相手の力、知識、情報を吸い取る、若しくは奪い取る能力だ。この能力で貴様の情報を少し奪った。 時空防衛局と世界の監視者とつるんでる連中の中ではなかなか見ない顔だったんで気になっただけだがな」

 

アイリ「またチート染みた能力持ってるね」

 

リョウ「能力だけは一丁前に凄いからな。 低俗なお前には勿体無い能力だ」

 

これまでにない程に敵意を丸出しにし、睨み付けながら敵であるセラヴィルクに悪態をつくと、目にも止まらぬ速さで細長い得体の知れない物体ががリョウに襲い掛かった。

高い反射神経により物体が首を掠める直前に上半身を低くし避けることに成功した。

リョウの首を跳ねようとした物体は、赤黒い触手だった。

言うまでもなく、エクリプスの一味である全身が赤黒い色をした異形の存在だ。

先程まで鎌になっていた右腕は何本もの触手へと変化しており不気味に波打つように動いている。

 

?「セラヴィルク様を侮辱するとは、貴様、何様のつもりだ?」

 

リョウ「俺様、と言っておこうか? それとも世界の監視者様かな?」

 

?「調子に乗るのも大概にしろ、若造が」

 

リョウ「お前が年老いてるだけやないんか?老い耄れにどうこう言われる筋合いはないよ、『タイラントエトワール』。 いや、ディアグルム」

 

異形の存在、ディアグルムは唸りを声を上げながら先程リョウに伸ばした一本の触手を縮め、触手を纏め再び鎌の形状へと変形させる。

 

セラヴィルク「安い挑発に乗るなディアグルム。 俺は気にしてはいない、冷静になれ」

 

ディアグルム「セラヴィルク様がそう仰るのならば、この私は奴に対してもう何も言いませぬ」

 

アルカディア「『タイラントエトワール』もいるなんて、厄介な事この上ないわね」

 

戦闘員達との戦闘を終えたアルカディアもアイリ達と合流するや否や、ばつの悪い顔を浮かべた。

 

アイリ「さっきからタイラントエトワールとかディアグルムとか別の名前で呼んでるけど、何か違うことでもあるの?」

 

リョウ「ある特定の人物達は二つ名で呼ばれたりするんだ。 危険人物、時空防衛局員の最重要人物、何処かの世界で呼ばれ始めて様々な世界にその呼び名が浸透していったりする例もある。まぁ殆んどが時空防衛局の局員達がその人物を覚えやすいように呼ぶために付けられた名が多いな。 例えばわしは『世界の監視者』って呼ばれてる」

 

アイリはリョウの話を聞くあたり、相当な実力者が二つ名で呼ばれているのだと解釈した。

現にアイリは二つ名で呼ばれている数名と遭逢している。

 

リョウ、二つ名は『世界の監視者』。

 

フォオン、二つ名は『全世界を統べる神』。

 

アリス、二つ名は『世界の放浪者』。

 

結愛、二つ名は『救済の雷鳴』。

 

他にも二つ名を持つ者は何人か存在するが、紹介するのはまたの機会にしておこう。

 

セラヴィルク「さて、無知な嬢ちゃんへの御丁寧な説明はもう終わりにしよう。 時間の無駄だ」

 

?「ちょっとー。 まだ私の紹介を終えてないんだけど~?」

 

リョウ「てめぇの自己紹介なんて頗るどうでもええわ。 斬り殺すぞ?」

 

?「正義の味方が言う台詞ではないわね。 まぁあなたの言うことなんか無視して名乗らせてもらうわ。 アイリちゃんには私の名前を覚えてもらいたいし」

 

アイリ「別に知りたくなんてないよ。 今からあたしにコテンパンにされるんだから名乗らせはしないよ!」

 

?「勇ましいのは認めてあげる。私の名前はレミーネ。 しっかり覚えて頂戴ね」

 

アイリ「めっちゃゴリ押しで教えてきたよこの人。 強引すぎるよ」

 

リョウ「アイリにツッコミをいれられたらおしまいやな」

 

アイリ・レミーネ「どういう意味よ!」

 

セラヴィルク「お前達、案外気が合うのかもな」

 

レミーネ「敵と仲良しごっこをするのはごめんだわ。 お喋りはここまでにして、手始めに行っちゃうわよ!」

 

レミーネが突として駆け出し、腰に装着していたダガーを引き抜き、両手に持ちアイリに急接近した。

アイリは持ち前の反射神経を活かし後方へ数歩下がり最初の斬撃を避け、ガーンデーヴァを振り上げダガーを弾くと体を横に回転させ威力を増幅させた蹴りを腹にお見舞いした。

完璧に鳩尾に蹴りが炸裂したが、体がくの時に曲がることもなく、仰け反ることもなく微動だにしなかった。

 

レミーネ「痛い痛い。 でもこの程度じゃ私はくたばらないわよ!」

 

アイリの脚を軽くはね除け逆手持ちにしたダガーをアイリの体を斬り裂こうと振るう。

刃が当たる直前で後方へ飛び退いたため傷を負うことはなかったが、刃が掠めた胸の部分の服は少し破けてしまっている。

更に追撃しようとレミーネは大きく前に出たが、反撃の隙を作れていないアイリの盾になるようにリョウが横から飛び出し、アルティメットマスターでレミーネのダガーを防ぎ動きを止めた刹那、『ソードエクスプロージョン』を放った。

光の爆発によりレミーネは地面を転がりながらセラヴィルク達の側まで吹き飛んだ。

 

リョウ「うちのアイリに傷を付けるなよ。次はこれで済むと思うなよ?」

 

レミーネ「…流石に効いたわ~。 ヤバいヤバい、あんなの連続で受けたら私の体が幾つあっても足りないわ」

 

レミーネは至近距離から光の爆発を受けたにも関わらず意に介さないと言った様子で立ち上がり不敵な笑みを浮かべている。

 

アイリ「リョウ君の攻撃を受けといて立ち上がれるなんて、あの人随分タフだね」

 

リョウ「たしかにタフやね。 あいつは攻撃を受けたところで怯みはしない、気にせず突っ走って猛攻を与える厄介な奴や」

 

アイリ「我慢強いのか撃たれ強いのやら。 正に猪突猛進って言ったところだね」

 

レミーネ「エクリプスの先導者と戦闘員達から言われてるくらいなんだから、甘くみないでよ?」

 

セラヴィルク「皆の者、レミーネの後に続け!後方から援護しつつ前進だ!」

 

セラヴィルクの指示を受け士気が上昇した戦闘員達は声を荒らげ走りだす。

建物内への侵入を許さないためにもリョウも同時に走りだし、『テオソードスラッシュ』を発動させ、豪快に横へ払い大人数の戦闘員達を斬り裂き倒した。

前線を駆けていたレミーネは上へ跳び上がることで『テオソードスラッシュ』を避け、リョウの元へ御自慢の槍を振るい走り抜ける。

女性とは思えぬ腕力で振るう槍の素早い斬撃を受け止め応戦しているが、手数が多いためか、若干押され気味には見えたがリョウの顔にはまだ焦りの色は浮かんではいない。

 

ディアグルム「では私も攻撃を開始するとしよう。 手始めに、最も厄介な者から始末する。『嘆きの鞭』」

 

ディアグルムはこの場にいる人物の中でも戦闘能力が最も高いリョウに目を付け、鎌になっていた右腕を太い触手へと変化させリョウへ向けて思い切り振るう。

 

ピコ「おっとそうは問屋が三枚卸しー!」

 

リョウの上着の中に潜んでいたピコが飛び出し瞬時に人間サイズに巨大化、ピコピコハンマーを華麗に振るい触手を殴り飛ばした。

 

ディアグルム「ちっ! 相棒の消しゴムも一緒だったか。 なら先ずは貴様からだ」

 

右腕を鎌へと変化させディアグルムはピコへと襲い掛かった。

ピコは独特な動きで鎌による攻撃を避け続け、自身の体を回転させピコピコハンマーの威力を倍増させて放つ『ピコピコタイフーン』が炸裂。

両腕の鎌で防ぐも強力な打撃攻撃に耐えきれず、ディアグルムの体は紙切れのように後方へ吹っ飛びコンクリートの壁に激突した。

 

ピコ「さ~て次! リョウ、手助けするよ!」

 

リョウ「おうサンキュー!」

 

レミーネ「ちょ、そんなでかいの振り回されたら太刀打ちできないわよ!?」

 

我武者羅のようにも見えるピコのハンマーの振り回しっぷりにレミーネも後退せざるを得なかった。

 

アイリ「ピコ君めっちゃ強いじゃん」

 

アルカディア「見た目はあんなだけど私より強いから、参っちゃうわよね」

 

アイリ「結愛さんより強いの!? 上には上がいるってことなんだね。 世界って広いなぁ」

 

セラヴィルク「そう、世界はとてつもなく広い。 君がいくら特別な存在だろうと、俺には勝てないということも知れることだろう」

 

セラヴィルクが指をポキポキと鳴らしながらアイリとアルカディアに近付いてきていた。

レミーネやディアグルムとは何か違うオーラを纏っており、かなりの強者だと肌を感じて伝わってくる。

アイリは一瞬武者震いし唾を飲み込むと気を引き締めてガーンデーヴァを構えた。

 

セラヴィルク「俺の前で武器は使えないぞ?」

 

セラヴィルクがそう言った刹那、アイリの持っていたガーンデーヴァはまるで磁石で引き寄せられるかのようにセラヴィルクの手中へと飛んでいった。

セラヴィルクは不気味に笑いながら手にしたガーンデーヴァを興味深く観察している。

 

アルカディア「能力でアイリのガーンデーヴァを奪い取ったみたいね」

 

アイリ「相手の武器も奪い取れるなんて…って、ちょっと! あたしのガーンデーヴァ返してよ! この泥棒!」

 

セラヴィルク「失敬な、俺はちょっと借りてるだけだ。…ほう、成る程ねぇ。 相当使い勝手が良さそうな代物みたいだ。 だが、俺には使用することは不可能みたいだな」

 

セラヴィルクはガーンデーヴァを後ろへ放り捨て、黒いガントレットを装備した拳を構える。

 

セラヴィルク「俺の力に精々抵抗してみろよ…!」

 

ガントレットに装飾された赤い宝玉が不気味に輝きを増していき、光が集束されていき一筋の光線となった。

アイリとアルカディアは光線を素早く横へ飛び退き回避した。

先程まで二人が立っていた場所に光線が直撃し、大きな爆発を起こし、粉塵が舞いコンクリートの破片が飛び散る。

粉塵により一瞬二人の視界が奪われた隙を見逃さなかったセラヴィルクはアイリに接近し勢いよく裏拳を放った。

アイリは腕で防御するも、トラックが猛スピードで突っ込んできたような強力な打撃に苦悶に満ちた表情を浮かべた。

裏拳による一撃だけでは終わらず、連続で素早いパンチを叩き込んでゆく。

アイリはただ防御するのではなく、攻撃を受け流すように高速で放たれる拳を防ぎ少しでもダメージを蓄積させないようにはしているが、長くは持ちそうには見えない。

アイリの危機にアルカディアは横から電撃を帯びた蹴りをお見舞いするが、動きを完全に読んでいるのか、目で見ていないにも関わらずスラリと伸びた脚を掴み、コンクリートの壁に向けて思い切り投げ飛ばした。

 

セラヴィルク「どうした? 反撃してこないのか?」

 

アイリ「言われなくてもするところよ!」

 

アイリは両手に光の矢を召喚し、双剣のように持ちセラヴィルクに攻撃を仕掛ける。

光の矢とガントレットがぶつかり合い火花を散らし、激しさを増していく。

短期間ってとは言え、リョウ達に鍛えてもらったアイリだが、戦闘経験の差が目に見えて明白で、徐々にアイリが押され始めているのは一目瞭然だった。

 

セラヴィルク「俺みたいな強者と戦い慣れてない奴を相手にするのは気が乗らなかったが、これで終わりにさせてもらおうか」

 

赤い宝玉が再び不気味に輝きを放ちだすと、ガントレット全体が赤い光に覆われる。

 

セラヴィルク「『赤剛烈破』!」

 

赤い光を纏った拳を振るうと衝撃波がアイリに向けて放たれた。

アイリは強力な一撃を防御する手段などあるはずもなく、真っ正面から攻撃を受け後方へと吹き飛びうつ伏せの状態で地面へと倒れた。

 

セラヴィルク「本当に終わっちまった。 まぁ戦闘経験不足な奴ならそんなとこだろ。…にしても動かねぇな。 死んじまったんじゃねぇだろうな」

 

敵にも関わらずアイリの安否が気になったのか、倒れているアイリへと近付き足で乱暴に蹴り仰向けの状態にした。

 

セラヴィルク「な、何!?」

 

仰向けになったアイリを数秒凝視したセラヴィルクは驚きを禁じ得なかった。

何故なら倒れているアイリの顔が字書き歌の一つである『へのへのもへじ』へと変化していたからだ。

驚愕していたのも束の間、偽物のアイリの体が一瞬輝くと大爆発を起こした。

驚愕のあまり反応が遅れたセラヴィルクは至近距離で爆発をくらい宙を舞い地面へと勢いよく叩きつけられた。

 

アイリ「よっしゃー!上手くいったー!」

 

離れた場所から嬉々とした表情で右腕を天に上げたアイリがひょっこりと姿を現し、先程地面に放り捨てられたガーンデーヴァを拾っていた。

 

セラヴィルク「くそ、確かにあの一撃はくらった筈なのに…一体どうやって…!」

 

アイリ「残念だったね、トリックだよ。さっきセラヴィルクが放った光線あるでしょ?あの時地面に直撃して起きた爆発の粉塵が舞って目眩ましになっている隙にあたしの技、『カワリミ』を発動させてたんだよ。だから、さっきまでセラヴィルクはあたしの偽物と戦ってたってこと」

 

睦月と共に多数のエンジェロイドと戦っているので初めての戦闘という訳ではないが、対人戦においては一対一という状況は初だった。

一人での初陣にしては慌てることなく冷静に状況を把握、分析し的確な判断により危機を乗り切れており、素人からでも分かるほど成長している。

 

余談だが、アイリの発動させた『カワリミ』はピコに教わった技だ。

自分の力を具現化させ自らの分身を生成し、好きなタイミングで爆破できるという技で、緊急回避時や奇襲を仕掛ける場面で使用される。

ピコも同様に『カワリミ』を使用でき、アイリに僅か数時間たらずで伝授しアイリも使用できるようになった。

 

アルカディア「驚いたわね。 セラヴィルク相手にもうダメージを負わせることができたなんて」

 

アルカディアは腕を押さえながらも戻ってきた。

同時にピコに殴り飛ばされたディアグルムが壁を触手でぶち破り姿を現した。

足取りは少々覚束ず、口からは紫色の血が垂れているのを見る辺り、大きなダメージを負っているようだ。

 

ディアグルム「おのれ消しゴムめ…。 次は貴様達を葬ってやる!」

 

怒気を含んだ口調で殺意を表しにしており、鋭く光る牙をガチガチと何度も噛み合わせている。

セラヴィルクもゆっくりと立ち上がり鬼気迫る表情でアイリを睨み付ける。

 

セラヴィルク「お前が相当な実力を持っているかは身をもって感じた。俺はその力に応えるために本気でいかせてもらうぜ」

 

赤い宝玉が再び不気味に輝きを放ち徐々にガントレット全体を覆っていく。

 

アイリ「凄いパワーを感じる…」

 

アルカディア「恐れず立ち向かいなさいアイリ。 私が付いているから、思う存分己を信じ行きなさい」

 

アルカディアの助言を受け心が軽くなったような気がした。

大きく深呼吸をし、先程よりも強大な力を感じ取り武者震いしつつも勇気を振り絞りガーンデーヴァを握り構え目の前にいる強敵へと立ち向かう。

 

 

 




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