リョウ「…完全にはぐれてもうたな」
無限と呼べる程に広大な星雲。
淡黄色だけで支配された虚空の中、リョウは一人で飛行していた。
ラミエルとシャティエル、ピコと悪魔兵と戦闘を繰り広げていたのだが、相当の数の相手をしているうちに散り散りになってしまい、余儀無く単独行動をすることとなってしまった。
アイリと合流するか、仲間を探しながらクラウソラスを見つけるため周囲を探索するか脳内で会議が行われる。
優先順位としては、クラウソラスに触れなければならないアイリを見つけ出し共に行動をすることだ。
だが右も左も分からない仲間を捨て置くこともできない。
監視者の力を行使すれば仲間の居場所どころか、クラウソラスの在処まで分かってしまうので、気は進まなかったが何か起きてからでは元も子もない。
集中しようと瞳を閉じた時、周囲が喧騒に包まれた。
誰かが悪魔兵と戦っているのは明らかだったため、合流することを最優先とし、音の鳴る方へと飛行する。
?「こいつらしつこいよー!」
?「ホントしつこいー!」
鋭い刃音や、爆発音が、悪魔兵達の荒れ狂う声が混濁する中から聞こえたのは、幼い二つの声。
戦場には不似合いな声を頼りに更に移動すると、半径数十メートルは程しかない不毛の惑星が姿を現した。
その惑星を足場にして、次々に押し寄せる悪魔兵達を相手にしている二人の子供の姿があった。
一人は黒と金を基調とした服装を身に纏った、二本の短剣を手にした赤色の短髪の少年。
一人は白と金を基調とした服装を身に纏った、煌めく銀色の二丁の銃を手にした水色のショートヘアーの少女。
悪魔が蔓延る星雲の中に何故子供がいるのか疑問を浮かべるだろう。
だが二人の子供は、サジタリウスと同等の立場にある、星空界を統治する存在。
異例ながらも二人で成り立つ、十二星座神官双子座担当、カストルとポルックス。
知人であるリョウは避難させる事を最優先させず、共闘するため接近する。
新たな敵に気付いた悪魔兵達は武器を手にリョウに一斉に襲い掛かる。
邪魔者を排除し偉勲を立てようと我先に飛び出してきた一体一体の悪魔を凪払っていき、惑星が地表が姿を現した。
視界に映ったのは、数人の悪魔兵が矢を番えた姿。
弦を引いた状態だったため、回避する余裕がなかったため『天使の加護』を発動しようとした。
リョウ「…あら?」
白い光の粒子が舞い散る筈だったが、加護が発動することはなかった。
リョウ「使いすぎたみたいやのう…!」
天界から星空界までほぼ『天使の加護』を継続して発動させていたため、一時的に使用不可能になってしまっていた。
力が半減されているため、酷使していた『天使の加護』を維持できなくなってしまっていることに気付けなかった己の不甲斐なさを呪いつつ、矢を受けきるため構える。
大量の矢が放たれるも、華麗な剣裁きにより全て払い除け接近するも、数が多すぎるが故に反応しきれず肩と太股に矢を受けてしまう。
痛みに顔を歪ませるも、移動速度に変化はなく、攻撃を受けたと思わせない軽快な動きで矢を退け悪魔兵へと肉薄し剣を振るい、秒で矢を放った一部隊を殲滅させた。
地に降り立ったと同時に駆け出し、二人の子供の周囲にいる悪魔兵達を斬り伏せた。
リョウ「カストル、ポルックス、無事か?」
カストル「リョウさん! 助かったよー!」
ポルックス「助けてくれるのならもっと早く来てよー!」
二人は助太刀に入ったリョウを視界に入れると、安堵仕切った笑みを浮かべた。
その後もリョウと協力し周辺に蔓延る悪魔兵達は粗方倒すことに成功した。
惑星に居座り続けていては再び襲撃される可能性があったため、その場を離れ星雲の中へと身を潜ませていた。
カストル「僕達との実力の差はあるとは言っても、あんなに数がいたらたまったものじゃないよ」
ポルックス「なーんで星空界に悪魔族がいるの? リョウ何か知ってる?」
リョウ「実はわしにもさっぱりなんよ。 わし達は別の目的でこの世界に訪れてるだけやからね。 ついでと言っちゃ聞こえは悪いけど、わしも悪魔を殲滅する手助けをさせてもらうで」
ポルックス「それはありがたいばかりだよー! でも、あまり長居しない方がいいんじゃ…」
カストル「僕とポルックスは兎も角、一緒にいたヴァルゴは拒絶すると思うし」
リョウ「その時はその時で何とかする。 取り敢えず、移動しながら詳細を説明するわ」
カストルとポルックスに星空界に来た経緯を説明しつつ、仲間の合流、及びクラウソラスの探索のため移動を開始し始めた。
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カイ「けしき、かわらないねー」
アイリ「いい加減飽きてきちゃった。 あたしはわざマシンを使えなければ『きりばらい』を覚えれないからな~。 こんなに霧が出てるのは白鯨の仕業かな? それともサイレンヘッドの出る前兆?」
ヴァルゴ「アンドロメダ星雲はガスに似た気体が周囲に霧散されている場所だから、眺めに変化がないのは仕方ないかも」
アイリ「我慢するしかないか~」
カイ「がまんするしかないか~」
ヴァルゴ「でも開けた場所もあるのよ。 あ、ほら! 着いた!」
何十分と上下左右、前方後方と変わらぬ景色を徘徊するように進み続けていた。
丁度ヴァルゴが話題を出し始めたその時、霧が覆われていない場所へと辿り着いた。
霧がかかっていないため、漆黒の宇宙が広がっている。
開けた空間の中央には島が浮いており、過酷な環境下な中で反映した自然豊かな緑が癒しを与えてくれる。
悪魔達の気配は感じず、待ち伏せをされている可能性がないと判断したアイリ達は島に足を着けた。
空気があるおかげか、涼しい風が吹き抜け頬を撫でた。
一時の安息に思わず気が緩み顔がほころぶ。
アイリに肩車されていたカイは飛び降り小さな池の水面を指でつついて遊んでいる。
テュフォン「綺麗な場所だね!」
アイリ「凄い絶景…あたしの世界ではまず見られないような景色だよ」
ヴァルゴ「星空界にはここよりもっと良い景色が見れる場所がいっぱいあるわ。 今度アイリちゃんにも見せてあげたいわ!」
アイリ「是非お願いします! アニメを超える絶景をあたしの目に焼き付けたい!」
?「残念だけどその絶景は見れずに終わっちゃうかもよ?」
澄んだ女性の声が後方から聞こえた。
人が立ち寄らない場所なため、人の声がすること事態が不自然なため、反射的に身構え振り向く。
双頭刃式の槍を携えた女性が木の根本に座り込んで林檎を頬張っていた。
アイリ「あなたは! …誰だっけ?」
?「ちょっ!? 忘れちゃったの!? アイリちゃん酷いね~。 エクリプスのレミーネよ。 天界のライブ以降ね。 前回はあの消しゴムを相手にしてたからあまり関わりはなかったわね」
芯だけとなった林檎を放り投げ、腰に帯刀していたダガーを両手に持った。
戦意と殺意が籠る瞳を向けられると、思わずたじろいでしまう凄味を犇々と感じる。
ヴァルゴ「悪魔に続いてエクリプスまで…。 あなた達の目的はなんですか?」
レミーネ「目的はアイリちゃん、あなたを捕縛すること」
アイリ「え、あたし? ディーバでもないあたしを何で狙うの?」
レミーネ「あなたを人質にして、世界の監視者をエクリプスの傀儡にしようかなって思ってるの。 因みにこれは私の案」
アイリ「リョウ君をエクリプスの手先にするつもりなの? 何のために?」
レミーネ「世界の監視者の能力があれば、ディーバのライブ以外でのプライベートの行動を把握することが可能になる。 時空防衛局を除いて口外を禁じられていると思われるスケジュールも、監視者の能力があれば丸分かりってわけ。 これを思い付く私って天才よね? 褒めてくれてもいいのよ?」
ヴァルゴ「また過去と同じ悪辣な行いを繰り返そうとするつもりなんて…」
テュフォン「そんなの絶対に許さない…!」
過去に起こしたという言葉にアイリは反応したが、その疑問は即座に霧散する。
レミーネの行おうとしている計画にテュフォンは怒りの感情を露にしていた。
感情が高ぶるのと同調するように、次第に力も急激に高まっていく。
側にいたアイリとヴァルゴはテュフォンの底知れない膨大な力を肌を通して感じとることができ、無意識に一歩下がってしまった。
テュフォン「アイリお姉ちゃんには手出しさせない! リョウ兄を泣かせる人は許さない!」
眦を決したテュフォンは爬虫類を思わせる翼を広げ、地が陥没するほど踏み込み飛び出し爪を振るう。
レミーネはダガーで爪を防ぎ受け流しもう一本のダガーで首を撥ね飛ばそうとするも、空中で一回転し硬い鱗で覆われた尾でダガーを弾き、もう一度爪による攻撃を仕掛ける。
尾による防御に一瞬怯んだものの、体勢を立て直し再びダガーで防ぐが、レミーネは思わず我が目を疑った。
生まれながらにして持つ常軌を逸する膂力と、星の力を宿した藍色に煌めく爪の一撃により、硬度な鉄製の刃は粉々に砕け散っていた。
もう一本のダガーで反撃に移ろうとしたが、身を翻し回し蹴りを繰り出したテュフォンの敏速な攻撃がレミーネの腹部に直撃し、地を抉りながら吹っ飛んでいく。
テュフォン「リョウ兄をこれ以上悲しませないで! エクリプスのせいでリョウ兄は誰にも助けてもらえない立場になっちゃって、あの力を手に入れちゃったんだ! そのせいでシエルお姉ちゃんやさくらちゃんを失っちゃったんだ! またリョウ兄を苦しませようとするんなら、テュフォンはここであなたを殺す!!」
年相応の癇癪を起こし喚くように怒声が喉からはち切れるように出される。
家族であるリョウにこれ以上苦痛を与える所為を行わせたくない純粋な気持ちが、怒りの感情を膨らませている。
同時に力も増幅されており、幼い子供とは思えない尋常な殺気を放っている。
レミーネ「いやー流石、天駆ける星龍。 実力は折り紙付きね」
レミーネは口に溜まった血反吐を地面にぶちまけた。
先程の一撃で肋骨が折れ内蔵が破裂しており、戦闘続行は不可能な状態だが、痛みに顔を歪ませることなく立ち上がった。
ヴァルゴ「あなた、治癒の加護を受けているのね」
レミーネ「御明察よ乙女座さん。 私はこの加護があるおかげで痛みが感じるのは一瞬で済むし、時間は掛かるけど徐々に回復していく。 何処の誰かも覚えてない奴から奪った能力だけど、ホント役立つ」
ヴァルゴ「人から奪取した挙げ句、悪事を働くなんて、許せておけない!」
レミーネ「だったらどうする? 私を倒す? 残念だけどそう簡単にはいかないわよ? 今回は助っ人がいるから」
ヴァルゴ「助っ人?」
レミーネの背後に瞬間移動で何者かが突如現れた。
白と黒、対を成す色の翼を持つ堕天使、ルシファー。
思わぬ刺客にアイリは目を見開いた。
ルシファー「以外か? 元人間の娘。 久し振りだな」
アイリ「あたしは会いたくなんてなかったよ。 まさかデスピアの次は悪魔と手を組むなんてね」
ルシファー「互いに望むものが偶然この世界にあっただけだ。 それに、組織としての判断ではなく俺の独断で協定を結んでいる」
レミーネ「それは私も同じ。 セラヴィルクにも報告はしてないわ。 許可を得るなんて面倒だし、手柄を一人占めしたいからね~」
手柄を我が物にしたい、目的を得るためならば手段を選択しない胴欲で老獪なやり口にヴァルゴは呆れ混じりの溜め息を吐き、手に光を収束した。
ルシファー「乙女座、貴様に用はない。 引っ込んでいろ」
ヴァルゴ「何が目的かは知らないけど、この世界に害を成すなら野放しにはできないわ。 ここでエクリプスと共に討ち倒しちゃうわ!」
ルシファー「やはり口論では解決には至らない。 どの時代になってもこれだけは変わらないということか」
ルシファーは愛用の闇の剣、ティルフィングを召喚する。
禍々しい剣を見た途端、力を感じ取ったアイリは全身の鳥肌が立ち、血の気が引いていった。
アイリだけではなく、ヴァルゴとテュフォンも同様の反応を見せた。
心だけでなく、世界をも蝕み呑み込むようなどす黒い純粋な闇。
負の感情一色に染まり上げてしまうような闇はルシファーが剣を振り下ろすと同時に斬撃となりアイリ達に襲い掛かった。
四方に散り闇の斬撃を回避し、追撃に注意し態勢を立て直した。
再度ルシファーに目を移すと、ティルフィングが視界に入った。
気配を探らなくとも直視できてしまう闇。
目に焼き付いてしまう禍々しい闇は視界に入らずとも本能が拒絶反応を起こし、その場から逃走しろと脳が危険信号を発している。
アイリ「何なの? あの剣から出てる闇は。 リベリオンの時の比じゃない…」
テュフォン「アレクパパが使うティルフィングとは比べ物にならないくらい凄い。 やっぱり本物は違うんだね」
たった一人の増援により形勢が逆転し、戦闘意欲は失せ頓挫してしまう。
不敵な笑みを浮かべ歩みを進めてくるルシファーに対し、アイリは一歩、また一歩と徐々に後退していく。
ヴァルゴも警戒しその場を動けない最中、テュフォンだけは翼を広げ果敢に飛び出していった。
テュフォン「ルシファーお兄ちゃんは昔はもっと優しかったのに、何で…!」
ルシファー「時が経てば人は変わる。 君にも分かることだと思うんだが?」
星の力を宿した爪が縦横無尽に振るわれるも、涼しい顔付きのまま剣で軽く往なしていく。
実力差はほぼ互角で、どちらも押しては引いてを繰り返し、その場で停滞する静と動の激闘が繰り広げられていた。
静観する訳にもいかなかったが、手出しすれば却って邪魔になってしまうという事実は理解できる。
テュフォンは幼さとは裏腹に、幾つもの修羅場を潜り抜けているのが目の前で繰り広げられている戦闘が証拠となっていた。
レミーネ「ぼーっとしてちゃ殺られちゃうよ!」
背負っていた双頭刃式の槍を手にし駆け出した。
僅かな星の光さえも反射する程に磨き上げられた刃が迫り来る。
危機を察知したことにより、敵の強圧に押し負け足が強張り傍観していた状態から醒め、ガーンデーヴァを瞬時に取り出し槍を受け止めた。
鋭い金属音が響き耳を貫く。
レミーネの細身な身体から出ているとは思えぬ凄まじい力にアイリは押される。
歯を食い縛り力を込めるも、微動だにしなかった。
力での真っ向勝負では埒が明かないと思ったアイリは『シャインアウト』を繰り出しレミーネを吹き飛ばし距離を取る。
弓が武器なため遠距離戦が主流となるので距離を保たなければ繰り出せる技も出すことが不可能なためアイリの瞬時に思い浮かんだ判断は正しく、戦闘に慣れ成長が見られる。
アイリ「『ストレートアロー』!」
ヴァルゴ「私も加勢するわ!『スピカディフォメーション』!」
牽制に怯んだレミーネだったが、連発された光の矢を諸ともせず槍を振り回し弾き飛ばしている。
ヴァルゴの技、『スピカディフォメーション』による光による攻撃も俊敏で無駄のない動きで回避している。
レミーネ「まだまだこんなもんじゃ私は倒されないわ。 『飛竜狩り』!」
攻撃が緩んだ一瞬を見逃さず、凄まじい脚力で駆け抜け距離を詰め、防御を捨てた突きを繰り出す。
高速の動きによる縮地により躍り出たレミーネにアイリは驚きの表情を浮かべつつ、『エンジェルリフレクション』を展開し防御に徹する。
バリアに刃が触れた途端、火花が散る。
ただの突きによる単純な攻撃だったが、想像以上に重みがある一撃で、バリアが破られるのではないかと思い危惧してしまう。
一度矛先を離し、更なる一撃を加えようとした直後、レミーネの左右から円盤状の光が迫ってきた。
一瞥しただけで特に大きく反応を見せず、槍を大振りに回転させ光を斬り裂いた。
ヴァルゴの機転が利いた行動によりバリアが破られることはなく難を逃れることができたアイリは即座に『輝弓牙』を繰り出す。
光の刃と化した弓は回避することが不可能とも思える至近距離。
余裕を見せていたレミーネの表情が精悍なものへと変わり、体を後ろに仰け反らせ槍の柄で受け流すようにして防ぎきった。
威力を殺しきれず何回か横転し、ゆっくりと立ち上がる。
その顔は戦闘を楽しむ狂喜に満ちていた。
瞳は戦闘意欲と野心が混濁し燃えるように光り、アイリと歳の近い少女とは思えない獰猛な雰囲気を醸し出している。
世界を転々と跳梁するテロ組織である彼女の、様々
な修羅場を乗り越え数多の人間を無慈悲にも殺してきた片鱗が見えた気がした。
口元から流れ出た血を腕で拭き取り槍を再び構えるも、ヴァルゴが先手を仕掛けていた。
金槌の形となった光を瞬時に生成、レミーネの頭上へと振り下ろした。
何倍にもなる大きさの鉄槌にも関わらず、屈することなく上空へ向け跳び上がり『飛竜狩り』により一刀両断してしまった。
ヴァルゴの攻撃は終わってはおらず、真っ二つになった光を操り一体化させ、左右からレミーネを押し潰す形となった。
普通ならば圧縮され絶命するのであろうが、レミーネは光の中で暴れ狂うかのように槍を振るい光を細切れにし脱出した。
レミーネ「あーもう厄介ね。 作戦変更、面倒臭いから、乙女座から倒しちゃうねー」
目標がアイリからヴァルゴへと変わり、獲物を狙い迫るように眼光炯炯とした表情で狙いを定め地を駆ける。
ヴァルゴは剣の形に変えた光を手にしレミーネの特攻を真っ正面から受け止める。
衝撃に腕に痺れが走るが気力で耐え、周囲に光の球体を数個出現させ一斉にレミーネの懐へと撃たれ込まれる。
続けざまに手にした光を剣から鋭い針へと変形させ心臓を目掛け突き出す。
レミーネは回避行動を取らず、手にした槍を地面に突き刺し両手で掴みヴァルゴの顔面に回し蹴りをお見舞いした。
かるい脳震盪を起こしたのか、ヴァルゴの足取りは覚束ない。
アイリ「ヴァルゴさん!」
ヴァルゴの危機にアイリが矢を番えるが、その動作よりも早くヴァルゴの背後から二つの光の鞭が伸び、レミーネの両腕を拘束した。
ヴァルゴ「心配は無用よアイリちゃん。 十二星座神官の中でも弱い方だけど、私は負けないわ!」
振り向き笑顔で答えるヴァルゴの側頭部は先程の蹴りにより肉が裂け出血しており、美麗な金髪を深紅に染め上げていた。
ヴァルゴ「アイリちゃん、この場は私に任せてクラウソラスを探しに行って」
アイリ「え、そんな! あたしも戦います!」
ヴァルゴ「ここは私一人でもなんとかなるわ。 それに、十二星座神官として、世界を危機に脅かす輩を放っておくこともできないもの。 テュフォンちゃんもあの悪魔を相手にしているから、あなたはあなたの目的を果たして。 そこの妖怪の子を守りながら戦うのも厳しいでしょ?」
アイリの背後の木陰で怯えているカイを横目で見る。
ヴァルゴの発言の通り、守るべき者を配慮しながらの戦闘は困難だ。
アイリ「…分かりました。 御武運を!」
了承したくはなかったが、冷静に判断した結果、アイリはこの場をヴァルゴとテュフォンに任せることにし、カイを抱き抱え翼を広げ飛び立った。
レミーネ「あ、ちょっと! 私の今回の目的が退場しちゃうなんて! 逃がさないんだからー!」
力任せに腕に力を込めて鞭を引き千切り槍を引き抜き飛び出すも、何本もの光の柱が前方に突き刺さり行く手を阻んだ。
ヴァルゴ「私から先に片付けるんでしょ? あなたの相手は私よ」
レミーネ「もう面倒ね。 直ぐに終わらせてやるんだから」
ヴァルゴの光とレミーネの槍が激しくぶつかり合い生じた閃光を背景に、アイリはヴァルゴの覚悟を無に帰さないためにもクラウソラスを見つけるために再び宇宙空間に広がる星雲の中へ突入した。
では皆さん良いお年を。