ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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作者は高校生活3年間A組でした。


※今回の話の最後の方は胸糞な描写があります


第42話 ライブ裏の激闘

プリシーのライブ当日は雲一つない快晴となり、天から照らされる太陽の光が肌を焼く。

だがホール前はプリシーのライブに訪れたファンが途切れることなく波のように押し寄せ、日光に負けない熱気を放っている。

 

ライブ開始30分前、ライブを支えるスタッフや関係者や、魔の手から守護する役割を与えられた時空防衛局やアイリ達にも緊張が走っている。

 

アイリはリョウとブリザードヴィーナス、第一防衛役員の一人であるシギアと共に、荷物や備品が納められてある地下室の警備に当たっている。

日光が一切届かない暗闇と肌を撫でる冷気が支配する地下室だが、数個の電灯が照らす光により周囲の状況を把握できている。

防音壁なためか、地上で響くであろうプリシーの歌声やファンの歓声も耳には届くことはなく、会話をしなければ静寂だけが支配する空間となっている。

 

誰も近寄ることが然程ないであろう場所にエクリプスが出現する可能性が高く、警戒を一層強まなければならないためリョウは自らこの場に当たることを推薦した。

欲を言えばアイリを他の場所の警備を願いたかったのだが、何か不祥事が起きた際に自分の手の届く場所に置かせておきたかったので渋々同行させた。

 

会話をしなければ物音一つない無音の世界は不気味さを漂わせている。

 

もっとも、会話をしなければの話だが。

 

アイリ「でね、アルファがベータをカッパらったらイプシロンに…!」

 

リョウ「なるほど、分からん」

 

警戒心を解いてはいないが常にアイリが喋り続けているため、静寂が訪れることはなかった。

沈黙が支配する状況を好まないということもあり、アイリによるマシンガントークが絶えず続いている。

快活なアイリを見ると戦闘前とは到底思えない。

賑やかな話をリョウは相槌を打ってはいるが、稀に発言する冗談めいた事は基本的に綺麗に右から左へ受け流している。

シギアとヴィーナスは人柄が大変良いため、如何なる話でも面と向かい話を受け入れ会話をしている。

 

シギア「相変わらずアイリはおもいろいね。 アリスやアレクと同じ雰囲気を感じるよ」

 

アイリ「それって良いことなんだか悪いことなんだか…」

 

シギア「勿論、良い意味でだよ。 僕が知ってる彼等は過酷な状況にあっても決して己のペースを崩さず毅然としているからね」

 

アイリ「あたしも、二人みたいな感じなのかな?」

 

リョウ「似たり寄ったり、かな。 アイリの方が緊張感を持ててるからまだマシかもしれん。 あの二人、自分が強すぎる自覚があるから基本ふざけてるし」

 

ヴィーナス「アリスさんから聞いたこと、あるんですけど、とある世界で、その世界を牛耳る総帥を打ち倒したって聞きました。 国を陥落させ、政界を支配する絶大な勢力で、総帥の意見に賛同し寄せ集められた兵隊1000万人を、アリスさん達を含むたったの10人で蹴散らし、総帥を打ち破ったと」

 

アイリ「い、1000万!? たったの10人で!? ヤックデカルチャー…」

 

リョウ「俄に信じられないだろうけど実際にあった出来事やからな。 コア・ライブラリにも記録が残ってるし」

 

胡乱だと思うような話を聞いたアイリは驚きを禁じ得ないようで、口をあんぐりと開け改めて二人の規格外の力量を実感した。

圧倒的な戦力を兼ね備える彼等の強さには何十年掛かろうと追い付くことはできないのだろうとさえ思えてしまう。

 

苦戦を強いられる局面に至ることもなければ状況を見たこともなかったため、アイリにとっては無敵とも二人。

一体どれだけの時間を消費し、あらゆる世界に名を彌漫する力を手にしたか非常に興味をそそられる。

 

アイリ「アリスちゃんやアレク君は元からそんなに強かったの?」

 

リョウ「わしが知り合った時には既に強者やったけど、今ほどじゃない。 ここまで強くなったのは、数多の世界を渡り歩き、様々な戦いや異変に関わり己を超える強者と戦ってきたからやな」

 

シギア「異界の出来事に関与する事例は時空防衛局としては見逃せないところなんだけど、彼等は善意で行っていて、結果的にも世界や誰かを救っているから現在は特に咎めることはしてないんだよね」

 

アイリ「ピースハーモニアもそうだけど、二人も誰かを守ったり救うために戦ってるんだ…」

 

異界を渡り歩く目的のない旅は、アレクとアリスの趣味程度でしかない。

戦闘狂ではない二人は何も考慮せず、立ち寄った異界の出来事に首を突っ込んでいるわけではない。

 

逡巡することなく、救済を願う者がいれば手を差し伸ばす。

ただ困っている人を放置し見てみぬ振りはできず、悪を働く罪人の数々の悪行が気にいらないという明らさまな私感に基づき行動している。

決して恬淡とは言い難いが、基本的には自分達がやりたい事をやっただけだと言い切り報酬は受け取らず、罪人を成敗すると、不要不急だと言うのに足早に新たな世界を求め去っていく。

 

端から見れば正義のヒーローと言える行いだが、二人は正義のためだからと一欠片も思ってはいない。

少なからず善良な行いとは認識しているものの、結局のところ、自分達がただやりたいことを率先して行っているだけのこと。

 

アイリ「あたしも、もっと強くならなきゃだね。 誰かを守るためなら、強くなれるって、そんな気がする」

 

シギア「目標があるのは素晴らしいことだよ。 目標があれば、目指すところまで止まらず諦めず進んでいける」

 

リョウ「目標であって、ゴールではないからな。 ここテストに出るよ」

 

アイリ「はい! リョウ先生! ……あ、3年A組! でか耳先生!」

 

リョウ「………」

 

アイリ「脳内再生余裕っしょ! あれ? リョウ君どうしたの? そんな恐い顔してもあたしの素早さは下がらない…はい、ごめんなさい調子に乗りました。 お願いだからその高く振り上げた腕を下ろして? お願いダーリンお願いマッスル。 人を殴るのは殴られる覚悟のある人だけだから、その高く振り上げた腕を下ろしてまた上げて下ろしてえーりん、えーりんって、たつべい!?」

 

自業自得とは言え、アイリの乞いは虚しく消え、振り下ろされた拳が脳天に炸裂した。

頭を抑えしゃがみ込んで痛みに悶絶していたが、反撃せんとばかりに立ち直り『天地魔闘の構え』をし対峙する。

 

アイリ「心火を燃やしてぶっ潰す…!」

 

リョウ「わしの判決を言い渡す…死だ!」

 

アリス「お前の運命は、私が決める!」

 

リョウ「……あのー、突然出てくるのやめてもらっていいですかねアリスさんや?」

 

アリス「最強とんがりコーン!」

 

リョウ「ナニイッテンダ! フジャケルナ!」

 

物陰から突如現れたのは、時空防衛局本部に行っていたアリスだった。

この世界に現れたということは、本部にて報告等を終えたと思われる。

ヴィラド・ディアとの戦闘の後に本部へ向かったマリーとは別行動をしているようで、彼女の姿は見当たらない。

 

爛々とした笑みを浮かべ現れたあたり、アイリ達と再会できたことが心底喜ばしいことのようだった。

 

アリス「シギアもいるしユノちゃんまでいるじゃん。 やっはろー!」

 

ヴィーナス「お久し振りですアリスさん」

 

シギア「君がこの世界に来るよう導いたつもりはないけど、助太刀しに来てくれたのかい?」

 

アリス「いや全然。 遊びに行く感覚でリョウの気配をサードアイで嗅ぎ付けて空から現れる恐怖の大魔王の如く来襲したってところ。 本当なら石や地面を高く舞い上がらせる迫力ある着地をする登場をしたかったんだけどなぁ」

 

リョウ「やれやれ、アレクとアリスが揃ったら大変やわ。 現状は分かってるんやろ? 手ぇ貸してくれや」

 

アリス「特に求めてないけど、報酬はある? あるの? うまい棒何本買えるかな?」

 

リョウ「資本主義者め…」

 

アリス「嘘うそウソッキー。 エクリプスが相手ならタダでも喜んでやるよ! 今日の戦いは私の超勇者黙示録に記載されることだろう!」

 

リョウ「アレク同様にやり過ぎてこの世界の犯罪者リストに記載されそうな気もする」

 

アレク同様に自由奔放だが我執な人間ではないため、エクリプスという世界を危機に陥れる悪行を繰り返す危険因子を野放しにはできない。

 

アリスが援護し、戦力は倍以上となったが、決して気の緩みは許されない。

ライブ開始の10分前となり、緊張が高鳴ると同時に不安も渦巻く。

空間を通り現れるエクリプスは何処から攻め入って来るか予想が付かないが、コンサートが行われる会場の作りを把握できていれば大体の予想は可能となる。

 

アイリ達に任された地下室は、一般人なら勿論、関係者も余程の用がなければ立ち入らない陰湿な場所。

人目に付くことがなく、身を潜めるなり密談を行うなり容易にでき、エクリプスからすると格好の侵入場所だろう。

明ら様に打ってつけとも言える場所に果たして現れるかどうか怪しいところではあるが、万が一の事を考慮すれば警備する他に選択肢はない。

 

リョウ「………来た」

 

僅かに上を見上げぽつりと呟くように発した。

防音の壁を貫通し爆発音が微かに聞こえたのが、エクリプの来襲を物語っていた。

ヴィーナスは緊張で早鐘のように鳴る心臓を落ち着かせようと深く息を吸っては吐いてを繰り返している。

それとは正反対に、緊張感を持ちながらも平静さを崩さないシギアが早速行動を開始した。

 

シギア「アリス、空間の出入り口を変更することは可能だよね?」

 

アリス「そんなの朝飯前! アリスにおまかせ!」

 

シギア「アイリ、ヴィーナス、あの壁に向けて遠距離攻撃する準備をしてくれ」

 

ヴィーナス「で、ですが、それでは地下室が崩壊してしまいます!」

 

シギアが指し示す場所は何もないコンクリートの壁。

当然だが変哲もない壁に技など当ててしまえば、罅割れどころか瓦礫と化し、最悪の場合部屋全体が崩れてしまう可能性もある。

結末は容易に想像できるが、シギアの目には迷いの色はなく、躊躇なく技を放つよう申し出た。

 

リョウ「二人とも、シギアの言うことを信じてやってくれ。 時間があらへん!」

 

アルティメットマスターを引き抜かず鞘だけを持ち構えるリョウは壁を見据えたまま促す。

シギアの考えを悟りアイリとヴィーナスを促すその声は何処か急かすような力強さと緊迫感が伝わってくるものだった。

 

ヴィーナス「アイリさん、やりましょう!」

 

アイリ「う、うん!」

 

戸惑いながらもガーンデーヴァを出し矢を番える。

 

敵影が視認されていないため戦うことに躊躇はないが、胸の中に蔓延る不安と恐怖は完全に消えてはいない。

いざ戦闘になると、動揺してしまう。

アイリの顔色が僅かに変化したことに気付いたリョウは優しく肩に手を置いた。

肩から伝わる温もりが徐々に心の蟠りが緩和されていく。

自分が一人ではないのだと再確認でき、攻撃に傾注することができる。

 

アイリ「…ありがとう、リョウ君」

 

リョウ「いいってことさね」

 

シギア「いくよアリス!」

 

アリス「オーキドーキ! そーれ、お出ましお出ましー!」

 

アリスは杖を振るい、空間の裂け目を生み出す魔力を放出する。

シギアの導きの力により、魔力は全員が見据えている視線の先にある壁へと向かっていき、裂け目が生成される。

出入り口を導きの力で操作されたことを何も知らないエクリプスの下っ端である戦闘員達が声を荒げ猛進してきた。

 

リョウ「今や! 『ソードスパーク』!」

 

アイリ「『アロービーム』!」

 

ヴィーナス「『ルインブリザード』!」

 

アリス「えっと……何でもいいや! 兎に角ぶっぱなす! ぞばばばばばばー!」

 

各々が出せる遠距離攻撃を一切の容赦なく放った。

出撃早々に奇襲を受け、戦闘員達は対応する間を与えられることなく、断末魔を上げこの世を去る形となった。

特にアリスの攻撃は他の三人と比べて群を抜く力で、杖から放たれた火炎の竜巻、凍てつく冷凍光線、痺れる巨大な電が裂け目の周辺だけに止まらず、開かれた時空の裂け目の中にまで攻撃が行き渡っている。

突入準備に取り掛かっていたであろう戦闘員達は訳も分からず特大級の魔法に直撃していく様は、敵でありながらも不憫だと思うしかない。

 

突入する勢いが止まった頃合いを計り攻撃を一旦中止した。

一斉攻撃により周囲の壁や天井には亀裂が走り、備品等は四散しており酷いものは破壊され使用不能と化している。

因みに、ディーバの警備による建造物や備品等の破損、破壊の対象となるものは全て時空防衛局が復旧費用を全額支出しており、その世界に住まう者達に負担を掛けないような制度となっている。

 

アリス「……やったか?」

 

リョウ「おい、フラグ立てんな」

 

相手が生存しているかのような台詞を吐くアリスに思わずツッコミが入る。

顔を反らした刹那、言葉が顕在化したかのような災厄が訪れた。

砂埃を跳ね除け、風をも切り裂く勢いで迫ってきたのは邪悪な気を纏った闇の斬撃。

凄まじい速度で迫る斬撃を逸速く察したリョウが前に出て右足を振り上げ斬撃を蹴り飛ばし弾いた。

心地好い金属音が響き、何者かによって放たれた斬撃は細かい粒子と化し霧散する。

 

?「流石は世界の監視者。 見事なものね」

 

舞っていた砂埃が晴れ、悠々と歩く一人の少女の姿が目に入った。

 

黒色のショートヘアーを少し纏める臙脂色のリボン。

手の甲に紫色の宝石が修飾された黒色のロンググローブ。

胸元には血よりも深い深紅色の宝石が付いたフリルが特徴的な赤いラインが走るデザインのリボン。

黒色のミニスカートに紫色の宝石が修飾されたロングブーツ。

全体的に黒を基調とした衣装を身に纏った少女は、左は美空色、右は黄色のオッドアイで地にある雑草を見下すようにアイリ達を見据えている。

 

リョウ「君に褒められるなんて、嬉しい限りよ」

 

?「褒める? 力を半分失った哀れな分際のお前を、私が褒めると思う?」

 

リョウ「そいつは残念。 まぁ、相変わらず元気そうで何より。 フェアリルへの侵攻を続けているのも変わらずやけど」

 

?「私はデスピアで生まれた存在。 我が故郷のために尽力して悪いと言うの?」

 

リョウ「可能ならいい加減考え直してほしいところ。 一応、ピースハーモニアなんやし」

 

アイリ「え、ピースハーモニア!?」

 

一見すると、リョウの言うようにピースハーモニアと同様の衣装を身にしているが、纏っているオーラが違いすぎる。

ピースハーモニアが平和を願う希望とするならば、目の前にいる少女からは、不幸へ誘い光を呑み込む絶望を感じ取れる。

 

邪悪にほくそ笑む少女は瞬時に出現させた巨大な漆黒の鎌を片手で軽々と持ち峰をアイリ達へと向ける。

 

ヴィーナス「私達と同じ、ピースハーモニアです。 でも、フェアリルのピースハーモニアと対を成す、闇の力で生まれたんです。 結愛さんがいた頃よりも前に存在していて、多くのピースハーモニアを苦しめてきたデスピア三闘士の一人である、歴戦の戦士、ダークネスリベリオンです」

 

アイリ「そう、みたいだね。 犇々と伝わってくるよ」

 

禍々しく心を撫でるように感じる、サタンフォーとも引けを取らない強大な闇の力に、無意識に一歩後ずさってしまう。

 

再び甦る、自分の命が枯れる瞬間。

悪魔に襲われた時の恐怖が沸き上がる。

体が微少に震え始めるも、リョウが再び肩に手を置いた。

優しい手の温もりに、再度落ち着きを取り戻した。

 

リベリオン「か弱い少女を連れて私達に挑もうとは、正気?」

 

アリス「か弱いなんて言ってるのも今のうちだよ! アイリは強化し過ぎたかって言えるくらい強いんだから! あと10年は戦える!」

 

アイリ「天使なんだからもっと長く戦えなきゃダメなんじゃないかな? でも、あたしを評価してくれるのは素直に嬉しいかな。 ありがとねアリスちゃん!」

 

アリス「もっと褒めて私の好感度を上げてもらってもいいよ! ストーリー後半から私のルートに突入してETSになったり…」

 

?「お喋りが多いぜ、時空の放浪者」

 

砂埃が晴れ始めた頃、時空の裂け目から現れたのは、エクリプスのリーダー各であるセラヴィルクだ。

愛用の赤い宝玉が修飾された黒いガントレットを撫でるようにして少女の横へと並び立つ。

 

シギア「エクリプスのセラヴィルクか。 僕達の方には大物が来たね」

 

アリス「掛かってきなよ喧嘩上等だよ! 私が疾走する本能で暁の水平線まで吹っ飛ばしてやる!」

 

セラヴィルク「…異世界の言語ってのは分かったぜ」

 

アリス「また能力で読み取られた。 あ、忘れてる人もいると思うから説明しておくけど、セラヴィルクの能力は相手の力や武器、知識、情報を吸い取る、若しくは奪い取る能力だよ」

 

リョウ「誰に向かって話してるんだ?」

 

アリス「誰だか分かってるでしょ?」

 

セラヴィルク「おっと、メタい話はここまでだ。 全軍、ディーバを捕らえるため死力を尽くし進軍しろ!」

 

発破を掛けたと同時に猛々しい雄叫びが地下室に響く。

裂け目から溢れるようにしてエクリプスの戦闘員と、デスピアのデスマミーが飛び出し荒れ狂う波のようにして襲い掛かる。

 

アイリ「勇気を、出さないと。 あたしだって、守るために戦いたい!」

 

自信を持ち、勇気を振り絞り弓を射る。

その一矢を合図にリョウとシギアとヴィーナスが駆け出し大軍の先頭にいた数人を早くも蹴散らしていく。

 

シギア「『蒼炎の楔』!」

 

蒼い炎の杭が放たれ、直撃を受けると同時に炎に包まれ命を燃やし尽くしていく。

接近戦を試みようと戦闘員が手にした槍で突こうとするも、視認していないにも関わらず華麗な足捌きで避け蒼い炎球を飛ばし反撃した。

 

セラヴィルク「厄介な能力持ちだな!」

 

先程まで大軍の後方にいたセラヴィルクが部屋の天井を駆け抜けるという、重力を無視した常識外れな移動により先陣へ舞い降り拳を振るう。

蒼い炎を腕に纏わせ拳を防ぐも、重みのある一撃に数歩下がってしまう。

更に追い討ちと言わんばかりに能力によりシギアの行使する蒼い炎を自らに引き寄せ巨大な炎の渦を生成し放った。

 

アリス「どんなピンチもチャンスに変えてしまおう!」

 

アリスが杖を振るうと忽ち炎の渦は形を崩し、いつの間に仕込んでおいた指の隙間に挟んでいたトランプカード数枚を炎に向け投げつける。

蒼い炎を纏ったカードは戦闘員やデスマミーを斬り裂き一直線上に道ができていく。

 

アリス「私、完璧!」

 

セラヴィルク「貴様が今回いるのは予想外だ。 偽りの聖剣士までいるというのに、対処に困るぜ」

 

アリス「何時でも私が出てくることを予想していないのが悪いんだよー。 さてと、私と戦う覚悟はいい? 私はできてる!」

 

セラヴィルク「完膚なきまでに叩き潰してやる」

 

アリスのトランプカードを用いた魔法とセラヴィルクの拳が激しくぶつかり合う。

セラヴィルクの能力により大抵の攻撃の情報を奪い取られるため、攻撃手段が筒抜けな状態で、回避されるか拳による一撃で相殺されてしまっている。

能力的に不利にも思えるが、アリスは未だに見せていない隠し玉が幾つもあるようで、焦燥感が出ることはなく、戦いを遊戯のように楽しんでるのか、時折スキップを行う余裕を見せている。

 

凄まじい実力を兼ね備えたアリスを援護する必要は皆無なので、リョウはアイリの側から離れることなく戦闘員やデスマミーを一掃しつつ、ヴィーナスと共にリベリオンと争闘していた。

 

戦闘員やデスマミー達の戦闘力は決して高いとは言えないが、塵も積もれば山となるという言葉通りの意味で、集団で四方八方から押し寄せられると思うように行動できず即座にタコ殴りにあってしまう。

更に数多のピースハーモニアを苦しめてきた確かな実力の持ち主であるリベリオンまで相手にしなければならないとなると、劣勢なのは一目瞭然だ。

 

リベリオン「闇に堕ちろ」

 

巨大な漆黒の鎌、『ブラッディハント』を力強く振るう。

まるで木の棒を振り回すかの如く振るわれた鎌を回避することには成功したが、風を斬る音が耳を掠め、一振りした際に風圧が発生するのを直に感じ、アイリは冷や汗が一気に溢れ出るのを感じた。

 

リベリオンの痩躯とは思えない猛烈な一撃一撃が止むことを知らない嵐のように続くが、リョウがアルティメットマスターを巧みに扱い全て受け防ぐ。

 

リベリオン「腕は鈍ってはいないな。 だが、力量不足ね」

 

リョウ「事情知ってるなら察しろ。 力が半分なのに初っぱなから『ソードスパーク』撃ったら嫌でも力が落ちるわ」

 

リベリオン「今の貴様は、私を満足させる相手ではなさそうね」

 

リョウ「決め付けはよろしくないで!」

 

腕力が倍に跳ね上がり鎌を押し返した。

透かさず剣先を向け突きを放つも、リベリオンの鋭い蹴りにより剣が弾かれ、続け様に放たれた蹴りを腹部に受け後退する。

ヴィーナスが援護に入り絶対零度の冷凍光線を撃つも、闇のエネルギーによるバリアを展開されたことによりダメージを与えることはできなかった。

 

リョウ「ありがとうヴィーナス」

 

ヴィーナス「いえ、ご無事なら何よりです。 『ルインブリザード』!」

 

再び手から冷凍光線を発射し、周囲の敵を氷像へと変えていく。

 

リベリオン「……あの力を、使ったか? でなければ唐突に力が増幅することはないだろう」

 

リョウ「ご名答。 あの一瞬やけどね。 度々使用する代物やないからあとは自力で押し返すだけや」

 

リベリオン「ふん、悪足掻きにしか過ぎない」

 

リョウとリベリオンは同時に駆け出し互いの武器を衝突させる。

剣と鎌が激しく交差しぶつかり合い、金属音が響き火花が周囲に散る。

高い戦闘力を誇る二人の戦闘にアイリやエクリプスの戦闘員は助太刀する余裕はなく、誰一人として接近する者はいなかった。

 

リョウ「答えてくれリベリオン。 何故エクリプスは君達デスピアに協力関係を求めてきたのかを」

 

戦闘しているにも関わらず力を込めた声で質問を投げ掛けた。

敵と戦場で武器を手にし相見えている状況では有り得ない行動だが、リベリオンは大柄な鎌を舞うように振るいながらも質問に対し流暢に応答する。

 

リベリオン「さぁ、突然私達の元へとやって来たから。 ただ、奴等の幹部の一人である女が、部外者である何者かに命令され面倒だと呟いていた」

 

リョウ「命令された…?」

 

頭に疑問符が浮かぶばかりで思わず首を傾げる。

 

エクリプスという組織は単独で行動を起こしており、他の組織と結託し物事を進めるということはしない。

あらゆる世界に拠点を置く彼等だが、何百年と歴史がある中でも絶対に他の組織の力を借りるような事はしない。

組織の重大な資料やディーバ誘拐に向け練られた作戦、拠点の位置情報を漏洩させないために、何より他者を信用しない懐疑的主義な思考でいるため、他者と協定を結ぶようなことなど有り得ない。

 

そんな彼等がデスピアと結託し、況してや部外者である何者かの言葉を聞き入れ鵜呑みに事を起こしているのが謎だった。

 

リョウ「……謎だらけやな。 それと、君達デスピアはエクリプスと協力してどんなメリットがあるんや?」

 

リベリオン「現存するピースハーモニアを撲滅し、フェアリルを占領する。 奴等と協力を得るだけで長年の目的が達成されるのであれば、当然せざるを得ない」

 

リョウ「お頭であるディムオーツも納得したのか?」

 

リベリオン「少々迷っていたが、了承した。 私は余所者など歓迎してはいないけど」

 

悪態を吐き小さく溜め息をつくあたり、リベリオンは余程納得していないのだろう。

 

リベリオン「エクリプスの悪行の数々は嫌でも耳にしているから。 お前がその被害者なのだから尚更よ」

 

リョウ「嫌悪しているのなら奴等を滅ぼすのに協力してもらえんかね?」

 

リベリオン「私が首を縦に振ると思った? 私がお前達と手を組むなんて……でも、少しおもしろそうね」

 

口角が僅かに上に上がる。

笑みを浮かべる顔は邪悪に染まっているが、何処か悪戯を思い付いた幼さをも感じ取れ、瞳は小さな星の瞬きのように爛々としている。

 

リョウ「お前も変わらんな」

 

リベリオン「数千年と生きていれば、必ず変わる。 お前が知らないだけで、私は着実に変わっている。 良くも悪くも。 人とはそういうものでしょ?」

 

リョウ「…どうした? 人の心理に興味でも持ったのか?」

 

リベリオン「戯言を言わないで。 人の心に触れぬようにしているが、ピースハーモニアと戦うにつれ、嫌でも理解してしまっただけよ」

 

求めていなかった知識を得たことに嫌気が差し本日二度目となる溜め息を吐く。

 

リベリオン「話が脱線しそうになってるから、始めましょうか。 反逆を…!」

 

アルティメットマスターを弾き、闇のエネルギーを纏ったブラッディハントを一閃し周囲の戦闘員達を蹴散らす。

不意な行動に周囲がざわめき始め戸惑いの声が上がる最中に生まれた隙を逃さず、リベリオンは雑草を刈り取るかのように次々と斬り伏せていく。

 

セラヴィルク「なっ!? てめぇ!! どういうつもりだ!!」

 

流石に仲間が葬られ黙ってはいる筈がなく、額に青筋を浮かべ今にも飛び掛からん勢いで怒号を飛ばす。

 

リベリオン「ごめんなさいね。 私って気紛れだからその時の気分で行動しちゃうの」

 

セラヴィルク「理由になってねえぞ! てめぇ、俺達を裏切り敵に回すのがどういうことなのか分かってるのか!」

 

リベリオン「裏切る? ふふ、何を言っているの? 私はお前達を味方として迎え入れたつもりなんてないわ。 思い上がりも甚だしいわね」

 

セラヴィルク「どうやら俺達エクリプスの恐ろしさを教えてやんなきゃいけねぇみたいだな。 掛かれー! あの女を八つ裂きにしろ!!」

 

取るに足りない理由に怒りが頂点と達したセラヴィルクの怒声に戦闘員達の困惑の色は消え、一斉に雄叫びを上げ新たな標的に向け武器を手に走り出す。

 

リベリオン「私だけが敵だと思うなよ?」

 

指を振る仕草をすると、デスマミー達が盾になるように並び戦闘員達を迎え撃つ。

俯瞰する眼差しでセラヴィルクを見据え不敵な笑みを浮かべる。

 

アイリ「えーっと、これって形勢逆転だったりする? 風のうしろを歩むものとして早く終わらせたいところ…」

 

アリス「これだけ塊魂してたらオワニモするの余裕だよ」

 

リベリオン「何を戯けたことを抜かしているの? 私はリョウの意見に賛同しただけであって手を組むとは一言も言ってないわ。 お前達を利用させてもらうだけだ。 手出しはしない」

 

ヴィーナス「信用、できません。 必ず不意を突いて私達を倒そうとしてくる筈です」

 

ピースハーモニアとして数十回、彼女と戦ってきたからこそ、発せられた言葉は信憑性に欠けていた。

同盟を結んだエクリプスとの関係を、デスピアという組織に所属しているにも関わらず己の意思だけで破棄するという身勝手さを振る舞う輩を、信用しろと言われても容易に了承はできない。

 

リベリオン「ふーん、流石、今代のピースハーモニアの頭脳、冴えてるわね。 えぇその通り。 隙さえあれば私の鎌の餌食になるわ」

 

ブラッディハントの刃を舌で舐める。

狂気染みた何かを感じ取ったアイリは悪魔とは違う怖さに一瞬身を震わすが、自由に泳がしておくには非常に危険なため早急に倒そうと頭の中で検討していると、リョウが駆け出し混戦する戦闘員達を斬り倒し始めた。

 

リョウ「じゃあリベリオンの掌で踊らされているとしようかね。 わし等を斬り伏せたいのなら何時でもどうぞ。 当然やけど、その時は抵抗させてもらうけど」

 

エクリプスを退けるために敢えてリベリオンの意のままに行動させることを選択した。

無論、リベリオンが敵の立ち位置であるのに変わりはないため、不審な動きを見せた際には躊躇なく斬りつけるつもりでいる。

危険だが、アイリもヴィーナスもリョウの意見に賛同することにし、いつ襲われてもいいよう神経を尖らせる。

 

リョウ「今更やけどリベリオン、裏切り行為をしたんやから後でどうなっても知らへんで?」

 

リベリオン「余計な心配は無用だ。 例えディムオーツ様に何を言われようとも、私は問題なんてないもの」

 

リベリオンの性格上、後にデスピアの上層部から罰を与えられる事など一切考えておらず、基本的に上からの注意勧告等は殆ど右から左に流してしまっているため問題ないらしい。

裏切り行為を実行している時点で別の意味で十分問題ではあるのだが。

 

シギア「計算の内なのか、巧みに言葉を使って彼女との直接対決を免れたね」

 

リョウ「何一つ計算なんてしてないよ。 ただリベリオンとは長い付き合いだからお喋りしてただけよ」

 

セラヴィルク「何がお喋りだ。 余計なことしてくれやがって」

 

リョウ「わしからすればお前らの成す行動一つ一つが余計なことやわ。 さっさとこの世界、いや、この世から消え去れ。 あらゆる世界に存在する価値もない紛い物が」

 

憤怒と憎悪が籠った口調で荒々しく剣を振るい一閃し、交戦していたデスマミー諸とも戦闘員の十数名を斬り伏せていく。

リョウの過去について詳しく知らないアイリは急激な力の増幅に暫し目を見開き驚愕する。

跳梁跋扈するエクリプスを倒すことだけに傾注しており、周囲のことなど気にも留めない勢いで次々と命を奪い散らしていく様は、命の重さを知らない大量殺人鬼のよう。

天界でサルエルの警護の時と全く同じ度量の殺気に思わず身震いしてしまった。

 

アリス「……アイリ、私達も行くよ。 私達は殺すために戦ってるんじゃない。 それだけは忘れちゃダメだよ」

 

『トランプルーレット』を何発か発動させ、宙に浮かび空中から攻撃を仕掛け始めたアリスに続きアイリも矢を連発する。

 

人の命を奪うようなことはできれば避けたいところなのだが、相手はあらゆる世界を支配しようとするテロ集団。

話し合いや交渉で事が解決するとは到底思えない。

口論が不可能であれば実力行使で迎え撃つしかない。

理解はしてはいるものの、今更ながら、目的を達成するための犠牲が出てしまうので平和的に物事が終結しないだろうかと考えてしまい、遣る瀬無い気持ちが心の中に蔓延る。

 

それでも、誰かを守るためなら、守るもののために戦うと決めたのならば、雑念や恐怖心をかなぐり捨て、立ち向かわなければならない。

 

アイリ「いっけー! 『サンダーボルトアロー』!」

 

上空に打ち上げられた数本の矢が雷となり降り注ぐ。

そのうちの数本をシギアは導きの力を使用し、落とされた雷はセラヴィルクへ向きを変え直撃を果たす。

顔を歪ませるも大したダメージは与えられてはいないようで、セラヴィルクは能力を発動した。

 

リベリオン「ん、何だと?」

 

ブラッディハントがリベリオンの手から離れ、吸い込まれるようにセラヴィルクの手中へと手繰り寄せられた。

 

セラヴィルク「貴様の愛用の武器で、体を斬り刻んでやる」

 

リベリオン「舐められたものね。ブラッディハント無しで戦えないとでも思っているのかしら? 『リベリオンデストロイボール』」

 

闇で生成された黒いエネルギー弾を宙に数個発生させる。

とてつもない速度でエネルギー弾は飛んで行くが、セラヴィルクは全て奪い取ったブラッディハントを匠に扱い防ぐ。

 

アイリ「あたしも加勢しないとだよね! 『トリックアロー』!」

 

アリス「奇跡も魔法もあるってことを分からせてやる! 『スートメテオ』!」

 

アイリ「え、ちょっとアリスちゃんそれはダメー!!」

 

攻撃に徹していたアイリは即座に踵を返し物陰へと避難する。

周囲の被害を考慮していないアリスは技を発動し、四種類のスート型のエネルギー弾が周囲に降り注いだ。

戦闘員やデスマミー達は直撃を果たした途端、膨大な威力により跡形も残らず灰と化していく。

リョウやシギアも武器や能力を用いて滅茶苦茶な攻撃を凌ぐ中、セラヴィルクだけはその場から動こうとはしていなかった。

 

セラヴィルク「その力、貰うぜ!」

 

ブラッディハントで防ぎつつ、能力によりアリスの技をエネルギーへと変換しガントレット赤い宝玉に吸収されていく。

 

セラヴィルク「『赤剛烈破』!」

 

エネルギーを吸収したことにより威力が倍増した衝撃波をアリス目掛けて放った。

 

アリス「力押しなら負けない! 『マキシマムフォトンレーザー』!」

 

杖の先端をセラヴィルクに向けると、巨大な魔方陣が出現し、リョウが放つ『ソードスパーク』に似た極太のレーザーが放たれた。

発射された余波だけで人や物が吹き飛び散乱していき、物陰に身を潜めていたアイリも痩躯な体が吹き飛ばされないようにと死に物狂いで壁にしがみついている。

二つの技が宙で激しくぶつかり合い、その余波による衝撃で壁や床が抉れ崩れていく。

血気盛んだったエクリプスの戦闘員達も流石に自身の命が大事なようで、重りとなる武器を捨て四散していく。

 

アリス「もう、私のエネルギー吸ったせいで威力もかーなーり上昇していると。 でも…」

 

威力は互角かと思われていたが、アリスの放つレーザーの勢いがより一層増していく。

 

アリス「私を倒すのは2万年早いよ! あ、やっちゃう前に言っとこ。 アイリちゃん達ごめんねー!」

 

限界を知らないと言わんばかりの魔力を放出する姿を最後に、徐々に押し始めたレーザーと衝撃波は爆発を起こし、視界が白い光に包まれたかと思うと、爆風により自身が吹き飛ばされる感覚だけが記憶に残っていた。

 

 

~~~~~

 

 

フェニックス「がはっ! …くそ! ヤバいってこの状況…」

 

フェニックスは現在窮地に立たされていた。

 

彼女は時空防衛局の役員達と共にホールの東側の出口の警備を担当していたのだが、現れたエクリプスの幹部、ディアグルムの猛攻に役員達は成す術なく敗北してしまい、一対一の勝負に発展した。

苦戦は強いられたものの、着実にダメージを与えられており、勝機を逃してはいなかったのだが、新たに現れた幹部、オムクという名の男の参戦により流れが相手に掌握されてしまった。

 

オムク「へへっ、ピースハーモニアっていう戦士だって聞いてどんな実力者なのかと思えば、案外弱っちいな」

 

肉弾戦を得意とする屈強なオムクの攻撃に押され続け、最後に受けた強烈な一撃で壁を突き破り屋内へと戦場を移したが、予想以上に体が傷付いてしまい床へ倒れ伏してしまっている。

 

オムク「俺は悪魔じゃねぇ。 降参すりゃ俺の下で働かせてやるよ。 なーに、悪いようにはしない。 満足できるよう懐柔するからよ」

 

フェニックス「誰が、降参するかよ。 それに、お前の部下になるわけ、ねぇだろ。 寝言みたいなこと言ってんじゃねぇよ」

 

反抗的な態度に怒りを覚えたオムクは無言でフェニックスの腹を蹴った。

痛みに顔を歪ませ体がくの字に折れるが、続けて何度も塵芥のように踏み続ける。

 

オムク「ガキの分際で偉そうに。 素直に俺の言うことだけ聞いてりゃいいんだよ」

 

フェニックス「ぐっ…うぅ…」

 

苦痛に声を上げ、息も絶え絶えになってはいるが、フェニックスはまだ諦めてはいない。

 

現在コンサートを行っているディーバ。

コンサートを楽しみに集まった観客達。

裏でコンサートを支えるスタッフ達。

 

この世界に住むあらゆる種族の人々を守りたい、太古から連綿と続くピースハーモニアという戦士としてでなく、一個人の強い思いがまだ戦えると体を奮い立たせる。

 

フェニックス「『フレイムフェザー』!」

 

赤い翼に炎を灯らせ羽を手裏剣のように飛ばす。

突然の奇襲にオムクは後退し防御に徹している間に、体に鞭を打ち立ち上がり羽を連発し牽制しながら空中へ飛び上がる。

 

フェニックス「『フェニックスメテオドロップ』!」

 

脚に灼熱の炎を纏わせオムクの頭上へ急降下していく。

炎の羽に対処していたため反応が遅れ、直撃は免れない。

喉が張り裂けるような雄叫びを上げ更に速度を増していくが、頭部の中心に足裏が直撃を果たす直前、突然停止してしまい身動きが取れなくなった。

気付けば自身の腕と腰に赤黒い触手が巻き付き動きを封じていた。

 

ディアグルム「やれやれ、両方動きが遅すぎる」

 

オムク「俺もかよ。 助けられたのは不服だが、一応感謝はしといてやろう」

 

ディアグルム「偉そうな口を利きおって。 貴様を嬲り殺したくなってきたわ」

 

抜け出そうと必死に抵抗するフェニックスの努力も虚しく、触手を操り勢いよく床へと叩き付けた。

床が陥没し、真っ正面から叩き付けられたフェニックスは吐血し横たわる。

未だに戦う意思だけは残り続けているようで、震える腕で立ち上がろうとしている。

 

フェニックス「まだ、まだ…! 私は…戦える…!」

 

ディアグルム「成人していないというのに、勇ましい。 敵ながらあっぱれだ。 だが、無駄に終わる」

 

ディアグルムは無数の触手を伸ばし倒れているフェニックスを絡め取った。

腕や脚を触手で拘束され完全に動きを封じられ抵抗すらできないフェニックスは自身に炎を灯らせ、触手を燃やし尽くそうとする。

 

ディアグルム「無駄な足掻きを。 『惨劇の苦痛』」

 

フェニックス「うわああああああ!!!!」

 

絡め巻き付く力が増し、触手に自身のエネルギーを送り込むと、フェニックスの全身に痛みが迸り声を上げる。

抵抗など一切できたいため、身動き一つ取れない状況で痛みに応えるように喉が枯れる勢いで叫ぶことしかできない。

ディアグルムとオムクは世界を守護する少女の悶え苦しむ姿を見て欣喜雀躍する面持ちで見据えていた。

 

何分経ったのだろうか。

常人なら聞くだけで耳を塞ぎたくなる絶叫が深閑な空間に響いていた。

 

時空防衛局の救援も来ないまま、フェニックスは絶えず訪れる苦痛に悶え、最後の間には声を上げる力すら枯渇し、気絶する直前まで心身共に凋落してしまっている。

エネルギーを送るのを止め、触手の拘束が解かれる。

力無く床に倒れ、同時に変身も解かれてしまった。

 

優華「うぅ…くぁ、あ……」

 

オムク「もう終わりかよ。 案外弱かったな」

 

ディアグルム「貴様が来る前に私が其なりに傷を負わせていたから当然だ。 私はこのまま先へ進む。 この娘の処理は任せるぞ」

 

ディアグルムは不気味に触手を揺らめかせ、人気のない通路を進んでいき姿を消した。

残されたオムクの前に空間の裂け目が発生し、中から十数名の戦闘員が姿を現した。

 

オムク「ディアグルムが先に向かった。 お前達も後を追い援護しろ。 出会した者は片っ端から殺せ。 例え女子供であろうと容赦はすんじゃねぇぞ! それと、指名された数名はこの場に残れ!」

 

オムクの命令に戦闘員達は足早に行動を始め、武器を手にホール内を走り抜けていった。

残された十人程の戦闘員は何故自分達がこの場で待機させられているのか疑問に思っていた。

 

「オムク様、我々は何故残されたのでしょうか?」

 

オムク「忠実に働くお前達に褒美を与えてやろうと思ってな」

 

「えっと、戦争が起きているこの場で、それはどういう意味で?」

 

オムク「見て分かんねぇのかよカス野郎。 そこに倒れている女を見ろよ」

 

戦闘員達は一斉に息も絶え絶えとなった優華へと目を向ける。

 

オムク「理解できないのなら直接口に出してやる。 ……その女を犯せ」

 

優華「……え?」

 

オムクの発言に理解が追い付かなかった。

戦闘員達も一瞬困惑し尻込みしていたようだが、現役の女子高生、況してや美少女に分類される優華を見て全員が生唾を飲み込んだ。

戦闘により衰弱した優華を犯すことなど造作も無く、抵抗無く美少女と性行為を行えるとなると、男性が食い付かない訳がない。

 

「へへ、良いんですか? 俺達にはもったいないくらいだ」

 

「オムク様は下っ端の俺達に慈悲深いなぁ。 ではでは、遠慮無く…」

 

「おいおい俺が先だ」

 

成人男性十数人が性欲を露にし近寄ってくる。

これから行われるであろう惨たらしい行為に優華は恐怖を覚え、必死で動けない体を無理矢理動かし地面を這うようにして助けを求める。

 

優華「嫌だ…来るな。 助けて…誰か…!」

 

オムク「ここの周辺の時空防衛局の奴等は全員始末したんだ。 幾ら叫んでも神に祈っても誰も来たりしねぇよ。 さっきあれだけ叫んだにも関わらず誰も来なかったんだ。 結果は見えてるよな?」

 

オムクの言葉に耳を傾ける余裕は無く、必死でこの場から逃げることだけを考えていた。

傷を負い満足に体を動かせないため、数秒と経たない内に戦闘員の数人に拘束されてしまった。

 

優華「やめて! 離して! お願いやめて!!」

 

涙を浮かべ懇願するが群がる男達の手は止まることはない。

衣服を全て引き千切り、全身を舐めるように厭らしい手付きで撫で回される。

 

優華「嫌! 助けて! 誰か助けてー!! いやああああああ!!」

 

オムク「だから無駄だっつってんだろ。 誰も助けになんて来ねぇ。 大人しく俺達の玩具になってろ」

 

誰も助けに来ない。

その一言で絶望感が優華を満たしていき、涙が止めどなく溢れ出ていく。

世界を守護する戦士の哀れな姿を見て嘲笑う暴漢達が容赦なく欲を満たそうと自身の体を貪り穢れていき、愛する人にしか見られることはないであろう下半身にも手が伸び始めた。

 

優華「ユノ…夜美…結愛、さん……たす、けて…」

 

涙が溢れ出る瞳は絶望に染まり、声を張り上げる気力すら無く、絞るように出た小声で呟くように発しただけで、抵抗できないまま弄ばれてしまった。

 




闇の魔法少女ってキャラは出してみなかったので満足。
ハトプリのダークプリキュアが懐かしい。

…書いてて思いましたけど、優華が犯されるシーンを何故書こうと思ったのだろうかと思ってしまう。
この後の展開を考えると必要な犠牲って感じもするけど、こういう描写を書くのは苦手で心が痛ましくなってしまった…。
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