ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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明けましておめでとうございます!
今年もほぼ趣味で始めて頑張って書いているこの作品をよろしくお願いします!


第59話 秘匿の深慮遠謀

リョウと十二星座神官双子座担当のカストルとポルックスは広大な星雲の中を飛行していた。

向かう先はアイリ達のいる星雲が晴れた場所にある浮遊する小さな島。

カストルとポルックスの情報により島の存在を知ったリョウは監視者の能力によりその場にいることを突き止め、急ぎ足で向かっていた。

居場所が不明で星雲の中を彷徨う暗澹たる雲行きにならずに済んだのは双子座の二人の情報があったからこそ。

お陰で無駄に時間を浪費することなく行動を開始できた。

 

数分という短い時間だが、会話をすることなく飛行し続け、アイリ達がいる星雲がなく開けた場所へ辿り着いた。

島からは何本もの光芒が伸びており、戦闘が始まっているのが遠目からでも確認できる。

 

ポルックス「あの光はヴァルゴの光だよー!」

 

カストル「急ごうリョウ!」

 

リョウ「ああ!」

 

更に速度を上げ戦場へと舞い降り肉薄する。

砂埃を舞い上げる勢いで着地し、敵影を視界に捉えると各々武器を構え駆け出した。

 

ポルックス「ヴァルゴー助けに来たよー!」

 

ヴァルゴ「カストルちゃん! ポルックスちゃん! ありがとう助かったわ!」

 

カストル「ヴァルゴをお助けするよ!」

 

レミーネ「ありゃ~。 もうお仲間の登場か」

 

カストルは二本の短剣を手首に巻いてある紐に繋ぎ縦横無尽に振り回す攻撃し、ポルックスは二丁の拳銃の引き金を引き銃弾を撃ち続ける。

相手の攻撃範囲に入らず翻弄する攻撃に、レミーネは防戦一方へ陥った。

 

リョウは抜刀しテュフォンの元へ疾走する。

テュフォンとルシファーは互角の戦闘を繰り広げていた。

星の力とティルフィングの闇の力が衝突し合い、その余波で地面が抉れ木々が薙ぎ倒されており、戦闘の凄まじさを物語っている。

テュフォンが距離を取った隙を突き、足からミサイルを発射する。

翼を広げ体を覆うようにして防御体制を取った。

全弾が翼に命中し爆発が起きるが、痛みを感じていないのか、ルシファーは顔の表情に変化はなく、純白と漆黒の対を成す翼にも傷はない。

 

ルシファー「世界の監視者…俺の目的の邪魔をするな」

 

リョウ「……ちょっと話をしようか」

 

無表情で冷淡に言い放つと、左目の瞳が黄金色に輝いた。

 

『力』を発動させた途端に周囲の状況は一変した。

先程まで島の地表に足を着けていた筈だったのだが、現在ルシファーは星雲の中で滞空していた。

自身の目を疑いたくなるが、明らかに先程とは別の場所。

コンマ数秒にも満たない、正に一瞬という言葉しか相応しくない時間の出来事。

瞬間移動の部類なのか不明確だが、この現象を引き起こしたリョウが腕を組み滞空している。

敵意に満ちたものでもなければ、出迎えてくれる訳でもない。

一切の感情が籠らない冷淡なもの。

 

リョウ「場所を移した。 テュフォンには悪いけど穏便に会談するにはこうするしかないからな」

 

ルシファー「…それで、話とは何だ?」

 

抵抗する素振りを一切見せず、ティルフィングを消しリョウの話に耳を傾ける。

 

リョウ「どういった経緯で堕天使となったか詳しい理由は知らへんけど、未だ天使族のために戦っているんやろ? やり方は捻くれているように思えるけど」

 

ルシファー「俺の事をどこまで知っているか知らないが、好きなだけほざいていろ。 何を言われたところで、俺は信念を貫き突き進むだけだ」

 

リョウ「己の存在と立場を犠牲にしてでもやることか? 自己犠牲は美徳とは思えへんけどな」

 

ルシファー「貴様がそれを言えるのか?」

 

リョウ「わしは受け入れてるからな。 …ああ、わしと同じような心境なのかな? それなら理解できんでもないけど…悪いことは言わない。 もう終わりにしておけ」

 

ルシファー「中断するつもりはない。 ティルフィングに認められた時点で、俺はもう引き返せない」

 

リョウ「…本当なら救うべきなんやけど、ルシファーの覚悟も無駄にはしたくない。 今回は協力するとしよう」

 

ルシファー「後悔するぞ? 貴様の守るべき存在であるあの娘にも被害をもたらすことになるぞ」

 

リョウ「そうなったら全力で戦うだけだ。 旧知の中でも遠慮はしない。 一芝居を打つのなら、それにも協力してやらんこともあらへんけど」

 

緊張感が場を支配していたが、徐々に空気が緩んできたように思える。

警戒は怠らないが、リョウが協力を望んできたのはルシファーにとっては思ってもいないことで、内心では僥倖に恵まれた幸運に心躍っていた。

 

ルシファーが悪魔に対し何を隠匿し、リョウがどういった心情で協力を申し出て来たのか、互いに分からず仕舞いだが、利用できるものなら利用する千載一遇の機会を逃さない考えは一致していた。

 

リョウ「一つ確認なんやけど、星空界に訪れた目的は、クラウソラスを見つけるためなんやろ?」

 

ルシファー「!…気付いていたのか」

 

リョウ「じゃなきゃ敵対するお前と手を結ぶことなんかせんわいね。 監視者の力を使ってクラウソラスの見つけ出す。 案内は勿論わしがする。 仮にアイリか誰かが辿り着いたら、わしはお前との戦いに敗れ唆されたという態で一芝居打って話を進めてくれ。 オッケー?」

 

ルシファー「いいだろう。 但し、俺がクラウソラスを手にする際にはその忌々しい『力』は使うな」

 

リョウ「言われなくとも。 そやけど、お前は既に『世界十二聖剣』の内の一本であるティルフィングを所持している。 闇に染まってしまったお前が光の剣であるクラウソラスを手にすれば最悪死ぬかもしれない」

 

闇の力を司るティルフィングは、心の奥底にある負の感情を引き出す闇の剣。

凶悪な欲望、または絶望に浸った者にしか手にすることすら許されない。

誰にでも存在する真相心理にある秘めた負の感情、思考、本能、欲望を曝け出す能力がある。

 

ある者はこの力により、本能のままに自身が出せる最大を尽くし縦横無尽に闇を撒き散らした。

 

ある者はこの力により、自身の未熟な思考と愚行に気付かされ絶望に呑み込まれ自らの意思で命を落とした。

 

ティルフィングに触れた者は皆、己の抱える裡面、禍々しい過去、その人にとっての闇と向き合わなければならない。

並大抵の精神力の持ち主では扱うことは不可能で、理性を失い剣の力に呑まれ、狂騒一つで国をも滅ぼすまでに至る、『世界十二聖剣』の中でもレーヴァテインと並ぶ危険極まりない代物。

剛健質実なルシファーもティルフィングにより踠き苦しんだ筈だが、手足のように使い熟しているのが現状で、屈強な精神力を持っているのは明瞭だった。

 

いつ何処で、どういった経緯でティルフィングを入手したのか不明だが、ルシファーの体と心は闇に蝕まれている。

闇に塗れた彼が闇と対を成す、正反対の力である光を司る剣、クラウソラスを手にすれば、光の力により浄化される可能性があった。

 

光と闇は交わり合うことは決してない。

どちらかが呑まれ、消え去る運命にある。

 

仮に闇の力が勝ったとしても、クラウソラスを扱うことができるとは限らない。

命が消え去るか、扱うことも叶わず無駄に終わるか、クラウソラスに所有者として認められるかの三択。

最後は特に確率が低く、失敗に終わる可能性の方が倍以上に高い。

死という最悪の結果が見えているにも関わらず、躊躇い無く行おうと目的に向かいひたすら走り続けている。

 

ルシファー「重々承知だ。 リスク無しで成熟する容易い目的ではないことは、俺が堕天し悪魔族に就いた時から理解している。 淘汰すべき敵のためならば、俺は命をも投げる覚悟だ」

 

生半可な思いと覚悟ではないのは彼の目が語っていた。

敵であろうと味方であろうと、目的のために死に物狂いで走り闘争する姿があるのは、運否天賦にならない思いがあるからこそ。

無論、リョウにも何かを成し遂げるために奔走する人間の一人なため、同情することは一切無くとも敵であれ覚悟を汲み理解することはできた。

 

リョウ「例えわしが止めても突き進むんやろ? ならわしは全力で助力するしかないな。 悪魔を滅ぼすために、一時休戦と参ろうか」

 

爛々と黄金色の光を点らしていた瞳が元へと戻る。

警戒が解けたことを意味していたため、ルシファーは心做しか誰にも気付かれない程度の安堵の息を漏らした。

 

リョウは即座に瞳を閉じ監視者の力を行使しクラウソラスの場所の探索し始めた。

探索する範囲が星空界という広大な銀河という、リョウからしてみれば拳程度の範囲の中から砂粒一つを見つけ出すという単純で簡易な作業でしかなく、物の数秒でクラウソラスの位置を特定した。

 

リョウ「クラウソラスを見つけた。 案内するから付いて来い」

 

互いに利害の一致により協定を結んだ双方は上手く話を合わせ懐柔されているような気もするが、目的のためならば茨の道を進み洗い落とせない程にまで手を汚す覚悟を持つ二人は屁とも思っていない。

 

邪念渦巻く企みを秘めた二人は静沈黙を保ったままクラウソラスの元へと飛翔した。




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