ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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『その着せ替え人形は恋をする』って漫画を読みたくて探し回ってるんですが全く見つからない…(^q^)

人気すぎぃ!!


第65話 戦【エーリヴァーガル】

リョウ「…で、タクト達はいつまでいるんだよ」

 

タクト「ユグドラシルの警護の番が回ってきたら帰るとするぜ」

 

レア「それまではお世話になるっつーことでよろよろ♪」

 

リョウ「まあ困ることはないし構わんよ」

 

タクトと戦闘を繰り広げた日から一週間が経過していたが、タクトとレアは未だに天界のアイリ達の住まう家に居座っていた。

特に居座る理由はなく、単に居心地がいいという単純なものだった。

 

元通りに修復された庭ではアイリとピコが度を越えない程度に手合わせしている。

アリスとシャティエルはベランダで椅子に座り観戦している。

リョウとタクト、レアはリビングのソファーで寛いでおり、カーペットの敷かれた床でカイがマナと遊んでいる心暖まる光景が出来上がっていた。

 

リョウ「わしは世界を監視する作業に入るけえ、何かあったら自室である地下室まで来てな」

 

レア「おけまる~」

 

リョウはカップに入ったコーヒーを飲み干しカップを洗うためキッチンへ向かう。

タクトとレアは窓へ視線を移し、アイリとピコの戦闘を眺めた。

 

アイリが放つ無数の矢をピコはハンマーを器用に振り回し弾き飛ばしており、勝負は未だにつきそうにない状態にあった。

 

レア「ピコは大分手加減してるって感じじゃん」

 

リョウ「当たり前やろ。 本気出したらシェオルが崩壊しかねん」

 

タクト「四大天使達が黙っちゃいねえだろうな」

 

?「そんなこと、絶対、許しませんから、ね」

 

リョウ「…この家に来る人はみんな平気で不法侵入するんやな」

 

自室へと向かおうとした直後、桃色の髪をウェーブにしている美女がリビングの戸を開け現れた。

頭上に浮かぶ輪っかに背中から生えた純白の翼を見れば、誰でも天使だと判別できる。

 

?「不法侵入、なんて、人聞き、悪いです、よ」

 

リョウ「実際そんなもんやろ。 で、何の用かなラファエル」

 

目を細め眠そうにしており、ふわふわした雰囲気をこれでもかと溢れ出す人物は、四大天使の一人であるラファエル。

何故天界を統治する一人である彼女がこの場に訪れたのか、本人の口から語られる。

 

ラファエル「実は、シェオルの外にある、川、エーリヴァーガルに、悪魔の、軍勢が、出現したの」

 

ラファエルの言葉に息を呑む。

天使の悪魔の全面戦争の濫觴。

約一ヶ月の時間を用い準備が整ったのか、天界へと進軍してきた。

戦闘の狼煙が上がるのも秒読みとなっている。

 

リョウ「遂に来たか…」

 

レア「あーし達ハンパなくヤバヤバな時に来ちゃったもんだね」

 

タクト「斥候を向かわせ此方の様子を伺っている可能性があるんじゃねえのか?」

 

ラファエル「一体も、いないの。 なんだか、様子が、おかしくって…」

 

ラファエル曰く、悪魔の動きに不可解な点があるとのこと。

 

まず一つは、悪魔がエーリヴァーガルと呼ばれる川の付近に集結しているが、一向に動きを見せないこと。

悪魔にとって敵の本拠地である天界に訪れた時点で天使族に自分達が進攻してきたのは短時間で認知されていることは重々承知な筈。

その場に止まる理由が見当たらず、悪魔の考えていることことが一層分からず、これも作戦なのではないかと試行錯誤してしまう。

 

もう一つは、サタンフォーの一人であるベルゼブブと悪魔兵達が傷を負った状態でいること。

天使族の何者かが奇襲に向かったという報告は一件もないため、ベルゼブブ達を傷付けた人物は天使ではないことが分かった。

ならば、何故負傷した状態で態々敵陣へ踏み込んで来たのか?

傷を癒し万全の状態で来るのが定石なのだが、現状は不完全な状態にある。

何者かと戦闘を行ったのだと思われるが、天界の中でもサタンフォーと対抗できる存在は数が知れているため、尚更特定することは難しい。

 

不可解な点が多いが、サタンフォーが弱体化しているこの機会を見す見す見逃すわけにはいかない。

何かの作戦、罠かもしれないが、野放しにするわけにもいかないため、攻撃を開始する以外に選択肢はない。

 

リョウ「ふーん、確かに気になる点は幾つかあるけど…それで、それをわしに伝えてどうするん? まさか協力しろと?」

 

タクト「おいおいリョウ、ラファエルが悪魔の進攻を伝えに来たってことはそういうことだって分かるだろ?」

 

リョウ「そりゃ流石のわしでも分かるわいね。 悪魔の進攻が何百年振りに起こる、歴史的なことに異世界の人間が関わるのはどうかと思っとるんよ」

 

タクト「その世界の問題だから自分達で解決しろってか? 冷たいこと言うなよ」

 

レア「あーし達がフィーラン王国を奪還したのだってめちゃくそでっかい出来事だったじゃん。 あーし達が600万人ボコしたって伝説、今でも資料に残ってるしー」

 

リョウ「それを言われるとな…まあいっか。 何かあったら時空防衛局になんとかしてもらおう(投げ槍)」

 

レア「さんせ~い(便乗)」

 

タクト「んで、天使の兵隊さん達は準備できてるのか?」

 

ラファエル「はい。 準備は、万端。 いつでも、攻めることが、できます、よ。 ウリエルさんが、一部隊を、連れて、奇襲を仕掛ける、そうです」

 

アイリ「話は聞かせてもらった!」

 

リョウ「ホいつの間に!?」

 

アリス「こういうケースは前にもあったんじゃない?」※第18話参照

 

ピコと戦闘を繰り広げていた筈のアイリが入室してきた。

戦闘を中断したからなのか、ピコは暴れ足りず不完全燃焼であまり満足はしていなかったようだ。

聞き耳を立てていたアリスによって外にいた全員に知れ渡ってしまったようだ。

 

ラファエル「あなたが、アイリさん、ですね。 四大天使、の、ラファエル、です。 よろしく、お願いします、ね」

 

アイリ「あ、四大天使だったんですね! よろしくですラファエルさん。 それで、リョウ君…」

 

リョウ「言っとくが悪魔に狙われてるアイリは行かせへんからね」

 

アイリ「あ、やっぱり? あたしだけが使えるテクニックで敵をとかちつくそうと思ってたのに」

 

リョウ「出てもシェオルの門の前で防衛する布陣の中に混じるだけにしてな。 悪魔に標的にされてるのに態々自分から顔を出しに行く必要はないからな」

 

アイリ「何か役に立てるならいいかな…」

 

リョウ「わしとピコがウリエルと共に行こう。 アリスとタクト、レア、シャティエルはアイリと防衛する側に回ってくれ」

 

アイリ・アリス「オッキュー!」

 

アイリは本当ならばリョウと共に悪魔を討ち倒したかった。

サジタリウスに鍛えられ心身共に更なる進化を遂げた自分の力を存分に発揮し、弊害となる悪魔を倒したかった。

付け加えるなら、誰かの役に立ちたいという念が強く、その威勢が全面に表れている。

 

リョウも可能であれば連れて行きたかったが、やはり危険な事柄に首を突っ込みたくないはないというのが本心だ。

アイリも薄々リョウの優しさが溢れる思考をが分かっていたため文句は言えず受け入れた。

 

アリス「アイリ、考えてることは分かるよ」

 

心情を読み取ったのか、アリスがアイリの肩の上に優しく手を置いた。

 

アイリ「アリスちゃん…」

 

アリス「防御に徹している間って暇だもんね? 何者も現れないことだってあるんだし。 それが一番なんだろうけど。 恐らく時間は有り余るだろうから、そんな時の暇潰し道具としてニン○ンドース○ッチ持ってきたから、世界のア○ビ大全51やろう!」

 

アイリ「…考えていたこととは全然違うけど、ありがとう」

 

リョウ「やるからにはもうちょい緊張感持っちょくれよ…」

 

レア「アリスらしいじゃ~ん。 堅っ苦しいのよりかは楽しい方が士気もアゲアゲだし」

 

いつものことながら、緊張感の無さにある意味感心してしまう。

 

遥か古の時より、連綿と続く争いを繰り広げてきた天使と悪魔の戦い。

その終焉が訪れる時が近いのかもしれない。

緊張感を高め挑もうとブレイザブリク宮殿へ向かおうと歩みを進めたが、ラファエルだけがその場を動こうとしなかった。

 

アイリ「あれ? えっと、ラファエルさん、だったよね? どうしたんですか?」

 

アイリの問いかけにも答えず、その場に立ったままだ。

 

ピコ「まさか…」

 

タクト「多分そうだろうな」

 

何かを察したリョウが溜め息混じりに俯いたまま動きを見せないラファエルの顔を覗き込む。

ラファエルは鼻提灯を膨らませ可愛らしく寝息を立てていた。

これから戦争が勃発するかもしれぬ状況の中で幸せそうな顔で睡眠を取れるラファエルはアリスよりも緊張感が無いのかもしれない。

 

アイリ「あの短時間喋らなかっただけで寝ちゃうの?」

 

アリス「のび太並に寝るの早いよね。 私がおはようダンスで起こそうか?」

 

リョウ「いややらんでええ。 ラファエルー、起きろー」

 

両手にマラカスを持ったアリスを制し、リョウはラファエルの体を優しく揺らす。

ラファエルは眠そうに目を擦りながら伸びをする。

眠そうにしている表情は変わらないまま、周囲を見渡す。

 

ラファエル「すいません、寝て、ましたね。 では、行きましょう、か」

 

リョウ「流石、寝ながらでも話だけは聞こえてたんやな」

 

アリス「緊張感なさすぎだよ~」

 

リョウ・タクト「お前が言うな」

 

~~~~~

 

 

ブレイザブリク宮殿にカイとマナを預けたアイリ達は各々付くべき布陣の中へ入った。

 

リョウとピコはラミエルを加えた部隊に混じり、現在進行形でエーリヴァーガルへと向かっていた。

ゴツゴツとした岩肌を見せ屹立する山々の間を潜り抜けるように天使の大軍が飛翔していく。

 

ピコ「ラミエルはあれからずっと修行してたの?」

 

ラミエル「当ったり前だ。 力の差を嫌でも見せつけられたんだ。 勝つためには日々修練するしかねえだろ」

 

リョウ「たしかに力は大幅に上昇しとるね。 身に付けた実力が如何なるものか、これから見物やな」

 

ウリエル「お喋りはそこまでにしときな。 目的地に到着だよ」

 

先頭を翔けるウリエルが手を上げ、進軍を停止させる。

岩の影から出来るだけ顔を出さぬよう戦況を確認する。

 

何かあるわけではない辺鄙な場所だが、絶景が広がる秘境。

透明度の高い水が凄まじい勢いで流れているのが最初に視界に入る。

滝の流れ落ちる以上の勢いの激流は自然の力強さをひしひしと感じさせる。

凄まじい流れに巻き込まれれば、体を打ち叩かれるだけでは済まない惨事になるのは容易く予測できる。

 

水飛沫が宙に散布し太陽の光により虹が掛かっている絶景の河川敷に、この世界の者ではない異形の存在、悪魔族がいた。

報告にあったように、数十の悪魔が雲霞の如く大軍が閑散としたこの場を陣取っている。

更に報告の通り、この場に留まる悪魔全員が負傷している。

軽症から重症と様々だったが、疲労困憊とした表情を浮かべている。

 

ピコ「本当に傷だらけになってるね」

 

ラミエル「奇襲を仕掛けるなら絶好のタイミングだな。 力押しで攻めるか?」

 

ウリエル「待ちなバカ。 直球勝負ばかりすればいいってもんじゃないよ」

 

ラミエル「でもここまで希有な好機はこれまでに訪れたことがないんだぜ? 変に行動されるよりこっちから仕掛けた方がいいだろ」

 

リョウ「そうもいかへんのやろ。 聞き出さにゃあかんことがあるんやない?」

 

ウリエル「そうだね。 ラミエル、気付かないのかい? 悪魔達が光の力で傷を負ってるってことに」

 

四大天使だけあって、光の力に敏感に反応した。

クラウソラスを所持するルシファーを除けば、悪魔が光の力を授かっていることは有り得ない。

負傷している事実を踏まえると何者かによる攻撃を受けた以外に考えられない。

 

四大天使の中でも好戦的な意思を見せるウリエルは隙を突いて強襲を仕掛ける算段も立てたが、作戦を耳を貸すことなく岩影から飛び出したリョウは単独で悪魔の軍勢の前にスーパーヒーロー着地で降り立った。

 

「なっ!? 貴様は世界の監視者!?」 

 

「な、何故俺達の居場所が!?」

 

?「奴は世界の監視者、何処に隠れようと無駄ってわけだね」

 

困惑する者、武器を構え敵意を剥き出しにする者、様々な反応を見せざわめく最中、一人の悪魔が前に出た。

小学生程の背丈に黒い二本の角に見ているだけで吸い込まれそうな漆黒の瞳をした少年。

勿論この少年も悪魔である。

しかも一つの部隊をを統率する幹部に値する実力者の持ち主だ。

 

リョウ「ドレカヴァク、一体何があったのかお聞かせ願おうか?」 

 

わざとらしく敬語を使うリョウの態度に青筋を浮かべつつ、ドレカヴァクと呼ばれた悪魔は淡々と話し始める。

 

ドレカヴァク「ルシファーの裏切りがあったんだよ。 クラウソラスの光の力を行使して僕達を突然攻撃し始めたんだ。 あの強大な光の力の前に僕達は抵抗することが出来ずに、命からがら天界に逃げてきたってかんじ。 最初は二本の剣の力で天使を滅ぼすって言ってたくせに…サタン様が不在の隙を見計らって冥界を征服しようとしてるんだ!」

 

歯を食い縛り悔しさと怒りを表情に露にする。

それはドレカヴゥクだけでなく、他の悪魔も同様だった。

 

ルシファーの反逆。

悪魔の王、サタンが不在のタイミングを見計らっていたため、クラウソラスを手にして一ヶ月もの期間天界に進軍がなかったことは筋が通っていて納得することができる。

 

しかし、反逆を起こした理由が不明確だ。

サタンフォーと呼ばれる、サタンに忠誠を誓う冥界の実力者が何故反逆行為を行ったのか理解し難い。

単に大いなる力を手にしたことでサタンを討ち倒し自分が悪魔を率いる王になろうとしているのかもしれない。

憶測にしか過ぎないため本当の理由は本人に訪ねなければ分からぬことだろうが。

 

ドレカヴァクの言葉を聞いたリョウは一人納得したように頷いた。

 

リョウ「成る程ね。 馬鹿正直に話してくれたことに感謝するよ」

 

佩刀したアルティメットマスターを抜刀し一閃する。

事態の顛末を話し終えた直後の奇襲にドレカヴゥクは幼い見た目とは思えぬ反射神経で体を後ろに反らし回避し大きく跳躍し後退した。

 

ドレカヴァク「いきなり何すんだよ!」

 

リョウ「何をするなんて、明々白々やん。 目の前にいる敵を斬り捨てる。 当然のことをして問題があると?」

 

僅かに口角を上げるリョウに悪魔兵の何人かは縮み上がった。

卑怯卑劣が売りである悪魔だが、人間であるリョウの清々しいまでの敵を討ち滅ぼす敵愾心にも似た闘志、己の行動を悪辣とも思わない心情に身震いしてしまう。

 

ドレカヴァク「世界を守護する立場の人間とは思えない思考だよ。 本当は悪魔だったりするんじゃないの?」

 

リョウ「強ち間違いではないのかもしれへんな。 『ソードカッター』!」

 

ドレカヴァク「『ソウルティアー』!」

 

三日月型の斬撃に対し、紫色の円盤状のエネルギー弾を飛ばし相殺する。

追撃と言わんばかりにドレカヴァクの後方から同等のエネルギー弾が数発放たれた。

ドレカヴァクが放つそれより高い威力を誇るがリョウは全て剣で斬り伏せる。

 

エネルギー弾を放った張本人は直ぐに姿を現した。

悪魔兵の大軍の中から大きく跳躍しドレカヴァクの隣に立ったのは、サタンフォーの一人、ベルゼブブ。

 

ベルゼブブ「よお久し振りだな世界の監視者」

 

リョウ「シェオルブライトドーム以来やな。 会いたくはなかったけど」

 

ベルゼブブ「俺は会いたかったぜ。 てめえの亡骸をあの小娘に見せてえからなぁ」

 

リョウ「おいおい、わしがどんな存在か知っとるんやろ? なら手を出さないことをおすすめするんやけど?」

 

ベルゼブブ「その力を酷使できないってことも知ってんだよ! 『デスペラードクラッシャー』!」

 

紫色の波動を纏った拳がリョウへと向かい来る。

『天使の加護』を発動しようとしたが、天から降り落とされた火球により防がれた。

直撃を免れたベルゼブブは上空を見上げ舌打ちする。

 

上空には手に火球を浮かべ滞空するウリエルが悪魔達を俯瞰している。

周囲には武器を構え臨戦態勢に入った天使兵が滞空しており、号令を出せば何時でも戦闘に入れる状態で、悪魔達は完全に包囲されていた。

ピコとラミエルはリョウの隣へと舞い降り臨戦態勢に入った。

 

ラミエル「やれやれ、結局力押しか。 嫌いじゃないやり方だけどな」

 

ウリエル「単独で突っ込まれるのは勘弁願いたいところだけどねえ。 勝手な行動は次からは慎め」

 

リョウ「すまんすまん。 でも有力な情報は聞けたやろ?」

 

ドレカヴァク「僕を騙して情報を聞き出すなんて、卑怯だぞ!」

 

リョウ「悪魔に言われる筋合いはないし、騙してもいないし、お前がわしの質問に馬鹿正直に答えたんやろ」

 

ドレカヴァク「うぐ…うるさい! みんな、死力を尽くしこいつらを倒せ!」

 

ドレカヴァクの命令に悪魔兵達は雄叫びを上げながら戦闘を開始した。

空中や地上では天使と悪魔が激しい攻防を繰り広げられ、美しい秘境の地は瞬時に戦場と化した。

 

混沌と化した戦場でリョウ達も激しい戦闘を繰り広げていた。

水を蒸発させる程に強烈なウリエルの炎が悪魔共々、地盤を焼いていく。

ドレカヴァクが念力で川の激流を操り防ぎ、ベルゼブブが突貫する。

単純な拳による攻撃だが、一発一発が強力で、防御に徹することが手一杯となっている。

更に追い討ちとして悪魔兵達による数の暴力が襲い来る。

 

リョウ「雑魚はわしが相手するから、ピコ達は行け!」

 

ピコ「オッケー! いつものゴリ押しで行っちゃうよ!」

 

自慢の武器、ピコピコハンマーを振り回し悪魔兵を蹴散らしながら道を開け、ベルゼブブへと接近する。

 

ラミエル「ナイスだピコ! 『雷拳』!」

 

開かれた道を突き抜け、ラミエルが電撃を帯びた拳を振るう。

電撃と闇が激しくぶつかり合い空気を振動する。

目で追うのさえ難しいラッシュが続く背後で、ドレカヴァクが『ソウルティアー』を放とうと構えていた。

 

ウリエル「おっと、背後から攻撃なんてさせないよ! 『神秘なる炎舞』!」

 

螺旋状の炎が波打つように前方に広がる。

灼熱の炎が岩肌を焦がし、悪魔達の肌を焼いていく。

四大天使と言われるだけあってその威力は絶大で、悪魔兵達は為す術もなく炎に飲み込まれ塵芥と化していく。

幹部クラスに相当するドレカヴァクも直撃を免れようと後退し、川の水を操り炎を消し去ることしか出来ずにいる。

 

ベルゼブブ「おうらあああああああ!!」

 

ラミエル「ぐうっ!?」

 

戦況が僅かな瞬間に傾いた。

激しい戦闘による衝撃で岩肌を削り取っていたのだが、ラミエルはその削り取られた場所に足を取られてしまった。

注意を反らした一秒にも満たない間に、ベルゼブブの拳がラミエルの腹部へ直撃した。

意識が遠退く程の強烈な一撃を受けラミエルは吹き飛ばされ、エーリヴァーガルの激流へと呑まれていった。

 

ピコ「ラミエル!」

 

ベルゼブブ「他人の心配してる場合か!」

 

『ソウルティアー』を連発し牽制を行いながら『デスペラードクラッシャー』を放つ。

ピコは体に相応しくないアクロバティックな動きでエネルギー弾をハンマーで弾き、真っ正面からベルゼブブの拳を見据えながら飛び上がる。

 

ピコ「『ピコピコ波』!」

 

先端がピコと同様の形をした顔(こんな顔→(>へ<))がある奇天烈な光線が放たれた。

 

ベルゼブブ「な、何っ!?」

 

物理に近い光線がベルゼブブに拳に直撃する。

数秒の間は力によるぶつかり合いがあったが、ベルゼブブの拳が弾かれたことで力の差がどちらが上かは明確となった。

 

ピコ「もういっちょ! 『ピコビーム』!」

 

ベルゼブブ「ちくしょおおおお消しゴムの分際でええええ!!」

 

追撃として放たれた光線をベルゼブブは腕を交差することで防御するが、徐々に押され始めている。

 

ラミエル「トドメは任せろー!!」

 

耳を劈く雷鳴が轟いた。

激流を縦に裂き地面を抉り取りながら電撃を帯びたラミエルが低空飛行していた。

鍛え抜かれた屈強な肉体は激流の衝撃ではびくともしていないようだ。

更に殴られる直前に僅かではあるが後方へ体を動かすことによりダメージを軽減するという身のこなしを行っていたため、体には大した負担は掛かってはいなかった。

 

ラミエル「『ギガスパーククラッシュ』!」

 

両腕に『雷拳』の何十倍の電撃を纏わせ、後ろに両腕を下げた後に、勢い良く前に突き出した。

ピコが放った光線を防御するのに気を取られていたベルゼブブの腹部に強力な打撃が入った。

体をくの時に折り曲げ、地面を抉りながら吹っ飛んでいった。

 

ラミエル「っしゃおらあ!!」

 

ベルゼブブ「ごはあっ! くっそ、まだまだ…!」

 

戦闘前から負傷しており、ラミエルの強烈な一撃を受けたにも関わらずベルゼブブは立ち上がる。

中々のしぶとさにリョウは思わず舌打ちするが、憂懼することなく未だに闘志を燃やす様には脱帽させられた。

 

ウリエル「流石サタンフォーだねぇ。 私もその不動心は見習わないといけないのかねぇ」

 

リョウ「あんたはもうちょい好戦的なところを直せば他の四大天使よりも優秀になれると思うで?」

 

ウリエル「だらだらとドラマを見てる時があるガブリエルよりかはマシだと思うよ?」

 

リョウ「まあ、確かにそうやな」

 

ピコ「ガブリエルがプンプンと怒る姿が想像できたよ。 それより、話も進めたいし早めに片付けたいから、アレ、いっちゃうね?」

 

リョウ「メタいことを…っておい、アレってまさか…」

 

嫌な予感を感じリョウは渋面を向ける。

大してピコは目を輝かせ笑みを浮かべ、胸が高鳴っていた。

 

リョウ「…頼むからエーリヴァーガルを消し去ることにならん程度にしろよ?」

 

ピコ「ちゃんと加減はするから大丈夫だって。 さあて、この技出すのは何年か振りだから楽しみだな~」

 

リョウ「何年か振りだから心配なんだっつーの。 ラミエル、ウリエル、離脱するよ」

 

ラミエル「もう少しでベルゼブブを追い詰められるのに逃げるのか?」

 

ウリエル「素直にリョウの指示に従った方が良さそうだよ。 全軍、一時撤退! 退け!」

 

ウリエルは天使兵に撤退を命じ、ラファエルの腕を引きエーリヴァーガルから距離を取った。

悪魔兵が逃亡を許すまいと追おうとしたが、飛翔したリョウが立ち塞がり『天使の加護』を発動し、空一帯を包囲するように展開する。

ラミエル達を追うのを阻止するためと言うより、エーリヴァーガル周辺から逃がさないために行ったものと言える。

 

リョウ「よしピコ、やっちまえ」

 

ピコ「任された! 『無数竜ピコピコ波』!」

 

大きくその場から跳躍し、口に収束したエネルギーを解き放した。

放たれたのは名の通り夥しい数のピコの形をした光線。

追尾機能があるわけではなく、出鱈目に無差別に放たれる数による暴力。

回避が許されない凄まじい光線の雨を受け、悪魔達は断末魔を上げる暇すら与えられず光線に体を貫かれその身を散らしていく。

岩肌を抉り取り、地形を変形させていく。

 

リョウ「ピコ! ストップストップ! やりすぎじゃ止め止めい!」

 

ピコ「おっといけない」

 

連なっていた山々さえも粉砕し崩れ去る光景を目にしたリョウは即座に技の中断を命令した。

異世界の者である自分達が地形を変形させてしまう事態などあってはならない。

続行していれば間違いなく一帯は砕かれた岩が敷き詰められた荒地と化し、エーリヴァーガルは完全に埋め尽くされていただろう。

 

ラミエル「派手すぎだろ…」

 

ウリエル「私も人のことは言えないけど、やり過ぎだって。 生物が生息していない領域だったからまだ良いけど、場所によってはあんたら裁判沙汰だよ」

 

攻撃が止んだことを確認したラミエルとウリエルが苦笑いを浮かべ岩影から出てきた。

視界には悪魔達の姿は映っておらず、全滅したと捉えてもいい。

 

ウリエル「……まだ生きてるね、ベルゼブブとドレカヴァクは。 ずる賢いことに、この場から逃亡したみたいだね」

 

リョウ「逃げ足の早いことで。 捜すとしますか…ん?」

 

監視者の能力で行方を探索しようとしたその時、上着に入れてある携帯電話の着信音が鳴り響いた。

画面には『タクト・オオガミ』の文字が写し出されていた。

シェオルの門の前を警護してある筈の彼から何故連絡が来たのか不明だが、兎に角通話をするため耳に電話を当てる。

 

リョウ「はいよわしじゃよ。 どしたん?」

 

タクト『やべえぞリョウ。 さっきベルゼブブって奴がここにやって来て天使の一人に取り憑いて現実世界に行きやがった』

 

リョウ「なっ!? ってか、何でそっちにベルゼブブが…!?」

 

タクト『急に現れたんだ。 息も乱れて慌ててたし出る場所を間違えたとかほざいてたぜ。 かなり傷を負ってたから、手頃な弱そうな天使兵に取り憑いて現実世界に移動して傷を癒そうって魂胆なんだろうよ』

 

リョウ「人間に近い容姿をした天使に取り憑くことで人間に紛れながら行方を眩まして傷を癒すってことね」

 

天使の翼や頭に浮遊する輪は人間には目視することは出来ない。

つまり普通の人間にしか見えないということになるため、天使が現実世界に降り立ったところで問題になることなど皆無なのだ。

ベルゼブブはそれを利用し、天使兵の一人に取り憑いた。

 

厄介なのは、悪魔は取り憑いた者の生気を吸い取り己の生体エネルギーへと変換することができるということ。

天使兵の生気を吸い取った後、人間に取り憑く可能性が高い。

生気を吸い取るだけでなく、他の人々に悪行をするよう誘いの言葉を投げ掛ける等の悪辣な行動もするので、一刻も早く見つけ出さなければならない。

 

リョウ「くそ、わしも向かいところなんやけど…」

 

苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。

そんなリョウの心情を察したのか、タクトは言葉を掛けた。

 

タクト『安心しろリョウ。 アリスが奴の後を追った。 あと序でにアイリもな』

 

リョウ「そうか………え、何でアイリも一緒やねん!?」

 

タクト『アイリがあたしにも協力させてって言ったらアリスが二つ返事で了承しちまってよ。 止めようとしたんだが…まあ、アリスが相手だから無駄だって分かるだろ?』

 

リョウ「おいいいいいいぃぃぃ…!! そこは死に物狂いでも止めてくれよ! アリスだから尚更心配なんだよおおおお! アイリまで一緒なんて…」

 

問題が山積みで思わず頭を抱えてしまう。

 

タクト『あ、そういや確か現実世界って言や確か、今あいつがいるだろ』

 

リョウ「あいつ?」

 

タクト『魔王様だよ。 恵梨花ちゃんが現実世界に行きたいって言ってたし、保護者ってことで同行してショッピングに行ってくるとかこの前言ってたぜ?』

 

リョウ「………恵梨花ちゃんだけが頼りやな」

 

タクト『強ち間違いじゃないのが笑えるぜ』

 

リョウ「こちとらアイリに色々と危険が迫ってるのに笑えねえよチキショー!! アレクにせよアリスにせよ、厄介事起こさんでくれよ頼むからー!!」

 

ウリエル「なんだかまた大事みたいだねえ。 まあ、取り敢えずアレクとアリスは馬鹿なことしてなんぼって感じの人間だし…仕方ないんじゃない?」

 

四大天使でさえも匙を投げるバカ二人に苦情を訴えつつ、ここ最近で最も大音量となるリョウの悲痛な叫びが山々に反響し木霊した。




久々に10000文字超えてました。
自分でもびっくり!
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