ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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ネタを挟まないと死んじゃう病が悪化して脳内を蝕んでしまったので誰か病院を呼んでください。(手遅れ)


第24話 知らない天井をあたしは知っている

 

エクリプス、悪魔、二つの勢力の襲撃があったにも関わらず、ディーバのコンサートには支障をきたすことなく無事に大成功に終わった。

シェオルの街には悪魔達による被害が一部あったが、数日もすれば回復する軽いもので済んだという。

特に被害が大きかったのは、シェオルの唯一の出入り口である門だった。

サタンフォーの一人、ベルゼブブの襲撃により巨大な門は見る影もなく粉々に粉砕されており、守備に就いていた天使兵の被害者の数も数十人を超えていた。

報告をしていけば細かい被害が多数存在するが、大きく目立った被害はなく、天使と時空防衛局の双方とも死者が一人も出ていなかったのは幸いだったのに違いはない。

 

コンサートを終えドーム内から出てきた観客達は周囲の惨劇に、呆然としている者もいれば慌てる者、不安に駆られる者など多種多様な反応を見せていた。

時空防衛局員や天使兵、そして駆けつけてきた四大天使のミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルの四人の説明により、コンサートに来ていた観客達は安堵し大きな騒動になることなく済んだ。

 

コンサートの翌日、とある病院の一室にアイリは白いベッドの上で眠っていた。

精密検査を受けたところ、命に別状はないらしいが、念のため安静にしている状態にあった。

 

アイリ「……ん、あ…」

 

地下で気を失ってから、数十時間が経過した正午過ぎにアイリは目覚めた。

部屋を照らす蛍光灯の光が眩しく、思わず開かれた瞼を閉じる。

徐々に目を開けていき、白い天井が視界に広がる。

 

アイリ「あたしこういうの知ってる。 知らない天井ってやつだよね」

 

?「知らない天井を知っているってどういうことだよ」

 

苦笑混じりの声が聞こえた方向を見ると、ラミエルが椅子に座り、『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』と題名が大きく表記されてある本を読んでいた。

ラミエルのような男性が読むような本とは思えず、料理が趣味なのだろうとアイリは解釈した。

 

アイリ「ラミエル君、あたし、何で病院に?」

 

ラミエル「覚えてないのか? 俺も詳しくは知らないけどよ、地下駐車場でぶっ倒れてたのをピコが見つけて運んでくれたらしいぜ。 後で礼言っとけよ」

 

ラミエルに自身がどのような状態であったのかを教えられ思い出したように驚き開口した。

サタンフォーの一人、ベルゼブブと戦闘を行い、お互い満身創痍ながらも、気力を振り絞り、死力を尽くし勝利を収めることができた。

アイリは現実に起きた自分の信じ難い勝利を半ば興奮気味のせいか少々早口でラミエルに報告した。

 

ラミエル「サタンフォーのベルゼブブを撃退したのか!? 流石の俺も驚いたぜ…。 まだまだ幹部クラスの奴とは渡り合えない範疇にあると思ってたんだけど…いや、本当に驚嘆に値するぜ。 大した奴だぜお前は」

 

アイリ「えへへ、実力を認められると素直に嬉しいな。 まぁあたしがこんなに強いのは当たり前田のクラッカーなんだけどね」

 

リョウや結愛に鍛えられた成果が形となり、回数や時間は少なかったとは言え、修行に付き合ってくれたラミエルに誉められ喜びの感情が溢れ出た。

同時に直に誉められ羞恥を感じたのか、少しうっすらと頬を紅潮させ、頭の後ろを掻きながらはにかみ俯いた。

再び顔を上げた直後、病室の自動扉が開き、結愛、ピコ、シャティエル、カイの四人が入室してきた。

 

カイ「アイリーーーーー!!」

 

カイはアイリと目が合うなり駆け出し勢いよくアイリの胸に飛び込んだ。

アイリはカイが無事だったことに歓喜し、カイを優しく抱き止め頭をわしわしと撫で回した。

 

アイリ「カイ君、無事で良かったよー!」

 

シャティエル「目が覚められたようですね、アイリさん。 お体の方は大丈夫ですか?」

 

アイリ「うん。 何も以上はないよ。 あっ、ピコ君、あたしを見つけて運んでくれたんだよね? ありがとう!」

 

ピコ「いやいや、アイリが無事なら良かったよ」

 

結愛「ごめんなさいアイリ。 まさかベルゼブブが戦う余力が残っているとは思ってなかったわ。 あなたを危険な目に合わせて本当にごめんなさい。」

 

結愛は腰を曲げ頭を下げアイリに謝罪した。

 

アイリ「うわわわ! 結愛さん頭を上げてください!」

 

結愛「私がもっと警戒していれば避けられていた事だわ。 大切な仲間をまた失いかけてしまった。 謝って簡単に許されることではないかもしれないけど、謝らせてほしいの」

 

アイリ「結愛さん…あたしは気にしてないから大丈夫だよ。 今あたしがこうして無事でいられてるのは結愛さんのおかげなんだから」

 

結愛「えっ?」

 

アイリ「結愛さんが時空防衛局の仕事で忙しいのに時間を割いてあたしを鍛え上げてくれたから、今回の危機を乗り切ることができたんだよ」

 

結愛「で、でも……。」

 

アイリ「もう! あたしが気にしてないからいいっていってるじゃん! 許せる許せないの問題じゃないけど、どっちかと言えば、許せる! エターナルフォースブリザードを受けたわけでもないし、リボルケインやソードビッカーを使われたわけでもない。 生きてるんだから、あたしはそれでいいってもんだよ」

 

結愛「…ふふっ、あなたの陽気なところが、周りを笑顔に変えてゆくのね。 ありがとう、アイリ」

 

アイリ「結愛さんは大事な仲間でもありズッ友だよ。 咎めたりなんてしないよ。 でも、折角だからおしおきを受けてもらおうかな…」

 

ラミエル「何か良からぬ事を考えてる気がするぜ…」

 

アイリ「バターになるおしおきってやつなんだけど、どう?」

 

?「やめんかアホ!」

 

アイリ「やみらみ!?」

 

後頭部を急に叩かれ素っ頓狂な声を上げ前のめりに倒れた。

カイは驚いた拍子に咄嗟に離れたためアイリと共に倒れることはなかった。

 

結愛「あら、今回は帰ってくるのが早かったわね」

 

?「あぁ。 まぁ少々無茶をしたけどね。危うく荒ぶる神達と神を喰らう人達が住まう世界にかっとビングしかけたし」

 

アイリ「いってて…誰なのあたしの後頭部を叩いたのは!」

 

?「趣味でヒーローをやっている者…ってのは冗談で、わしだよ、わし」

 

アイリ「ワシワシ詐欺かな?」

 

?「死んだり死なせたりしてやろうか?」

 

アイリ「冗談だってばー! おかえり、リョウ君」

 

リョウ「はいよ、ただいま」

 

上半身を起き上がらせ首を斜め後ろに向けると、服が所々破れ、傷だらけとなっているリョウの姿があった。

リョウの姿を見てカイはベッドの上で跳び上がり、リョウの帰還したことを体全体で喜びを表現していた。

 

シャティエル「リョウさん……!」

 

リョウ「シャティエル、お前も無事で良かったよ。 ん、どうした?」

 

リョウの姿を見るなりシャティエルは目から涙をポロポロと流し始めた。

無意識に流れ始めた涙に困惑しつつ手拭うも、止まる気配がなかった。

 

シャティエル「何故、なんでしょうか? 悲しいわけでもないのに、嬉しい筈なのに、何故涙が出てくるのでしょうか?」

 

アイリ「シャティ、涙ってね、悲しいときにだけ出るものじゃないんだよ。 嬉しかったり、何かに感動したとき、そういったときにも涙は流れるんだよ」

 

シャティエル「そう、なのですか?」

 

リョウ「わしのために涙を流してくれるなんてありがたい限りやわ。 心配かけて悪かったね、シャティエル」

 

アイリを庇い瓦礫の下敷きになり傷付いた片足の傷は驚異の自然治癒能力により既に回復していたため、従来の違和感のない歩みでシャティエルに近付き、頭の上に優しく自分の手を乗せた。

 

シャティエル「無事に、帰ってきてくれて、良かったです。 もう帰ってこれないと思い、心配したんですから…」

 

リョウ「本当に悪かったよ。 極力みんなには心配かけさせないように努力はするから。 心配してくれてありがとね。 それと、これからもよろしくね」

 

シャティエル「っ…はいっ!」

 

シャティエルは涙を拭い、笑顔で答えた。

 

アイリ「なーに良い雰囲気になってんのさ~。 嫉妬しちゃうよ? パルパルパルパル」

 

リョウ「なんだ? 頭をなでなでされたいのか? わしで良ければムツゴロウ先生みたいに撫でてあげるよ?」

 

アイリ「なんでムツゴロウ先生みたいになの!? っていうか冗談だからいいですよ~だ」

 

リョウ「痩せ我慢せんでもええんやで?」

 

アイリ「ち、違うもん!/// リョウ君の変態! ド変態! der変態! 変態大人!」

 

リョウ「日本語とドイツ語と中国語で罵られたけど、我々の業界ではご褒美です。 …ちょ、ちょっと、これこそ冗談なんやから引くなお前ら!」

 

言葉の意味を理解していないカイとシャティエルは首を傾げていたが、その他の部屋にいる者はジト目でリョウを見据えた状態で一歩後ずさっている。

 

ラミエル「お前、そんな趣味があったんだな、知らなかったぜwww」

 

結愛「まぁ、世の中には色んな性癖を持つ人がいるからwww」

 

リョウ「お前らわざと言ってるやろ! 草生やしてるし!」

 

アイリ「リョウ君」

 

リョウ「ん? なんや?」

 

アイリ「ドンマイ☆」

 

リョウ「死ねよや!」

 

アイリ「ほいーが!?」

 

足を負傷しているとは思えぬ速度でアイリに近寄り額に強めのデコピンをお見舞いした。

アイリは後ろに仰け反るようにして倒れ、額を抑え悶絶している。

 

ピコ「病院だけに、お見舞いしたね。」

 

リョウ「誰が上手いこと言えと」

 

 

~~~~~

 

 

数時間が経過し、日が落ち暗闇が支配し始める時間になり、満月の淡い光が天界を照らし出している。

アイリは医学的には全く問題がなかったためすぐに退院となり、家に帰宅することになった。

一日しか経っていない筈なのに、何故か郷愁に似た懐かしさを感じてしまう。

住み始めてから短いというのに、余程この家が好きになってしまったようだった。

この家と言うより、一緒に住まうリョウ達との日々が、アイリにとってはとても新鮮なものだったからだろうが。

 

アイリ「我が家よ、あたしは帰ってきた!」

 

アリス「あ、おかえり~」

 

サリエル「お邪魔してます、リョウさん」

 

アイリ・ラミエル「ファッ!?」

 

リョウ「人の家で何やってんだよ」

 

リビングに入るや否や、香ばしい匂いが鼻をくすぐった。

テーブルには肉をメインとした料理が並べられており、上質そうなワインとグラスも置かれてある。

椅子には大きな肉を丸かじりしているアリスと、先日コンサートを終わらせたばかりのディーバのサリエルとミケナ、その守護者であるディーバナイトのファルク、ニャミイが座っていた。

 

アイリ「ま、まさか、家に、ディーバがいるなんて、びっくりするほどユートピアなんですけど!」

 

ラミエル「な、なな、何でディーバの皆さんがここに!?」

 

アイリも相当驚愕しているが、熱狂的なWSDのファンであるラミエルは目で見ている光景が現実に思えないのか、何度も瞬きを繰り返し、頬を引っ叩いたりしている。

 

ファルク「おいっす、邪魔してるぞ」

 

リョウ「見りゃ分かるって。 それで、なしてディーバとそのナイトがわしらの家に不法侵入して飯を集ってるのかな?」

 

ミケナ「ふほぅひんひゅうほわひんがいわ」

 

リョウ「口に入ってる物を飲み込んでから話してくれ。」

 

アイリ「ここではリントの言葉で話して」

 

ミケナ「……ん、はいはーい飲み込んだにゃ。 不法侵入とは心外にゃ! アリスに許可を貰ったんだにゃ!」

 

リョウ「なーに人の家なのに主導権握って許可を出しとるんよ。 馬鹿なの? 死ぬの?」

 

アリス「私はここに住んでるようなもんなんだから、誘ってもぜんぜん問題ないっしょ?」

 

リョウ「相変わらず自由奔放やなぁ。 まぁ賑やかなのはええけどよ」

 

勝手な行いをされた割には怒りの表情を見せてはおらず、寧ろ客人を招いたことを喜んでいるようにも見える。

 

ラミエル「美味そうな品が並べられてるじゃねぇか」

 

腹の虫が鳴り続けているラミエルはテーブルに並べられた料理の臭いに誘われるかのように歩み寄り料理の品々をまじまじと見ている。

だが料理を一通り見終えると直ぐ様サリエルとミケナの方へ顔を向け、緊張した様子で声を掛ける。

 

ラミエル「あ、あの! サリエルさん、ミケナさん! いつも皆さんディーバの曲を聴いてます! よ、良かったら、サイン、貰えませんか!」

 

何処から取り出したのか、瞬時に取り出した色紙とペンを手に腕を前に出し、腰を綺麗に直角に曲げ懇願した。

 

ファルク「えーっと、今は勤務外の時間だからサイン等はお断りしてるんだが」

 

サリエル「ファルク、お偉いさん達がこの場にいるわけじゃないんだから固いことは言わなくて大丈夫よ。 いいよ、サインしてあげるよ」

 

ミケナ「私もオッケーにゃー!」

 

サリエルもミケナは色紙とペンを受け取ると早々とサインを書き始める。

仕事でサインは幾度も書いているためサインを書く早さはとても早く、数秒としないうちに書き終え、輝かしい笑顔でサインを手渡した。

 

ミケナ「これからも私達の歌を聴いていてにゃ!」

 

ラミエル「はい勿論! うおおおお!! サインを貰えるなんて感激だぜ!! もう俺死んでいいかもしれない。」

 

サリエル「ここまで喜んでもらえるなんて、私達まで嬉しくなっちゃうわ」

 

ミケナ「にゃはは、ファンの人に目の前で喜んでくれると嬉しいにゃ♪」

 

沢山の世界の人達が自分達の歌を聴いて笑顔になり、喜んでくれる。

世界の均衡を保つ以前に、笑顔や元気を届けるアイドルとして、ファンの声は何よりも嬉しい事だった。

 

ニャミイ「他のファンが見たら嫉妬するサービスにゃ。 君はホントに運がいいにゃ」

 

ラミエル「リョウ、お前が俺の知り合いだったことを心より深く感謝するぜ」

 

リョウ「もっと他の事で感謝されたいところやけど、まぁええわ。」

 

ミケナ「折角だしここでライブでもしちゃう!?」

 

アイリ・ラミエル「おおおおお!!」

 

ファルク「できるわけねぇだろ。 お前らの美声を聴いた天使がいたりでもしてみろ。 家の周辺どころかシェオル中が騒動に成りかねないだろうが」

 

リョウ「ファルクの仰る通りやで。 収集がつかなくなるから勘弁な」

 

ラミエル「ちぇ、残念だぜ」

 

ニャミイ「あれ? 時空防衛局の人って結愛だけにゃ? 他のメンバーはどうしたにゃ?」

 

結愛「みんな本部に帰ったわよ。 上に今回の警護の件を報告しなければいけないからね。 もう今頃は報告も終わっている頃だろうから、みんな休息を取っている筈だろうけど」

 

アイリ「……あっ! キラッと閃いた!」

 

ラミエル「ん? 何だよ藪から棒に」

 

アイリ「んっふっふ。 あたしにいい考えがある」

 

アリス「その台詞は嫌な予感しかしませんぞ~」

 

アイリ「大丈夫大丈夫。 とってもいいこと思い付いたから。

ディーバさん達はコンサートを成功させた。あたしや時空防衛局のみんなは無事にディーバ達の警護を終わらせた。 皆さんお疲れ様ってことで打ち上げしようと思うんだけど、どうかな?」

 

ミケナ「いいね! パーッとやりたいにゃ!」

 

ファルクはスマホを慣れた手付きで操作し、ニャミイは分厚い手帳を広げそれぞれ担当のディーバの予定を確認した。

 

ファルク「余程騒がなければ問題にはならないだろうし、良いんじゃないか? サリエルは明日の予定は夕方までは空いてるしな」

 

ニャミイ「ミケナも明日の予定は埋まってはいないから問題はないにゃ」

 

リョウ「ファルクの言うように周囲にディーバの存在が気付かれない程度なら問題はないからええんやないかな。 結愛、良かったらリュート達に連絡を取ってもらえないか?」

 

結愛「ええ、勿論よ。 ふふ、打ち上げみたいな行事なんて久し振りだから楽しみだわ」

 

結愛は微笑みながら携帯電話を取り出し第一時空防衛役員の全員と連絡を取り始める。

 

ピコ「今日は賑やかな夜になりそうだね」

 

リョウ「賑やかで済めばええんやけどねぇ」

 

シャティエル「一体何が始まるんですか?」

 

アイリ・アリス「第三次大戦だ」

 

シャティエル「争い事なのですか?」

 

リョウ「シャティエル、このバカ二人の言う戯れ言を真に受けなくていいからな。」

 

アリス「バカとは失敬な! バカって言った方がバカなんだよ! バーカ! バーカ!」

 

アイリ「リョウ君はバカはバカでもホームラン級のバカだよ。」

 

リョウ「老若男女無差別拳!」

 

アリス「からさりす!」

 

アイリ「まゆるど!」

 

余計な事を言うバカ二人の額に拳を突き出した。

名前の通り、老若男女に関係なく無差別に放たれる拳ではあるが、威力までは慈悲がないわけではないため当然だが適度に力は調整されているものの、殴られれば痛いものは痛いようで、声を上げた後に頭を抑え悶絶している。

 

リョウ「さて、多人数になるから準備しないとな。 折角こんなに広い庭だし、利用しない手はないな。 みんな、手伝ってもらえないか?」

 

ラミエル「いいですとも!」

 

シャティエル「私にできることならなんでもやります、リョウさん。」

 

カイ「カイもてつだうー!」

 

 




次回は日常回。
ぶっちゃけ戦闘描写や真面目な場面を描くより楽です。
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