自分も古参勢に含まれる方ですがもう感動しかありません。
最後は普通に泣きました。
リョウの提案により、ピースハーモニアの少女達の行きつけの喫茶店、T・フラワーに場所を移すことになり、そこで詳しく話を聞くこととなった。
変身を解いた少女三人が先導してアレク達を案内していた。
アイリの容態を気にしてはいたが、事情を一切知らず飲み込むことのできていない自分達ではどうすることもできず歯痒い感覚になり落ち着いてはいられなかった。
アイリを助けたい、救いたいという、純粋な思いは三人が心の中にあり結託している。
常に人助けをする善良な行いを怠らないことを念頭に置いている、と言うより自らの本心で行っている彼女達、ピースハーモニアの自己紹介をしておこう。
ブレイブフェニックスに変身していた少女。
名前は鳳 優華(おおとり ゆうか)。
橙色に近い茶髪を後ろで纏めたポニーテールに大きなアホ毛が特徴の八重歯が生えた男勝りな性格。
猪突猛進で一度決めたことは最後までやり抜き、義理と友情に厚い心の持ち主。
持ち前の明るさは三人の中のムードメーカー的な存在だ。
勉強は逃げ出すほど苦手だが、その反面、運動神経はずば抜けて高く、学校の部活動で様々な部活の助っ人として活躍しており、戦闘でも自慢の体力を駆使し、敏捷でアクロバティックなスタイルで戦闘を行う。
ブリザードヴィーナスに変身していた少女。
名前はユノ・ホワイト。
白雪のような純白の髪をショートボブにした、臆病な雰囲気を醸し出す怯懦な性格。
心配性で引っ込み思案な彼女だが、困っている誰かの為ならば即座に救いの手を差し伸べる慈愛の心と、強大な敵にも恐れながらも決して引かない勇気を持ち合わせている。
趣味は読書で、一日中図書室や図書館、自室から出てこないな時があるとかないとか。
因みに種族は人間ではなく、ハーフエルフと呼ばれる、人間とエルフの間で生まれた種族だ。
ルナアポカリプスに変身していた少女。
名前は夜美(よみ)・L・ディーフェル。
高身長でモデル顔負けの学生とは思えぬスタイルを持ち、金髪のウェーブがかかったセミロングヘア。
相当マイペースな性格だが、メンバーを統一させる精神的支柱を持ち意見を出すリーダー的ポジションにある。
一人称を『わし』と言ったり、関西弁で喋る等の強烈なインパクトがあるのは、現実世界にある極道映画を幼い頃から見てしまったせい、らしい。
各々個人の色が濃く統一性のない少女達だが、ピースハーモニアとしての連携は見事なもので、幾度となくフェアリルを守り抜いてきた紛れもない戦士。
三人の年齢は十七歳で、勿論学校に通っており、青春を送る極々普通の女の子でもある。
誰が見ても極々普通の女子学生だと明確に分かる彼女達に連れられ、ゴシックスタイルの家が立ち並ぶ住宅街を抜け、小さな花々が咲く、人工的に敷かれた煉瓦の一本道が木々の中へと続く広間へ辿り着いた。
蛍の灯火のように周囲を照らす光の玉が宙に浮いている幻想的な雰囲気を感じさせる木々が生い茂る一本道を抜けた先に姿を現したのは、一軒の木造建築の喫茶店だった。
色とりどりで多種多様な花が咲き誇る小さな庭園を通り入り口の前に立つ。
『CLOSED』と書かれた看板が出ており、閉店しているのは明らかだったが、お構いなしに優華は扉を開き入店した。
扉に付けられたベルが心地好い音を鳴らす。
店内にも花や観葉植物が至る場所に飾られており自然に溢れている。
吹き抜けのある構造の二階に、自然豊かな庭園を一望できるテラス。
時間がゆっくりと流れる穏やかな雰囲気を放つナチュラルスタイルの喫茶店に入店した優華は安穏を吹き飛ばす大声で人の名を呼ぶ。
優華「おーいイリーラさーん! 邪魔するぞー!」
?「は~い。 今行きますね~」
返ってきた言葉を発する人物の口調は、優華とは違い、のほほんとした気が抜けるような悠々としたもの。
厨房へと続くスイングドアを通り出てきたのは、長身エプロンを着た女性だった。
絹糸のように艶のある金髪をストレートにした、男性の眼を瞬時に虜にしてしまうであろう美女。
一つ特異な点を上げるとすれば、背中から生えている、二枚の半透明な翅だろう。
イリーラと呼ばれた女性はにこやかな表情で来店した優華達へ対応する。
イリーラ「いらっしゃいませ~。 閉店したのにピースハーモニアである優華ちゃん達が来たってことは、何か大切な話でもあるのかしら~?」
優華「そうだな。 二階の席を貸してもらいたいんだけどいいよな?」
ユノ「ゆ、優華さん、不躾、ですよぅ」
イリーラ「私達の仲なんですから、気にしなくていいですよ~。 どうぞ、使ってください。 あら、アレクさんもいらっしゃるんですね~ 」
アレク「よお。 突然で悪いな」
イリーラ「いいえ~、お気になさらず。 ではでは、こちらへ~」
口振りからすると優華達がピースハーモニアということは知っているようだ。
どういった経緯で正体を知っているのかはまた別の機会に話すとして、T・フラワーはピースハーモニアの憩いの場所でもあり、何か重要な話し合いをするための場所としても利用させてもらっている。
嫣然と一笑した彼女は二階へと続く階段に案内した。
ギシギシと音を立てる年季のある階段を登り二階へと向かう。
ソファーや椅子がある席に適当に着き、アイリの話を伺おうとしたのだが、アイリの表情は先程と変わらず暗く沈痛な面持ちで俯いたまま緘黙している。
このままでは埒が明かないので、アレクが開口しようとした直後、階段から誰かが昇ってくる音が聞こえた。
不法侵入者か追っ手なのかと思い一抹の不安が過るが杞憂に終わった。
先程別れたばかりのリョウだった。
僅かに息を切らしているところを見ると、早急に行動をしていたことが察せられる。
イリーラ「あらあら、リョウさんも来てくださったんですね」
リョウ「やあイリーラ、久し振り。 営業時間外なのに悪いね。 場所を提供してくれたのには感謝するよ」
イリーラ「皆さんのお力になれるのなら、私は嬉しいですから~」
優華「じゃあさ、次からは営業時間外でも来れるってことだよな。 私達のためなんだからさ」
夜美「優華、それはただの迷惑やからやめとき」
リョウ「まったくだ。 さて…」
イリーラとの挨拶を手短に済ませ、アイリの元へと歩み寄りアイリの隣に腰掛けた。
横目で存在を視認できたのか、俯いた顔を上げた。
爛々とした表情が微塵もない痛ましい現状に目を背けたくなったが、看過することなど到底あり得ない選択だ。
優しい口調で話しアイリに語り掛ける。
リョウ「さっきよりは、少し落ち着いたかな」
アイリ「リョウ…君…。 あたしは…」
リョウ「取り敢えず朗報だ。 シャティエルは無事や。 フサキノ研究所を調査中の理緒に預けて状態を見てもらったところ、数時間あれば回復は可能とのことだ」
アイリ「無事、だったんだ。 でも、あたしが、シャティエルを傷付けたことに変わりは、ないよね…」
リョウ「…アイリ、無理にとは言わない、わしがいない間に何があったのか話してくれないか?」
シャティエルが無事だったことに喜悦の言葉を発するも、顔は相変わらず消沈した暗い表情のままだった。
そしてリョウの質問に従うように答える。
翔琉達のいる世界でサタンフォーの一人、アンドロマリウスとの遭逢。
欠損していた人間だった頃の記憶が蘇ってしまった。
己の心の弱さのせいでシャティエルを傷付けてしまった。
異世界に逗留していた短い時間の中での濃厚な出来事にリョウは思わず頭を抱えた。
改めてアイリを残したことを後悔するも、過ぎてしまったことを再考していても仕方ない。
アレク「…悪魔に襲われた時の記憶のせいで戦えなくなったということか」
アイリ「うん…。 分かってた筈なのに、あたし、あんな恐ろしい存在と、戦ってただなんて」
再び悪魔に襲われる記憶が脳内で再生され、悍ましい声と映像がリフレインされる。
手が小刻みに震え、精身が悪魔と会うのを拒み警鐘を鳴らしている。
アイリ「あたし、もう戦えない。 戦いたくない。 あんな怖い思い、もうしたくない」
リョウ「……なら、もう戦わなくてもいいよ」
アイリ「えっ…?」
反対されると予想していたので、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
リョウの体を射ぬかれるような真っ直ぐな視線に、アイリは瞬きをするのも忘れ見つめる。
リョウ「危険な直面に合わせてしまったのは、わしの監督不行き届きのせいや。 アイリを守ると決めた時から、正直、危険に晒すようなことはしたくはなかった。 だから、天界に戻ろう。 天界じゃなくてもいい、現実世界と同じように、何事もない平凡な日々を過ごそう」
アイリが戦うことを決意したのは、リョウの世界の監視者の補佐となるなるために強くなること。
強くなるための動機、目的を潰そうとしているような言い草だったが、アイリが何事もなく平穏に過ごせるのであれば、それだけで寵愛する側としてはリョウは満足だった。
流石のアイリも、己の目的を忘れた訳ではなかったので、リョウの言葉により自らが決心した事柄を捨てるか躊躇するが、悪魔等の魔の手から戦うことを想像すると逃避したくなる。
アイリが沈黙を通し痺れを切らしたアレクが口を開いた。
アレク「否定する訳じゃないんだけどよ、アイリ、お前は本当に逃げて満足なのか?」
アイリ「えっ…?」
思いがけない初対面の相手から質問され戸惑う。
アレク「おっと、自己紹介してなかったな。 俺はアレク。 ピコやリョウの仲間、今はそれだけでいい。 それより、さっきの質問に答えてもらうぜ」
ラミエル「おいアレク。 今はアイリとリョウが話をしてるんだから、俺達が介入する余地はねえだろ」
アレク「もしそうなら俺達がこの場に留まる理由はなかった筈だ。 一階で待機することも可能だった。 だがリョウは指摘はしなかった。 俺達も、アイリのことが心配で着いてきて残ってる訳だしな」
アレクの言葉に共感したピースハーモニアの三人は同時に頷く。
アレク「それで、どうなんだ?」
暫しの沈黙。
俯き頭の中で考えを整理し終え口を開く。
アイリ「……逃げるのは、嫌だよ。 でも、立ち向かうのは、怖い。 あの時の記憶が、頭を過って、戦えなくなっちゃう」
夜美「トラウマっちゅうやつやね。 克服するには…時間が解決ってのもあるよね」
ユノ「簡単に治すのは、難しいですよね」
アイリ「それに、あたし、弱いから。 そのせいで、シャティエルを傷付けちゃった。 あたしは、戦うことができない、弱い存在だから、あたしは…」
リョウ「ホント、呆れるな」
落胆し長嘆息を漏らした。
今まで見せなかった、目に角を立て、威圧感を放つ姿にアイリだけでなく、ピースハーモニアの三人も肩を竦める。
リョウ「アイリ、逃げているのに満足していないと言ったが、お前は便宜な言葉を並べて逃げているのと同じだ。 恐いから逃げる、弱者の戯言だ。 わしが知っているアイリは迫り来る魔の手にも怯まず立ち向かい、立ち塞がる困難は持ち前の明るさで乗り切ってきた。 恐怖という形のないものだからこそ、強い意思を持ち乗り越え、己の中で決めた目標を捨てず貫き通さなければいけないんじゃないか?」
アイリ「そう、だけど…逃げていたかもしれない、けど、あたしは、戦えない。 誰かを守れる、強さもない。 怖いよ…戦うことも…守れないことも」
口からは幾らでも戦えると発言は可能だろう。
だが、心の奥底まで染み付いたトラウマという精神的外傷がある限り、脳が元凶となるものに接近させないよう拒み、思うように体が動かなくなる。
アイリは恐怖という感情に支配され、立ち向かうことを拒んでいる。
リョウ「怖いなら、克服できるまで付き合ってやる。 わしだけじゃ不安なら他の仲間にも手伝ってもらうよう懇願してやる」
アイリ「どう、して…? どうして、あたしに、戦わせようとするの? さっき、あたしを平穏な暮らしを約束しようとしてたのに」
リョウ「戦わせようとしてるんやない。 協力してやると言ってるだけ。 本当は戦わせたくはないけど、アイリのやりたいことをさせてあげたいだけ」
アイリ「だから、あたしは…!」
リョウ「ホンマにそうか? アレクが質問したとき、逃げることを躊躇っているように見えたもんでな。 本当に捨てて逃げたいのなら、わざわざ考えたりする時間なんて必要ないやろうからのう」
リョウの言葉を聞き、確信に触れられ尻込みする。
尻尾を巻いて逃げたい。
だが自身の決めた夢を簡単に捨てたくもない。
矛盾していることは薄々気付いてはいた。
リョウの言葉を聞き、自身でも納得できない考えに何故か固執してしまっている自身にも嫌気が差した。
アレク「怖いから逃げる。 当たり前なんだろうが、それに怯まず勇気を振り絞り突き進んでいくのが、本当の強さだ。 過去のトラウマに負けたっていい。 俺達が援護して支えてやる。 だから、アイリはアイリなりに自分で成し遂げられることを、恐怖に立ち向かい屈しない強い心を持つことが大事だ」
アイリ「……でも、あたしは誰かを守れる力がないのは確かだよ。 柔弱だし、力も半端なのに…またシャティみたいに、誰かを傷付けたら…!」
周囲の友や仲間が傷付く光景は、二度と目に焼き付けたくはない。
非力な存在と知りながら前線に立つなど愚かなことだと認識している。
冷静に考えれば当たり前だし、正論と言える。
自身の考えが正論だと疑ってはいない。
前線に踊り出ないことで、誰かの迷惑になり、足枷となることを未然に防ぐ。
自身で決めた夢や決意を現実のものにしようとすれば、必然的に誰かが傷付く。
恐怖により怯懦な姿を晒し足枷となるのであれば、最初から一歩踏み出さなければ良い。
リョウとアレクはアイリの意図が読み切れているのか、考えを全うから否定するため雄弁する。
アイリを変えるためには、今の『弱い』アイリを否定しなければならない。
リョウ「自分を卑下するのはよすんや。 アイリは自分が思っている以上に強い」
アイリ「あたしは、強くなんて、ない。 強かったら、過去の記憶が原因で、怖じ気付いたりしないよ」
リョウ「でも、完全に投げ出そうとはしていなかった。 まだ諦めたくない何よりの証拠だ」
アレク「微塵でも貫き通したい事があるのなら、迷わず、恐れず、突っ走ればいい。 一人で無理なら仲間を頼れ。 頼ることは、決して恥ずかしいことじゃない。 笑うような輩がいれば、俺やリョウが吹っ飛ばしてやるよ」
アイリ「…あたし、また、戦えるのかな? きっと、足が竦んで動けなくなるよ?」
リョウ「その時は倒れないよう、安心できるように側にいて支えてやる。 わし等のことが信用できるならば、任せてほしい。 必ず前に進めるよう引っ張ってやる。 後ろに下がり倒れそうな時があれば、背中を押してやる」
アレクとリョウの前向きな言葉の一つ一つに感銘を受けたのか、アイリの目には徐々に輝きを取り戻しつつある。
ピコ「あとはアイリの気持ち次第だね。 あ、そうだ。 アイリ、ガーンデーヴァを出してごらんよ」
アイリ「え? 何で、急に?」
唐突な提案に頭に疑問符を浮かべるも、ピコに「いいから♪ いいから♪」と押され、兎に角ガーンデーヴァを召喚した。
光と共に姿を現した神秘的な雰囲気を纏う光弓に、ピースハーモニアの三人は驚嘆の声を上げた。
アイリ「出してみたけど、何か意味があるの?」
ピコ「もちろん。 ガーンデーヴァはね、持ち主を選ぶ。 それは聞いてる?」
アイリ「ううん。 それは初めて聞いたよ」
リョウ「強大な力を持つ武器等は、持ち主を選ぶ。 武器の気持ちを言えば、己を扱う者が下級な存在だと、力を発揮できやしないし、触れられることすら拒む。 宝の持ち腐れってのを、武器達は分かってるんだ」
優華「まるで生きてるみたいだな」
リョウ「意思がある、とでも言うんかね。 わしの使用するアルティメットマスターや、優華達が変身の時に使用する『ピースクリスタル』もそうや。 変身するに値する者にしか輝きは与えられない」
アレク「リョウ達が何が言いたいのかっていうと、ガーンデーヴァを出せるってことは、アイリはまだガーンデーヴァに認められる程の実力や度胸がある。 勇気があるのなら、前に進んでいこうぜ」
リョウ「闇が怖くてどうする。 悪魔が怖くてどうする。 俯いて足踏みしてるだけじゃ前には進めないよ」
リョウがソファーから立ち上がり、アイリに手を差し出す。
俯いていた顔を上げ、リョウの瞳を見つめる潤った目には絶望という暗闇には染まっておらず、光が戻りつつあった。
リョウ「一緒に歩いていこう。 言ったやろ? アイリのことは全力でサポートするって。 アイリの力でも無理なら、わしが力を貸す。 わし一人の力でも無理なら、他の仲間を頼れ。 天使となった短期間で培ってきた努力は、決して無駄にならない。 無駄にさせはしない。 恐怖に負けないよう、誰かを守れる力を得れるよう、歩み続けて強くなっていこうや」
胸の内部を覆っていた曇天が、暴風に吹いたかのように散失する。
引っ掛かっていたものが取れ、体が軽くなり、清々しい感覚に似た感情が溢れる。
アイリ「……弱気になっちゃダメ、だよね。 泣いちゃ、ダメ、だよね。 よし!」
迷いの色はなかった。
悪魔に対面していないとはいえ、恐怖や不安に駆られる表情は露になっていない。
仲間の鞭撻により高邁な精神が息の根を吹き返し、僅かではあるが笑みを浮かべる余裕ができている。
アイリ「あたし、頑張ってみる。 まだ不安はあるけど、なんか行ける気がする!」
未だに僅かだが不安は残留しているであろうが、笑みを見せるほど不安が解消されている。
不安を取り除きたい一心だったリョウは歓喜に染めた甘心の顔を露にする。
リョウ「それでこそアイリだ。 この先どうなっていくかは自分次第、全てをわし等に委ねてはならないってことは心得ておけよ」
アイリ「うん! …あの、えっと、みんなありがとう。 あたしなんかのために、真摯に向き合ってくれて」
優華「悩み困ってる人が助けてやるのは当然だぜ!」
ラミエル「胸張って言ってるけど俺達何もしてねぇからな。 殆どはリョウとアレクだ」
アレク「俺はただ助言を与えただけだ。 それに、美人な女の子の白けた面なんて見たくないからな」
夜美「まーた兄さんがナンパしよる。 何人の女に同じこと言うてきたんやろなぁ?」
アレク「本心言っただけなのに…俺、泣くよ?」
優華「勝手に泣いてろよ変態」
アレク「ドゥッフッハッハッハッハー! うわあああーああ!(野々村並感)」
リョウ「うるさいよアレク」
アレク「みんな辛辣だな…まぁいいや」
リョウ「ええんかいな。 さて、このまま天界に戻りたいところなんやけど、とある提案が浮かんだのと、この世界でディーバのライブが行われるみたいやから、わしも警護に当たろうかと思う」
アイリ「あのマリスって奴も、ディーバの話をしてたけど、やっぱりこの世界でディーバのライブがあるの?」
優華「そうだぜ。 私達ディーバも警護に付くことになってる」
イリーラ「たしか、明後日の午後六時だったかしら~? チケットが当たったから、私も楽しみにしてるのよ~」
夜美「マリスがエクリプスから妙な力を持ったブレスレットを付けとったから、間違いなく奴等も出てくるで」
リョウ「エクリプス…まったく、忌々しい連中よ。 何度も湧いて出てきてやがる」
血が滲む程の力で拳を握り締める。
表情には出てはいないものの、放縦を極める彼等の邪道な行いが脳裏を過り怒りが込み上げている。
顫動する拳を開き、怒りを鎮めると口を開いた。
リョウ「アレクはこれからどうするつもりなんや? また旅を続けるのか?」
アレク「おいおい、エクリプスが来るってのに私利私欲の旅なんて続行できるかよ。 看過するなんて御免だ。 ディーバとこの世界のために喜んで助太刀するぜ。 報酬は…ユノとデートってことでいいか?」
ユノ「ふええ!? わ、私と、デート、ですか…!? デートなんて、したことない……はわわわわ…///」
優華「ユノを混乱させること言うんじゃねえよこの変態野郎!」
アレク「ほうおう!?」
唐突なデートの誘いにユノは頬だけでなく顔全体を林檎のように赤く染める。
美人の部類に入るユノだが、引っ込み思案の性格且つ趣味がインドアなため、大胆な行動をすることがなく、デートの誘いをされる場に居合わせることがない。
人生初のデートの誘いに赤面の至り。
羞恥が限界を越え目を回し混乱している。
見かねた優華が誘惑する変態の後頭部目掛けて回し蹴りを一切の容赦なく放つ。
視界が火花が散る最中、変態は木造の床へと口付けを交わすこととなった。
ユノ本人は、恥ずかしい気持ちとは別に、陰気な自分をデートに誘ってくれた喜びがあったみたいだが、勿論口に出してはおらず、胸の内に秘めておくだけにした。
リョウ「所構わず女の子を誘いやがって…」
アレク「いてて…。 今の一発で俺は正気に戻ったぜ」
リョウ「それ元に戻ってない臭いがプンプンするぞ」
アレク「よし、じゃあ優華でいいや。 今夜暇かい?」
優華「糞して寝ろ」
アレク「あ、どうも…。 最近の女子高生、キツいや」
アイリ「ふふふ…」
リョウ達のやり取りを見ていたアイリが不意に笑みを溢した。
恐怖に追い詰められ塞ぎ込んでいたアイリとは思えない自然に溢れた笑みだった。
イリーラ「では~、アレクさん達はこの世界に留まるということなので、今夜はここで宿泊してくださ~い」
リョウ「ありがとう、助かるよ」
アレク「じゃあ俺は夜美の家に…」
夜美「夜這いしてこんのならええで。 無論、わしとは別の部屋やけどな」
アレク「ちぇ~、ならいいや」
優華「リョウ、もしかしたらこいつデスピアより危険な輩かもしれねぇから燃やし尽くしていいか?」
リョウ「奇遇やな優華。 わしもまったく同じ事を思っとったんよ。 お覚悟は、よろしくて?」
夜美「おもろそうやなー。 わしも混ぜてもらおうか。 銭置いてくか、体の一部切り落としてもらわんと示しがつかへんでー兄さん」
調和を齎す慈愛の戦士は何処へ、物騒な台詞を並べた優華と夜美は変身するための結晶を握り睨みをかましており、リョウもアルティメットマスターの鞘に手を置き冷淡な笑み(草加スマイル)を浮かべている。
特に夜美の極道映画宛らの口調に一筋の冷や汗が垂れた。
だが、それ以上に恐ろしい雰囲気を醸し出す者がいた。
イリーラ「あらあら~。 私のお店で、物騒な事を始めるつもりですか~? 素晴らしいですね~」
T・フラワーの店主、イリーラだ。
自分の店内で争い事が起きるなど言語道断。
普段穏やかな彼女でも黙っている筈がない。
微動する半透明な翅からは青緑色の粒子が絶え間なく出ており、先程の穏やかな笑みとは打って変わり、外見は一切変化していないが、修羅を纏った恐怖を植え付けるどす黒いものへと豹変していた。
比喩ではなく、本当に修羅が垣間見えた気がした一同は固唾を飲み闘争心を抑える。
夜美「…や、やっぱり、きょ、今日は帰ろか。 時間も遅くなってきとるし、親も心配しとるやろ」
優華「そ、そうだな! じゃあなリョウ! また明日来るからな! お、お邪魔しましたー!」
ユノ「ふえええええ!? 優華さん、腕を強く引っ張らないでくださあああああい!?」
凶兆を察した少女達は一目散に喫茶店を後にした。
足早に去った後の喫茶店は静寂に包まれるなか、諧謔を弄したイリーラは穏やかに微笑んだ。
威圧感が払われ、常時見せる包み込むような笑みにアレクは一息つき椅子に深く腰掛ける。
アレク「おー怖い怖い。 フリーザ軍やエルダー軍も逃げ出すレベルだぜ。 流石、元ピースハーモニアだ」
イリーラ「それは~、他言無用ですからね~?」
アレク「重々承知だぜ」
アイリ「イリーラさんって、ピースハーモニアだったんですか!?」
ピコ「…早速漏洩してるけど」
イリーラ「あらあら~、どうしようかしら~?」
アイリ「ひっ、け、消されるの…?」
勝手な妄想で、秘密を知られ存在を消されると思ったアイリは体をビクビクと震わせ怯え、リョウの後方へ回り込み背中を掴み縮こまる。
リョウ「アイリ、イリーラがそんなことしないって。ただの戯れなんやから」
アイリ「で、でも、あんな覇王色の覇気みたいなの視界に写った後なら怖くもなるよ…」
イリーラ「ごめんなさいアイリさん。 あなたを怖がらせるつもりはなかったんです~」
この一日で立て続けに心が折られる出来事に遭遇したため、アイリは精神力は衰勢しており、イリーラの圧倒的な威圧感にも耐えれなかった。
流石に大仰な悪乗りが過ぎたと反省し、頭を下げ謝罪した。
リョウ「アイリ。 イリーラも誠意を込めて謝ってるから、許してやってくれ」
アイリ「う、うん。 ちょっと怖かったけど、怒ってはないし許すもなにもないよ。 イリーラさん、気にしないでくださいね」
イリーラ「ありがとうございます~。 天使さんは心が寛大ですね~」
イリーラは頭を上げ改めて穏やかに微笑んだ。
ふわふわとした雰囲気を漂わせる彼女の笑みを見ていると、アイリよりも天使に見えてしまう。
ラミエル「気になってたんだけどよ、この世界に来るディーバって誰なんだ?」
ピコ「ラミエルの目が椎茸みたいになってる」
ディーバのファンであるラミエルは疑問に思っていたことを口に出した。
エクリプスの襲来のことは忘れ、趣味の世界へと没頭してしまい、忘我の境地に突入している。
イリーラに質問を投げ掛けるラミエルの瞳は年相応の純粋に輝いている。
イリーラ「プリシーちゃんですよ~。 生で歌声が聞けるのが楽しみで仕方ありません~♪」
ラミエル「………」
ピコ「ん? どしたのラミエル?」
ラミエル「………な」
リョウ・アレク・ピコ「ん?」
ラミエル「なんだとおおおおおおおお!!!???」
天井を貫き天まで届く程の咆哮にも似た、凄まじい大声を発した。
その場にいたある者を除き、全員思わず耳を両手で塞いだ。
アレク「うおぉ、鼓膜に響く…。 至近距離のハイパーボイスは流石に効くぜ」
フェニックスの時といい、用意周到なのか、アレクは耳栓をしており難を逃れていた。
因みに昨日のメインストーリー完結記念の生放送でも普通に泣きました。