ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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お盆休み全て雨とはどういうこったい…。
外出は控えろという神からのお告げですね!(超速理解)


第41話 少女達の強さ

コンサートホールを出て歩くこと数分、賑やかな町から少し離れた場所に位置する、ハーモニア神殿へ辿り着いた。

 

鬱蒼とした木々に囲まれた神殿の周囲は自然に溢れており、人気を感じさせない静謐な雰囲気は心の奥底から安堵感を与える不思議な感覚に浸ってしまう。

 

滑らかな白い石で建設された神殿内に入り奥へと進む。

ひんやりとした空気が内部が支配しており肌寒さを覚える。

 

夜美「何処に行くんかと思ったら、まさかハーモニア神殿やったとは思わへんかったわ」

 

アイリ「凄い神秘的…ブレイザブリク宮殿と同じくらい神秘的」

 

ユノ「ここは、選ばれた人達がピースハーモニアになるための儀式が行われるため場所なんですよ。 ピースハーモニアに関する歴史が記された資料も保管されているんですよ」

 

アイリ「ピースハーモニアとしての始まりの場所でもあるんだね。 どうりで光の力がそこら中から感じ取れるわけだ」

 

優華「私達も選ばれた時ここに来たなー。 懐かしいな、あん時はすげぇ緊張したぜ」

 

夜美「あん時は優華とユノも一緒におったなー。 ユノっちはおどおどしとったし、ゆうゆうも国のお偉いさんから呼ばれた時や会話するとき緊張しまくって噛みまくっとったもんな。 思い出すだけでおもろいわ」

 

優華「夜美てめぇ! 恥ずかしいこと思い出させるんじゃねぇよ!」

 

夜美「いや~ん怖~い。 怒っちゃやーよ優華ちゃ~ん」

 

優華「くそうぜぇー! 待ちやがれー!」

 

神聖な場所にも関わらず、優華と夜美は走り回り遊び始めた。

静けさが支配する神殿内だとより二人の喧騒な声がより目立つ。

 

暫く歩いていると、幾つかある通路の一番奥にある部屋の前まで辿り着いた。

分厚く大きな錠前が取り付けられた頑丈な扉を見るあたり、最重要機密な何かがあるのだと頷ける。

 

ユノ「こ、この部屋は、歴代のピースハーモニアの資料が保管されてあるところです」

 

アイリ「ここに、私が来る意味があるの?」

 

リョウ「勿論。 まぁ、わしができることは少ないだろうが。 優華、よろしく頼むよ」

 

優華「あいよ。 任せときな」

 

解錠を任された優華は自身のピースクリスタルを取り出す。

ピースクリスタルから光が溢れ、光は鍵の形を象っていく。

錠前の穴に挿し込み回し解錠され、頑丈な扉が開かれた。

 

室内に入ると同時に、視界に広がったのは古い書物が所狭しと置かれた本棚だった。

膨大とは決して言えない量だが、ピースハーモニアの歴史が如何に長く濃密なのかが分かる程の量の書物が並べられてある。

紙の臭いが充満する部屋を通り抜け、更に奥に存在する扉を潜る。

 

壁と天井が白一色に覆われたその部屋に足を踏み入れた途端、異次元に入ったかのような感覚を覚えた。

外から見た神殿とはまた違う神聖な雰囲気が滞留しているが、周囲を見渡しても何かがあるわけでもなく、純白の世界が広がっているだけだ。

 

アイリ「ここは、精神と時の部屋?」

 

リョウ「違う。 ここは、これまでに戦ってきたピースハーモニアの活躍を現在の人々にも忘れないよう、勇姿を称え作られた部屋。 尋常なほど広いのは術に拡張されているってのもあるけど、これからもピースハーモニアの歴史は末永く途切れることなく続いていく、故に残しておくものも多いってのがある」

 

優華「めんどくせぇけどもうちょい歩けば見えてくるぜ。 私達の先輩達の像が見えてくるぜ」

 

アイリ「像? 二宮金次郎とか考える人とか?」

 

リョウ「…ちょっと黙っとこうか」

 

アイリ「アッハイ」

 

よく目を凝らして前方を見ると、何かが数個存在しているのが確認できる。

 

そして歩くこと数分、優華が言った像がしっかりと見える距離にまでやってきた。

光が反射しラメのように小さく輝く紺色に近い黒色の石で作られた像が並んでおり、数は数百を越えている。

 

全ての像は華やかな衣装を纏う少女はピースハーモニアで、全員目を瞑り眠るようにしている彼女達を見ていると到底戦士には思えない。

ここに像として歴史の一つとして残る彼女達は優華達と同様に何処にでもいる普通の可憐な少女ばかりで、何も知らない人が初見で彼女達を見れば、フェアリルを守り続けた戦士とは誰も思わないだろう。

 

アイリ「凄い…この子達全員がピースハーモニアだったんだね」

 

夜美「わし達もいずれはここに残る思うたら気恥ずかしさと誇らしい気持ちがあるわ」

 

アイリ「伝説に残るって思うと凄いよね。 あたしが残せる伝説なんてゲーセンの格闘ゲームの大会で大人達に紛れて闘い優勝するくらいだよ」

 

夜美「アイリは一体何を目指そうとしてたんや…」

 

まるで行き着く場所を熟知している足取りで先頭を歩くリョウは少女達の像を掻き分けるように進み、三人の像が横に並ぶ前で立ち止まる。

懐かしむような相好で、口を開くことも目を合わせることもない少女達の顔を見ていた。

 

ユノ「こ、この人達は…!」

 

アイリ「知っているのユノちゃん?」

 

ユノ「はい。 この人達は、結愛さんの同僚であり、お友達の、ピースハーモニアです」

 

ピコ「結愛がピースハーモニアになって共に戦ったピースハーモニアだね」

 

アイリ「こ、この人達が!? たしか、敵との戦いで戦死したっていう…」

 

リョウ「…あぁ、そうや。 結愛達の友達でもあり、フェアリルを滅びの危機から救ったピースハーモニア。 ハピネスユートピア、ブルーローズマーメイド、ピューリファイガイア」

 

三人の戦士の名を呼び、少女達の死を悼み悲しみ俯く。

 

リョウ「ユノの話を聞いたから分かるやろうけど、彼女達はとある戦いで消滅してしまった。 世界を守るために、犠牲になることすら厭わず、自ら力を使い果たして消滅した。 彼女達の、世界を守る志が生半可なものではないということは、分かるよな?」

 

アイリ「……うん。 中途半端な覚悟じゃ成し遂げることなんかできない。 選ばれた戦士として、誰かを守らなければならない重圧に押されながらも、戦い続けなきゃいけない」

 

像から目線を反らし、眼に映るのは現在ピースハーモニアとして君臨する三人の少女。

いつになく真剣な眼差しは三人の目線を捕らえ離さない。

 

優華「そう。 私達は捨てることなんてありえない覚悟がある。 しっぽ巻いて逃げ出すなんて、したくはない」

 

アイリ「凄いと素直に、思うよ。 でも、優華ちゃん達も私と歳が変わらない普通の高校生だよ? 辛くないの? 大人になる前から世界の命運を掛けた戦士に選ばれて。 いつ死んじゃうかも分かんないのに」

 

夜美「辛くない、言うたら嘘になるなぁ。 戦うのは前みたいに痛いこともあるし、何より怖いって思うで」

 

高校生という人生で一度きりである青春の時間。

平凡な日常を送ると共に世界を守る戦士として迫り寄る邪悪な存在に立ち向かわなければならない。

生死を分ける戦いがいつ何時訪れるかも分からない。

日常を過ごす中で、気にせずに日々を過ごすことが可能だろうか。

 

悪と戦う覚悟と恐怖。

国や人々を守らなければならない重圧。

十数年という時しか生きていない少女達にはあまりにも荷が重すぎる。

 

ユノ「私も、怖いって、思います。 背負うものや、抱えるものも、多いです。 逃げたいって、思ったりもします。 でも…誰かが傷付くのは、もっと怖いから、私は戦います」

 

優華「重圧感じてんのは確かだけどさ、私らは国の命令とか使命とかじゃなく、自分で守りたいと思ってやってんだ。 大切な人や、場所を奪われる方がもっと怖いからな」

 

世界は勿論だが、身近にいる人物である家族や友人を守るため。

純粋な気持ちが心と体を奮い立たせ、大事な人の笑顔や居場所を守るために戦うことができる。

 

アイリ「大事な人を、守るために…」

 

ピコ「実際、アイリが今まで戦ってきたことは誰かを守るためだったんじゃないかな?」

 

リョウ「リリスとの戦闘で非力ながらもわしを手助けした。 シャティエルのためにベレトに立ち向かった。 ディーバを守るためにエクリプスと悪魔に勇敢に立ち向かった。カイを守るために背を向けずに妖怪と戦った。 ほら、気付かない間に色んな人を結果的に守るために戦ってる」

 

アイリ「そう、なのかな? 誰かを守れてるんだなと思うと、少々痛みを感じてでも戦おうと思うよ」

 

リョウ「わしもそう思う。 と言うよりこの場にいる全員が思っとるよ」

 

リョウの言葉に共感し全員が同時に頷く。

 

単純で純粋、形もなければ報酬も何もないが、彼女等が戦うには十分すぎる理由。

 

優華「私達は戦うのは怖いけど、怖れず戦えるぜ。 大切な人を守れる自分を誇らしく思うし、私は一人じゃないからな」

 

夜美「一人やないから大きな敵にも立ち向かえる。 結愛姉さんが言うてたけど、私一人は弱い。 だけど、『私達』は強いって。 仲間がいるから、恐れず立ち向かえる」

 

ユノ「アイリさんにも、ピコさんやリョウさんのように、頼れる仲間に、支えられていますから、怖れずに立ち向かいませんか?」

 

リョウ「まぁ、昨日の発言と全く同じやけど、恐怖に負けないよう、誰かを守れる力を得れるよう、歩み続けて強くなっていこうや」

 

アイリは改めて怯えず立ち向かう勇気を得た。

 

変身していない状態では何処にでもいる自分と歳の変わらない少女であり、ピースハーモニアである彼女達も、大いなる力を持つ者として、多大なるものを背負いながらも覚悟を決め戦場へ赴いていることを知り、己の心が未熟なのだと自覚する。

 

彼女達だけではなく、あらゆる世代のピースハーモニアもきっと同じ志を抱き、迫り来る脅威から他者を守るため使命を全うしてきたのだろう。

 

命を落とす危険なことに直面する機会はいずれ訪れるが、怖れていてばかりでは前進することは不可能なのだと鼓舞し、恐怖心を払い除ける。

 

アイリ「……うん! やってやる! 立ち向かってみせる! がんばルビィ!」

 

自分一人では無理なことも、友や仲間とならばきっと乗り越えられると、自身に言い聞かせ。

 

ピコ「昨日より更にいい顔になったね」

 

アイリ「完全に吹っ切れた気がするからね。 守れるものがある人の強さが分かったし、あたしの目標になったから、更に精進していかないと」

 

リョウ「戦う意味、それを分かっただけでも十分すぎる成果やな。 何か守るものがある者は強い。 聞くまでもあらへんけどアイリには守りたいものはあるだろ?」

 

アイリ「もちろん! リョウ君やピコ君、ラミエル君やシャティ、カイ君。 あたしにとって、出会ってきた大切な人達は守りたい。 あと、ゲームとか漫画とか」

 

ピコ「最後のがなければ完璧だったのに。 でも、アイリらしくていいんじゃないかな」

 

ユノ「アイリさんにとって、何か変われるきっかけを作れたのなら、私は嬉しいです」

 

アイリ「戦うことがどれだけ勇気がいることなのかが特に分かった。 優華ちゃん達や歴代のピースハーモニアが心の底から溢れる何かを守りたいっていう強い思い。 培ってきた、と言うより、きっと全員本心から生まれた純粋な思いだったからこそ、あたしの心にぐさりと刺さった」

 

アレク「ピースハーモニアの歴史の重さ。 そして単純だが純粋なその心とアイリの成長に、全俺が泣いた」

 

アイリ「ホいつの間に!?」

 

隣には何時の間に現れたのか、アレクが仁王立ちし、『ぬ』の文字で埋め尽くされたハンカチで涙を拭っている。

 

優華「相変わらず神出鬼没だな」

 

アレク「早乙女学園の学園長も驚く程だからな。 アイリは恐怖を克服できたのか?」

 

アイリ「きっと大丈夫! 誰かを守るため、助けるためなら戦える気がする!」

 

アレク「持ち前の明るさが戻ってるし、確かな決意が見える。 仮にまだ恐怖で萎縮しちまいそうになっても、俺やリョウがいるから問題はない」

 

ふざけた態度から一変し、相手を射ぬく目でアイリの瞳を真っ直ぐ見つめる。

蛇に睨まれた蛙のようにアイリは視線から逃れることができず体も動かせない、それ程強大な相手を威圧されるかのよう。

 

アレク「ただ、仲間の力だけを借りようとなんて甘えたことは言うなよ? 自分の力を高め、自分の身は自分で守れるようになれ。 己を守れないものは、他者を守る余裕なんて持てねぇからな」

 

アイリ「うん、肝に銘じておくよ」

 

アレク「よろしい! さーて、腹減ったし飯でも食いに行こうぜー…と思ったけど、一回刑務所に戻るわ。 まだ気絶してる事になってるし」

 

夜美「兄さん何やらかしたんよ」

 

アレク「お前等が道端で俺を気絶させたせいで不審者扱いされたんだよ!」

 

アレク曰く、変な姿勢で気絶していたせいで近隣の住民に警察に通報され連行されてしまったそうだ。

倒れていた周辺の住人からは道端の真ん中で倒れている変人と解釈され醜聞が広まってしまったそうで、渋々目立たないよう遠回りをしてアイリ達をストーキングする羽目になった。

刑務所から脱走し隠密に後を付け回している時点で咎める必要があるのだが、連行される要因を作ってしまった優華と夜美は流石に申し訳なく思い口を出すことはせず苦笑いをするしかなかった。

 

アレク「ったく…まぁいいや。 んじゃ、俺は刑務所に戻るわ」

 

リョウ「逃げたんならわざわざ戻る必要なくないか?」

 

優華「それはそれで問題だろ」

 

アレク「ちっちっち、分かってねぇな子羊ショーンの諸君。 脱走するのはな、見つかってから逃げるのが、本当のスリルってもんを味わえるんだぜ」

 

アイリ「ちょっと何言ってるのか分かんないね(富澤並感)」

アレク「やろうと思えばCQCを駆使しつつ段ボールに身を包み隠密行動も可能だけどな」

 

リョウ「何処の傭兵だよ。 兎に角、大事になるようなことはしないでくれよ」

 

ピコ「結構前だけど、ポケ○ンの世界のシンオウ地方って呼ばれる場所にTウイルスでテロを起こしそうになった連中を潰す際に、時間と空間を司るポケモンをグラムで呼び出したせいで街一つ崩壊しかけた事例もあるもんね」

 

リョウ「大変やったなあれは。 チャンピオンのシ○ナはご乱心してたし、リュートが次やったら時空防衛局総出でしばくって言ってたしな」

 

優華「…こいつ、やっぱり危険人物なんじゃねぇか?」

 

アイリ「インペ○ダウンにでも閉じ込めておけば?」

 

リョウ「こいつはLEVEL6ですら通用しないから無駄」

 

アレク「そういうことだ。 てなわけで、チャオ~」

 

グラムを召喚し、時空の歪みを発生させ軽く手を振り直ぐ様吸い込まれるように入っていき姿を消した。

 

リョウ「自由奔放で羨ましくも思うわ。 さて、そろそろわし等も戻ろうかいね」

 

ユノ「そうですね。 明日のプリシーさんの警護の詳しい情報を聞かなければいけませんし。 うぅ、緊張してきました…」

 

フェアリルという一つの世界ではなく、世界を生み出し均衡を保つ世界樹のエネルギー源を生み出す人物を守護するという、全世界の命運を掛けた重要な任務。

今まで以上に緊張感を持ち挑まなければならない戦いに、高校生である彼女達が不安に駆られるのは当然と言える。

 

ピコ「ユノ、僕やリョウもいるから大丈夫だよ。 みんなの大先輩である結愛もいるし、時空防衛局の助けもある。 いつも通りに戦ってくれれば十分戦果を挙げることができるよ」

 

ユノ「そう、ですか? また、夜美さんが傷付けられてしまうような、そんな状況になるって考えただけで、恐いです…」

 

アイリはユノの思う気持ちが痛いほど理解できる。

 

自分が傷付き痛い思いをするのは恐いのは当たり前だが、周囲の知人が惨たらしい事態に陥るのは倍恐ろしい。

 

だが、彼女達は一人ではない。

互いを信頼し背中を預けられる仲間がいるため、手を取り合い共に巨大な悪をも打ち負かすことができる。

 

優華「私達だって同じさ。 エクリプスだけじゃなく、協力態勢にあるデスピアの連中も来る。 苛烈な戦闘になるのは明らかだけどな、私達が力を合わせりゃ、どんな奴だって吹っ飛ばせる」

 

夜美「ゆうゆうの言う通りや。 わし達は今までどんな困難にも負けずに退けられたんは、互いを信じて力を合わせて来れたからなんや。 今回も負けることなんてない。 信じて挑めば、運命は必ず何か良い方向に転がっていくんや」

 

リョウ「それに、今回はイレギュラーながらわし達もおるしな。 相手もイレギュラーである異世界の連中が多い。 世界の監視者として、この世界と君達を守るために全力を尽くすことを約束するよ」

 

ユノ「み、皆さん…。 はい、頑張りましょう!」

 

頼れる仲間からの激励に思わず涙腺が緩み顔を覆うユノを優華と夜美は横から包むように抱き締めた。

三人の仲睦まじい光景に思わず微笑む最中、リョウだけは視線を外しハピネスユートピア達三人の像を眺めていた。

 

ピコ「……リョウ、大丈夫?」

 

リョウ「昔のことを思い出してただけやから。 やっぱり結愛を連れて来なくて正解だったのかなって思う。 きっと、わしよりも辛い筈だから」

 

ピコ「乗り越えたつもりでも、ずっと心の奥底にマイナスなものが根っ子を張って残り続けるものだよね」

 

リョウ「結局は、事によっては死ぬまで付き合い背負っていかなきゃならんものもあるんよ。 忘れられない辛い過去とどう向き合っていくかが、大事なことなんやろうなぁ」

 

どこか哀れみを含む吐息混じりな声はピコ以外の耳に入ることなく虚空へと消える。

一瞬露となった禍殃が降り注いだかのような、端目からでも分かる暗い表情をアイリは見逃してはおらず、憂心な面持ちでリョウの裾を掴む。

 

リョウ「…悪い、ちょいと昔のことを思い出してただけだ。 心配させて悪いね」

 

アイリ「それならいいんだけど…もし、何か悩み事があるなら、あたしで良ければ相談に乗るからね?」

 

リョウ「はいよ。 サンキューな」

 

アイリの頭をポンポンと数回優しく撫で、「さて…」と言う声と共に軽く手を叩き全員の視線を集める。

 

リョウ「そろそろ戻るとしますか。 明日の準備もあるやろうし、時空防衛局の会議や警護の内容を聞かんとあかんし」

 

夜美「そうやな。 いつも遅刻ばっかりするゆうゆうみたいな扱いはされたくあらへんからなぁ」

 

優華「なっ!? 毎回じゃねぇよ! 今日の集合は間に合ってただろ!」

 

夜美「ユノっちが起こしてくれたからやんか」

 

優華「そ、それは、携帯の目覚まし機能をオンにしてた筈なのに何故か作動しなかったんだよ…私は悪くなーい!」

 

リョウ「とある小学生のように遅刻するなよ。 特に明日はね」

 

優華「絶対しねぇよ! ほ、ほら、戻るぞ! コンサートホールにビリで着いた奴はイリーラの喫茶店のデザート奢ってもらうからな!」

 

話を脱線させ唐突に出した案を告げると同時に像を掻き分けながら走り始めた。

 

アイリ「あたし帰る場所も仲間もいるけど天衣無縫の無一文だからそれは困るよ!」

 

リョウ「一部だけを聞くと絶体絶命みたいだぞ。 結愛にケーキ奢る約束したから、これ以上財布から紙切れがモスラの如く飛んでいくのは勘弁やから行かしてもらおうか。 超スピード!?」

 

アイリ「さぁ、振り切るぜ! スタ→トスタ→だ!」

 

アイリとリョウは持ち前の人間離れした体力を駆使し駆け出す。

変身していないため、ただの女子高生相手に二人の行動は容赦や大人げないもので、夜美は失笑するしかなかった。

数秒と経たない内に姿が消え、部屋に響く足音の反響音も徐々に消えていき、喧々囂々としていた部屋は静寂に包まれた。

 

ユノ「…私達、出遅れちゃいましたね」

 

夜美「リョウ兄さんがその気なら、こっちも本気でやらせてもらうで。 アポカリプス、シャイニングリンク!」

 

ピースクリスタルを取り出し変身する言葉を詠唱する。

紫色の光に包まれた夜美はルナアポカリプスへ変身した。

菫色の染まったポニーテールを優雅に掻き上げるアポカリプスを見て、ユノは大抵の答えは予測できてはいたが、何故変身したのかを尋ねる。

 

ユノ「え、えっと、何で変身したんですか?」

 

アポカリプス「決まってるやん。 今から追いかけるんよ。 出された勝負事は乗らさせてもらわんとなぁ」

 

指の骨を鳴らしつつ、脚を軽く動かしストレッチをしており、本気で勝利を掴もうとする意欲が伝わる。

ストレッチを終えたアポカリプスはユノを抱き上げた。

 

ユノ「ふええ!? あ、アポカリプス、な、何するんですか!?」

 

アポカリプス「変身するの怠いやろ? せやから私が連れてってやるんよー。 落としたりせぇへんから、心配せんでええで」

 

自慢気にウインクをし、足に力を入れ踏み込み、常人の倍以上の速さで走り始める。

あっという間にハーモニア神殿の出入口を抜け、木々が生い茂る鬱蒼とした森を駆け抜ける。

F1で使用されるフォーミュラーカーよりは劣るが、相当な速度で風を切り風の如く駆けるアポカリプスだが、変身していない生身のユノは諸に強烈な風を受け、絶叫マシン宛らの右往左往する光景を目にし、涙を流しながら悲鳴を上げてしまっている。

 

因みに、一番にコンサートホールに着いたのは以外にもピコだった。

基本、リョウの上着のポケットにいる彼はコンサートホールの入り口が見えた瞬間に飛び出し、僅差で一番手となった。

卑怯なのか奇策なのか、若しくは頭が冴えているとも言える。

続いてリョウ、アイリが到着し、ルナアポカリプスへ変身を遂げた夜美とユノが同時に到着、言い出しっぺの優華が最下位となり敢えなく奢る羽目となった。

 

だが流石に現役女子高生に全額払わせるのは酷なので、結局リョウ自らが支払いを進んで行った。

リョウの善良な心に多大な感謝を込めながら優華はペコペコと頭を下げていた。

 




行くところないから結局喫茶店に来てしまいこの話を投稿することになった。

あーチョコレートケーキが美味い(*^^*)
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