ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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コロナ渦にも関わらず、映画を観に行った男!
スパイd(殴)

スパイダーマン観に行きました。
ただ一言…最高でした。


第62話 誘惑のシンフォニー

世界と世界の狭間にある亜空間。

宇宙の様に無限に広がる何も存在しない空間。

広大が故に、宇宙と同様で全容が把握されていない未知の空間とも言える。

世界と世界の狭間で生じる時空の歪みが原因で亜空流と呼ばれる嵐が発生する、空間が維持されず常時乱れている非常に危険な空間でもある。

 

生物の一匹も生息しない空間の中に、宙を漂う巨大な物体があった。

高さ、横幅共に5000メートルは余裕で凌駕するであろう常軌を逸する巨大さを誇る四角形の建造物。

漆黒の空間の中でも異質な存在感を放つ巨大な金属の塊、この建造物こそが、時空防衛局本部だ。

 

ありとあらゆる世界出身の数十万の局員達がこの屋内で働いている。

日々世界に異変が起きていないかリョウと共に監視を行い、まだ見ぬ世界の調査、未開拓な世界を移住させるための場所として開拓する、エクリプスの撲滅、世界を食らう者の調査や追跡等、様々な活動内容があり、皆汗水を垂らし課せられた仕事を全うしている。

 

本部内では衣食住も徹底しており、不自由なく生活できるよう福利厚生は充実している。

居住スペース、食堂、シャワールーム、スーパー、コンビニ等の生活する上で必要な設備や必需品が揃っている。

体力や筋力を鍛え、実戦の演習も行えるトレーニングルーム。

デスクワークを有意義に行い、一息つく為の喫茶店。

休日を少しでも満喫できるために設けられたレクリエーションラウンジ。

本格的な医療設備も搭載されている。

生活に必要な施設は全て用意され、休息を取るための施設も多数あり、豪華客船以上に設備が充実しているのではないかと思える。

 

更にもう一つ、時空防衛局本部にしかないものがある。

時空防衛局にとって最も重要であり、極秘とも呼べる、外部に漏らすことなど許されない代物。

一般的に言う図書室と呼ばれる場所だが、時空防衛局に存在するそれの名は、コア・ライブラリ。

 

コア・ライブラリは一言で言い表すならば巨大な書庫だ。

本部内にあるが、あまりの巨大さ故に、局員でなければ探知できない空間へと繋がっている。

空間拡張魔法により更に書物を収納することが可能となっており、その大きさは宇宙に匹敵してしまうのではないかと思える程で、端から端、天井が視認できず、迷ってしまえば二度と出口に辿り着けず一巻の終わりとなるだろう。

 

何故ここまでコア・ライブラリが巨大なものなのか。

その理由は、ありとあらゆる世界の記録が全て納められているから。

その世界で起きた主な出来事が細かく記載されており、日に日に記載される内容は増え続けている。

事件、事故、天変地異、それ等が起きた正確な年と月日と時間、更には一人一人の個人情報まで存在する。

コア・ライブラリでは気になる事柄を検索すれば必ず答えが出てくると言っても過言ではない、全知全能と呼べる、神の領域にも等しい代物。

 

当然、コア・ライブラリは時空防衛局の中でも極秘とされるもので、他言無用で情報が流出することは決して許されない。

仮に悪人に閲覧されてしまえば、どのような悪行をするか、想像するだけでも恐ろしくなる。

その世界の国の極秘情報も閲覧できるため、核弾頭を発射することも可能になるし、国の大金を操り自らの欲するもののために使用することも可能になる。

約千年前に記載された情報を書き換えられるという前代未聞の問題が発生して以来、惨事になるような出来事は起きてはいないが、二度とそうならないよう管理は徹底されてある。

 

コア・ライブラリを使用できる者は時空防衛局の中でも限られており、その数は数十万という局員の中でも百人程度と限られた人間だけ。

最高経営責任者であるユンナが信頼を寄せる良人を厳選しているため、漏洩することはまずないと言える。

 

閲覧許可が下りている一人、光明寺 結愛はとある任務のためにコア・ライブラリを使用していた。

膨大な資料の中から探索するのが困難だったのか、顔には少々疲労の色が浮かんでいる。

次の任務に向かうまでは時間に余裕があるため、自室で仮眠を取ることにした。

床に設置されたワープパネルとエレベーター等で移動をするのだが、果てしなく巨大な建物故に、移動するのも一苦労で、自室に戻るだけでも数分を要してしまう。

 

自室に戻った結愛は先程調べた資料を纏めようと椅子に腰掛け木製の机に資料を置く。

文字が所狭しと並んだ十数枚の資料に目を通していると、ふと目線が机に置かれた額縁に入れ飾られた写真に目が移った。

 

写真には結愛を含んだ四人の少女が輝かしい笑みを浮かべている。

時間を忘れ懐かしむように写真を眺めていたが、ふと我に返ると大きく溜め息を溢し、目線を下ろす。

机に置かれた腕の手首に巻かれた桃、青、黄色、緑の四色の小さなビーズが紐に通されたブレスレットを優しく撫でる。

 

結愛「愛美…レイカ…スズ…」

 

悲哀に満ちた表情で写真に写った少女達の名を消え入りそうな声で呟く。

 

現在の結愛は凛とした佇まいとは真逆で、彼女を知る者が見れば驚いてしまう程に暗澹としている。

もう出会うことの出来ない友の事を思うと消極的になってしまうが、人前では弱さは決して出さない。

一人の時間の時のみにしか弱さを表さず、涙を流す時も必ず一人の時だけだった。

他人に弱さは見せられない訳ではなく、泣いて嘆くのは誰にも迷惑の掛からない一人の時だけと己の中で決めていた。

 

弱音を吐かなくとも、少なからず理解できている存在がいつまでも側にあり続けているから、結愛は未だに立ち上がることができている。

時に支え時に支えられる、長年の付き合いである『彼』がいるから。

 

?「随分と悲しんでいるのね。 まあ当然よね。 だ~いじなお友達が消えちゃったんだもの」

 

深閑とした部屋は結愛しかいない筈だったが、背後から女性の声がはっきりと聞こえた。

気配を感じ取れなかったことから敵だと瞬時に判断し、椅子が壊れる勢いで立ち上がり振り向き不審者に向け構えを取る。

 

結愛「なっ!? あなたは………!?」

 

居る筈のない存在に目を見開く。

扉に凭れるように立つ存在は、悪魔族だった。

但し、只の悪魔ではない。

悪魔族の中でも指折りの実力者、サタンフォーの一人であるリリス。

 

リリス「はじめまして、ピースハーモニアのお嬢ちゃん」

 

結愛「何処から侵入してきたかは知らないけれど、倒させてもらうわ」

 

リリス「落ち着きなさい。 あなたにとっていい話を持ってきてあげたんだから」

 

結愛「悪魔の話に耳を傾けるつもりはないわ」

 

リリス「野蛮ねぇ。 まあいいわ。 私は何もしないから、警戒したままでいいから兎に角聞いていなさい」

 

リリスは宥めるように手で制すが、結愛は決して警戒を解こうとするつもりはなかった。

甘美な言葉で巧みに人を操り悪事を働く悪魔の話など録なものは無いというのもあるが、どのような手段か定かではないが、厳重な警備を掻い潜り時空防衛局本部に侵入した者の発言など信用するに値しない。

 

警戒心を剥き出しにする結愛を気にもせず、リリスは言葉を続ける。

 

リリス「あなた、二度と会うことのできない友達にもう一度会えると言われたら信じる?」

 

結愛「っ……信じられないわ。 消滅した人間には、二度と会えないもの…」

 

リリス「当然の反応ね。 消滅をした者を元に戻すことは不可能ね。 でも、私はその方法は知っているわ」

 

にわかには信じがたい言葉に結愛は耳を貸すつもりはない。

本来の結愛であれば。

 

邪悪な存在である悪魔の言葉に結愛の心は揺らいでいた。

二度と会えない友に再会することは、結愛が現在生きている中で最も冀求している願望。

自身に向けられたリリスの視線は嘘偽りのないもので、真実を語っているのは長年の感で分かった。

 

リリス「夭折、と言えるのかしら? 若くして散華した友達に出会えるのを希っている。 未来永劫その悲しみに捕らわれ、救えず何もできなかった己の罪を背負ったままでいるのは辛いでしょ?」

 

リリスの言葉に図星なのか、歯を食い縛るだけで反論することはできなかった。

過去を覗き込まれ心の内を見透かされているが、心が折れるほど結愛は軟弱ではない。

これ以上心を乱し崩されないよう、変身しようとネックレスにして首に掛けてあるピースクリスタルに手を伸ばす。

 

リリス「これはあなたのためよ。 助言してあげるのだから感謝してほしいところよ。 変身されると厄介だし、今日はこれだけ渡して帰るわ」

 

懐から何かを取り出し結愛に放り投げた。

反射的に結愛はその何かを受け止めた。

 

投げ渡されたのは、一冊の古い書物だった。

年季が入っているのは勿論だが、韋編三絶された後が残り全体的に傷んでおり、表紙に題名が記載されていない、漆黒の本。

 

見るからに訝しい本から目を反らし前を向くも、リリスの姿は既になかった。

結愛は直ぐ様上層部へ侵入者がいることを無線機で報告した。

隙間が無い程にまで厳重な警備を掻い潜り侵入した者は歴史上数える程しかないため、緊急事態と言える状態にあった。

本部内の局員達は即座に対応に当たり、部屋の外からも騒々しさが伺える。

結愛もリリスの行方を探索しようと駆け付けようとしたが、先程の話が脳内を過る。

 

───もし、リリスの言っていた本当ならば、また愛美達と…。

 

結愛「………バカね。 悪魔の言うことなんだから、真に受ける必要もない…そう、よね…」

 

先程の会話を受け入れず忘れてしまおうと自身に言い聞かせるように独り言を呟き部屋を出た。

 

渡された奇怪な書物は廃棄されることなく、机の上に置かれたままだった。




ディズニープラスでマーベル作品を見てるので投稿が遅くなりそうです。
別にかまわないよね? 答えは聞いてない!
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