ディアグルム「あれが、レーヴァテインの力か…。 世界一つを焼き尽くしたのも納得せざるを得ないな」
人が出入りをしない薄暗い備品が置かれた部屋の中で、肩で息をしているディアグルムが壁に寄り掛かかって立っていた。
先刻、レーヴァテインの灼熱の炎により骨まで残さず燃え尽きた。
誰もが死んだと認識するであろう状況だったが、確かにディアグルムは無傷と言える状態で生存している。
ディアグルムとルヴィが邂逅した直後、ステージへ伸ばされた時に斬り落とされた触手が生きているかのように動き床を這っていき、通気孔の狭い隙間から奈落から脱出、天井裏を伝い人気のない部屋へ辿り着き体を再生させ、現在に至るという訳だ。
体の一部、数ミリという微少なものでも残留していれば短時間で元の体へと復元される、脅威の再生能力により復活を遂げたディアグルムは牙をガチガチと鳴らし壁を殴り付け怒りを露にしていた。
ディアグルム「ディーバナイトめ…悉く私の邪魔をしてくれる。 次こそは、更なる力を蓄えて…!」
「ディアグルム様、如何されましたか!?」
独り言が部屋に響くなか、遮るように入室してきたのはエクリプスの戦闘員数名だった。
進軍を続けステージへ向かう途中、偶然にも鉢合わせとなった時空防衛局の戦闘員と攻防戦が繰り広げられ、圧倒的な数と武力に命からがら敗走し逼迫していたところ、ディアグルムを見つけ今に至る。
頭や腕からは出血し、衣服も所々破れ、痛々しく痕跡が残っており、どれ程の激闘を繰り広げたのかを物語っている。
ディアグルムが激しく息を弾ませる姿は稀有な事で、顔に憂色を浮かべ各々駆け寄り萎縮しつつ様子を伺う。
「ディアグルム様、相当疲労なさっているようですが…」
「時空防衛局の奴等に決まってる。 許せねぇな」
「ディアグルム様がいれば百人力ですぜ! やってやろうぜ!」
ディアグルム「黙れ…」
「え、ディアグルム様、何か仰いましたか?」
ディアグルム「耳障りだ! 黙れ!」
苛ついた心情の状態で話し掛けられ、怒りのボルテージが上がっていく。
怒りに身を任せ、ディアグルムは触手を束ね鎌の形状へ変え、近寄ってきた戦闘員の一人の首を跳ね飛ばした。
飛ばされた頭部は綺麗な放物線を描き床に落ち、残された体の首の付け根からは血が噴水のように噴き出している。
体の司令塔を失った体は数歩だけ彷徨き、力無く崩れるように倒れた。
唐突すぎる常軌を逸するディアグルムの過激な行動に戦闘員達の血の気が一気に引き、顔面が瞬く間に蒼白していく。
目を皿にするだけで、起こった現実に戦慄し体が萎縮し動かすことが出来ず、声すら上げることが儘ならない 。
ディアグルム「丁度良い。 俺の新たな強さのための肥やしとなってもらおう」
口角が上がり、鋭く大きな何本もの牙が不気味に光る。
戦闘員達は己の身に危険が迫っているにも関わらず、蛇に睨まれた蛙となっている。
恐怖に戦く姿に嘲笑しながら舌舐めずりし、妄念すら生まれず、仲間である戦闘員達へ鎌を振るい細切れにしていく。
凄まじい速度で鎌を振り回し、激痛が斬られたと同時に襲うも、悲鳴を上げる間もなくあらゆる部位を斬り刻まれ肉片と化していった。
触手を伸ばし肉片と化した戦闘員達を触手で器用に口へ運び、刃のように鋭利な牙で肉を貫き引き裂き喉へ流していく。
肉を喰らう咀嚼音と骨を噛み砕く音が支配する。
無我夢中で肉を貪る姿は、獣かモンスターそのもので、悍ましいという言葉でしか釣り合わないほど惨たらしく、恐怖を引き起こすものだった。
僅か数分で、数人いた戦闘員の姿は消え、ディアグルムの腹の中へと収まった。
満足気に口角を上げ、口の周りに付着した血を舐め取り、口内に広がる鉄分の味覚をも存分に味わう。
ディアグルム「この程度の人数、況してや大した力も持たぬ雑魚では肥やしにもならんが…まぁいいだろう」
ふと耳を澄ませると、ライブによる観客の声が聞こえ、可愛らしく甘いプリシーの声も耳に入ってきた。
アンコール曲に差し掛かったようで、ライブの終盤を意味しているのが分かる。
ライブが終盤を迎える頃には、楽屋等の付近の警備が一際厳重になるため、ディーバに接近するのはほぼ不可能となり、セラヴィルクが撤退命令を下す。
ディアグルムは今回のディーバ誘拐は失敗に終わったと悟り、無用となった世界から去ろうと時空の歪みを出現させ去っていった。
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数分後、セラヴィルクの撤退命令により何千という数のエクリプスは次々と時空の歪みを通りピースハーモニアの世界から姿を消していった。
脅威が去り安堵していた時空防衛局の数名が目撃した証言によると、勇猛果敢にアレクとアリスが躊躇なく時空の歪みに入り追尾していったと報告がユンナの耳に入った。
厄介事が発展したようにユンナは額を押さえ溜め息を吐きながらワールドゲートを使用し、二人の様子を確認しに行った。
戦闘を補佐しよう等とは考えにはない。
必要ないものだと確信を持てたから。
辿り着いた世界、視線の先に広がるのは、人が住んでいない無限に広がる荒野。
地面に群がり無造作に転がっている死屍累々。
ピコとリョウが行った殺戮よりも現状の方が幾らかマシとは言え、何千という死体が散乱する光景は地獄絵図に他ならない。
アレク「おぉ! ユンナじゃねぇか! 久し振りだな!」
アリス「やっはろー! この前振りだね!」
荒野に立っていたのは、青年と美少女だけだった。
言わずもがな、エクリプスを討ち滅ぼしたのはこの二人だ。
何百倍の数の、一つの軍隊とも言える集団を僅か二人で、数分という短い時間で全滅させてしまった。
傍目からすればエクリプスより二人の強大すぎる力に慄然するところだが、ユンナは驚愕する素振りも見せず二人に近寄る。
ユンナ「この世界に住まう人々の被害はなさそうですわね」
アレク「一般人がいたらここまで大暴れしないっつーの。 俺を誰だと思ってるんだ?」
ユンナ「よく戯れ言を述べる変態ではありませんか?」
アレク「あァァァんまりだァァアァ!! だが、その罵りもまた快感! 俺のラージャンハートは傷付かないぜ!」
ユンナ「相も変わらず騒がしいですわね…。 ですが、変わりないようで、嬉しくもありますわ」
再開に一瞬だけ頬が緩んだが、即座に厳しい顔つきへ変わった。
ユンナ「それで、エクリプスの首領、セラヴィルクは成敗できたのですか?」
アリス「ごめんユンナ、逃がしちゃった。 稠密してる戦闘員を相手にしていた隙に逃走したみたい」
ユンナ「やはり簡単に捕縛することはできないようですね。 あとは此方で追跡を行いますわ。 今回も協力していただき、感謝致しますわ」
腰を折り、乱れのない綺麗な礼を述べる律儀で慇懃な態度に慣れているのか、二人はヒラヒラと手を振り何処吹く風と言った様子。
アレク「仲間なんだから助力するのはあたり前田のクラッカーだぜ」
アリス「困ったときはスカイターボ並の速さで駆けつけてあげるからね!」
ユンナ「やはり、あなた方は屈託ない純情の持ち主ですわね。 見返りを求めず世界のために、私達時空防衛局のために助力してくださる。 感銘致しますわ」
アレク「見返りを求めるのは正義とは言えないからな。 まぁ、正義のヒーローなんてかっこいい存在になりたいわけじゃねぇんだが。 俺だってできれば見返りが欲しいもんだぜ」
アリス「例えば?」
アレク「綺麗なお姉さん達とキャッキャウフフしたりとか。 765プロの誰かとデートすることができたら俺はハッピージャムジャムだ」
ユンナ「…前言撤回させてもらいますわ。 あなたは不純極まりないです」
アレク「アイドルがいけなかったのか? じゃあ本栖高校の野外活動サークルの子達とデートするぜ」
ユンナ「アイドルでもなんでもないただの学生ではありませんか! もっといけませんわ!」
アレク「文句多いなー。 じゃあユンナ、お前でいいや」
ユンナ「何故私なのですか!? それに『お前でいいや』という言葉は聞き捨てなりません! 私そんな安っぽい女ではなくってよ!」
アレク「安っぽいなんて一欠片も思っちゃいないぜ。 胸に立派な物が二つもあるんだからよ」
ユンナ「なっ!? 何処を見ているのですか!」
アリス「ほぉ~、ふむふむ、Gカップか~……でかい(確信)」
ユンナ「何故知っているのですか!? 誰かに教えた覚えなどなくってよ!?」
アレク「昔より1カップでかくなってる。 ……うん、でかい(でかい)」
ユンナ「っ~~~/// は、破廉恥ですわ!///」
アレク「ごちみる!? な、何で俺だけ!? why!?」
胸を指摘され赤面したユンナはアレクの頬を容赦なしに引っ叩いた。
乾いた音が鮮明に耳に残るほど響く。
ビンタを諸に受けたアレクは体を一回転させ地面へ倒れ伏した。
ユンナ「兎に角! 後処理は我々時空防衛局が済ませておくので、お二人はリョウさんの下で大人しくしておいてください! それと、私ですから宜しかったですけど、他の女性に卑猥な事を口走れば、猥褻行為で逮捕致しますから、注意なさってくださいね!」
アレク「ヤルッツェブラッキン!」
打たれた頬から手を離し、斜め上に手を上げ誠意を込めた返答を行うも、アレクの普段の態度のせいか、ふざけているようにしか見えずユンナは白眼視していた。
ユンナ「はぁ…では、私はこれで失礼しますわ。 それでは、ごきげんよう」
華麗に踵を返し再び召喚したワールドゲートを通り去っていった。
残されたアレクは打たれた頬を擦り、アリスは朗らかに笑みを浮かべながらもアレクに手を差し伸べ立ち上がらせた。
アリス「ユンナは昔から下ネタに弱いね。 からかい甲斐があって楽しいけどね」
アレク「俺は毎回痛い目に合ってるんだが…。 まぁ楽しいからいいや。 俺達も戻ろうぜ。 腹減って死にそうだぜ」
アリス「あっ、私のインベントリの中にスターゲイジーパイあるけど食べる?」
アレク「い、いや、遠慮しとくぜ…」
アリス「それなら……あ、間宮さんが作ってくれたアイスクリームがあるんだけど、食べりゅ?」
アレク「食べりゅうううううううううううううううううううううううううううううううう!!」
死屍累々の最中、意気揚々と氷菓子を食べる様は異様な光景。
こんなことができるのは屈強な精神の持ち主か、頭のネジが外れてしまった者だけだろう。
余談だが、常にふざけた態度を取っているアレクではあるが、彼の場合は前者に当てはまる。
余程空腹だったのか、一分と掛からず食べ終え、後処理を時空防衛局に任せ、アリスの時空転移魔法を使用しピースハーモニアの世界へと戻っていった。
友達に小説を見せたらカオスと言われてニヤついてしまいました笑