ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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戦闘描写って書くのムズいわ~(今更)


第32話 森林内での激闘 前編

ーアイリside

 

あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!

サタンフォーの二人が急に現れたと思ったら、腕のでっかい顔色どころか体の色まで悪い悪魔が地面ごと吹っ飛んじまいやがったんだ!

ミルキィローズのクレーターパンチを超える威力だね。

いつか地球割りとかしそう。

もう少しでSATSUGAIされるところを翔琉殿が霊気を使い作った壁を生成してくれたおかげで負傷せずに済んだけど、近くにあった森の中まで吹き飛ばされてみんな散り散りになっちゃったけど。

あたしが無事だろうからラミエル君達もきっと大丈夫だって、あたし信じてる。

 

あたし達のことよりも、カイ君のことが心配でしょうがない。

アンドロマリウスって奴の攻撃を直接受けてなくても、妖怪であるカイ君でもあの爆発で無事に済んでいる保証はない。

もし、大怪我を負って苦しんでいたら…。

 

アイリ「のんびりしてられない。 早くカイ君を見つけないと」

 

急がないといけないよね。

アンドロマリウス達があたし達の気配に気付いて森の中へと入ってきてるみたいだし。

あたしも見つからないように気配を殺して動き回らなきゃいけないから、探すのは困難になる。

 

それにしても…。

 

アイリ「やっぱり一人って、心細いな」

 

転生する前、人間の頃には当たり前だったんだけど、天使となって生活してからは誰かと接して過ごすのが当たり前になってしまったから、一人でいるときの寂しさや、一人でいる冷たい感情って言うのかな、そういうのが嫌でも全身に伝わってくる。

 

アイリ「弱気になってられない。 アンパンマンみたいに愛と勇気だけが友達って感じで…いや、それはそれで悲しいよね」

 

「見つけたぞー!」

 

アイリ「あら、独り言が大きかったかな?」

 

あれれーおかしいなー?

なーんで簡単に見つかっちゃうかな?

某伝説の傭兵並の隠密行動をしてるつもりだったんだけど…やっぱり独り言が原因かな?

それともダンボールがなかったから?

もう、うっかり! うっかり!

まぁたまの失敗はスパイスかもねって言うし、まいどん! じゃなくて、ドンマイ!

そんなこと思ってるとあたしの前に数人の悪魔兵達がぞろぞろとやって来た。

 

アイリ「一人で戦うのって数回しかないのに、あたしって緊張感なさすぎだよね」

 

「一人で何をぶつぶつ呟いてんだ?」

 

「恐怖でおかしくなってるみたいだ。 早いところ俺達で楽にさせてやろうぜ」

 

「元からおかしいと思うぜ?」

 

もう何よこいつら! 言いたい放題言って!

あたしがおかしい? そんな訳ないじゃん!

ちょっと二次元や特撮等の創作物が好きで日常生活でもたまにセリフを言っちゃったりしちゃうだけだもん!

…変だね、十分過ぎるほどに。

でも好きなんだから、仕方ないね♂

 

…きっとこういうところなんだろうね。

 

アイリ「よぉし、ヤッテヤルデス! 手始めに、『スプレッドアロー』!」

 

大人数には拡散攻撃、これ基本。

無双ゲーでは場合によっては重宝する技になる。

 

現在進行形で効果は覿面で、矢を受けた悪魔兵達は光の力により浄化されていく。

今の騒ぎを聞き付けた悪魔兵達が次々と集まりつつあるっぽい。

四面楚歌とは正にこのことだよ。 こうなったら…。

 

アイリ「逃げるが勝ち! 逃げろホーイ!」

 

多勢に無勢なんだもん!

無駄に戦いたくなんてないから、ね♪

取り敢えずカイ君を優先して探していかないと。

木々を避けながら飛行するのって以外と難しいから、逃げるのも探すのも困難になってくる。

 

木ノ葉隠れの里の忍者学校の生徒や巨人を駆逐する兵団達が羨ましく思えてくるよ。

 

さて、ネタに走ってしまう煩悩は取っ払って集中しよう。

目の前に並ぶある木々や紫色の柱を華麗に…え、紫色の柱?

 

アイリ「ヤバっ!? ストップひばりくん!」

 

ギリギリのところであたしは空中で停止し、紫色の柱に直撃は免れた。

良く見ると、柱と言うよりは闇のエネルギーの柱の形にしているといったところだった。

 

アンドロマリウス「馬鹿な娘でも真っ正面から激突とはいかなかったか」

 

早速お出でなすったよ激マジにヤバいのが。

さっきの3人の中でも特に威圧感が大きかったのがこのアンドロマリウスって悪魔。

何者をも震え上がらせるような冷たい目で見られると、金縛りにあったか、蛇に睨まれた蛙の様になってしまうほど。

単純に恐ろしいと思える感情が身体中を支配するけど、勇気を振り絞り地に足を着けガーンデーヴァを構える。

 

アンドロマリウス「ガーンデーヴァか。 元人間の娘が使いこなせるとは到底思えんな」

 

アイリ「油断大敵って言葉を知らないの?」

 

アンドロマリウス「声が震えているぞ。 死への恐怖が表れている」

 

悔しいけど、図星だよ。

リョウ君やラミエル君も実力を認め恐れるサタンフォーの一人が目の前にいるんだから、恐いに決まってるじゃん。

ベルゼブブの時は結愛さんの攻撃で弱っていたからあたしでも撃退はできたけど、アンドロマリウスは万全な状態、更にベルゼブブよりも強い力を感じ取れる。

 

あたし、本当にここで殺されるかもしれない。

マイナスの思想なんか巡らせたくはないけど、嫌でも最悪の展開が過ってしまう。

 

それに、アンドロマリウスって悪魔、何処かで見たことがあるような気がする。

 

アンドロマリウス「恐怖は己の弱さだ。 貴様は弱さを克服することなく死ぬ」

 

アイリ「死ぬのなんか、ごめんなんだから!」

 

やるしかない。 あたしが出せる全力をぶつける。

死への恐怖が己の弱さ? あたしはそうは思わない。

誰だって死ぬのは怖い筈だから。

死んでしまえば、人生は終わり。

克服できるとは思っちゃいない。

だから、死から逃れるために、あたしは戦う。

 

フレフレあたし! キバっていくよ!

 

 

~~~~~

 

 

ー三人称side

 

真琴「んもう! しつこい! 『百の風』!」

 

真琴は現在、森の中を駆け走りながら延々と追い続けてくる悪魔兵と天邪鬼を相手にしていた。

 

両手に持った苦無を回転するように振るい、妖力を用い頭一つほどの大きさの風の鎌を生成し放つ。

大抵の数は天邪鬼達の体を斬り刻んでいくが、命中しなかったものは大木に当たり不発に終わっていく。

 

木という障害物が立ち並ぶ場で拡散系統の技を出すのは不利だと分かっていた悪魔兵達は心の中で真琴を嘲笑っていた。

天邪鬼達よりも機敏に動き回れる彼等は宙を飛び徐々に真琴との距離を詰めていく。

 

真琴「考えなしに特攻してくると危険だよ?」

 

真琴は考えなしに無闇に攻撃をしていたわけではなかった。

わざと大木を斬りつけ軽い衝撃を与えるだけで折れてしまう状態に準備をしていた。

真琴はもう一度『百の風』を放ち大木を斬りつけた。

大木はミシミシと音を立て、悪魔兵達を下敷きに地面へと倒れていく。

 

真琴「ふぅ~。 取り敢えず落ち着いた。 早く主達と合流しないと」

 

額の汗を拭いその場を離れようとしたが、何者かが近くにいる気配を感じ取り身を屈めた。

 

真琴(味方ならなら直ぐ様にでも声を掛けてくれるから、この気配は間違いなく敵のもの。 何処に潜んでいるの?)

 

僅かな物音も逃がさぬため、瞳を閉じ、全神経を集中させ警戒に当たる。

風が吹いてなく、木々が揺れることもなければ悪魔兵や天邪鬼の声すらも聞こえない、静寂がこの場を支配していた。

 

数十秒か、数分経った頃か、空を切りながら何かが迫ってくる音を感じ取った。

真琴は目を見開き空中へ飛び上がった。

次の瞬間、地面に闇のエネルギー弾が着弾し陥没した。

 

真琴「危機一髪。 誰かと思ったら、悪念と賊心塗れの美男子悪魔ね」

 

ルシファー「賛称しているのか貶してしるのか、どちらかにしてほしい」

 

木の後ろに身を潜めていたルシファーが姿を現した。

 

ルシファー「本来の目的の相手ではないが、君も俺達に害を為す者、始末させてもらう」

 

真琴「簡単に言ってくれるじゃん。 あんた達みたいな邪道な奴等を成敗するのが仕事なんだから、邪魔するのは当たり前って感じになるわ」

 

苦無を懐に仕舞い、背中に携えた忍刀を抜刀し構える。

ルシファーは薄ら笑いを浮かべ、ゆっくりとした足取りで真琴へと歩み寄っていく。

 

ルシファー「愚かな女狐だな。 大人しく引いてもらえれば、俺も深追いせず生かしてやろうと思ったんだが」

 

口角が一瞬上がったのと同時に、ルシファーの右腕に闇のエネルギーが集束し始め、剣の形へと成型されていく。

 

全体的に黒を基調とし、鍔の左が上側、右が下側に湾曲しており、中央には炎のように赤い宝玉が嵌め込まれてあり、刀身に赤いラインが刻まれた禍々しい剣を力強く握り締め、真琴の元へと歩み寄っていく。

 

真琴「な、何よ、その剣…!」

 

真琴は身震いしそうになるのを気力で必死に耐えた。

 

嫌でも肌に感じ取れてしまう、あの剣から放たれる尋常ではない闇の力。

世界を闇一色に染め上げる、いや、蝕み呑み込もうとするほどの絶大な量の闇。

誰もが恐れ戦き、心や善の感情を全て覆い尽くし、闇だけが残るような絶望感さえ感じ取れる。

 

膨大な闇の力に怯んでいる真琴に、ルシファーは薄ら笑いを浮かべたまま悠長な口調で話し始める。

 

ルシファー「感じ取れたようだな、ティルフィングから無限に涌き出る闇の力を。 君は身を持って味わうことになる」

 

ルシファーは徐々に走る速度を早めティルフィングを軽々と振るう。

ティルフィングから放たれる闇の力に怯懦していた真琴は反応が遅れたが忍刃でぎきることができた。

続けざまに振るわれる闇の剣を防ぎきるので精一杯で、真琴は防戦一方に追い込まれる。

 

ルシファー「『ダークゲイル』!」

 

バックステップで距離をとり、ティルフィングを一振りすると、凄まじい速度で闇の斬撃が放たれ、真琴の身体を斬り刻んでいく。

 

真琴「うぅ、うぐぅ! 『土壁の術』!」

 

鋭い痛みを堪え、手短に発動できる忍術を咄嗟に繰り出した。

真琴の正面の真下から土の壁が地面を抉るように突き出て、闇の斬撃を防いだ。

ルシファーは翼を広げ滑空し、壁を真っ二つに斬り裂き真琴の心臓部を目掛けティルフィングを突き刺そうとしたが、瞬時に異変に気付き、斬った壁を足場にし飛び上がった。

 

真琴「逃げても無駄だよ! 『激流の術』!」

 

ルシファーの真上、何もない空間から突如大量の水が滝のように出現し、ルシファーは水の勢いで地面へと叩き付けられた。

接近戦は不利と判断した真琴は追撃として四方手裏剣を取り出し、数十枚を連続で投げる。

ルシファーは怯む様子はなく、『ダークゲイル』で向かい来る手裏剣を次々と弾き飛ばしていくが、数十枚のうちの一枚が肩に突き刺さった。

その手裏剣は真っ正面からではなく、軌道を変え横から飛んできたものだった。

真琴は事前に持参してある手裏剣に妖力を吹き込んでおり、自分の思い通りに軌道を変えられるようになっている。

意表を突くには得策で、余程の者でなければこの世界にいる人物が初手で回避するのは困難だろう。

ルシファーは異世界に住む悪魔、通用するかは一か八かではあったが、成功し真琴は安堵した。

 

真琴「これで決める! 『獄炎乱舞の術』!」

 

一瞬怯んだ隙を見逃さず術を発動させる。

ルシファーを囲むように炎の渦が発生し飲み込んでいった。

自分が取得している中でも高い威力を誇る術を使用し、息が上がっていた。

 

ルシファー「悪くはなかったぞ」

 

背筋に悪寒が走った。

無傷とはいかなかったが、炎の渦をティルフィングで真っ二つに斬り平然とした様子で姿を現した。

 

真琴「ほぼ無傷…? そんな、上級の妖怪でも重度の火傷を負うほどの威力なのに…」

 

ルシファー「強力な術であることに間違いはない。 だが、俺には脅威となる程の威力ではなかった、それだけのことだ」

 

真琴(日々鍛練してるのに、通用しないなんて。 悔しいけど、一旦退くべきね)

 

自分の実力不足に不甲斐なさを感じながらも、自分一人の実力だけでは勝てないと判断し、戦略的撤退をしようと懐にある煙玉に手を伸ばした。

 

ルシファー「退却できると思っているのか?」

 

行動を先読みしていたのか、ルシファーは急接近しティルフィングを振るう。

速すぎる攻撃に反応が遅れたが、身を屈め横転し一定の距離を保ちつつ退却を一時諦め忍刀を構える。

攻撃は止まることなく、ティルフィングを木の枝の如く軽々と振るい連撃を叩き込む。

剣術を積んでいる真琴をも凌駕する剣の腕を持つルシファーは終始攻戦に対し、真琴は防戦一方に追い込まれている。

 

真琴「ぐっ…!」

 

ルシファー「この世界に住む善の心を持つ妖怪の実力はその程度か? 陰陽師なしでは戦力にならないと言うわけか」

 

胸に杭を打たれたような感覚に陥った。

反論したかったが、ルシファーの言うように翔琉が不在の状況で己の実力が通用しないのは事実だったため、口を噤んでしまう。

 

ルシファー「俺を退けられないようなら、代々陰陽師に支える妖狐として失格だな」

 

真琴「…主は、無慈悲な言葉を私に投げ掛けたりなんて、しない!」

 

耳を傾けないようにしていたが、頭に血が上ってしまい、怒りの感情任せに忍刀を振るいティルフィングを弾き返した。

体を回転させ瞬時に自身の尾を真っ直ぐに伸ばし、顔面を叩き付けた。

 

真琴「『荒斬風』!」

 

妖気を込めた忍刀を振り下ろした。

ルシファーの体を縦に一閃した直後、風で生成された刃が無数に放たれ、荒れ狂う風となり後方へと吹き飛ばした。

 

真琴「はあ、はあ……主を愚弄する輩は、何者でも許さないんだから」

 

ルシファー「思慕な念なのか…最早俺には理解不能だが、その想いとやらがお前の力を増幅させているのか」

 

ルシファーは独り言のように呟くと、ティルフィングの剣先を真琴へと向ける。

計りきれない闇の力が宿る魔剣からどのような技を繰り出してくるか全く予想ができない。

警戒を怠らず、忍刀を逆手にし構える。

 

ルシファー「その想いの力を、闇の力により更に増幅させてやろう」

 

ティルフィングの剣先から一筋の禍々しい光が伸びていき、真琴の胸に直撃した。

光を受けた真琴の体は、目立つような外傷は見えず、無傷と言える程だったが、真琴は胸を押さえ苦しそうに背中を丸め呻き声を上げている。

 

真琴「う、うがっ……ぐぁ……!?」

 

ルシファー「人間だろうが、妖怪だろうが、生きる者全てが心の奥底に宿る闇を引き出している。 抵抗しても無駄だ。 ティルフィングが齎す闇の力に大人しく呑まれるがいい」

 

ルシファーの言葉など耳には入ってはいなかった。

胸の奥底から湧き出る不愉快で重々しい何かが溢れ出ないように、抑え耐えるのに全神経を集中させていた。

 

真琴(私の、妖怪の本能が、奥底から…這い出てくる…!)

 

真琴の持つ闇、それは妖怪が持つ本能でもあり、破壊衝動。

 

本来、真琴の種族である妖狐は人間を化かし、時に闇夜に襲い掛かる等の悪行を働く妖怪。

ティルフィングの能力の一つである、対象となった者の心の奥底に潜む闇を引きずり出し、心を闇一色に染め上げるというもの。

真琴の場合は、妖狐という一匹の妖怪として、人間と対を為す邪悪な存在の本能を呼び覚まされそうな状態に陥っている。

 

更に真琴は、本能以外にも闇へと変換させられそうになっているものがあった。

 

主人でもある翔琉への恋心。

 

種族の違いと主従関係により恋仲に発展できない悩み、心に渦巻く負と呼べるものは全て闇へ染められ、真琴を更に苦しめる要因となっていた。

 

真琴は闇に染められまいと必死に気力を振り絞り耐え抜いていたが、体が内側から蝕まれるような、どす黒い何かに全身を呑み込まれるような忌々しい嫌悪感と、抵抗することにより生まれる苦痛により、遂に地面へと倒れてしまった。

 

真琴(嫌だ…嫌……闇になんて、染まりたくない…助けて、主……主、タスケテ…)

 

意識が朦朧とし、全身に力が入らなくなっていく。

徐々に視界が狭まっていき、暗闇へと侵食されていくのが嫌でも感じ取れてしまう。

抵抗も虚しく闇に染まりつつある最中、真琴の周囲に六枚の文字が書かれた札が何処からともなく投げられ、札を繋ぐように光の線が引かれていき、六芒星が真琴の真下の地面に描かれた。

魔方陣から光が溢れ、真琴の体を包んでいき、先程まで支配していた苦痛は嘘のように消え去っていた。

 

真琴「この術って…!」

 

真琴が気付いた時には、腕の中に抱かれていた。

主従関係でもあり、想いを寄せる人物、翔琉だった。

 

ルシファー「ティルフィングの闇を退けるとは、相当な実力者だな」

 

翔琉「恐悦至極、とも言えないか。 自惚れてるつもりはないけど、実力がなければ陰陽師とは名乗れないからね」

 

翔琉は真琴を抱き抱え、側にある木が背凭れになるようゆっくりと下ろした。

世で言う通称お姫様抱っこを初めてされた真琴は頬を赤らめていた。

 

真琴「主…えっと、その…ごめんなさい。 心配かけちゃって……」

 

翔琉「よく頑張ってくれた。 真琴の身に何もなくて、無事だっただけで、僕は安心したよ。 後は僕に任せて休んでいてくれ」

 

優しい言葉を掛けルシファーへと向き直る。

手には既に呪符が数枚あり、鋭い目付きで睨み付ける。

 

ルシファー「役立たずの従者がいると苦労も多くなるだろう」

 

翔琉「…その言葉、取り消せ。 僕は真琴を役立たずと思ったことなど全くない。 辛く険しい時も、苦難を乗り越える時も互いに励まし合い二人三脚で日々を歩んできた。 真琴は僕にとって、愛する従者でもある大切な存在だ」

 

ルシファー「愚かだな。 種族が違うどころか、主従関係でもあるにも関わらず手を取り合い、更には恋仲にまで発展するとは」

 

翔琉「好きなだけ言えばいいよ。 僕の愛する真琴を蔑む君は、許さない」

 

怒りの感情の表れなのか、手に持ってある呪符から霊力が溢れ出ている。

翔琉が地を強く蹴り駆け出したのが戦闘の合図だった。

呪符をルシファーに向け投げつけ、更に距離を縮めていく。

ルシファーは手刀で呪符をはね除け、ティルフィングを再び召喚し無防備な翔琉に向けて振るう。

 

翔琉「『呪縛鎖』!」

 

大きく後ろへ跳び下がり、手に霊力を集め放った。

放たれた霊力は先程ルシファーによりはね除けられた呪符に吸収されるかのように集結していき、光の鎖へと瞬時に形状が変化し、ルシファーの腕へ絡み付き自由を奪った。

 

ルシファー「厄介な術を…」

 

翔琉「好機は逃さない! 『波動衝撃』!」

 

霊力を両手の手の平に集結させ、掌底打ちの勢いでルシファーへと押し当てると同時に霊力を解放し、重く強力な衝撃波を発生させルシファーを吹き飛ばした。

翔琉は霊力を用い宙へ舞い上がり、懐から『魔斬刃』を数本取り出し投げつけた。

 

ルシファー「小賢しいな。 『ダークネストルネード』!」

 

胸を抑えつつ立ち上がったルシファーはティルフィングを軽く振るう。

たった一振りで漆黒の竜巻が生成され、迫り来る『魔斬刃』は風により舞い上がっていく。

翔琉も巨大な竜巻に巻き込まれ、荒れ狂う風の中、体勢を立て直すのに精一杯と言ったようすだった。

 

翔琉「ぐっ……! 凄まじい闇の力だな…!」

 

ルシファー「肌をもって思い知れ、ティルフィングの力を」

 

翼を広げ翔琉の前に飛翔したルシファーは暴風が吹き荒れる竜巻の中でも通常通りの飛行を行っており、風に身を任せ急上昇し、ある程度高度が上がった場所まで来ると、風を身で切り裂きながら急降下し、踵落としを翔琉の腹部目掛けて振り下ろした。

諸に攻撃を受け、細身な体がくの字に曲がり、重力に従って地面へと落ちていき、クレーターが出来上がるほど勢いよく地面へ落下した。

口内が血の味に包まれ、身体中に激痛が迸る。

危機的状況に陥ってはいるが、静謐とした態度で翔琉は直ぐ様立ち上がった。

 

ルシファー「随分と冷静だな。 挙措を失うところを是非見てみたいものだ」

 

翔琉「君は余裕綽々だね。 僕はいついかなる時でも平静を保ち戦っているつもりだ。 でなければいざという困難に直面した場合に冷静に物事を対処できないからね」

 

ルシファー「舌が回るのはよろしくはないな。 例えば、貴様の従者である妖狐が傷つけば、威勢を保っていられるか?」

 

背筋にこれまでない悪寒が走った。

翔琉は体に鞭を打ち真琴の前へと飛び込むように飛行し、呪符を大量に取り出した。

手に持ちきれない呪符は霊力により宙へ浮いており、どの方向から攻め込まれても対処できるよう万全な状態にしている。

 

翔琉「真琴には、指一本触れさせはしない!」

 

真琴「主…!」

 

ルシファー「勇ましい。 思慕する者をどこまで守りきれるか、試してみよう」

 

ルシファーは口角を上げゆっくりと着実に歩みを進めてくる。

緊張感と警戒心が高まり体が強張る。

 

───僕が守りきれなければ、真琴の命が危うい。

 

プレッシャーが重圧となり更に緊張感が高まっていく。

だが焦る表情は決して表に出てはいない。

一抹の不安は油断へと繋がりかねないため、戦闘時は常に平常心でいるよう念頭に置いてはいるが、真琴の命の危機を考えると体が強張る。

 

翔琉(何とかして真琴を戦闘から離脱させたいが、隙がないに加え真琴の体力的に不可能に近い…)

 

真正面から戦ったとしても、実力は互角か、こちらが押されるか、この不利な状況を打破できる策を練っている内にもルシファーは着々と歩み寄ってくる。

目眩ましの効果がある『苦痛撃・輝』を多数用いて撤退を考慮した直後、耳を擘く轟音が森に響いた。

刹那、木々から木々に伝わるように貫いたのは、雷霆。

森の奥から人が目にも止まらぬ速度で大木を薙ぎ倒しながら飛んできた。

 

ルシファー「相も変わらず、派手な攻撃だ」

 

飛んできた何者かをルシファーは振り返り様に蹴り飛ばすことで直撃を免れた。

 

翔琉「こいつは…尾黒?」

 

ルシファーの蹴りを受けたことにより地に伏していたのは、今回の事の発端とも呼べる妖怪、尾黒だった。

体は所々焦げているように黒くなっており、三本の尾の毛先は枝分かれしており、プスプスと小さな煙を上げている。

先程の迸る雷を直視したルシファーは、尾黒を戦闘不能にした人物を瞬時に認知した。

 

ルシファー「尾黒では役不足だったか、ラミエル?」

 

ラミエル「ご明察だー!」

 

吹き飛ばした尾黒を追うように飛翔したラミエルは『スタティッククロウ』による電撃で生成された爪をルシファーに振り下ろす。

ティルフィングで軽々と防ぎきるが、徐々に力負けし押され始める。

 

ルシファー「君は馬鹿力だけが取り柄だな」

 

ラミエル「悪かったな! それでもお前を倒せるなら構わねぇ! てめぇには拳で語り合った後で話があるからな!」

 

腕を真上に力強く振るいティルフィングを弾き返しルシファーの体を爪で斬り裂こうとするも、華麗な身のこなしにより渾身の一撃を避け、腹部に蹴りを放ち距離を取り、手から闇の光弾を数発放つ。

爪で光弾を斬り裂きながら突き進み、再び爪と剣がぶつかり合う接近戦が開始される。

 

仲間であるラミエルと鉢合わせになる僥倖に廻り合い、真琴を連れ撤退できる時間ができた。

 

翔琉「今のうちだ。 真琴、君を連れ一度撤退する。 立てるかい?」

 

真琴「主、私はもう大丈夫。 走り回れる程には回復したから、私も助太刀するよ」

 

翔琉「駄目だ、これ以上君を危険な目に合わすわけにはいかない」

 

真琴「今更何言ってるの。 命の危機に陥ったのは今日を入れて一度や二度じゃないんだから」

 

翔琉「でも……」

 

真琴「私ね、嬉しかったよ。 主が私の事を愛する存在だって言葉にしてくれたこと」

 

真琴を蔑まされた事に頭に血が上り咄嗟に出てしまった本心に気恥ずかしくなり、翔琉は照れてしまい目線を反らす。

 

真琴「こんな形でだけど、主の本当の想いを聞けて嬉しい。 さっきも自らが盾になることで私を守護しようとしてくれたのも嬉しかった。 …でも、主には傷付いてほしくない。 傷付いてほしくない、死んでほしくないって気持ちは一緒だよ。 だから、お互い背中合わせで戦い合えばいいって、私は思ってる」

 

一息ついて更に言葉を続ける。

 

真琴「主と二人でなら、どんな危機だって乗り越えられるって、そんな気がする。 主だから、私の愛する人だから、安心して背中を任せられる。 主は、私が主の背中を任せるのは不安、かな?」

 

翔琉「……不安なもんか。 この世の誰よりも任せられる。 君は僕の最高の相棒でもあり、最愛の人でもあるんだから」

 

お互い頬を赤く染めながら絆と愛を確かめ合う。

自然と笑みが零れ、幸福感が充溢する。

 

ラミエル「お二人さーん! イチャイチャすんのは終わってからにしてくれねぇかな!」

 

ラミエルの一声により二人は現実へと戻される。

翔琉が座り込んでいた真琴に手を伸ばした。

 

翔琉「真琴、僕の背中を預けてくれるかい?」

 

真琴「ええ、勿論よ! 私の背中、主に託すね!」

 

闘志を燃やす瞳で真琴は手を取り勢いよく立ち上がり、忍刀を構える。

翔琉は左手に呪符、右手に天然水晶から製造された陰陽五法独鈷と呼ばれる独特な形をした武器を手に、ラミエルと交戦中のルシファーの元へと駆け出した。

 

 




次回も戦闘パートです
おふざけ回を書きたい!
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