ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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金曜ロードショーのヴァイオレット・エヴァーガーデンを見て泣きました

あれは神アニメ(確信)


第53話 無限の彼方へ、さあ行くぞ!

リョウ「久々にアイリのびっくりした声を聞けたわ」

 

アイリ「最初の方はでかい声よく出してたもんね~。最近じゃ初めてのことを体験してもそこまで驚かなくなったよ。奇妙奇天烈摩訶不思議アドベンチャーなアリスちゃんやアレク君の行動や武勇伝を聞いてたら驚くのにも疲れてきたと言うか…」

 

ラミエル「納得するぜ」

 

アイリ「異世界の出来事に新鮮さを味わなくなったのは全部アリスちゃんとアレク君のせいだ。若しくは乾巧かディケイドのせい」

 

リョウ「いや、ゴルゴムのせいかもしれない」

 

アイリ「ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

 

ウリエル「騒がしいねぇ…」

 

アイリ達は星空界へ出発すべく準備をしていた。

 

星空界というのは、天界の遥か上空に存在する、幾千もの星々が存在する世界。

現実世界で言う、宇宙のような世界。

 

宇宙のように酸素は存在していないため、生身で向かうのは常識的に考えれば不可能なのだが、『天使の加護』を使用すれば宇宙空間でも呼吸が行うことが可能となり、自由に星々を行き来することができる。

その為、『天使の加護』を使用することができるリョウかウリエルの同行が必須であった。

ウリエルは天界を離れることができないため、必然的にリョウが選抜された。

 

光の剣、クラウソラスを探しだし、更に剣に認められなければならないという、無謀のように思える今回の旅は、流石にいつ戻ってくることになるか見当も付かないため、今回はカイも連れて全員で行動することとなった。

 

星空界は宇宙と同様。計り知れない程に広大。

一つ一つ星を虱潰しに探索していては、一生掛かっても探しきることは不可能。

リョウの世界の監視者としての能力と、ワールドゲートを行使すれば目的の場所へと瞬時に移動できるのだが、敢えてアイリのために行使しなかった。

アイリが自分自身の力と知恵で挑まなければ意味がないものだと考慮したから。

アイリ自身もウリエルに言ったように、努力もなしに恩寵を受けずに目的を踏破したい思いがある。その思いを無下にはしたくはなかった。

 

物事が滔々と流れてくれることを祈ること数分、各々準備が完了し中庭に集合していた。

 

星空界への移動方法は単純で、空を飛び上へ上へと飛翔するだけ。

飛んで行くのは並大抵の体力では行えないので得策とは決して言えない。

E資源のテクノロジーを使用すれば星空界へ向かうための乗り物を製作できるのだが、製作期間が長すぎるため待っている時間が惜しいため、自力で飛んでいく結論に至った。

 

ラミエル「俺も同行するぜ。星空界には行ったことなかったから昔から気になっていたんだ」

 

リョウ「ラミエルが仲間になりなそうな目でこっちを見ているから連れていくとしよう」

 

ウリエル「ラミエル、リョウ達の迷惑になるようなへまをするんじゃないよ」

 

ラミエル「しねぇっつーの。母親じゃねぇんだから」

 

ウリエル「同じようなもんでしょ?」

 

ラミエル「…否定はしねぇよ」

 

ウリエル「相変わらず可愛らしくないねぇ。リョウ、ラミエルのこと頼んだよ」

 

リョウ「ほいよ了解」

 

気恥ずかしそうに顔を背けるラミエルと、旅路へ行く息子を見送るような目で微笑むウリエルのやり取りを見終え、一同はシェオルの街から出るため門へと向かった。

 

門番のラシエルに用件を伝え、巨大な門が開く。

久々に視界に映る幻想的な雲海にアイリは思わず声が漏れる。

 

リョウ「長距離を飛ぶことになる。準備はええか?」

 

アイリ「もっちろんさー!我が身は既に覚悟完了!」

 

ラミエル「持久力なら自信はあるつもりだ。休憩無しでも構わないくらいだ」

 

シャティエル「整備、機能、システム、全て問題ありません。いつでも出発可能です」

 

リョウ「よーし、行きますか。『天使の加護』を発動した状態を維持して飛ぶから、みんなできるだけ離れないようにね」

 

アイリ「オーキドーキ!カイ君、楽しみだね!」

 

カイ「おほしさま!はやくみたい!」

 

アイリ「あたしも早く見たい!ということで元気よく、行ってみよー!無限の彼方へ、さぁ行くぞー!」

 

純白の翼を広げ、大地を蹴り大空へと一番手に羽ばたいたアイリは自身が出せる最高速度で上昇していく。

かるく手を振るウリエルに答えると、リョウ達も翼を広げ飛び立った。

 

雲一つない、青一色の風景。

果てしなく続く碧空を斬り裂き通過するのは四つの影。

何もない青一色の空間は息を呑む程に絶景で美しく、自分達がこの絶景の場を一人占めできていると酔いしれてしまいそうになる。

 

シェオルの街並みが真上から一望できていたが、今は

 

シャティエル「ラミエルさん、不躾を承知で訊ねるのですが、先程ウリエルさんは母親のような存在だとおっしゃっていました。ウリエルさんはラミエルさんの母親ではないのですか?」

 

ラミエル「あー…確かに母親ではないな。両親は俺がガキだった頃に悪魔に殺されちまったんだ」

 

 

~~~~~

 

 

ラミエルの両親は何処にでもいる普通の天使だった。

両親は悪魔と戦うための部隊に所属していたため、ラミエルと触れ合う時間が少なかったが、休日や休暇を取れた日には、これまでの寂しさを埋めるかのように、ラミエルと触れ合うための時間に費やした。

仕事の関係上、会える時間は少なかったため、溺愛していたとは決して言えないかもしれないが、親から与える愛や真心は誰にも負けないと豪語できる程の愛を与えてきた。

 

幸せな日常が続いていたが、突如として終わりは訪れた。

 

シェオルの周辺に悪魔が出現し、大規模な戦闘が行われた。

サタンフォーのベルゼブブ、アンドロマリウスが堂々と先陣に立ち、一般兵を弄ぶかのように殺戮していった。

実力が天と地の差がある状況を打破するために、四大天使全員が出陣し、激戦を繰り広げた。

 

ラミエルの両親は壁の付近を哨戒しており、悪魔が門を通過しないよう警戒しながら激戦区と化した戦場を遠目で見ていた。

人数も百単位で、武器も設備も整えられ、完璧と呼べる防御体制にあった。

緊張感が漂い、緊迫した空気にある中で、悪魔は前触れもなく襲撃してきた。

離れた箇所で戦闘している間、戦力が手薄となった壁に狙いを付けたサタンフォーの一人、リリスが突貫を行った。

間諜として送り込まれたグレムリンから警備が手薄となった箇所を知られ、瞬く間に劣勢に追い込まれてしまった。

当時から門番を行っていたザキエルが対峙するも、押され気味となっていた場面に駆け付けたのが、異変を察知し舞い戻ってきたウリエルだった。

ザキエルと協力し、戦いを有利に進めていっていたが、妖艶な笑みを浮かべたリリスは触手を伸ばし、二人の天使を拘束した。

 

その二人の天使が、ラミエルの両親だった。

人質を取るという卑怯卑劣な悪魔らしいやり方を行使し、開門するよう要求してきた。

従わない場合、二人の命の灯火は消えることとなるのは明白だった。

拘束された二人に息子がいたことを知っていたウリエルは悩んだ。

シェオルの街に住む多くの住人の命と、二人の命を天秤に掛けるのであれば、多くの人は二人を捨てると無慈悲にも判断を下すであろう。

強欲ではあるが、両方を救いたいという思いが強く、何より二人が死ねば、幼い息子は身寄りがないため孤児となってしまうことを知っていた。

故に判断が遅れ、状況を打破できる策を練っていたところで、捕らえられた二人が言った。

 

「俺達のことはいいから、街の人々を救え」

 

「私達の愛する息子のことを、よろしくお願いします」

 

捕らえられ自分達の命が危機に晒されているというのに、大勢の同胞達の命と、愛する息子の未来を与えることを考え、自分達のことを諦めるよう促した。

 

首を縦に振りたくはなかった。

今すぐにでも手を伸ばし助けたかった。

だが天界を統治する者として、どちらを選択するかは

明晰だった。

 

苦渋の決断により、ウリエルは再度リリスに全力の攻撃を行い、残された全兵力を上げての一斉攻撃を命じた。

ウリエルの強烈な猛攻撃に耐えきれなくなったリリスは撤退したが、攻撃を再開したと同時に、二人は絶命してしまった。

悪魔をシェオルに通すことを阻止できた功績は大きかったが、ウリエルは自身の決断と判断が決して正しいとは思ってはおらず、悲哀と悔恨、自身に対する強い義憤、あらゆる感情が混濁した感情で俯いていた。

 

リリスの撤退と同時に、ベルゼブブとアンドロマリウスも四大天使の実力に押され撤退し、戦闘は終わりを告げた。

 

多くの死傷者が出たものの、我が身を削りながらも戦い勇姿を見せシェオルを守りきった四大天使は、天界中の天使から称えられた。

世の前に出るときは誇りを抱く顔をしていたが、どのような状況でも対処できる力がなかったせいで救えなかった後悔が心の内側を塗り潰していた。

幼かったラミエルに本当のことを告げようとも理解できる筈がなく、せめてもの償いとして、自分がラミエルの育て親になると決めた。

 

それが、烙印を押された自分ができる、見殺しにし散華してしまった両親に償えるせめてもの行動だった。

 

四大天使としての使命を全うしつつ、ラミエルとの時間を決して潰さないよう全力を尽くした。

他の四大天使や、事情を知る天使達の助力を得て、自分が与えられる愛を与えてきた。

年を重ねる毎に成長を続け、いつしか悪魔と対峙する場面に備え、戦う術を、悪魔達の情報、知識を教え叩き込んできた。

 

現在はウリエルの愛ある育ての甲斐もあり、立派な青年へ成長を遂げた。

年齢的に何処にも属してはいないが、兵にも負けない程の実力者となり、事ある毎に、ウリエルや時空防衛局の手伝いを率先して行っている。

 

 

~~~~~

 

 

ラミエル「…と、俺の過去に関してはこんなところか。悪いな、暗い話になっちまって」

 

アイリ「話してくれてありがとうラミエル君」

 

シャティエル「ラミエルさんにも辛い過去があったのですね。申し訳ありません。思い返すのも辛いであろう過去の話を無理にさせてしまって」

 

ラミエル「気にすんな。俺は気にしていない。あまり重く捕らえなくていいからな。心配してくれるだけありがたいってもんだ」

 

シャティエル「そう仰ってくれると幸いです」

 

アイリ「ラミエル君は、悪魔に対して報仇雪恨の意思はあるの?」

 

ラミエル「敵討ちねぇ…ないと言えば嘘になるな。記憶にはないが、俺の両親を殺した相手だからな」

 

口から出る言葉には覇気がなく、何処と無く沈んだ表情にも見える。

心を、意思を持つ生物であれば、両親を殺した相手を憎まないという方が無理があるだろうし、悲しまないということもないだろう。

 

ラミエル「…アイリ、お前はどうなんだ?」

 

アイリ「え、あたし?」

 

ラミエル「俺とは全く境遇はちがうけど、悪魔はお前の人間としての人生を終わらせてしまった元凶なんだぜ。その場には天使であるウリエルもいたから、同じ立場だけど、お前は許したからそれでいいんだろうけどよ」

 

傍目からでも分かる不幸な出来事に巻き込まれたアイリにとって、悪魔は憎々しい討つべき敵だ。

自身の人生を滅茶苦茶にして本来ならあり得ない転生を受けてしまい、異世界で過ごすことを強いられた彼女でも、何も思っていないと言えばやはり嘘になる。

 

アイリ「悪魔のことは許せてはいないよ。でもエレンみたいにお母さんや知人が食われたわけでもないから、怒髪天を衝く程の怒りもなければ憎しみも沸かないんだよね。でも、悪魔がラミエル君やシャティ、現実世界に住む人達に害を及ぼすのなら、看過することはできない。あたしのような不幸な出来事に合う前に、根絶やしにしたいって思う」

 

ピコ「立派な志なんだけど、自分に起きた事に関してはあまり気にしていないように聞こえるんだけど…」

 

アイリ「いやいや気にしてるよ銀さんみたいにふざけてても気にしてるよ。それよりも、異世界に転生できた喜びの方が大きすぎて、忘れちゃうんだよね~♪」

 

ピコ「やっぱりアイリって凄いって言うか、バカと言うか…」

 

アイリ「ポジティブって言って欲しいな!実際悪いことばっかりじゃないもん!」

 

ラミエル「魂が消滅仕掛けて、転生してしまったアイリにとって良いことがあったのか?」

 

不幸な災難に合いながらも、自身にとって良いことがあったのかと疑問に思い、眉を顰めながら尋ねた。

 

アイリ「あんな奇怪な出来事がなかったら、ラミエル君やリョウ君、ピコ君、シャティ、カイ君に出会うことはなかった。これって、宝くじが当選するよりも低い確率だと思うんだ。本来なら現実世界から異世界に干渉することなんて有り得ないことなんだから、今こうやって当たり前の様に会話できているのって奇跡なんだよ。異世界ファンタジー要素に触れた喜びは勿論だけど、宇宙よりも広い時空の中で、リョウ君達と知り合えて、何気ない会話や生活が何より嬉しいの!」

 

満開の笑顔で述べる顔は幸福の色で満ちている。

 

現実から遊離した摩訶不思議な冒険を送る日々が新鮮で、倦厭することがなかった。

冒険を巡るアドベンチャーよりも、アイリにとっては誰かと一緒に接する時間の方が新鮮だった。

現実世界では一人で行動し、誰かと馴れ合うような度胸がなかったため、友人や仲間と言える存在が多くでき、何気無く接し会話できている現在の環境が楽しくて堪らない。

 

羨望していた夢が実現し、寂寞だった日常は一変した。

手にした日常を、決して手離したくはない。

平和な日常を崩すのは、邪悪なる者達。

どの世界にも必ず巨悪が存在し、変哲もない日常を無差別に崩壊させる。

アイリは自分のためでもあり、周囲にいる自分の知人の悲しい顔を見ないために、戦う決意を固め戦場へ赴いている。

 

その気持ちはアイリだけではなく、ラミエルやリョウ、他の人達も同様の思いであり、戦う理由にもなっている。

 

アイリの心中を理解したラミエルは納得し、自らに起きた災難を僥倖に巡り合えたと捕らえる常軌を逸する思考を可笑しく思い、笑みが零れた。

 

ラミエル「やっぱずげぇわお前は。その奇跡から得た仲間と日常を守れるよう、これからもお互い精進していかないとな」

 

アイリ「勿論!幸せいっぱい夢いっぱいな日常を守るために、青き清浄なる世界のために、全力を尽くしていこうじゃないか!心臓を捧げよ!」

 

ラミエル「心臓はそう簡単に捧げたくはないな…まぁ、それくらいの覚悟で挑むぜ」

 

互ミいに因縁深い悪魔を討ち滅ぼす覚悟を胸に刻んだ。

ラエルが拳を前に突き出すのを見たアイリは真似するように拳を前に出し、止めどなく広がる碧空の中で、二人の拳が合わさった。

更に絆を深められたことに歓喜したアイリは朗らかに笑みを浮かべた。

 

 




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