ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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みんな喜んでください、ロリキャラの登場です


第54話 天駆ける星龍

シェオルを出発して数分が経過した。

自分達が過ごす絢爛街並みは既に視認できなくなっていた。

文明の利器を頼らなければ決して辿り着けない遥か上空を飛行しており、上昇するに連れて酸素が薄くなっていく。

酸素が薄くなるということは、当然だが呼吸するのが困難となる。

リョウとピコ、シャティエル以外の面々は徐々に息が上がっていってしまっている。

 

リョウ「…そろそろやな」

 

頃合いを見計らったリョウは『天使の加護』を発動させた。

背から伸びる翼が白い粒子が拡散されるように展開し、全員の周囲を囲んだ。

どこか安堵するような暖かな光の粒子に包まれたアイリ達は、原理は不明だが、地上にいるときと同様に呼吸を行うことが可能となり徐々に落ち着きを取り戻していった。

 

『天使の加護』を発動させた数分経った頃には、澄みきった碧空は消え去り、空以上に無限に広がる、燦然と輝く星々が儚く灯っている黒一色の空間、宇宙へ突入した。

 

アイリ「宇宙キターッ!!」

 

カイ「きたー!!」

 

宇宙へ来たことにテンションが舞い上がったアイリはカイと共に腕を大きく突き上げた。

 

視界に入れるだけで分かるのは、星空界の宇宙は現実世界の常識にある宇宙とは大分異なる。

 

取り上げられる点の一つとしては、星と星との距離が極端に近いということだ。

地球の様に巨大な星も存在すれば、一分走れば一周できる程小さな星も存在しており、一つ一つの星々が数分飛行すれば到着できてしまう近距離だった。

全ての星々がこのような距離感な訳ではなく、現実世界と同様に、途方もない天文学的数値で離れているものも存在している。

互いの重力に引っ張られ星と星が衝突するような惨事に至らず、常識を超越した絶妙なバランスで星が存在している。

 

もう一つ上げられる点は、星と星を行き来する移動手段である宇宙船が飛行していること。

現実世界で言うUFOと呼ばれる乗り物が飛行しており、アイリ達の側を通り宇宙を駆けていく。

円盤型のものや飛行機やジェット機、戦闘機のような型のもの等、乗り物の形状は様々で、宇宙のテクノロジーや世で言う宇宙人と呼ばれる人種も様々なのだと実感できる。

 

アイリ「凄い…天の光は全て星って言うだけある。 あたしの知ってる宇宙とはぜんぜん違う。 例えるならス○ー・ウォーズみたいな世界観なのかな?」

 

リョウ「うーん…近いような、遠いような…」

 

ラミエル「んで、何処から探すんだ? まさかご丁寧に一つ一つ虱潰しにする非効率なやり方じゃねぇだろ?」

 

リョウ「まさか。 順風満帆に事を進めるなら、『ゾディアック宮殿』に向かうのが一番やろ」

 

アイリ「ゾディアック? 聖○士星矢かな? それともフ○ーゼ?」

 

リョウ「少し先に行った辺りにあるから、もうちょっと頑張って飛ぼう」

 

アイリ「スルーしないで~」

 

リョウ「ん? 何か言ったかアイリ?」

 

アイリ「耳は大きいのに聞こえないなんて可笑しくない?」

 

リョウ「ゴッド・ハンド・クラッシャー!」

 

アイリ「でおきしす!?」

 

カイ「アイリ、だいじょうぶ? いたいのいたいの、とんでけー!」

 

アイリ「ああ^〜いいっすね^〜。 本当に痛みが飛んでいったかも。 やっぱりカイ君は隣にいるでか耳とは違ってあたしの癒しだよ~」

 

リョウ「アトミックパンチ!」

 

一度と言わず二度も小馬鹿にする冗談を放つアイリに目掛け拳を突き出すも、アイリは上半身を捻り華麗に回避した。

 

アイリ「名前が凄いだけの正拳突きじゃん。 あたしに同じ技は二度も通じぬ。 今やこれは常識!」

 

リョウ「…抱き抱えているカイに迷惑が掛かるやろうし、今回は見逃す。 殺すのは最後にしてやろう」

 

アイリ「凄く不穏なセリフが聞こえた。 あたしこの星空界の話が終わる頃には死んじゃうかもしれない。 ラミエル君、その時はあたしにザオリクしてね」

 

ラミエル「よく分からんけど無理だ。 …ん?」

 

ラミエルが血相を変え、その場で立ち止まり後方を向いた。

何事かと尋ねようとしたアイリだったが、異変に気付き身構えた。

 

アイリ「何か、来る。 凄い力を持った存在が凄まじい速度で迫ってる」

 

ラミエル「悪魔の奴等、アイリを追ってここまで来たのかよ。 仕事熱心なことだぜ」

 

アイリ「ううん、悪魔じゃないみたい。 何だろう…兎に角大きな力を持った何かってことだけ分かる」

 

シャティエル「…視認できました。 あれは、子供ですね」

 

アイリ「え、子供?」

 

望遠レンズが備え付けられた瞳で捕らえた迫り来る未知の存在は子供だと判明した。

何故子供が宇宙空間で一人で行動し、此方に意図的に向かって来るのか、目的が不明確である以上は警戒を緩めてはいない。

 

だが、リョウとピコだけは口角を上げ、待ち構えていた。

 

ピコ「今日は休日だったんだろうね。 まさか僕達が来た世界に来てるなんて、偶然すぎるね」

 

リョウ「これこそ奇跡って言うのかね。 会えてわしは嬉しくて昇天しそうやけど」

 

アイリ「え、会話からしてリョウ君達の知り合い?」

 

?「ドーンだYO!!」

 

リョウ「ふかまる!?」

 

猛烈な速度、正に漆黒の宇宙を駆ける彗星そのもの。

 

アイリ達の隣を通りすぎたそれはリョウの懐を目掛け一直線に突き進んだ。

回避する様子のないリョウは子供を受け止めたが、凄まじい衝撃に呻き声を上げ後方へ吹っ飛び、小惑星に衝突した。

粉塵が巻き上がり、視界が奪われたため安否を確認できず、居ても立ってもいられなくなったアイリ達は急いで飛行し小惑星に着地する。

 

アイリ「リョウ君! 大丈夫!?」

 

リョウ「大丈夫だ、問題ない。 ベ○ータみたいに岩盤浴になるところだったけどね」

 

?「リョウ兄ー! 久し振りー!」

 

粉塵が霧散し視認ができるようになった。

倒れながらも微笑むリョウの腹の上には、向日葵が満開に咲いたかの様に笑みを浮かべている幼い少女がいた。

 

外ハネが可愛らしいショートボブの艶のある若草色の髪。

頭部からは人間のものとは思えない二本の黒い角が生えている。

白と若草色のフリルが施されたカットアウェイショルダーのソフトプリーツワンピースを着ている。

首から下げる星形の宝石が掛けられたネックレスが他の星々よりも輝いて見える。

 

アリスと同様の天真爛漫さを彷彿させる明るさを見せる彼女は無邪気にリョウの腹の上で飛び跳ねている。

 

リョウ「久し振り。 元気そうで良かったよ、テュフォン」

 

テュフォン「私はいつでも元気だよー! リョウ兄も元気そうで良かった!ピコっちも久し振り!」

 

ピコ「やっぱりその呼び方は変わらないんだね…。 でもテュフォンらしくて安心した」

 

曇りのない水晶を具現化したかのような透き通った純粋な笑みを見ると、此方まで自然と笑みになってしまう、魔法のような魅力があった。

 

リョウはテュフォンの矮小な体を抱き抱え、艶やかに輝く若草色の髪に手を置き優しく撫でる。

心地良さそうに目を細める姿は、愛くるしいという言葉が相応しかった。

心配になり駆け付けてくれた仲間達に視線を向けると、アイリは携帯電話を耳に当て、冷ややかなで視線を送っていた。

 

リョウ「…一応聞いておくけど、何処に電話してるんだ?」

 

アイリ「事案かと思って、時空防衛局に連絡を」

 

リョウ「わしをロリコン扱いせんといてくれ!」

 

アイリ「あれ? 違ったんだ」

 

リョウ「…選べ、ゴッサムシティかヤーナム、どちらに送られたいかを」

 

アイリ「サーセンした!」

 

リョウ「良いZOY、許すZOY」

 

テュフォン「ラミエルもいるー!」

 

ラミエル「うっす。 相変わらず元気な奴だよ」

 

アイリ「え、知り合いだったの?」

 

ラミエル「リョウ達と一緒に何度か会ったことあるんだよ」

 

テュフォン「このお姉さん達はだぁれ?」

 

ラミエルの隣にいる見事な土下座をしているアイリと、代わりにカイを抱いているシャティエルを指し疑問符を浮かべた。

 

リョウが簡潔に説明をし、互いに自己紹介を行った。

 

テュフォン「ゾディアック宮殿に向かうならテュフォンも行く! 久し振りにサジットにも会いたい!」

 

アイリ「サジット? 12宮Xレア? それとも天ノ川学園高校の理事長? 若しくはやっぱり聖○士星矢!?」

 

リョウ「話が進まへんから…選べ、アズカバンかインペルダウン、どちらに送られたいかを」

 

アイリ「サーセンした!」

 

リョウ「いいーよぉ~(新喜劇並感)」

 

テュフォン「アイリお姉ちゃんおもしろい。 アレクパパとアリスママみたい」

 

アイリ「パパ!? ママ!? あの二人の子供なの!? あたしに内緒でちゅっちゅらびゅらびゅしてたの!?」

 

リョウ「ちゃうちゃう。 二人は結婚はしてないよ。 テュフォンはね、二人が星空界に立ち寄った時に偶然出会った、孤児なんよ」

 

 

~~~~~

 

 

テュフォンは星空界で生まれたドラゴンの血を引き、星の力を司る子供。

両親の身元は一切不明で、何処で産まれたかも分からぬ孤児だった。

無限に広がる途方もない宇宙を彷徨い、星から星へ転々としていた。

幼い少女が当てもなく物寂しそうに歩いていれば、心配になり声を掛ける心優しい人物もおり、屡々世話になったこともあった。

 

だが、彼女の産まれながらにして持っていた先天的な能力が災いをもたらした。

 

テュフォンは常人の何十倍という筋繊維密度がある。

見た目は普通の女の子にしか見えないのだが、筋肉組織の発達が常人と比べても遥かに高く、僅かに力加減を間違えただけでも惨事を招くことに繋がってしまう。

年相応の児戯のつもりでも、常軌を逸する膂力により害を与える事態に成りかねない。

 

実際に傷付けるつもりもないのに、世話になった人や物に触れたりするだけで、人体に危害を加えたり、器物を破損させてしまう。

恩を仇で返す形となってしまい、忌み嫌われ、疎まれ、安息できる場所を手放す他なくなってしまった。

呪われた先天的な能力により、同様の事態が幾つも起きてしまい、心の拠り所となる場所は存在せず、人混みが多い星や都邑を避け、ひっそりと陰湿な場所へ身を潜め毎日を過ごした。

 

幼くして、世間から禍殃だと悪口雑言を受けていたテュフォンの精神は崩壊寸前だった。

常識的に考えれば、幼い頃から愛を与えられず過ごしていれば、精神面が正常に保てる筈がない。

純粋な心の持ち主であるテュフォンは決して誰かを怨み憎み意趣返しをすることはなく、己の力が発端で誰かが傷付き迷惑になってしまうことに悲しみ涙を流し続けていた。

 

いつしか、テュフォンの噂が吹聴され、世間から避けられ始めた。

幼い少女であろうと誰も相手にはせず、惨憺な姿になろうとも、行き交う人々は見て見ぬ振りをしていた。

 

絶望の淵に沈む最中、救いの手を差し伸べたのが、偶然にも星空界へ訪れたアレクとアリスだった。

二人はテュフォンの過去の出来事を後々知ることになるも、世間に飛び交う風説を受け入れず、顰蹙することなく彼女の存在を受け入れた。

自身の力により再び誰かに危害が及ぶことを恐れていたテュフォンは他者と親睦を深めることを拒んだが、二人は諦めず、これまで得ることのできなかった事を与えた。

 

他者と触れ合い、話すことの喜び。

友達や仲間と呼べる存在の大事さ。

幸せを分け合うこと。

心の底から溢れ出る温もりを。

それら全てを人括りにした、『愛』と呼ばれるものを。

 

心を持つ生きる者が、必ずしも与えられる、なくてはならない、愛。

儚く、形がないもの。

長い間、どれだけ縋っても、手に入れる事ができなかった、暖かな何かを感じ取った。

 

見捨てず畏怖することなく最後まで真摯に向き合い続けた二人に、自分も世界を巡る旅に同行させて欲しいと涙ながらに懇願した。

断る理由は勿論なかった。

純粋無垢なテュフォンを悲しみの連鎖から断ち切るため、放置することなど断固出来なかったため、快く同行を許可し、一時期は共に旅をしたこともあった。

リョウやピコ、ユンナ等の知人とも知り合い、多くの仲間や友と呼べる存在ができた。

特に親睦が深いアレクとアリス、リョウやピコ達は仲間や友達の垣根を超え、家族の様な存在として捕らえている。

中でも愛着を持って接してきたアレクとアリスは、父と母の様に慕っており、パパとママと呼ぶようになった。

 

現在はアシュリーと同様に、ユグドラシルを守護しており、時空防衛局等から『天駆ける星龍』という二つ名を持つ実力者となった。

友や仲間、家族とも呼べる大切な存在に囲まれ幸せな生活を送っている。

 

 

~~~~~

 

 

テュフォン「テュフォンの昔はこんな感じだよー!」

 

望んでいた事が成就したテュフォンの顔には、過去の出来事など露聊かも感じさせない笑顔があった。

終始口を開かず耳を傾け真摯に聞いていたアイリはテュフォンの目線に合わせるように蹲み抱き締めた。

 

アイリ「辛かったね。 よく頑張ってきたね」

 

テュフォン「昔も、アレクパパやアリスママにも同じこと言われたなー。 今のテュフォンがいるのは、アレクパパやアリスママ、他にも沢山の人達のおかげ。 その中には、アイリお姉ちゃんも入ってるよ」

 

テュフォンはアイリの背中に手を回し抱き締め返す。

 

テュフォン「テュフォンに優しくしてる人は、みんなみんな大事。 昔の事なんて忘れちゃうくらい、楽しい想い出をくれたから、テュフォンは大丈夫だよ。 ありがとう、アイリお姉ちゃん!」

 

自身に優しく接してくれたアイリという新たな仲間ができた喜びが表現されたかのように、テュフォンの抱き締める力が強くなった。

全員は心暖まる場面に微笑みを浮かべ眺めていた。

 

シャティエル「『愛』…私は、それを感じたことがあるのでしょうか?」

 

誰にも聞き取れない小声でシャティエルが呟いた。

心を得たばかりのシャティエルには未だに分からない事が無数に存在する。

具現化した物ではないため、どのような物か分からない、『愛』。

 

本人は気付いていないだけで、今までに与え与えられてきている。

熟知するには程遠いのかも知れないが、目の前の二人を見ていると、心の奥底が温かく感じ、未来永劫この光景を見るため守りたいとも感じた。

 

アイリ達と行動を共にしていれば、何れ全てを理解できる時が訪れるだろう。

 

リョウ「夜に輝く星座のように素晴らしい場面に横から失礼するけど、そろそろ…ん?」

 

声を掛けようとしたリョウは異変に気付き、笑顔は徐々に心の奥底へと消え入るようになくなっていった。

微笑み力強く抱擁するテュフォンとは対称に、アイリの力は緩まっており、腕をだらりと下ろしている。

心做しか、アイリの顔が青ざめていっている。

 

思考すること数秒、リョウは冷静に肩に乗っているピコに目を向けた。

ピコもリョウと同様に何かを察したような視線を向けていた。

 

ピコ「…テュフォンって常人の何十倍もの筋力があるんだったよね?」

 

リョウ「ああ。 喜びに浸っているテュフォンが現在手加減が出来ていると思うか?」

 

互いに冷や汗が吹き出るのが確認できた。

口を閉じ押し黙っていた一秒にも満たない時間が流れる。

瞬時に宙へ跳び人間サイズへと巨大化したピコと同時にリョウは駆け出した。

 

ピコ「テュフォン今すぐ力を緩めてー!!」

 

リョウ「アイリが事切れるからそれ以上いけない!!」

 

テュフォン「へ? わああああ!? アイリお姉ちゃんしっかりー!!」

 

咄嗟の行動により、アイリは熱い抱擁により昇天することなく事なきを得た。




友達にテュフォンの設定見せたら鬼滅の刃の甘露寺ちゃんみたいと言われました笑
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