ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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早くゴジラvsコングが見たい!(切実)


第27話 しぜんとあそぼ 異世界編

山、森、川、見渡す限り大自然が視界を覆い尽くさんばかりに広がっている。

 

アイリ「あれ? 見たことあるような文章だよ?」

 

ピコ「あまりツッコミを入れない方向でいこう」

 

ワールドゲートを通りアイリ達は異世界の地に足を着けた。

前述の通り、視界には緑豊かな自然が広がっている。

 

天界とは違う、所々に白い雲が掛かる青空。

多種多様の草木が生える緑溢れる山々。

川の緩やかな流れが奏でる静かな水の音。

空を自由に羽ばたく鳥の囀り。

肌を撫でるように通り抜けていくそよ風。

 

現実世界の日本の田舎を思わせる長閑な小春日和に包まれており、アイリは何処か懐かしい気持ちに浸っている。

シャティエルは天界では感じることのない景色や音をその身で味わっており、全てが新鮮に感じ強い感銘を受けていた。

 

シャティエル「とても、綺麗な世界です…」

 

アイリ「ここってあたしが過ごしてた現実世界じゃないの?」

 

リョウ「いや、現実世界とはまた別の世界やで。 日本と同様に和の文化だからアイリにとっては馴染みやすいかもしれへんな。 時代的には江戸時代あたりの文化になっとるよ」

 

アリス「ん? ってことはここって翔琉(かける)殿のいる世界?」

 

御名答、と言うようにリョウは口角を上げ頷いた。

 

アイリ「おっとまた新たなキャラの名前が上がったよ。 これは艦これ並に増えていくんじゃないかな?」

 

リョウ「あらゆる世界の知人を集めればそれを越える数になるけどな。 あー、そうや。 一応忠告しておくけど、この世界は日本みたいに完全に平和とは言えへん世界やからね」

 

ラミエル「どういう意味だ?」

 

リョウ「簡潔に説明すると、至るところに妖怪がいる魑魅魍魎とした世界ってこと」

 

ラミエル「妖怪だぁ? あの、河童とか鬼とかそういう類のか?」

 

リョウ「そうそう。 まぁわしらがいるこの一帯は出てこない筈やから安心してええよ。 さて、わし等が今から向かうのはこの階段を登った場所にある『玉桜寺』ってお寺や」

 

リョウが指差す場所には山の頂上まで伸びる石造りの階段があった。

天まで伸びているのではないかと思える段数を数えるだけでも気が遠くなるような階段を見た

アイリは自分の血の気が引いていくのを感じ取っていた。

 

アイリ「まさか、歩いて上るの?」

 

リョウ「モチのロンだよ。 体力作りって意味ではええと思うで?」

 

ラミエル「おもしれぇ、俺は喜んで上るぜ」

 

アイリ「…アイリチカ、おうちに帰る」

 

リョウ「ネタを言う元気はあるならできるよ。 根気よく行くのが嫌なら、だるまさんが転んだをしながらやればいいよ」

 

アイリ「何段あると思ってるのさ! 日が暮れるどころか夜が明けそうだよ!」

 

ピコ「アイリ、諦めずにやろうとする意志が大事なんだよー」

 

アリス「諦めたらそこで試合終了だよ?」

 

アイリ「うぅ…よぉーし! やってやろうじゃねえかよこの野郎!  ジーっとしてても、ドーにもならないもんね! バスターズ、レディー…ゴー!」

 

アリス「待て~ルパン! 逮捕だ~!」

 

半場やけくそに意気盛んにアイリは声を張り上げながら全速力で駆け出し階段を上り始め、後を追うようにアリスも階段を登っていった。

 

ラミエル「初っぱなからとばしてんな…ありゃ体力切れで途中でへばるやつだ。 んじゃ、体力作りに俺も行くかな! カイ、一緒に行こうぜ!」

 

カイ「うん! いこー!」

 

ラミエルはカイを軽々と担ぎ上げ肩車をし、準備運動としてかるく屈伸をすると、軽快な走りで階段を上り始める。

 

ラミエル「リョウとシャティエルはゆっくり来るといいぜー!」

 

リョウ「そうさせてもらうわー。 シャティエルは急がず焦らずこの風景を見ていきたいと思うからね」

 

シャティエル「是非そうさせてもらいます」

 

ラミエルは後ろ向きで倒れることなく上りながら手を振る余裕を見せながらの会話を終えると、再び前を向き足を動かし始めた。

ラミエルの肩に乗ったカイは上機嫌となり笑みを浮かべている。

 

ピコ「さぁリョウ、レッツゴー!」

 

リョウ「お前は何気に小さくなって上着のポケットに入るなよ」

 

消しゴムが上着に入ったところで重さが然程変わる訳でもなかったので、特に気にすることなくシャティエルと共に階段を上り始める。

 

周囲に生え並ぶ木々の枝と葉が日陰を作りだしており、所々に日光が漏れてはいるが、照らされる日光を防いでおり、心地好い風が汗ばんだ髪を撫でていく。

 

リョウは数百段を上ったあたりで息が僅かに乱れてはいるものの、疲労を感じさせる程の表情には至っておらず余裕が見える。

シャティエルは体の造りが機械なため、疲労を感じることがなく、ペースを落とすことなく上り続けている。

心はあるが人間の様に体力に限界がないため、シャティエルの動力源でもあるE資源が尽きない限りは活動が可能となっている。

 

シャティエル「自然に満ち溢れ空気も澄んでいて、居心地が良いです。 天界とは違う魅力があります」

 

純粋無垢な瞳に映る光景がシャティエルにとって初めて見るものばかりで、一つ一つが新鮮だった。

 

シャティエル「なんでしょう…心が静かなような、そんな気がします」

 

ピコ「う~ん、穏やかになってるってことじゃないのかな?」

 

シャティエル「穏やか…感じているこの気持ちがそうなのですね。 この世界に滞在しても、私は倦怠感に陥ることはなさそうです。 この気持ちが永遠に続いてほしいと思います」

 

リョウ「わしも全く同じ事を考えてたよ。 長閑で何の変哲もない平和な日々が続けば、穏やかな気持ちのまま過ごせるところなんやけどねぇ」

 

シャティエル「先程申していた妖怪が住まう魑魅魍魎とした世界とは到底思えないんですが、この世界は平和ではないのですか?」

 

リョウ「昔に比べれば大分落ち着いたよ。 それでもやっぱり低級妖怪等が人間に害を為す事例が後を絶たないね」

 

妖怪達は人里に下りては物を破壊する、盗む等の悪戯を働く者もいる。

最悪の事例では、山に出掛けたまま帰ってこい者もいれば、人里から子供が連れ去られ帰ってくることがなかった者もいる。

人間達にとっては人里から離れることは死の危険すらある行為であり、いつ何時人里に攻め込まれるか、侵入してくるか分からない、常日頃から死と隣り合わせな状態なのがこの世界の現状だった。

 

シャティエル「このように自然に溢れ豊かな世界なのに、妖怪達により平和な生活が崩れていっているのですね」

 

リョウ「妖怪全員が悪事を働いてる訳やないからねぇ。 妖怪にも人間に害を為さない奴もおるし。 この世界に住む妖怪達全員が人間に牙を向いたら…なんて考えたくもない…」

 

妖怪達により滅ぼされたこの世界の事を一瞬脳裏に浮かんでしまったが、縁起の悪さに即座にその思考を振り払った。

 

リョウ「まぁ、人々を守るために存在する陰陽師がいるから大丈夫や」

 

シャティエル「陰陽師とは、どのような人達なのですか?」

 

聞き慣れない単語にシャティエルは首を傾げながらリョウに尋ねた。

リョウも陰陽師の事に関しては然程知識がなかったため、スマホを取り出し陰陽師について検索し、記載されたページにアクセスし読み上げていく。

 

古代日本の律令制下において中務省の陰陽寮に属した官職の1つで、陰陽五行思想に基づいた陰陽道によって占筮及び地相などを職掌とする方技(技術系の官人)として配置された者を指すが、それら官人が後には本来の律令規定を超えて占術など方術や、祭祀を司るようになったために陰陽寮に属する者全てを指すようになり、更には中世以降の民間において個人的に占術等を行う非官人の者をも指すようになる。

風水などの方位学や占星術などの天文学を用いて占いや地相による土地の吉凶を調べる、現在に通じるような学術的な研究、怨霊を鎮める等の退魔行を職務としている。

 

リョウ「…と、まぁこんなところやな 。 ネットに書いてあったものをそのまま読み上げただけやけど」

 

シャティエル「成る程、理解できました。 現実世界の遥か昔には人外専門を相手にする役職が存在していたんですね。 そしてこの世界に陰陽師が存在している。 この世界の人達にとっては、頼るべき希望なのですね」

 

リョウ「そうやな。 今向かっている玉桜寺にもさっき名前が出たけど翔琉って奴が陰陽師やから紹介するよ」

 

アリス「おーい! リョウー! シャティエルー!」

 

呼び声が聞こえた階段の上部ではアリスが元気よく手を振っており、傍らではアイリが膝に手を着け肩で息をしている。

 

リョウ「やっぱりバテてるな。 まぁアイリにしては頑張った方やない?」

 

アイリ「ぜぇ…ぜぇ…も、もう、走れ、ないよ。 つ、疲れて…死にそう…。 みんな、死ぬしかないじゃない…!」

 

リョウ「わし等はアイリ程疲労困憊ではないから死んだりせえへん」

 

アリス「アイリ、止まるんじゃねぇぞ」

 

アイリ「ムリムリ、ムリムリ…かたつむり」

 

リョウ「ネタを言えるだけの元気はあるみたいやな。 ラミエルは先に行ったのか。 体力が化け物級やなあいつ」

 

シャティエル「ラミエルさんの階段を上る速度が落ちていなければ、5分47秒で上りきることができます。」

 

ピコ「流石シャティエル。 僕達じゃできない計算を瞬時に熟すね」

 

アリス「そこにシビれる! あこがれるゥ!」

 

リョウ「さぁそろそろ行こうや。 上でラミエルが暇そうに待ってるのが目に浮かぶからさ」

 

アイリの呼吸が整ったのを確認し再び足を運び始めた。

 

歩き続けること十数分、階段の終わりを告げるかのように巨大な八脚門が見え始めており、階段の最後の段にはラミエルが座り込んでおり、カイは周囲に飛んでいる数匹の蝶を追い掛けて遊んでいる姿も目に入った。

 

ラミエル「よぉ。 待ち草臥れちまったぜ」

 

リョウ「わしとシャティエルは歩いてたってのもあるけど、お前が速すぎるんだよ」

 

カイ「あ、アイリー! おつかれー、さま!」

 

アイリ「やっと着いたー! もう、ゴールしてもいいよね?」

 

リョウ「アイリはさっきから疲れて死にそうな言葉ばっかり発言しとるやないか」

 

シャティエル「アイリさんの身体能力で階段を登る程度の疲労で死亡するとは考えられませんが…大丈夫ですか?」

 

リョウ「シャティエル、このアホはほっといていいぞ。 あと序でにアリスも」

 

アリス「なーんで私もなのさ!」

 

リョウは騒々しいアリスの横を通り過ぎ、八脚門の戸の取っ手を掴み引いていく。

ゆっくりと大きな扉が開いていき、寺の本堂と周囲の風景が露となる。

 

木製造りの年季の入ったかなり大規模な本堂と、巨大な桜の木が生えている広々とした砂利敷きされ草木が生えた自然豊かな庭園。

庭園には似合わなく生えている桜の木が異彩を放ってはいるものの、日の光を浴び桃色に美しく輝いている。

日本庭園を彷彿させる造りに自然と心が落ち着き穏やかになってゆく。

風に吹かれ舞い散る花びらが粉雪の様に落ちていく和の美しさに見とれ、階段を上ってきた疲労が嘘のように吹き飛んでしまった。

 

アイリ「うわあ凄い。 和を感じるよ。 日本人で良かったなって心から思える」

 

リョウ「それに関しては同感。 さて…おーい! 真円さーん! 世界の監視者でーす!」

 

?「五月蝿いですぞ。 大声で呼ばんでも聞こえておるわい」

 

茂みの陰から竹箒を持った白い髭を生やした老人が姿を現した。

 

リョウ「突然来訪してすいません」

 

真円「まったくじゃ。 連絡くらい寄越してもらいたいわい。 侵入者かと思って一瞬身構えたんじゃぞ」

 

リョウ「じゃあ門に鍵を掛けなさいって…。 あぁ、みんな、紹介するよ。 この人は名前は真円さん。 この玉桜寺の住職をしている」

 

真円「ほぅ……リョウとアデランス以外は人間ではないようじゃのう」

 

アリス「真円、何回も会ってるんだからいい加減私の名前覚えてよー! 私の名前はアーリース!」

 

真円「ふむ、アーケードじゃな。 確と脳に刻みこんだぞ」

 

アリス「このジジイわざと間違えてるんじゃないの? ねぇリョウ、センの古城に送ってケルナグールした後にジゴスパーク撃ってもいいよね? 答えは聞いてない!」

 

ラミエル「落ち着けよバカ。 あんた、何で俺達が人間じゃないって分かったんだ? 天使の翼は普通の人間には見えはしない筈なんだが?」

 

自身の武器であるユグドラシル・アルスマグナを手にし襲い掛かろうとするのをラミエルが止めながら真円に疑問を投げる。

 

真円「わしは若い時には陰陽師として妖怪や怨霊を鎮めていたからのう。 こういった類いの存在は嫌でもこの眼に映ってしまうんじゃ」

 

アイリ「陰陽師!? 凄い、かっこいい! 現代の日本じゃ絶対に見られないよ!」

 

真円「それで、世界の監視者であるお前さんがこの世界の辺鄙な場所に何用で来られたんじゃ?」

 

リョウはこの世界に来た目的を淡々と告げる。

 

真円「ふむ、成る程。 ぶっちゃけ言うとここに来たのは安全という意味もありわし等に会いに来たのは序でにと言ったところか」

 

リョウ「ぶっちゃけ言うと仰る通りですね。 一晩だけ泊めてもらってもいいですか?」

 

真円「やれやれ、ここは宿屋か旅館ではないのだぞ。 まぁ、翔琉や多くの妖怪が住み着いとる時点で曰く付きの旅館みたいなもんじゃがな」

 

シャティエル「妖怪がこの寺に住んでいるのですか? 真円さんが妖怪が住み着いてる事を知っていて対処しないところを見ると人間に害を為す存在ではなさそうですが」

 

真円「昔はこの世界の調和を乱す程の荒くれ者じゃったが、現在では改心しておるから安心せい。 さぁ、案内するからわしに付いてきなさい」

 

愚痴を溢してはいたが快くアイリ達を受け入れた真円は案内をするためくるりと背を向け歩き始める。

アイリ達も後に続き歩みを進めるが、リョウだけがその場に留まり桜の木を眺めていた。

 

アイリ「リョウ君、行かないの?」

 

リョウ「後から向かうから、先に行っといてくれ」

 

ピコ「僕も一緒に行くからさ! ほらほら!」

 

アリス「…アイリ、行くよ! ドリル装備でダート自転車にまたがりショッカーを殲滅しに行くのだー!」

 

アイリ「お、おぉー!? 行くぜ怪盗少女!」

 

アリスはアイリの襟元を掴み引っ張り、ピコは背中から押し半ば強引にこの場を離れる。

カイはリョウの表情を見て懸念していたがラミエルとシャティエルに連れられ二人の後に続いて歩いて行った。

 

草木が風に煽られさざめく音だけがその場を支配する。

一人庭園に佇んでいたリョウは桜の木に向かい歩みを進める。

正確には、桜の木の裏側にある小さな墓石に歩みを進めている。

墓石とは言っても、日本に存在する御影石で生成された一般的な墓石とは違い、成人男性の上半身程の高さのある文字が刻まれていない細長い石が地面に埋もれ置かれてある簡易的なものだった。

顔に悲痛の色が現れているリョウは墓の前でしゃがみ込み目を閉じ合掌し、墓の下で眠る者へ冥福を祈る。

 

リョウ「ごめんな、今日は急遽来る予定になったから花や線香も準備することもできなくて」

 

誰に語る訳でもなく、目の前の墓に優しく語りかける。

 

リョウ「久し振りに来るから、話す内容が幾つもあるんよね。 そうやな…アイリの話をしようか。 最近転生してしまった子の話なんやけど…」

 

リョウは時間に余裕がある時にはこの世界に立ち寄っては墓参りをするため玉桜寺に訪れている。

数分という短時間だが、桜の木の下に造られた墓に眠る者に日々の出来事を伝えていた。

今回も時間を忘れ膨大な量の出来事を話したところで、ふと時計を見ると長針が数字3つ分移動していたことに気付く。

アリスを除くお互いが初となる相見となるため、席を外すわけにもいかないので急ぎアイリ達の元へと向かわなければなからなかった。

 

リョウ「…そろそろ行くわ。 アイリ達を待たせるわけにはいかないからね。 じゃあ、また来るからな、さくら」

 

哀愁を帯びた声で墓に眠る者の名前を言うと立ち上がり、振り返ることなくアイリ達の元へ早足で向かっていった。

 




日本に生まれて良かったってガチで思う
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