ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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光と闇の対決が、今ここに…!

安っぽい映画のポスターに書いてありそう


第43話 光と闇の果てしないバトル

アイリ「う、うぅ…死ぬかと思った。 さっき川の向こうで団長が見えた気が…」

 

床に横たわっているアイリは気を失っていたが、周囲で途切れることなく続く爆発音により覚醒した。

 

アリスとセラヴィルクの攻撃により地下室は完全に崩壊してしまった。

大爆発と共に身を裂くような爆風が押し寄せ、部屋に置かれた備品や削れ取られた壁や天井の破片と共に飛ばされ、最終的には瓦礫の山の中へ閉じ込められる運命にあった。

だが、意外な人物の手によりアイリは傷一つ負うことなく地上へと戻ることができていた。

 

リベリオン「漸くお目覚め? 天使だから人間より頑丈だと思ってたのに、案外そうでもないみたいね」

 

視界に入るのは、デスピアの幹部であり闇のピースハーモニアでもあるダークネスリベリオン。

ピースハーモニアの宿敵である彼女を見て驚愕し声を上げ、思わず尻込みする。

 

アイリ「目覚めていきなり強敵の登場なんて…。 寝起きドッキリにしてはやり過ぎだよ。 まだバズーカの方がマシなレベル」

 

リベリオン「まだ眠くて寝言を呟いてるの? あなたと殺り合うのは悪くないけど、私は今あなたを殺す気分ではない」

 

殺気を露にしていた先刻とは打って変わり、何処かしら穏やかな表情へ変化していると感じさせる。

愛用の武器、ブラッディハントを床に置き大胆に足を広げた状態で座り壁に凭れる。

 

リベリオン「あのクズ野郎から私の鎌を取り返すことができて割りと上機嫌なの。 本当なら高揚感で直ぐ様斬り殺すところなんだけど、もう一つ理由がある。 あなた、リョウの監視下に置かれてる元人間なんでしょ?」

 

アイリ「監視下って言うか、一緒に住んでる同居人と言うか、友人か保護者か…どれも当てはまる気がする」

 

リベリオン「ふーん、やっぱり。 なら出来るだけ手出しするのはやめておく」

 

あまりに潔く諦め引く様を見て呆気に取られ怪訝な面持ちに成らざるを得ない。

 

アイリ「なんだかえらい潔く諦めてる気がするんだけど…」

 

リベリオン「当たり前よ。 正直あいつを怒らせたりでもしたら本当に殺されても不思議じゃない。 いや、殺されるよりも酷いことになる」

 

アイリ「どういうこと? リョウ君の事を何か知っているの?」

 

以前リョウの過去に触れようとした時があったが、教えられなかった事が一つあった。

時々能力により感じ取れる不明瞭な力。

必要最低限の事象だけを簡潔に出し、頑なに語ろうとしないようにも見え縹渺としているリョウの力や過去を知りたい。

他人のプライベートに触れるのは御法度だと承知ではいるが、あの力についてだけは知らなければならない、知っておかなければならないと本能が誡めている気がし、無礼を承知で尋ねた。

 

リベリオン「ふーん、何も聞かされてないのね。 言ってもいいんだけど…私の口からは言えない。 他人がもし話すような事をすれば、私が消されかねないかもしれないし」

 

アイリ「そんなに知るとヤバいってこと、なんだね…。 昔、フォオン様を倒しかけたのが関係しているの?」

 

リベリオン「それは知っているのね。 直接的な関係は無いわね。 あなたが知りたがっている力で殺しかけたのは間違いない。 あいつは昔、あの力を手にする前にも後にも幾つもの大罪を犯している」

 

世界の創造神と呼べるフォオンを殺しかけた時点で理解していた筈だが、他にも何か罪を犯している事実に声を失ってしまう。

敵の戯れ言だと聞き逃すところだが、リベリオンが嘘を吐くような態度ではなく、アイリの目を見て話す邪悪で佳麗なオッドアイは嘘の色に染まってはいない。

 

リベリオン「過去に様々な悲痛な出来事が起き、それがあの力を手に入れる発端となった。 特にエクリプスが大きく関与している。 だからあいつは奴等を異常なまでに忌み嫌い執拗に壊滅させようと戦う」

 

思い当たる節があった。

天界で強襲されたサリエルとミケナのコンサート、そして今日行われているプリシーのコンサートの警備の中で、異常なまでに殺気の籠った目で睨み残虐の限りを尽くさんばかりに戦闘員を翻弄していた。

世界の監視者として守るべき者のために勇壮に剣を振るう戦士とは程遠い、憎しみ等と言った負の感情が宿った豹変振りを見れば変化していることなど一目瞭然だ。

 

リベリオン「エクリプスはあらゆる世界に潜んでいるから、撲滅するには相当の時間を有するようだから彼此数千年も存在し続けている」

 

アイリ「そんな昔から存在している組織だったんだ。 リョウ君はどういった経緯でエクリプスと接触するようになったの?」

 

リベリオン「質問が多いわね。 私は専門家なんかじゃないのよ? まぁ今は気分が良いから、話せる範囲で答えてあげるわ。 リョウが世界の監視者として討ち滅ぼそうとエクリプスと合間見えたんだけど、奴等はリョウの監視者としての能力を利用するためにリョウの愛する人を人質に取り、リョウを手駒にした。 それがエクリプスの初の対面であり、彼の悲劇の始まりでもある」

 

アイリ「その、悲劇っていうのは?」

 

リベリオン「私が今話せるのはそこまで。 死にたくなかったらさっさと立ちなさい。 新手の登場よ」

 

ブラッディハントを持ち敵意に満ちた瞳で前方を見据えたまま立ち上がる。

邪悪な気配を感じたアイリもガーンデーヴァを手にしリベリオンと同じ方向を見ると、デスマミーの大群が迫ってきていた。

意思の無い傀儡の群衆の最前線には肌が紫色の屈強な大男が巨大な三節棍を持ち二人を蔑む目で睨み付けている。

 

?「おーっと、こんなところにいたか。 裏切るのはこれで何回目だ?」

 

リベリオン「いちいち覚えてないわ。 反省する気すら湧かないもの。 誰が何をしようなんて、私の勝手だ」

 

?「団結力が皆無なガキが。 統率を取る俺の身にもなってほしいもんだな。 さて、デスピア三闘士のリーダー、グラッジがお前を断罪してやる」

 

三節棍を地面に打ち付けるのを合図にデスマミー達が一斉に走り出した。

 

リベリオン「はぁー。 面倒ね。 天使、監視者の事について喋ってやったんだから今は私に協力しなさい。 さもなければ雑魚諸共あんたを斬り殺す」

 

アイリ「罪悪感があったけど、色々と教えてくれたし危機を乗り切るには一時休戦するしかないみたいだし。 分かった! 光と闇が両方備われば最強に見えるね!」

 

リベリオン「相反する力が手を組むとは異例ね。 でもまたとない機会かもしれないわ。 実に面白いわ」

 

光と闇。

決して調和することのない、衝突すればどちらかが飲み込み消し合うものだが、切っても切り離せない密接な関係でもある。

一抹の共闘に二人は気分が高揚し、武器を手にその場から駆け出した。

 

アイリ「『ファイブストレートアロー』!」

 

リベリオン「『ダークネスサイズラッシュ』!」

 

五本の光の矢で先頭に立っていたデスマミー達に直撃し数人の体を貫通し体制を崩れたところをリベリオンが舞い踊るように華麗に闇のエネルギーを纏った鎌を振り下ろし体を細切れにしていく。

戦うことだけに一心不乱に鎌を振るう目は狂喜に満ちており、到底ピースハーモニアとは思えない狂乱しているかの様な立ち振る舞いで傀儡の大群を狩り尽くしていく。

 

グラッジ「ディムオーツ様の命令に逆らうな!」

 

三節棍で殴り掛かるも、重戦車の如く一撃を流すように避け鎌を振るう。

三闘士のリーダーと呼ばれるだけはあるので、容易に攻撃は通ることはない。

棒と棒を繋ぐ鎖で刃先を受け止め匠に三節棍を回すようにし絡め取り勢い良く引っ張りリベリオンを自身の元へ接近させ、華奢な体に膝蹴りを叩き込んだ。

顔を歪ませるも、口角は上がっており、痛覚さえも楽しんでいるかのように見える。

リベリオンは抵抗のため蹴られた直後に足を抱えるように掴み上げ行動を一時的ではあるが封じた。

 

グラッジ「無駄な足掻きを。 大人しく倒れていれば痛い目に会わずに済むものを」

 

剛腕が振り上げられ横腹を殴ろうとする直前、グラッジの右肩に光の矢が刺さった。

言わずもがな、矢を射ったのはアイリで、リベリオンの窮地を救うため間髪入れずに追撃する。

三節棍を巧みに扱い矢先の接近を許さず、蚊を落とす

様な振る舞いで次々と弾いていき、矢は虚しく重力に従い地へ落ちていく。

 

グラッジ「この程度の攻撃で俺を仕留めようとは、笑止」

 

リベリオン「相変わらず脳が岩石並みの堅物ね。 私の対処を怠っているわね」

 

グラッジ「何? ぐおわっ!?」

 

事前に準備しておいた『リベリオンデストロイボール』を腹部に命中させ怯んだ隙にブラッディハントを奪還し距離を取った。

防御に徹するあまりに反撃の隙を与えてしまった己の不甲斐無さとリベリオンの傲然とした薄ら笑いを見て頭に血が上ったのか、力任せに三節棍を振り回し始める。

周辺にいるデスマミー達を蹴散らしながら猛進する様はまるで巨大な闘牛。

リベリオンは呆気に取られたように溜め息を吐いた。

同時にこれまで以上に闇のエネルギーが体から溢れ出るのをアイリは感じ取った。

 

黒より黒く、深淵よりも深い、純粋な闇。

 

アイリは闇と対を成す光属性の持ち主だが、地平線の彼方まで埋め尽くすような膨大な闇の力を間近で見て肌で感じ取ってしまうと、自分の光の力が豆粒のように小さなものだと錯覚してしまう。

 

リベリオン「真っ正面から来るなんて、よっぽど死にたいようね」

 

鎌の先を静かに床へ着けた。

駆けるグラッジの足下に闇で生成された亜空間が口を開いた。

全てを吸い込むように開くそれは、正にブラックホール。

沼に足を取られたかのように身動きができなくなったグラッジは焦りの色を浮かべ踠き始める。

 

グラッジ「こ、この技は…!? おい、よせリベリオン!」

 

リベリオン「はぁ? お前から仕掛けて来たんだ。 反撃されたって文句なしでしょ? それじゃ、また後で…会えたらいいわね。 さようなら……『ダークネスフォールダウン』」

 

亜空間から細長い漆黒の手が無数に伸び、グラッジに掴み掛かる。

闇のエネルギーが送られ激痛が体中に走り、身動きが完全に取れぬまま、亜空間の中へと引き摺り込まれていく。

 

グラッジ「ぐああああああ! リベリオン! 覚悟しておけ! 後でどうなっても知らぬからなあああああ!!」

 

断末魔にも似た台詞を吐きながら闇の底へ沈んでいき、軈て姿が視認できなくなり亜空間は跡形もなく姿を消した。

彼が何処へ姿を消したのかは、技を発動したリベリオンにしか分からない。

 

自身の生み出した空間に幽閉したのだとアイリは推測したが、もし自分にあの技を放たれたと思うと心の底から震えてしまう。

 

アイリ「よ、良かったの? リベリオンと同じ三闘士って呼ばれてる人だよね?」

 

リベリオン「そうよ。 でもあんな脳筋、仲間とすら思ったことないから、どうなったところで知ったこっちゃないのよね。 ……さて、私は行くとしようかしら」

 

指を鳴らすと、周囲のデスマミー達は一斉に動きを止めた。

元よりグラッジの命令で従っていたが、司令塔を失いただ周囲を徘徊するだけの傀儡と化していた。

新たな主の登場により再び使役されるだけの傀儡と化したデスマミー達はリベリオンの背後へ乱れなく整列する。

 

アイリ「もしかしてだけど、ディーバのところ?」

 

リベリオン「当たり前じゃない。 彼女を拐うだけで世界を支配できるかもしれないんだから、私が行動を起こさない訳ないわ」

 

アイリ「諦めて帰ってくれると思ってたのに。 なら、あたしは止めるために戦うだけだよ」

 

勝機は限りなく薄い。

重々承知だが背を向け逃げることだけはしたくなかった。

逃げてしまえば必ず後悔する、自分でも分かっていることだから。

 

リベリオン「可能なら後ろ楯にリョウがいるお前に傷を負わせるような事態にさせたくなかったんだけど、仕方ない」

 

殺意の籠った目を見るだけで尻込みしそうになるも、気力で向けられる殺意を撥ね飛ばす。

 

リベリオン「リョウに後で何て言われるか分からないから、殺さない程度で嬲らせてもらうわ」

 

アイリ「弱いのは分かってるけど、遠慮されると嫌な感じするな。 じゃあ先手必勝!」

 

素早くガーンデーヴァを構え手始めに『トリックアロー』を射った。

軌道が変則的な矢を細かい動きだけで見切り的確に鎌で防ぎ地を駆け急接近する。

一閃された鎌を弓で防ぎ上に弾き左手に矢を召喚し『アローランサー』を放った。

腹部に刺さる直前、リベリオンは素手で矢を掴み直撃を逃れたが、光属性に弱いせいか、光の矢を掴む手からは白い煙が上がっている。

 

リベリオン「へぇー、思っていた以上に光の力が強いのね。 殺り甲斐があるわね」

 

鎌の柄でアイリの腹部を殴り付け顔面を蹴り上げた。

意識が一瞬遠退くも気力で耐え、『光弓三日月斬』を発動させ空中で後方転回の勢いを利用し斬り上げる。

刃に闇のエネルギーを纏うように流し防御する。

光と闇がぶつかり合い眩い閃光が辺りを覆う。

 

アイリ「負け、るかー!! 気合いだ気合いだ気合いだ気合いだー!!」

 

敵に立ち向かうことに恐れを成していたアイリは存在せず、誰かを守るために戦う立派な一人の戦士として勇気を振り絞り果敢に力を解放している。

 

リベリオン「驚いたわね。 良い素質を持ってると思う。 けどね…」

 

闇のエネルギーが光の刃に侵食していき、徐々に輝きを失っていく。

 

リベリオン「才能があるだけて戦闘経験も力も私には及ばない。 はあああ!」

 

倍以上の闇が放出され、全力のアイリの攻撃を押し返した。

体を斬り裂かれてはいないものの、力の衝突により生じた衝撃により吹き飛ばされ、壁に勢い良く叩き付けられた。

壁に直撃した左腕に疼痛が走り顔を歪ませるも、諦める意を出さず邁進する。

 

リベリオン「諦めが悪いわね。 私には勝てないって分かってるんでしょ?」

 

アイリ「そうかもしれない。 でも、諦めたら試合終了なんだよ。 あたしは守るために戦うって、自分の心で決めたことがあるから信念を貫く! クリアまでは、眠らない!」

 

強い意思に反応するかのように体から白い粒子が出始め力が徐々に上昇し始める。

 

アイリ「ここからはド派手に行くよ!」

 

リベリオン「何処から力と自信が湧き出ているのかしら。 面白い、程々に痛め付けてあげるわ」

 

飛躍的に上昇した身体能力を活かし壁を走るように駆け矢を連射する。

リベリオンは疾風の如く速度で駆け巡り矢を回避していくが、逃すまいとアイリは矢を連射し続け光速並みの速度の矢を射続ける。

 

アイリ「初披露の技だよ! 『グラスアロー』!」

 

放った矢は地面に刺さり、リベリオンの足下の地面が微かに輝き始めた。

危機を察知したリベリオンが跳躍した直後に小さな光の矢先が数本地面から光の中から出現した。

 

不発に終わるも心の中に焦りはない。

寧ろ戦闘による極限の集中力が全神経を尖らせ恐怖や焦りを取り除いていた。

 

アイリは雄叫びを上げながら壁を蹴り空中を駆け『光弓三日月斬』を繰り出した。

先程よりも光の力が増したことにより光の剣も巨大化し、石材の天井を斬り裂き瓦礫を生み出しながらリベリオンの頭部目掛けて振り下ろした。

単純で豪快な一撃を鎌で受け止めるも、急上昇した威力の大剣の重みを実感し根のように床に張りついていた足が一歩動き後退した。

 

リベリオン「何処からそんな力が…!」

 

アイリ「あたしにも分かんないよ! 想いの力とかそういうのじゃないのかな! …メイビー」

 

リベリオン「想いの力…奴等と同じことを言うのね」

 

頭に過るのはフェアリルを守護する少女達。

彼女達の力の源も想いの力だった。

何故想いの力が戦う力に比例するのか、何百年という長い歳月の中で幾ら考察しても理解不能だった。

他者のために行動すると強化されるという事実が存在するのは確か。

 

ならば、ピースハーモニアである自分も想いの力により強化されるのではないか。

だが、他者のために行動するなど無意味で愚かだという考えを持つ彼女は善人染みた行動を実行する訳がない。

 

リベリオン「私は想いの力など無くとも、己の力だけで押しきるだけ! 『ダークネスヘルファイア』!」

 

漆黒の炎が鎌に灯り、全てを包み燃やしきる業火の渦と化しアイリを呑み込んでいく。

貫き刺すような熱さが全身に伝う。

防御を見せる姿勢に移せば、生じる一瞬の隙を見計らい更なる猛攻が迫り来るのは明らかなため、攻撃を中断させる訳にはいかない、逃げ道などない八方塞がりな状態。

 

アイリ「あっついー!! でも、ゼットンよりはマシ! 負ける、もんかー! このままじゃこんがり肉になっちゃうから、マッハGoGoGoだー!」

 

光のエネルギーが上昇すると同時に白い粒子の数も増えていく。

爛々とする光を放出させながら己が現在出せる全ての力を発揮し、この一撃に込める。

歴戦の戦士であるリベリオンからすれば微小な力かもしれないが、徐々に押され始めていた。

アイリは覇気が込められた声を上げ続け、地や海や空をも斬り突貫する勢いでか細い腕に力を込め弓を握る力も強まる。

漆黒の炎を澎湃たる眩い光が押し返し優勢な状況へ転回すると思われた直後、リベリオンは突如として力を弱め、鎌を下げアイリの弓を受け流すようにして体を横にずらした。

驚きの声を上げる間もなく勢いが余り床に光の大剣と化した弓が当たり、地響きを起こし瓦礫と砂埃が舞い上がった。

 

リベリオン「残念だったわね。 私の勝ちよ」

 

背後に回り込んだリベリオンはアイリの首元へ鋭い手刀を叩き込んだ。

骨が折れるほどの威力ではなかったが、強い衝撃を受けアイリは気を失ってしまった。

力無く俯せに倒れ、煌びやかに輝いていた光は消え去り、絶えず出ていた白い粒子は溶け行くように霧散してしまった。

 

リベリオン「ほぼ無傷で済んだわね。 やれやれ、何故私が手加減してまでこいつと戦わなければいけないのかしら。 後ろ楯にリョウがいなければ、問答無用で闇へ葬り去れるというのに」

 

陰鬱なやり方に不満が募り、思わず八つ当たりに壁を殴ってしまう。

 

リベリオン「まぁ気絶程度で済んだのなら、あいつも何も言っては来ないでしょうし、私は私のやりたいことを為すとしよう」

 

ブラッディハントを一度消滅させ、ディーバ誘拐を目標にデスマミーを連れて軽快な足取りで進軍を始めた。

廊下に騒々しく軍勢の足音が響き渡る。

これから始まるであろう、人々の悲鳴や泣き叫ぶ姿が広がる凄惨な光景を脳裏に浮かべ思わず頬が緩む。

狂気的に微笑み惨劇を惹起しようと進軍していたが、とある違和感に気が付いた。

 

行進を続けていた筈のデスマミー達の足音が前触れもなく消えた。

 

先刻まで響いていた足音がピタリと止み、不自然に思い首を回し横目で後方を確認する。

廊下の床一面にあったのは、デスマミー達が斬り刻まれあらゆる部位が散乱した、今から自分が惹起しようとしていた現場が視界に広がっていた。

生物ではない傀儡なため出血はしないため一瞥すればマネキン等の部位の小道具が転がっているようにしか見えないが、気味悪く嘔吐を催す不快感がある。

リベリオンは心無き傀儡達が息耐えていることについては特に熟考せず、目線の先に大量虐殺の所業に及んだ人物が立っていたのが視線に入り、一滴の冷や汗を垂らしながら睨みを利かせた。

 

リベリオン「……流石、と言うべき力ね、世界の監視者」

 

世界の監視者と呼ばれる人物は一人しか存在しない。

静寂に佇む青年、リョウは怒気を含んだ表情でリベリオンに詰め寄る。

 

リョウ「アイリとわしの関係を理解しての行動なんだよな?」

 

リベリオン「殺さなかっただけマシでしょ。 お前の大切な存在だと知っていたから最初から殺すつもりなんてなかったわ」

 

リョウ「生殺するかどうかなど関係ない。 アイリに痛手を負わせた時点で、わしの敵、抹殺すべき対象になってるって訳よ、お分かり?」

 

リベリオン「抵抗しても無駄って感じかしら? 見逃してくれればありがたいのだけれど」

 

リョウ「……今回は見逃そう。 君には昔に借りがあるから、正直命を奪うのは気が引けるんよ」

 

剣に添えてあった右手を下ろし戦闘の意思が無いことを伝える。

張り詰めた緊張感が解かれ、無意識にリベリオンの口から息が零れた。

仮に戦闘が勃発し本気で挑もうとも、力が半減されてあろうと本気のリョウに勝つ確率は限りなくゼロだ。

 

実力もあるが、あの力があれば尚更難しい。

 

リベリオン「見逃してくれた礼として、今回は帰らせてもらうわ。 これ以上関わったらお前とアレクやアリスに塵芥にされそうだから」

 

完全に戦う意欲が失せたリベリオンは諦めたように肩を竦め踵を返し歩み始めた。

リョウは特に深追いすることなく去っていくリベリオンを見送る形で立っていたが、彼女は突如歩みを止め口を開いた。

 

リベリオン「あぁ、そうそう。 ヴィーナスやアポカリプスの気配を感じ取ることはできるけど、フェニックスの気配は微塵も感じ取れない。 徐々に気配が弱まっていたから、何者かにやられた可能性があるわよ」

 

リョウ「…情報、ありがとね」

 

礼を言われるも反応することなく前を見据えたまま、闇のオーラに包まれると同時にその場から姿を消した。

 

タイミングを見計らったかのように曲がり角からシギアが現れ、無事に歓喜したのか笑みを浮かべ走り寄った。

 

シギア「互いに無事で何よりだ。 どうやら、激しい戦闘があったようだね」

 

リョウ「アイリとリベリオンが戦ってたみたいでね。 わしもさっき来て加勢して追っ払ったところなんよ」

 

先程の状況を見ていた者は存在しないため、適当な嘘を吐き誤魔化した。

大量のデスマミーの無惨なまでに刻まれた死体を見てシギアは現状に納得したようだった。

 

シギア「この辺りは大丈夫そうだから、僕は念のため二階の非常口に行こうと思うんだけど、リョウはどうする?」

 

リョウ「わしはもうちょいこの周辺を捜索してみるわ。 二階に行く前に頼みがあるんやけど、そこに倒れて気を失っているアイリを医療班のところまで運んでもらってええかね?」

 

シギア「勿論構わないけど…リョウ、何を焦っているんだい?」

 

極力表に出さないよう心掛けていたが、観察力が抜きん出て高いシギアには筒抜けだった。

気配りする心遣いは有難かったが、仲間の生死が関係するかもしれない、一刻の猶予もない状況なため構う暇はない。

 

リョウ「嫌な予感がするんよ。 アイリのことを、よろしく頼む」

 

くれぐれもアイリの身に何か起きないよう、懇願する口調で言うと風のように走り去った。

風のように、とは比喩ではなく正に言葉通りで、尋常ではない速度にシギアは我が目を疑う程だった。

 

シギア「彼があそこまで必死になるなんて、余程のことなんだろう。 僕の導きの力で僅かでもいいから助力しておこうか…ん?」

 

物事が良い方向に動くよう導きの力をリョウに使用したのだが、違和感に気が付いた。

 

シギア「何故、僕の導きの力が効いてないんだ? この建物内なら反映される距離の筈なんだけど…」

 

普段なら起こり得ない現象に戸惑う。

効いていないと言うより、届かない、打ち消されているという、見えない何かに妨害されているかのようにも思える。

頭に疑問符を浮かべるも、新たに敵が攻めて来ないうちにこの場を離れることを最優先とし、アイリを抱え時空防衛局所属の医療班の元へ足早に移動した。

 




アイリの周りのキャラが強すぎて負け戦が多くなってしまう…主人公とはいったい…うごごご!
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