ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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二日連続投稿。
明日からお盆休みだけどコロナウイルスのせいで何処にも出掛けられない(泣)


第40話 ディーバのステージも胸囲も大きくないとね

 

雲一つない快晴が広がる、外出するには絶好の日和。

 

アイリやラミエルがリビングに来たときには、既にイリーラが朝食を作り終えていた。

喫茶店の厨房に設置されてある石窯で焼いたパンがテーブルに並べられており、香ばしい匂いが食欲を引き立てる。

既に席に着いてあるリョウとアレクの近くの席に着き、最後にイリーラが着席し、全員合掌し食事をいただく。

 

アイリ「美味しい…! イリーラさん、凄く美味しいです!」

 

イリーラ「ありがとう~アイリちゃん。 やっぱり味を評価されると嬉しいわ~」

 

アレク「いつ食っても美味いな。 イリーラ、俺に毎日、美味いパンを焼いてくれないか?(イケボ)」

 

イリーラ「あらあら~/// 嬉しいですけど~、アレクさんには私よりお似合いな素敵な女性がいますよ~」

 

アレク「くそ…フラれてしまった」

 

リョウ「ざまあ味噌漬けwww」

 

ピコ「それで、今日は何処に行くの?」

 

アレク「お前いたのか」

 

ピコ「いたよ! リョウの上着のポケットに入ってたの!」

 

アレク「ごめんごめん、許してヒヤシンス」

 

ピコ「ヒヤシンス!?」

 

リョウ「朝から喧騒で元気の良いことで。 今日はピースハーモニアの三人と一緒にアイリに連れて行きたい場所があってね」

 

アイリ「それって何処なの?」

 

リョウ「それは、ナ・イ・ショ」

 

アレク・ラミエル「キモいな」

 

リョウ「知ってる。 イリーラは今日は喫茶店は定休日なん?」

 

イリーラ「いいえ~。 昼から開店するので、私は皆さんと同伴するのは無理そうです~」

 

リョウ「そうなのか。 すまんな、準備があるなか朝食を作ってもらって」

 

イリーラ「いえいえ~。 リョウさん達が宿泊する機会なんて殆どないんですから、これくらいのことはさせてください~」

 

決して見返りを求めない、友の助けになりたい純粋な心を持つ彼女を誰もが天使だと思った。

 

朝食を終え、食器類の片付けを済ませ、リョウが予め優華達に連絡用アプリを使用し集合場所と時間を伝えていたので、アイリ達も指定した場所へと移動を開始した。

 

初めて訪れたフェアリルの中心となる町、キラメキ町をアイリは好奇心旺盛な瞳で見渡している。

白色のゴシックスタイル風な家が建ち並び、日に当たりより一層白色が際立ち輝いているようにも見え美しい外観となっている。

どうやらこの世界では、今日は現実世界で言う土曜日のようで、学校が休みの子供達が開けた場所でボールや縄跳び等で自由に遊んでおり、視界に映る平和の象徴と言えるであろうその画を見て自然と頬が緩んでしまう。

 

平穏が包む時間が過ぎており、普通ならば余程の災厄が訪れなければ壊れることはないだろう。

この世界を支配しようと蔓延るデスピアが魔の手を伸ばしてきているとは到底思えなかった。

厭戦思想なフェアリルの人々からすれば、力で捩じ伏せ奪い取る血気盛んなデスピアは忌むべき存在でしかない。

 

リョウ達や時空防衛局が総力を上げ実力行使を行えば何時でもデスピアを葬ることは可能なのだろうが、その世界が抱える問題であり、異世界の者が手を加えるとバランスが崩れかねない事態に成りかねない事象の例もあるため、極力直接手を下すような事や参画はしないように心得ている。

なので、リョウがアイリを守護するため天界に居座るのも、アリスやアレクが自由奔放に世界に起こりうる厄介事に首を突っ込むのは完全に私用なため、本来ならば宜しくはない。

だが、天変地異等の事が大きすぎる異変を起こさない限りは、知人である時空防衛局の最高責任者も口を出すことはないためほぼ問題ないのだが。

 

平和な時が流れるキラメキ町を歩き、昨日マリスと激闘を繰り広げた公園へやって来た。

日が沈む夕暮れ時とは違い、家族連れや友達同士、カップル等の多くの人が訪れており、思い思いに休日を過ごしている。

 

アレク「リア充め…ボルガ博士のように爆発しろ!」

 

リョウ「大声で言うな!」

 

アレク「よまわる!?」

 

心の声が漏れたアレクに鉄拳制裁を加え、空いていたベンチに座り優華達を待つことにした。

 

待っている時間の合間にアレクが『希望ヶ花市に住むプ○キュアをス○ブラに参戦させようとしてマス○ーハンドの元へ無理矢理連れて行ったら参戦を承諾されてしまい、腕試しや悪ふざけでやって来たハ○ラルの魔王やクレ○リン軍団のボス、○ンジェランドの女神等が対戦を申し込み大乱闘が勃発し、俺自身も参戦したらステージを破壊する大惨事に発展、他のファイターや時空防衛局にこっぴどく叱られた』という意味不明で理解不能な話を熱心に語ること数分、優華達がやって来た。

 

優華「うーっす、昨日振り」

 

夜美「レディより先に待ってるなんて、分かっとるやんかー」

 

ユノ「皆さん、おはようございます」

 

アレク「おう、おはよう。 ユノ、今日も可愛いぜ」

 

ユノ「ふええ!? わ、私なんて、そんな…はわわわわ…///」

 

優華「朝っぱらからナンパしてんじゃねぇよ!」

 

アレク「まぐまらし!?」

 

昨夜の如くナンパしようとしたアレクは優華に後頭部を蹴られ地面へと倒れ伏した。

ユノは羞恥心で顔が真っ赤に染まっており頭から湯気が出てしまっており、涼ませようと夜美とリョウが手を仰ぎ風を送っている。

 

アイリ「え、えっと、それで今日は何処に行くつもりなの?」

 

リョウ「アイリ達には明日、ディーバの警護についてもらうから、ディーバの紹介をすると同時に、アイリにはピースハーモニアのことを知ってもらいたいと思ったんよ」

 

アイリ「ピースハーモニアのことを? どうしてまた?」

 

リョウ「まぁ後々分かることよ」

 

ラミエル「おいリョウ! 今からプリシーと会えるのか!?」

 

リョウ「そうやで。 優華達もまだ会ってないと思ったからついでにと思ったんよ」

 

推しのアイドルと面と向かい出会えることに興奮するラミエルがぐいぐいと近付き質問を投げ掛ける。

暑苦しいと思いつつ淡々と答えた。

 

目的地を告げられた一行はライブが開催されるコンサートホールに向け歩き始める。

 

途中、アレクがデート気分を満喫したいと言いユノの手を繋ごうとしたが、阻止すべく優華と夜美が透かさず首に鋭い手刀を放った。

「ごりらんだー!?」と情けない声を上げ、某A.I.M.S.隊長のように両足を天に向け俯せに倒れ情けない姿を周囲に晒すのだった。

気絶しているのかピクリとも動かないため(全員満場一致で)彼を放置することにし、歩みを進めること数分、目的地であるコンサートホールへ到着した。

 

関係者でありコンサートの主役であるプリシーに会うためスタッフに声を掛けようとしたが、時空防衛局の一人がロビーで寛いでいる姿が視界に入り、驚かしてやろうとリョウが忍び足で背後から近付いていく。

一歩、また一歩と足音一つ立てず忍び寄る姿は不審者のそれ。

遂に背後まで辿り着き大声を出そうとしたが。

 

?「ふん!」

 

リョウ「こいる!?」

 

突如腹部に命中した肘打ちに変な声を上げ後ろへ下がることとなった。

容赦なく肘打ちを打ち込んだ人物、光明寺 結愛は悪戯っぽく小さく笑みを浮かべ振り返りリョウと対面する。

 

結愛「あら、不審者かと思ったらリョウだったのね」

 

リョウ「嘘つけ絶対気付いてたやろ。 常人なら内蔵が破裂する勢いやったで」

 

結愛「私はか弱い女の子なのよ? 変身してもないのにそんな力はないわ」

 

リョウ「素の状態でもそれなりに強いのによく言うよ。 まぁ、お疲れ。 今回も大変そうやな」

 

結愛「仕事がないよりかはマシ、って言いたいのだけれど、問題が起こらない方がありがたい限りね。 あなたがこの世界にいるってことは、また助太刀してくれるのかしら?」

 

リョウ「今回はついでに、だ。 別の目的があってね」

 

結愛「ディーバの警護よりも大切なこと? アイリのことかしら?」

 

リョウ「ご明察。 ついでとは言え、世界の監視者の肩書きの活躍を見せるよ。 相手は、憎むべき相手やしな」

 

一瞬だが、殺意と憎悪に染まった表情が剥き出しとなる。

険しくなった目付きに結愛はたじろぐ様子はなく、顫動するリョウの肩に手を置く。

 

結愛「あなたの思いは、痛いほど知ってるけど、悪辣になるのは良くないわ。 あと、そんな淀んだ顔じゃ、アイリに顔を合わせられないわよ?」

 

穏やかな口調で指摘され溢れる殺意を抑える。

 

リョウ「悪い、奴等の悪行が脳裏を過るだけで…。 すまない、辛いのは結愛も同じだよな」

 

結愛「大丈夫よ。 少なくとも、私は理解できてる。 私も、被害者だもの。 仲良く肩を並べて、時には背中を押して、時には手を引いていきましょう」

 

リョウ「あぁ、ありがとう」

 

優華「あー! 結愛さんじゃねえか!」

 

リョウと結愛の会話に割って入るかのように優華が走り寄り、勢いよく結愛の腕に抱き付く。

ユノと夜美も笑みを浮かべ結愛に会釈する。

 

ユノ「結愛さん、お久し振りです」

 

夜美「結愛姉さん、久し振りやね」

 

結愛「みんな元気そうで良かったわ」

 

アイリ「結愛さーん!」

 

アイリとラミエルが遅れてやって来て再開を喜び合っていた。

 

結愛「アイリも元気そうね。 リョウがいるところにはアイリもいるとは想像はしていたのだけど、何故私の世界にアイリが?」

 

リョウ「まぁ、色々ありまして…」

 

ピースハーモニアの世界にやって来た事柄を手短に説明した。

顎に手を当て最後まで口を挟まず親身に聞いており、彼女の優しさと真面目さが見て取れる。

話を聞き終えた結愛はアイリの顔色を伺いながら話す。

アイリ自身は笑って誤魔化しているものの、その笑みは若干引き攣っており、未だに心の中で引っ掛かっているものがあるようで、気にせずにはいられないような様子を、結愛は一目で悟った。

 

結愛「色々大変だったみたいね。 辛い現実が押し寄せても、決して挫けちゃ駄目よ。 己の強さを信じて、前を向いて進み続けて。 恐怖を乗り越えた先には、きっとアイリが望む何かへと近付けると思うから」

 

アイリ「っ! ありがとう、結愛さん」

 

結愛「説教臭くなっちゃったわね。 ごめんなさい」

 

アイリ「いえ、そんな! 助言をいただけて嬉しい限りです!」

 

夜美「さっすが結愛姉さんやわ。 ピースハーモニアの経験が長いだけあって言葉の重みが違うわ~」

 

夜美が茶化すように肘で結愛を小突き始める。

頬を少し赤く染め煽てるのを止めるよう促すも、便乗するように優華も参加し肘で小突き始めた。

 

アイリ「結愛さんの方が歳上なのは分かるけど、優華達は結愛さんとはピースハーモニアでは同期になるの?」

 

優華達は衝撃が走ったのかのように唖然とする。

アイリは何か良からぬことを口走ったのかと目をぱちくりさせている。

 

優華「アイリ、お前結愛さんの活躍を知らないのか!?」

 

アイリ「だってあたしこの世界の住人じゃないから、詳しくは知らないよー。 知らない知らない僕は何も知らない」

 

優華「それもそうか。 なら、ユノ! 解説頼むぜ!」

 

ユノ「は、はい! 了解です!」

 

アイリ「ユノちゃん。 そこはアラホラサッサーって言うんだよ」

 

ユノ「えっ…え、えっと、あ、アラホラサッサー。 …ふええ、何だか恥ずかしいです///」

 

ア・リ・ラ・結・優・夜(可愛い…)

 

徐々に声量が弱々しくなっていき、普段口にしないような言葉に赤面しつつ結愛の伝説を熱弁し始める。

 

 

~~~~~

 

 

光明寺 結愛はフェアリルに住むエルフ属の一人で、元々は優華達同様に、何の変哲もない一般人だった。

 

ピースハーモニアとして覚醒したのは高校の頃で、他に選ばれた三人のピースハーモニアと共にデスピアの猛威を振り払ってきた。

高校だった頃の当時は現在のように人と接することは少なく、礼儀正しく悪を決して許さない、規則に則り行動を行う、真面目すぎる故にお堅い性格だった。

他人と接する時間があれば、己を鍛練する時間に費やすと言い切り、学校や休日でも孤独を貫き勉学や心身を鍛える特訓をしていた。

だが他の三人のピースハーモニアと共に戦い、手を取り合い親交を深めていき、誰かと触れ合う温もりを徐々に知っていき、心境が変わり仲間の意味を理解し、日常や学生生活、ピースハーモニアの活動も順風満帆になっていった。

 

だが、とある戦いで結愛以外のピースハーモニアは消滅を果たし散華してしまい、結愛だけが生き残った。

仲間の消滅に涙を流すも、彼女達から貰った絆と温もりを胸に秘め、彼女達が守りたかった世界を死守する意思を継ぎ、涙を拭い戦い続けることを決意した。

 

数年後、新たに生まれたピースハーモニア、イリーラと共にフェアリルの平和を維持しつつ、知人の紹介により存在を知った時空防衛局に入局することとなった。

より多くの世界の人々の平和を、笑顔を守りたいという強い己の意思と、消滅していった仲間の意思を胸に、世界を襲歩し駆け巡り悪を断罪する彼女は、とある世界の人が述べた名で存在があらゆる世界に伝播することとなった。

 

彼女の変身した時点で名乗る、『救済の雷鳴』と。

 

エルフ族は寿命が長いため、イリーラと同様に何百年という気が遠くなる時間を生き長らえており、様々な修羅場を乗り越えてきた彼女の力は圧倒的なもので、今日までデスピアの侵略を幾度となく防ぎ、時空防衛局の中でも頂点に君臨する実力の持ち主となっている。

時空四天王と呼ばれる、時空防衛局の中で最も強い四人の内に入る快挙を成し遂げている。

 

数百年という月日が流れ、現在は第一時空防衛役員の一人として活動しており、衰えることのない平和を愛する思いと力で、無数に存在する世界が一刻も早く争いや悪が消え去る平和なものになるよう日々精進し戦い続けている。

 

 

~~~~~

 

 

ユノ「…簡潔に纏めましたけど、結愛さんの活躍は、素晴らしいものなんです。 私達フェアリルの人々にとっては、英雄なんです」

 

説明を終えたユノは一息付く。

結愛の軌跡に感銘を受けた優華は真面目な顔で頷き、夜美に至っては感涙してしまっている。

 

アイリ「……詳しくは知らなかったけど、結愛さんも壮絶な人生を歩んできたんですね」

 

結愛「仲間を、友を失ったのは、今でも、辛いと思っているわ。 でも、延々と悲しんでいても、前には進んでいけない。 消滅したみんなも、私が俯いて悲しむ姿なんて、見たくないだろうから」

 

力強く発言する結愛だが、戦ってきた仲間であり友と過ごしてきた日常の映像が脳裏を過り、動揺が少し露となっている。

掛ける言葉が見つからず沈黙が数秒続いたが、結愛は気持ちを切り替え全員を安堵させるため微笑む。

 

結愛「だから、これからも頑張らないといけないわね。 自分のことを語られるのは少し気恥ずかしかったけど、ありがとう、ユノ」

 

ユノ「い、いえ。 結愛さんにとっては辛い出来事だと承知だったのに、申し訳ないです」

 

結愛「気にしないで。 話してほしくなかったら、私が止めていたから。 だから泣いちゃダメよ?」

 

涙目になるユノの頭に手を置き慰める。

アイリは未だに漂う重々しい雰囲気を少しでも変えようと別の話題を出した。

 

アイリ「今更なんだけど、結愛さんってエルフだったんですか?」

 

結愛「ええ。 あら、言ってなかったかしら?」

 

アイリ・リョウ「聞いてないです」

 

結愛「リョウ、あなたの答えは聞いてないわ」

 

リョウ「すいません、はい」

 

流れるような長髪を掻き上げ、今まで視認できなかったが、たしかに結愛の顔の側面からはエルフ族特有の長く尖った耳が確認できる。

 

アイリ「うわー凄い! ユノちゃんと同じだね!」

 

ユノ「私はハーフエルフなので、純血のエルフである結愛さんとは、少し違いますよ?」

 

ラミエル「似たようなもんだろ。 リョウの耳もエルフと同じくらいでかいな」

 

リョウ「息をするかの如く自然にバカにするんじゃないよ」

 

結愛「あら、ラミエルは事実を率直に言っただけよ。 あなたも公認なんだからいいじゃない、お猿さん?」

 

リョウ「うるさいのう。 甘~いデザート奢ってやるからお口をチャックしてくれへんかねぇ結愛ちゃ~ん?」

 

結愛「…甘いものに毎回釣られると思ったら大間違いよ。 お猿さんにしては餌で釣ろうとするなんて、知能が高いのね。 それとも、耳が本体で脳味噌は飾りなのかしら?」

 

リョウ「………エルフも天使程じゃないが長寿な種族だから、結愛は正真正銘のBBAだな」

 

決して表にはでない一笑一顰が左右し、反目し合うこと数秒、女性に対しての禁句を言い放ったリョウの頭上に翡翠色の落雷が落ちた。

耳を劈く轟音にロビーにいる関係者が驚愕し結愛達が立つ一点に視線が集中する。

音速を超える速度で放たれたにも関わらず、リョウは咄嗟に防御の姿勢を取っていた。

服が焼け焦げ腕から小さな黒煙が立ち込めているが無傷でいる。

 

結愛「……誰が、何ですって?」

 

リョウ「おいおい、何か勘違いしてない? わしが言ったBBAの意味はボインボイン姉貴だよ?」

 

再度リョウの脳天に落雷が落ちる。

当然防御しているため無傷だが。

喧騒を聞き付けた警備員が何事かと慌ただしく集結し始め、流石に過剰にふざけすぎたと心の中で反省する。

 

結愛「嬉しいわね。 私の体の何処を見てそう言い切れるのかしら?」

 

アイリ「リョウ君。 女性でも気にしてることはあるんだから、それは言っちゃ駄目だよ」

 

ラミエル「アイリにしちゃ珍しくマジな意見だな」

 

アイリ「あたしも毎度毎度ふざけてる訳じゃないからね!? 兎に角、胸のことは指摘しちゃ駄目なの!」

 

ピコ「あのー、アイリ? 正論を言ってるところ申し訳ないけど、逆効果みたい」

 

アイリ「へ? …あっ(察し)」

 

ピコの発言の意味の理解が追い付かなかったが、ある一点を凝視し一瞬で分かってしまった。

 

結愛の胸囲は現在その場にいる誰よりも小さかったのだ。

 

成長途中であり学生の優華達よりも劣っているのは一目瞭然な程に差が出てしまっている。

悲痛な現実に目を背けたくなるも、視線を移した先にはこの場にいる中で最も胸囲が大きい夜美の胸があった。

視界に広がった双丘が視界に広がった途端、零落した精神が具現化したかのように膝から崩れ落ちた。

 

優華「だ、大丈夫だよ結愛さん! 色々方法とかあるだろ! 私達も協力しますから元気出してくださいよ! 諦めなければ何とかなりますって!」

 

ラミエル「優華、慰めは時に残酷なもんなんだぜ」

 

優華「うっ…」

 

結愛「私の…」

 

力無くフラフラと立ち上がり、顔を赤く染め涙目の結愛は縋る勢いでリョウの胸ぐらを弱々しく掴む。

 

結愛「私の方が…おっぱい、おっきいわ…私の方が、おっぱいおっきいわ!!」

 

リョウ「お、おう。 スタッフさん達の迷惑になるから、プリシー達がいる楽屋に行こう」

 

乱心し始めた結愛に若干引き気味になりつつ宥め、何事かと集ってきた関係者に頭を下げ、結愛の手を取り楽屋へと続く『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた扉を開け、長い通路を歩きプリシーの楽屋へと歩みを進める。

 

息を整え落ち着きを取り戻した結愛が頬を紅潮させながらも口を開いた。

 

結愛「…悪かったわ。 取り乱してしまって」

 

リョウ「そうなってしまったのはわしの責任やな。 だがわしは謝らない」

 

ラミエル「いや謝れよ」

 

リョウ「冗談やって。 ごめんな結愛。 まさかあそこまで取り乱すとは思ってなかった。 貴重な面を見れたような気もするけど」

 

結愛「うぅ…。 私だって気にしてることくらいあるのよ。 もう忘れてちょうだい」

 

リョウ「はいよ。 今度こぐまのケーキ屋さんに連れてってやるから許してくれ」

 

結愛「…満腹になるまで食べるから、覚悟しておきなさいよ?」

 

甘いものに目がない結愛はつい緩んでしまった顔を見られないためそっぽを向いた。

財布が軽くなるのを確信したリョウはより一層働いて稼ごうと心に決めた。

 

程なくして、プリシーの楽屋の前へと辿り着いた。

ラミエルは念願である一推しのアイドルと対面できる喜びと緊張で落ち着きがなくそわそわしている。

先頭に立った結愛が扉を数回ノックすると、室内から「どうぞー」と返事が返ってきたので、ドアノブを回し室内へと入る。

 

?「おお~、珍しいお客さんがいっぱいいるね~」

 

?「あ、結愛さん! リョウさん! お久しぶりです!」

 

楽屋の椅子に座っていたのは二人の女性。

 

一人は茶髪のウェーブのかかったロングヘアーに、黄色を基調とした衣装を身に纏っており、イリーラのようにほんわかとした雰囲気を醸し出している。

 

もう一人は黒髪のロングヘアーに、背中から生える蝙蝠を思わせる翼が特徴的な、血よりも赤い深紅の瞳の女性。

 

結愛「二人とも元気そうで何よりだわ」

 

?「今回も警護に当たってくれるんだよね? リョウさんも一緒だと心強いよ~」

 

リョウ「ディーバにそう言ってもらえるとは恐悦至極。 大船に乗ったつもりでいてくれ、プリシー」

 

優雅に微笑む少女、プリシーは立ち上がり手をひらひらと振りながらリョウ達へ軽く挨拶を済ませる。

プリシーに続くように深紅の瞳の女性も席を立ち、プリシーの真横へ歩み寄った。

 

プリシー「初めましての方は、初めまして~。 えっ~と、ディーバをやらせてもらってる、プリシーで~す」

 

?「私はプリシーのディーバナイトとして警護に当たっている、ルヴィ・ブラッドローズと申します。 今後とも、よろしくお願いします」

 

聞いているだけで力が抜けてきそうな甘い声と緩い挨拶とは相反し、ルヴィは姿勢を正し凛々しく毅然に挨拶を済ました。

 

ラミエル「や、やべぇ、プリシーが、目の前に…。 りょ、リョウ、リョウ! 俺どうすればいいと思う!?」

 

リョウ「普通にしてろよやかまいしいのう」

 

憧れのアイドルを前に興奮が抑えられず、最高潮となったテンションで楽屋の前で騒ぎ立てているため、周囲の関係者が奇怪な目で見ているのを気にも留めていない。

兎に角邪魔にならなぬよう喧騒の元であるラミエルを楽屋に押し込み全員入室する。

 

プリシー「おぉー! 天使族が二人もいる。 天使と話すのは初めて~」

 

ラミエル「ぷ、ぷ、プリシーさん! え、えと、俺、プリシーさんのファンなんでふ! サイン、くだしゃい! ああああああ!! 噛み噛みじゃねぇかー!!」

 

プリシー「おぉー、私のファンなんだ~! 天使にファンがいるなんて~、ご利益ありそう、かな? 君は私の天使族ファン第一号に任命するよ~」

 

握手を求められ、ラミエルは手をこれでもかと言うほど服の内側で綺麗に拭き手を取り握手を交わす。

握手会のイベントでなければ決して触れ合うことのない、大物且つ推しであるアイドルと握手を交わし、ラミエルは興奮が限界を突破し、直立不動の状態のまま固まってしまった。

動かなくなってしまったラミエルの背中を優華が指先でつつくも、動こうとする気配はない。

 

優華「あれ? こいつ動かなくなっちまったよ?」

 

リョウ「返事がない、ただの屍のようだ」

 

アイリ「ただの案山子ですな」

 

プリシー「ありゃ~。 喜んでもらえたのは嬉しいけど、どうしよっか?」

 

リョウ「そこら辺に座らせときゃいいだろ」

 

成就を果たしたであろうラミエルを引き剥がし椅子に座らせるも、未だに目覚めることはないため、放置することにし、ピースハーモニアの紹介と今回のコンサートの件を話し始める。

 

今回のコンサートは、ピースハーモニアの存在するこの世界に現存し住まう者達だけを迎え行われるため、天界のシェオルブライトドームで行われたサルエルのコンサートより規模は圧倒的に小さい。

だが、時空防衛局は決して警戒を怠ることはなく、エクリプスが登場することを想定し防御を固め全力で挑んでいる。

今回も第一時空防衛役員を筆頭に百を優に超える局員を出動させており、エクリプスの訪れる凶兆を肌で感じながらもコンサート前日である本日から警戒している。

 

警護に着任する前に、ディーバの存在意義を結愛以外のピースハーモニアに伝えた。

あらゆる世界を駆け回る少女達の歌声が世界樹の状態を維持し、世界を生み出すエネルギーや世界全体の均衡を維持する要となる、極めて重要な存在ということ。

頭の中で処理ができず混乱していたが、世界を守るためにもエクリプスと戦うことを決意する。

何より、先刻とは言え仲間であるプリシーを魔の手から守りたい頑強な意志があった。

 

その後もコンサートホールの内装や警護する箇所を説明し終わりを迎える頃、タイミングを見計らうかのようにラミエルが跳び上がる勢いで立ち上がった。

現状を把握するかのように目線が右往左往している。

 

リョウ「うおっ!? 急に飛び上がライズすんなよ」

 

ラミエル「お、俺は…たしか、夢の中でプリシーと…」

 

アイリ「ラミエル君、夢だけど夢じゃないから」

 

プリシー「良かった~。 ラミエルさん、大丈夫?」

 

ラミエル「え、あぁ大丈b…うおわ!? ぷ、プリシー!? まだ夢の中なのか!? 夢でまた会っちまったのか!?」

 

リョウ「夢で逢えたなら…じゃなくてリアルだよ。 いい加減平静を保て。 ウリエルが見たら呆れるぞ」

 

ラミエル「うっ、たしかに。 よし、素数を数えて落ち着こう。 1、2、3、5、7、11…」

 

ユノ「あ、あの、1は素数じゃないですよ」

 

ラミエル「こまけぇこたぁいいんだよ」

 

リョウ「はぁー、バカだな…⑨だ」

 

ラミエル「バカって言うなよ! せめて筋肉付けろ!」

 

リョウ「うるせぇよエビフライ頭がよ」

 

ラミエル「エビフライのどこが悪いんだよ!」

 

リョウ「いや別に悪くねぇけどソースぶっかけるぞ」

 

プリシー「喧嘩はやめて~。 お願~い❤️」

 

ラミエル「はうっ…! やべぇ、心臓がマシンガンみたいな速度で動いてるぜ! ごほん、勿論、プリシーに言われたからには二度としないぜ。 なっ?(威圧)」

 

リョウ「お、おう。 あ、そうだ。 ルヴィ、優華達に警護に当たる場所を案内する前に優華達と寄らなきゃならん場所があるんやけど、今日ってまだ時間あるなら大丈夫?」

 

ルヴィ「はい、スタッフや時空防衛局とのミーティングや本番のためのリハーサルがありますけど、私が空く時間が夕方や夜にあるので問題ないですよ」

 

リョウ「分かった、ありがとう。 んじゃま、行くとしましょうか。 優華、ユノ、夜美、アイリ、行くよー」

 

ラミエル「あれ? 俺は?」

 

リョウ「ぶっちゃけ来なくてもいいってのと、先に明日の詳細を聞いてホールの探索をしといてほしい。 それに、関係者としてプリシーの傍にいれる時間が欲しいだろ?」

 

ラミエル「へへ、粋な計らいじゃねぇか。 喜んで承るぜ!」

 

プリシーに聞こえないよう小声で耳打ちし、リョウはアイリ達と共にとある場所へと向かった。

爽やかな笑みを漏らし気分が高揚し舞い上がるラミエルを見て結愛は頭を押さえ溜め息をつく。

 

結愛「ラミエル、本来の目的を忘れないでちょうだいね」

 

ラミエル「わ、分かってるぜ! 命を懸けて守るぜ!」

 

ルヴィ「それは私の仕事です。 人数が多いのはありがたいことですが」

 

プリシー「頼りにしてるね~ラミエルさん」

 

ラミエル「期待に応えれるよう精進します!」

 

姿勢正しく敬礼を行うも、顔がにやけてしまっており締まりがなく天使としての志を一欠片も感じさせない雰囲気を纏っている。

だが戦闘において実力は相当で、いざと言うときには真価を発揮するので、結愛は当然ラミエルの人間性を理解しているため特に言及することはない。

 

ルヴィ「それにしても、リョウさんはどちらへ向かわれたんでしょうか?」

 

結愛「心当たりはあるわ。 現在のアイリの状態を克服するために優華達と向かった場所…ハーモニア神殿」

 

遠い目をしながらもポツリと口を開いた。

自分も共に行くべきだったのだろうが、抵抗があった。

 

自身の過去、それが同行を阻むかのように脳内で映像が映写機のように流れる。

忌々しいものではない。

寧ろ幸福と呼べる時間だった。

己の未熟さ故に訪れた、仲間との最期の一時だけを除けば。

幸せに満ち溢れたものだからこそ、思い出したくはなかった。

リョウは薄々、結愛の感情を読み取っていたため誘わなかったのだろうと思う。

 

過去の出来事に捕らわれてばかりではいられないと気を張り直し、結愛はラミエルにホールの案内をし始めるため楽屋を後にした。

 

 

~~~~~

 

 

「うわっ、なんだあれ?」

 

「大丈夫かあいつ?」

 

「パフォーマンスだろー」

 

「ママー、あの人何してるのー?」

 

「こら、見ちゃいけません」

 

アイリ達がプリシーと会っている頃、道端に両足を天に向け俯せに倒れている青年が市民により発見された。

心配の声も上がる中、不審者という意見が過半数以上あり、救急車が呼ばれることはなく、代わりに警察に通報されてしまい、敢えなく情けない姿のまま連行された。

 

その数時間後、目覚めた青年は「あばよー、とっつぁん!」と言い窓から飛び降り、十傑集走りと呼ばれる独特な走法で逃走したというニュースが報道された。

その報道が特集されていたニュース番組を偶然見てしまった結愛とラミエルが呆れ混じりの溜め息が出たのは言うまでもない。

 




お盆は何をして過ごそうか…。
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