ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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モンハンばっかりしてるせいでなかなか小説が進まない…


第71話 未知との遭遇? まさかの遭遇!

アイリ「はあ…折角アニメイトに行けると思ってたのに…」

 

アリス「私達の娯楽を奪うなんて…悪魔は許せないね。 私がすいじょうきばくはつで殲滅してやるんだから!」

 

アイリ「アリスちゃんがやると本当にトラウマになりそうだよ」

 

亜空間で激闘を繰り広げ、アリスと共に現実世界へ戻りアニメイトへ行こうと胸を躍らせていたのだが、道すがら時空防衛局の局員達と鉢合わせとなってしまった。

 

ベルゼブブの件は解決したのだが、ルシファーの反逆により冥界から逃れた悪魔が異世界で出没しているのでアリスに協力の要請があった。

最高責任者であるユンナの指示ではなく、上層部による判断なのだろうが、アリスは異世界で困る人達を看過することなど出来なかったので、娯楽を楽しめないことに苦虫を噛み潰したような顔で協力に応じた。

勿論側で話の徹頭徹尾を聞いていたアイリは断る訳がなく、自身と大きく関係がある悪魔を野放しにせず討伐することを決意し、天界への帰還を断念し同行の意を出した。

 

数名の局員に連れられ、一目に付かない薄暗い場所でワールドゲートを通り、異世界へとやって来ていた。

 

アイリが次にやって来たのは、終焉を迎えた世界。

土は腐敗し、川は干上がり、草木は一本も生えてはいない。

生が存在することを許されないのかと錯覚してしまう程にまで荒れ果てた光景に言葉を失う。

建物が倒壊せずひっそりと建っているのは、文明が栄えていた証なのだろう。

頭上に広がる清々しい晴天とは反対に、視線を水平に移すも灰色ばかりの寂寞たる光景は、アイリにとって刺激が強かった。

 

アイリ「………この世界って…」

 

「見ての通り、文明が滅んだ世界だ。 今は誰一人としてこの世界に住む者はいない」

 

「さっきの現実世界とは程遠いですね…」

 

アイリ「もし、だけど…ベルゼブブを倒さず放置していたら、現実世界も…」

 

「この有り様になる可能性はあっただろうな。 現実世界の技術力では、悪魔と相対するには限度がある。 核兵器等を使わなければ、倒すのは難しいだろうな」

 

局員達の話を聞き、肝を冷やした。

ベルゼブブを見つけ出すことが出来なければ、最悪の場合世界が滅んでいたかもしれない。

一歩でも遅ければ、現実世界は今視界に広がる世界のように成り果ててしまっていた。

もしもの結果を想像しただけでも恐ろしかった。

 

アリス「だから現実世界の警備は特に厳重になってるの。 …あれ? よくよく考えると、何でベルゼブブは簡単に現実世界に潜り込むことが出来たんだろ?」

 

「我々も調査をしたが、結界の一部に歪みが生じていた。 何者かが干渉した痕跡は残っていたが、悪魔による仕業かどうかは不明だ」

 

アリス「ベルゼブブにそんな力があるとは思えないな~。アンドロマリウスくらいの弩級の悪魔なら可能だけど」

 

アイリ「ベルゼブブもサタンフォーの一人だけど、そこまで差がつくもんなんだ」

 

アリス「アンドロマリウスは何千年も生き長らえる古参の悪魔だからね。 世界の結界を破るなんて訳無いかも」

 

アイリ「納得できちゃうかも。 …あいつが現実世界に来たから、あたしは天使になっちゃったし」

 

アリス「あ…ごめん、軽率だったね」

 

アイリ「大丈夫。 気にしてくれてありがとね。 それで、大体どの辺を捜索するの?」

 

「俺達がいる半径1キロ以内にいることだけは分かっている。 二手に別れて捜索を行う。 我々時空防衛局は北を捜索する。 アリスさんはそのお嬢さんを連れて南側の捜索に当たってほしい」

 

アリス「了解。 IQ3でも任せなさい! さあ行くよアイリ!」

 

アイリ「OK牧場! ぼうけんのはじまり、だね!」

 

局員と別れ、アイリはアリスと共に歩みを進める。

数人いる局員達と比較すると、アイリとアリスの二人しかいない。

このように分けたのは、アリス単体の戦力が群を抜いて高いからか、性格的にじゃじゃ馬なため距離を置きたかったからか。

どちらにせよ女の子同士の方が円満だったため、二人にとっては好都合だったのかもしれない。

 

アリス「しかし早速リョウとの約束を破っちゃったなー。 後で怒られそうだよ」

 

アイリ「あたしも一緒に行くって同意したんだし、あたしからも説明するし大丈夫っしょ」

 

アリス「だといいんだけどねー。 リョウは怒ったら怖いからね」

 

アイリ「リョウ君ってそんなに強いの? 色々あって力が半減されてるってのは知ってるけど」

 

アリス「全力ならそれなりに。 私ほどじゃないけどね♪」

 

アイリ「それは納得できる。 能力もそれなりに強いと思うけどなー。 『天使の加護』ってやつ、ちょっとしか見てないけどかーなーり強力だし」

 

アリス「私の攻撃だってかるく防がれちゃうからね。 能力だけで言えばユグドラシルメシアの中でも上位になるね」

 

アイリ「前々から思ってたけど、ユグドラシルメシアってなんなの?」

 

前から多くの人が口に出していた、ユグドラシルメシアという単語。

組織かチームの名前というのは理解できてはいたが、大まかな内容までは知らない。

アリスやアレクがその内の一人なのだと認知できている程度の知識しかないので、長期に渡り抱いていた疑問をぶつける。

 

アリス「ありゃ、知らなかったっけ? ではお教えしよう! 世界の均衡を維持しているユグドラシルってあるでしょ? 結構昔にそのユグドラシルが悪しき人達に狙われる大事件が起きたんだ。 時空防衛局だけでは対処仕切れなくて、危機的状況にあるなかで勇敢にも私を含む数人が立ち向かって命からがら敵を打ち倒して野望を食い止めることができたの。 フォオン様に感謝の意を表されて、歴史に残る偉業を行った者達として異世界にも話が広がって、誰かが命名したユグドラシルメシアって名前が浸透していったって感じ」

 

アイリ「…アリスちゃんの実力は相当なものだとは分かってたけど…とんでもない業績残してるじゃん! ユグドラシルを守ったってことは、全世界を守ったってことと一緒だよね!?」

 

アリス「まあそうなっちゃうよね。 もっと私を讃えてもらってもいいんだよー。 私のヒーローアカデミアを作ってもいいんだよ♪」

 

アリスは過去に自分が成し遂げた武勇伝を話し、自信に満ち溢れた陽気に微笑み胸を張った。

元から尋常ではない底知れぬ力を持ち合わせていると思っていたが、まさか全世界を救う偉業を成し遂げていたとは思ってもいなかった。

 

目の前にいる一見何処にでもいる少女は、正に生ける伝説とも呼べる人物。

 

あらゆる世界を行き来し、アレクと同様に自由奔放な旅をしている身であれば、世界の一つや二つは救っているのかもしれないと考えられるのは妥当なのかもしれない。

とは言え、アリスの自由すぎる性格だけ汲み取ると、世界を救っているとは到底思えないのだが。

 

アイリ「あたし、今まで伝説に残るとんでもない偉人と話してたんだね」

 

アリス「そうなるねー。 もっと私を崇め奉ってもいいんだよ」

 

アイリ「ははーっ! 取り敢えずあまり滅茶苦茶なことを仕出かさないように魔法のランプにでも閉じ込めとくね☆」

 

アリス「ちょっとアイリ、私魔人じゃないんだし悪さなんか一つも犯してないんだから」

 

アイリ「悪さは起こしてなくても悪戯はしてるんでしょ? リョウ君から聞いたよ。 アレク君と一緒にウ○娘を課金するために帝国軍のデータをハッキングしてデス・スターの建造費からお金を強奪したって」

 

アリス「あんな物騒な代物作ろうとしてるなら私達の娯楽に回そうと思っただけだってばよ。 その後が大変だったなー。 帝国軍から追い回されてスターフォックスチームから(無断で)戴いたアーウィンで我武者羅に逃げたっけ。 そしたら惑星クバーサに着いちゃったの! カバディカバディ言いながら追いかけられたのはかるくトラウマだけど、トルーパー達がボコボコにされてたのには草生えちゃったな~。 星を脱出したと思ったらベリアル銀河帝国と遭遇しちゃって、アレクがキガバトルナイザーを奪って転売しようとしてちょっかい掛けたせいでまたも追われる身に。 ルパン宛らの逃亡劇を繰り広げてたら帝国軍が追い付いてきて、気付いたら何故か帝国軍vsベリアル銀河帝国の全面戦争が勃発しちゃって大草原不可避だったよ。 流石にヤバすぎたから私とアレクでO・HA・NA・SHIして止めたけどね」

 

アイリ「…流石のあたしでも意味不明で理解不能かも。 兎に角アリスちゃんとアレク君はヤバいことしてるヤバい力の持ち主だってのは分かった」

 

普段からの生活で暇潰しなのかどうかすらも怪しい、あまりにも規格外な出来事には疑問符を浮かべるばかり。

それ以上にアイリはアリスとアレクの実力に関心を寄せている。

 

計ることすら叶わない常軌を逸する、無限とも呼べるであろう圧倒的な力量。

どのような経験を積めばこれ程まで強大な実力を手にすることが出来るのだろうか。

アリスが世界の危機から救ったユグドラシルメシアの一人だと言うならば、アリスと共に行動をしているアレクも恐らくユグドラシルメシアの一人だと推測できる。

凄まじい実力を誇る、世界を救った偉人達が他に8人もいるとなると、心が揺さぶられた。

手合わせを願っているわけではなかったが、世界を救った英雄と呼べる人達がどのような人物なのか純粋に興味が湧いた。

 

アイリ「ユグドラシルメシアって、他には誰がいるの?」

 

アリス「先ずは私でしょ。 何となく察してたと思うけどアレクでしょ。 他には…っと、お喋りは後にしとこうか」

 

朗らかに笑みを浮かべ楽観的にしていた雰囲気が一気に霧散した。

ユグドラシル・アルスマグナを召喚し手にすると、宙に浮き前方の状況を把握するように注視する。

アイリも前方に感じた強力な気を感じ取り、違和感を覚えたままガーンデーヴァを手にする。

翼を広げ飛翔し、アリスの隣に並ぶ。

 

アイリ「アリスちゃん、悪魔が複数いるのは分かったけど、もう一つ何かいるね。 それに、ずば抜けて強い」

 

アリス「みたいだね。 悪魔族は雑兵だろうけど、一つだけ比較にならない強さだね。 この禍々しい気は、闇だね。 でも双方とも味方ってわけじゃないみたい」

 

二人は複数体の存在を前方に感じ取っており、今回の討つべき存在である悪魔なのは間違いはないだろう。

弊害とも呼べるのは、悪魔とは別の邪悪な闇を纏う謎の存在。

悪魔兵と比較するに値しない圧倒的な力の持ち主が何者なのかは不明だが、第三者が介入しているのは間違いないと断定できる。

何十年前に滅びを迎えたこの世界の住人、異形の怪物等とは到底考えられないので、自分達と同様に異世界からの介入と考えられた。

 

前方から派手な爆発音が響き聞こえてくるのが、第三者が悪魔の味方ではないという何よりの証拠で、無手勝流できそうだったが、謎の第三者を放置しておく訳にもいかないので、一先ず繰り広げられている戦場へ赴くことにした。

 

空を裂き飛行し、一分も満たず到着した。

視界に入ったのは、無惨な惨状。

戦闘を行っていたであろう悪魔兵が地面の至る場所に転がっている。

体を大きく斬り裂かれた致命的な裂傷を負った者、上半身と下半身が斬り離された者、頭部が吹き飛ばされた者と、死因は様々。

アイリは噎せるような血の臭いに思わず口元を塞いでしまう。

 

惨たらしい地獄を生み出した存在は、未だに悪魔兵の大群と戦闘を続行しており、新たな遺体を増やし続けていた。

黒を基調とした衣装を身に纏い、死神を思わせる巨大な漆黒の鎌を縦横無尽に振り回しているのは、一人の少女。

アイリと同年代の少女は美しくも禍々しく、戦場の舞台で暴れ鮮血の花を咲かせている。

 

?「あら、お久し振り。 運命の悪戯にしては、なかなか面白いわね」

 

アイリ「えっ!? 何で…!?」

 

アリス「思わぬ相手だったね」

 

この世界にいる筈のない人物の邂逅に二人は驚きを隠せなかった。

アイリにとっては、二度目となる対面。

 

デスピア三闘士の一人であり、闇のピースハーモニア、ダークネスリベリオン。

 

思いがけない邂逅に目を見開く。

いる筈のない存在が目の前に確かにいる。

異世界で出会った敵である存在。

相当気まぐれな性格の持ち主で、自身の目的の邪魔をしようものなら、同胞すら躊躇なく力で捩じ伏せる厄介極まりない少女。

 

アイリ達がこの場にいることに不可思議に思っていたリベリオンだったが、即座に悪魔達へと戦意と殺意を込めた視線を戻し、熾烈な攻撃を再開する。

悪魔兵達は臆することなく各々武器を構え突貫するも、他の者を圧倒する邪悪な殺戮の前では無意味に等しい。

数多の武力で押そうとも、それ以上の暴力的な力量で押し返す。

 

リベリオン「『ダークネスヘルファイア』!」

 

鎌から漆黒の炎が溢れ、一帯を黒色に染め上げる。

悲鳴を上げる暇すら与えられなかった悪魔兵達は、闇の炎により一瞬にして灰と化し、終焉を迎えた世界の土と同化していった。

 

多くの命を消し去ったことを微塵も気にしていないリベリオンは新たな標的であるアイリとアリスに鎌を向ける。

だがその目には殺意がないのが見て取れ、脅しのために睥睨しているだけのように思える。

それでも決して油断することなど到底しない。

アイリは何時でも射てるよう矢を番える。

対してアリスは余裕を振り撒いているのか、戦闘体勢に入っていない。

 

アリス「久し振りだねリベリオン。 何年振りになるのかな?」

 

リベリオン「敵であるお前と何年前に会ったかなんて、いちいち覚えてなんてないわ」

 

アリス「感動の再開として熱い抱擁をしてあげようと思ってたのに…。 女の子とキャッキャウフフできる描写はいらない? 私は女の子っぽくないってこと? 少女不十分って!?」

 

リベリオン「黙れ。 その減らず口を斬り取ってやってもいいのよ?」

 

アリス「うわーこわーい(棒)」

 

アイリ「素朴な疑問なんだけど、リベリオンはどうして異世界にいるの?」

 

リベリオン「ディーバ誘拐の時、お前と一緒にグラッジを倒しただろ? その後にリョウに脅され余儀無く撤退し、デスピアに帰還した。 グラッジは生きていたが、三闘士の一人を攻撃し任務の遂行を妨害し、何の成果もなくのこのこ帰ってきたことを快く思わなかったディムオーツ様がお怒りになったのよ。 まあ、私はやりたいことをやっただけで罪を問われるつもりなんて更々ないから、罰を与えられるのを避けるため、時空の歪みを抉じ開けて異世界に逃げることにした。 そしたら偶然この辺鄙な世界に辿り着いたというわけよ。 急に悪魔共が襲い掛かってきたから返り討ちにしていたところにお前達が来たってところね」

 

なんとも身勝手な理由にアイリは呆気に取られる。

理由があまりにも野放図だった。

アイリと同様に高校生に近い少女の姿形というのもあるせいか、子供らしさが残っており、デスピアを統一する組織の幹部とは到底思えない。

リベリオン程の実力ならば僅かな時空の歪みを広げ抉じ開けられるだろうが、自分の犯した罪から逃れるために異世界へ逃亡するという突拍子もない発想を思い浮かぶのは、アリス等の異世界の知人が多数いる故だろう。

 

リベリオン「それで、何をしに…いや、愚問ね。 大方、私を捕らえに来たってところかしら」

 

アイリ「違う違う。 この世界に来ていた悪魔の討伐に来たんだけど、リベリオンがオーバーキルしちゃったからあたし達ミッションコンプリートしちゃったんだよ」

 

リベリオン「私に用があったわけじゃないのか。 時空防衛局が動く事案なのだろうが、天使であるお前がいるのは納得がいく」

 

アイリ「星を護るは天使の使命とは言うけど、今回ばかりは巻き込まれただけなんだよね」

 

アリス「私も巻き込まれちゃった一人でーす」

 

リベリオン「…ふん、用が済んだのならば去れ。 目障りよ」

 

特に戦う理由がないと悟ったリベリオンの瞳から殺意が消え去った。

鎌を地面に突き刺し適当に座り心地が良さそうな瓦礫に腰掛ける。

 

アリス「とは言ってもこのままリベリオンをこの世界に置き去りにするわけにもいかないよー。 元の世界に帰ってもらわないと時空防衛局が後々困ることになっちゃうからね」

 

リベリオン「戻っても碌な事がないのが分かっているのに、態々帰るわけがないじゃない。 それに、私はお前の様に理解不能な問題行動を起こす人間ではないわ」

 

アリス「失敬な! 私が問題児みたいじゃん!」

 

アリスは真面目に反論してるつもりなのだろうが、アリスが異世界で起こしてきた数々を耳にしているせいか、全く説得力がない。

流石に、否、誰でもなるであろうが、アイリとリベリオンは同時に「問題児だよ…」と心の中で呟いた。

 

リベリオン「時空防衛局に目を付けられるのは御免だから、私は自分から問題を起こすような羽目はしない。 それでも私を連れ帰そうとするならば、掛かってきなさい。 力で私を捕らえればいい」

 

気だるげに立ち上がり、殺意を込めた視線を向けながら鎌の柄を掴んだ。

 

まるで親から怒られ家出した子供の様と、例えるならば可愛らしいが、相手は何百年という時を生きる闇の戦士。

アイリは一度手合わせをしたが、実力は並を優に超える。

更に全力を出しきっていないあたりを見ると、その力は未知数だ。

光属性が優れているアイリにとっては唯一対抗できる希望だが、逆に光も闇に弱いという点があるため、実力的に不利になることは変わりはない。

一人では厳しい苦闘になるところだが、前回とは違いアリスという心強い仲間がいる。

怖気付いていたわけではなかったが、仲間がいるだけで、百人力になれる気がした。

 

アリス「お尻ペンペンされないと分からないみたいだね。 行くよアイリ!」

 

アイリ「うん! 勝手は! アイリが! 許しません!!」

 

利害の一致によっては共闘が可能なのだろうが、話し合いでは解決に至る相手ではないと改めて認識させられた。

悪魔と同様、昵懇することの叶わない敵を討つために、アイリとアリスは戦闘体勢に入った。

リベリオンも完全に戦闘体勢に入っており、視認できる程の闇の力を放出し、新たな生き血を求めている愛用の鎌、ブラッディハントを引き抜き狂気に満ちた笑みを浮かべる。

 

どちらが先に動くか、どう相手が出るか様子を伺い硬直状態が続き、張り詰めた空気の中で流れる穏やかな風の音さえも耳に入る。

このままでは埒が明かないと、アリスが思い切って攻撃に移ろうとトランプカードを出した、その直後だった。

 

重力に従い降り立つ大地が響き揺らいだ。

地震ではないかと思ったが、その考えは一瞬にして消え去る。

何かが地面の中で蠢いている。

更に正体不明の何かは自分達のいる場所へと向かって来ているのが気配で読み取れる。

自分達に狙いを定めているのは明らかで、意思を持っているのが分かる。

 

アイリが何事かと不安に感じていた時、血相を変えたアリスがアイリの腕を掴み上空へと急上昇した。

何か良からぬ事を察知したリベリオンも同様にその場から大きく跳躍し飛び上がった。

訳が分からず混乱していたアイリがアリスに質問を投げようとしたが、その必要はなかった。

 

先程自分達がいた地面が割れ、粉々に砕け散った。

爆発に似た轟音が響き、それ以上に巨大な生物の咆哮が響き渡る。

地面から迫り来る正体不明の何かが固い地面を軽々砕き姿を露にした。

 

鉄をいとも簡単に斬り裂く鋭い三本の鉤爪、地面を踏み締める巨大な二本の足、先端が刃物の様に鋭い長い尾、胴体よりも一回りも巨大なあるゆる物を噛み砕く歯が並ぶ顎、機械に似ても似つかわしくない灰色と黒色の巨体。

 

謎の生物に目らしきものは存在していないものの、アイリ達の存在を認識しているらしく、顎を大きく広げ空中へと一吠えした。

狩るべき獲物を見つけた獣の様な咆哮が空気を揺さぶり、鼓膜に響き渡る。

何のつもりで吠えたのか意図は全く掴めないが、その一度の一声でアイリは血の気が引き萎縮した。

 

鏖殺する勢いで迫ってきた殺気に似た気。

殺されると言うより、自分という個の存在そのものが消失してしまうような、言葉に表せない謎の気迫が凄まじく、視界に入れただけで戦いてしまう。

直感で理解できてしまう、悪魔よりも危険で忌むべき存在だと。

 

アリス「これは本当に洒落にならないよ」

 

笑顔が絶えず気さくな態度を取っている印象が強いアリスだが、今回ばかりは真面目でいるのは、険しくなった目を見れば一目瞭然だった。

 

アイリ「ねえ、アリスちゃん……あの、怪物は一体何なの……?」

 

アリス「あれの名前はヴィラド・ディア。 『世界を喰らう者』とも呼ばれてる滅茶苦茶ヤバい奴だよ。 詳しい事は後で話すから、アイリは離れてて」

 

アイリ「こ、怖いけど、あたしだって戦えるよ…!」

 

アリス「アイリ、死にたくなかったら下がってて」

 

今まで見たことのない、鬼気迫る表情のアリスに驚き、僅かに恐れを感じる。

目力だけで相手を殺せるのではないかと錯覚してしまう。

あの怪物の気迫にも劣らないアリスの言葉に、アイリは自然に首を縦に振り、その場から離れる決断をし、戦線離脱した。

 

リベリオン「ちっ、面倒な時に面倒な奴が面倒な事をしに来たってわけか。 …これは、仕方ないわね。 一時休戦よ」

 

アリス「言われなくても。 『トランプシュート』!」

 

両手に数十枚のトランプカードを瞬時に召喚、即座にヴィラド・ディアに投げる。

風の抵抗を受けることなくカードはヴィラド・ディアに全て直撃し、着弾と同時に爆発を起こした。

 

アリス「今のうちに…」

 

急襲し隙を作ったアリスはワールドゲートを召喚した。

中から出てきたのは、アレク。

アリスと同等かそれ以上の強さを誇る人物。

戦力を必要としたアリスは、彼の居場所を知っていたのか、ワールドゲートでアレクのいる場所まで意識を繋げ、この世界に召喚したのだ。

 

アレク「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 何の用だよアリス。 俺は今から高田ちゃんの握手会に行こうと思ってたのによ」

 

アリス「ふざけてる場合じゃないよ。 あれ見なよ」

 

アレク「ん? ……確かに、その通りだな」

 

忌むべき怪物を目にした途端、アレクの雰囲気は一変した。

どのような威圧でも一刀両断してしまいそうな覇気が漏れ出す勢いで溢れ、少し距離を取り宙を浮遊しているリベリオンがアレクの放出される覇気によりびりびりと痺れる感覚が肌で感じる程のもの。

 

片手にグラム、もう片方の手にレーヴァテインを召喚し、ヴィラド・ディア目掛け目にも止まらぬ速度で急降下し思い切り剣を振るった。

アレクの剣撃を読み取ったヴィラド・ディアは鋭い刃を躊躇うことなく素手で受け止め掴む。

掴んだと同時に、ヴィラド・ディア周辺の地面が抉れ凹んだ。

隕石が衝突したのではないかと思う程の巨大なクレーターが出来上がるのを見ると、単純な一振りが常軌を逸する力なのが分かる。

 

アレク「『ジェノサイドフレイム』!」

 

レーヴァテインから業火が溢れ、ヴィラド・ディアだけでなく周囲を呑み込み、深紅の大地へと変えていく。

あらゆるものを焼き尽くす炎を受ければ、塵一つ残さず消え去る。

普通であればそうなるだろう。

だが相手は単体で世界を危機に脅かす怪物、一筋縄にはいかない。

 

燃え広がった炎がヴィラド・ディアの元へと収縮し始める。

炎で遮られ視界に入らなかったヴィラド・ディアの姿が見えたが、火傷らしき跡は残ってはいなかった。

収縮された炎はヴィラド・ディアの巨大な口の中へと吸収され、躊躇うことなく体内へ飲み込んだ。

 

アレク「ちっ…やっぱり飲み込みやがるか」

 

あらゆるものを焼き尽くす破壊の炎が無力化されたことに驚くことなく、次の一手を決めるため行動を開始する。

両手の剣を離し、空中を一回転しヴィラド・ディアの頭部に踵落としを食らわせ、頭部を土台にし宙へ跳躍した。

 

アレク「土豪剣激土! …じゃなくて、カラドボルグ!」

 

続いて召喚した剣は自身の身長よりも巨大な、重量感のある大剣。

両手で支えるための長めの柄に、黒色の宝石が全体的に散りばめられ嵌めている茶色の刀身をした剣。

 

大地を揺るがし、大陸を斬り裂く剣、カラドボルグ。

 

一振りするだけで本当に地面を斬り裂きそうな剣を軽々と持ち、先程の二本の剣とは比較にならない痛烈な一撃を叩き込むため、大剣を持つ腕を振り上げる。

次の攻撃に移ろうとしているアレクにヴィラド・ディアは黙って見てる訳はなく、両手で受け止めた二本の剣を乱雑に一擲し、口にエネルギーを蓄積し始める。

 

アレクが一手を決めるため剣を構える状態を持続していれば、真っ正面からヴィラド・ディアの攻撃を受けることになるのは避けられない。

アレク本人も振り下ろすまでには間に合わないと委細承知しているが、一切迷いのない強い眼差しで目の前にいる怪物に向け突貫する。

蓄積されたエネルギーが放たれようとした直後、口の前に一枚のトランプカードが意思があるかのように動き飛んできた。

口の前に到着したカードは宙に静止すると巨大化し、成人男性とほぼ同等の大きさとなった。

 

アリス「『リフレクトトランプ』!」

 

合図と共にカードが発光し、表に描かれいた絵が見えなくなる。

直後に蓄積されたエネルギーが放出され、一筋の光芒が口から発射された。

変哲もない極太の光線だが、直撃を受ければ五臓六腑が弾け飛び、体が散り散りになるのは容易に想像できる。

しかし放たれた光線ははアレクに届くことは叶わない。

直線上に突き進む光線はアリスが設置したトランプカードの中へと吸収され、見る影もなくなる。

違和感に気付いたヴィラド・ディアは光線を吐くのを止めるが、疑問符を浮かべる暇すら与えられず、吸収された光線がカードの表面から吐き出された。

反射された光線はヴィラド・ディアの体の中心を貫く勢いで直撃を受けるが、それでも巨体が数歩下がる程度で持ちこたえている。

 

アリスの狙いは最初からヴィラド・ディアに攻撃を与えることではない。

多少なりとも知能を持つ怪物だが、力押しで済ませる行動を取ると予想できたのは、何十、何百と数えるのが困難と言える回数を重ね戦ってきたからこそだろう。

真っ正面から迫り来る攻撃を回避不可能と察すれば防御体勢に入るのは至極当然なのだろうが、脳内で練った大したことのない計略が功を奏し、アリスの口角が上がる。

 

アレク「単純な野郎で助かるぜ。 お陰でドでかいの与えられるぜ!」

 

反射された自身の光線を受け止め防ぐのに意識を集中しているヴィラド・ディアの頭上に、この一撃で終わらせる強い意志が籠る両手で大剣を持ち振りかざしたアレクが迫る。

 

アレク「刮目しやがれ! 『ランドカタストロフィ』!」

 

刀身に嵌められている黒色の宝石が淡く輝き煌めく。

ただ魅了させられるだけの輝きではなく、同時に刀身の内に秘められた、押し潰される様な強大な力が解き放たれる。

 

アリス「アイリー!! 空中に逃げてー!!」

 

強大な力故に、流石に危機を察知したアイリは既に決戦を繰り広げるせんじょうから数百メートルは離れてるが、アリスの焦りを含んだ大声が聞こえてきた。

これまで以上に強力な、尋常ではない力を感じ取ったアイリは言われた通り大至急空中へと避難を開始する。

 

地面を離れ数秒経過した頃だろうか、先程まで足を着けていた地面が弾け飛んだ。

比喩でもなんでもなく、本当に弾け飛んだ。

大地だけでなく、空までもが揺らぐ、世界一つを丸ごと揺らす強烈な怒涛の一撃。

人々が存在しない終焉を迎えた世界だからこそ可能な、周囲に出る被害を一切考慮しない規格外の一言に尽きる猛烈な打撃は半径数キロメートルの大地を一瞬にして抉り取った。

爆発音に近い轟音を響かせ、岩石と化した地面は噴火した時の勢いで軽々と宙へと舞い上がり、砂塵が周囲を覆い尽くす。

 

アイリ「『マキシマムフォトンレーザー』!」

 

乱れ飛ぶ岩石を恐れることなく直往邁進し、杖の先端に巨大な魔方陣を生成し、アレクが回避することを分かってか、極太のレーザーを全力で放った。

ヴィラド・ディアが放った光線よりも極太の光線は、砂塵の濁色の中で煌めきながら真下にいるヴィラド・ディアへ直進していき、割れた地面を更に抉る。

地殻やマントルを容易く突き破り、この星の内核に達したのか、溶岩が噴水の如く吹き出て宙を舞い、砂塵を真っ赤に染め上げる。

 

アイリ「す、凄い…」

 

この世の終わりを告げる天変地異が起きたのではないだろうか、その様な景色が現実に起きている。

アレクやアリス只者ではないと認識していたが、彼等の本気をみるとその人外染みた戦闘能力に度肝を抜かれる。

 

アイリ「あんな戦い……付いていけるわけない」

 

幾数年、どれだけ血や汗を流しても、二人に追い付ける気がしない。

努力を重ねるどころではない、実力差を見れば戦っている世界や土俵が明らかに違いすぎる。

微塵にも達することの叶わないことに地を叩きつける程にまで悔しいと心の隅で生まれた。

だがそれ以上に、あの戦闘に自分が巻き込まれずに済んで良かったと、心の底から安堵する思いの方が勝っていた。

 

あの場にいれば、命が幾つあっても足りない。

アリスが先程言ったように、死にたくなければ近付かないのが懸命な判断だ。

 

大きく口を開いた大地から溶岩が吹き出す、地獄と化した戦場から少し離れた場所にアレクが忽然と現れた。

片手にはグラムが握られており、空間の裂け目を作り亜空間へ入ることでアリスの光線と溶岩から逃れ、この場に移動してきたようだ。

見ているだけでも凄まじい現状を打破して逃れたようだが、無傷ではいかなかった。

横腹を鋭利な爪で引っ掻かれた痛々しい傷があり、血が滲み出ており、痛みで僅かに顔を歪ませている。

 

アレク「やっぱ一筋縄にはいかねえか。 相討ちになっちまった」

 

アリス「まだ生きてるのは分かるけど…どうする? 私がありったけ魔力ぶつけとくからもう一度でかいの決めとく?」

 

アレク「いや、奴もそこまで馬鹿じゃねえから、二度も通じるかどうか危ういからな。 何かと俊敏だし、ここはじわじわと攻める」

 

グラムを消し去り、新たな剣を召喚した。

稲妻を彷彿とさせる屈曲した形状をした山吹色の刀身をした剣。

 

全ての物質に電撃を迸らせる稲妻の剣、エッケザックス。

 

アレク「どっかに隠れてるんだろうが、炙り出してやる。 『カーネイジサンダー』!」

 

刀身に電撃が宿り、山吹色の刀身がきらびやかに輝く。

剣を振り下ろし勢いよく地面へと突き刺した。

瞬間、電気を通す筈のない大地に電撃が迸った。

空中に滞空するアリスとアイリには勿論電気は流れてはいないが、何億ボルトはあるだろう電撃の余波が漏れているのか、艶のある髪が何本か逆立っている。

 

ヴィラド・ディア「ぎぎゃああああああ!!」

 

強烈な電撃を浴び耐え兼ねなかったヴィラド・ディアが地面を砕き咆哮と共に地表へと姿を現した。

待ってましたと言わんばかりにアリスが飛び出し手にしたトランプカードを宙へと撒き散らした。

宙を漂うカードを放置しアリスはヴィラド・ディア目掛け直進する。

 

アリス「『魔法大炸裂』!」

 

杖の先端から炎、水、氷、電気、光、闇、風、岩等のあらゆる属性の魔力の光弾が絶え間無く撃ち込まれる。

杖だけでなく、先程撒き散らしたカードが意思を持つかのように独りでに動きだし、ヴィラド・ディアの逃げ道を塞ぐよう展開し包囲し光弾を射ち始めた。

一発が巨岩を打ち砕く威力を誇る手数による攻撃が、ヴィラド・ディアを追い込んでいく。

ヴィラド・ディアはその場から逃げようにも、動けずにいた。

アレクが広範囲に放っていた電撃をヴィラド・ディアの足元一点に集中的に流すことにより、分散していた力を一ヶ所に集束することでより強い電撃を浴びせ筋肉を硬直させ動きを封じていた。

 

二人の抜群の連携攻撃に、ヴィラド・ディアは手も足も出ず攻撃を耐え忍ぶしかない。

強固な体に魔力の光弾が直撃するも、目立たない程度の傷しか入っていない。

しかしアレクのカラドボルグによる絶大な一撃を受けたであろう右肩には罅が入っており、今尚攻撃を受け罅が広がっている。

 

ヴィラド・ディア「ぎゅがあああああああ!!」

 

咄嗟に耳を塞ぐ程の咆哮が巨大な口から吐き出された。

両手にエネルギーが集束されると、幾条にもなる光線が放たれた。

 

危機的状況を脱するための行動なのだろうか、目標もなく乱雑に放たれた光線は光弾を相殺しカードを次々と落としていく。

接近しつつあったアリスにも降り注ぐが、雨の雫を避けるよう巧みな動きで飛行して全弾回避した。

死力を振り絞り体を動かし電撃による足枷から逃れたヴィラド・ディアは跳び上がり真上からアリスに強襲を仕掛けた。

杖から光の刃、『魔法刃』を出し何十倍の体重のある巨体を受け止めるも、鋭利な爪と尾による猛攻が迫る。

 

抹消すべき敵に無慈悲なく酷薄な猛撃。

接近戦を得意としないアリスには不利な戦況で、手が塞がり魔法も繰り出せず防戦一方へと持ち込まれる。

防ぎきれなかった鋭い攻撃が艶やかな肌を斬り裂いていく。

 

アリス「ぐうぅ……じ、『時空の迷い子』!」

 

幾条の光線により撃ち落とされ紙屑と化したカードの中から形がある程度原型を留めているものが一瞥し確認できたと同時に技を発動した。

アリスの真下あたりまで移動してきたカードから炎の渦や冷凍光線等が放たれる。

ヴィラド・ディアは足を掠めながらも不規則に動き続けるカードから逃れるため戦線離脱した。

 

ヴィラド・ディアは地面に着地する前に、更なる一撃を加え葬ろうと口にエネルギーを溜めようとしたが、罅割れていた肩に激痛を覚える。

肩には血肉を貪るように漆黒の鎌が深々と突き刺さっていた。

 

リベリオン「あの二人より弱すぎて私のことは眼中になかったのかしら?」

 

漆黒の翼を羽ばたかせ滞空していたリベリオンが隙を突いて横槍を入れていた。

卑怯なのかずる賢いのか、どちらとも取れる不意を突いた一撃は明らかにヴィラド・ディアを弱体化させる決定打となった。

 

リベリオン「その眇眇たる脳に刻め。 私も強者だと」

 

巨体を突き刺しているとは思えない、木の棒を振るう感覚で強者を嬲る狂喜的な相貌で鎌を振り回し、アリスの発動させた魔法へと一心不乱にぶつける。

極め付きに天高く伸びる炎の渦に叩き付け、灼熱の炎で身を焼いていく。

 

アレク「リベリオン! タイミングよく離れろよ! 『ディメンションドミネート』!」

 

跳躍したアレクが逆手持ちしたグラムで虚空を横に一閃する。

虚空が歪み、周囲に立ち上る光線等が捻じ曲がり、ヴィラド・ディアの巨体を目掛け集中砲火される。

巻き込まれればただでは済まない圧倒的な物量と威力の猛撃からリベリオンは電光石火の速さでその場から逃れ、勢いが余り地面を数回横転する。

勝利は必然と思われる、強力な魔法はヴィラド・ディアの体を蝕んでいく。

強固な体に幾つもの傷が生まれ、全体に罅が広がっていく。

怪物と恐れられる如何なる生物でも耐え凌ぐことすらままならない攻撃だが、完全に沈黙するにはまだ早かった。

 

己の体を傷付けながらも強大な魔力を集束し食らい、命からがら魔法の嵐の中を掻い潜り危機を脱した。

生きる、という生物ならどの種でも生まれながらにして持つ防衛本能。

どのような危機的状況に追い込まれても、己の生命の灯火を消すまいと必死に抗う。

当然のようなことだが、仕留め損ねたことにアレクは小さく舌打ちをする。

 

アレク「しぶとい野郎だなまったくよー!」

 

グラムを順手に持ち変え、片方の手に光の剣、クラウソラスを出し、全てを焼き尽くす光芒を炸裂させる。

回避する手段を選ばず真っ直ぐにアレクの元へと突き進むヴィラド・ディアは躊躇いなく硬質な手で光芒を受け止めた。

乱反射した光芒は細かな光となり虚空を裂き、地上にいたアリスとリベリオンに降り掛かる。

 

アリス「うわあっぶね!」

 

リベリオン「流石にその攻撃はまずいわね」

 

闇の存在であるリベリオンには光の攻撃は特効。

直撃を受ければ致命傷は免れないため、態勢を崩しつつも回避に専念するが、軌道が滅茶苦茶な光は無情にもリベリオンの右足の太股を焼ききった。

太股を中心に、激痛が身体中を支配し、立つことすら困難となり地面へと倒れ込み苦悶する。

光芒を弾いたヴィラド・ディアは爪でアレクに応戦し、力任せに腕を払い除け隙ができた一瞬で尾を鞭の様に振るい臓物を破裂させる勢いで横腹にぶつけ、アレクは水平に数百メートル以上吹き飛び視認できなくなった。

標的を地面に弱々しく横たわるリベリオンへ移し、巨大な口を広げ急降下し始める。

 

アイリ「『ロイヤルストレートアロー』!」

 

窮地に陥っていたリベリオンの側に、凄まじい速度で光が接近した。

白い光の粒子を出し神々しく輝くアイリがヴィラド・ディアに触れる距離まで急接近し、最大限まで力を込めた光の矢をゼロ距離で放つ。

必殺技を一身に浴びたヴィラド・ディアは悲鳴に似ても似つかない叫びを上げ真横に飛び、岩盤に勢いよく激突した。

 

リベリオン「何故、助けた? お前にとって、私は敵でしかないのよ?」

 

アイリ「あるキャラの台詞をそのまんま使うけど、誰かを助けるのに、理由がいる? ピースハーモニアの世界であたしを救ってくれたから、恩を返したってのと、ほっとけなかったって言うか…」

 

リベリオン「ふん、甘い考えね。 ピースハーモニアと同じ思考ね。 隙があれば、いつ私が殺しに来るのか分からないというのに」

 

アイリ「死なれたりしたら、目覚めが悪いし、殺そうとしたその時はあたしは全力で抵抗するだけだよ、拳で!」

 

リベリオン「変わった奴ね。 後悔することになるぞ」

 

アイリ「後悔なんてしないよ。 あたしが一番やりたいことをしてるだけなんだから。 兎に角、今はこの場を切り抜けるのが最優先事項だしね」

 

立ち上がったヴィラド・ディアに立ち上がる暇を与えぬため、『ストレートアロー』を連発する。

光の矢は次々と巨大に弾かれることなく突き刺さるも、痛がる素振りさえ見せず、新たな獲物であるアイリ目掛けて猛進する。

アイリは恐れることなく続け様に矢を打ち続けるも、強固な体に刺さるのみで全くと言っていい程に効果が見られない。

徐々に距離を詰められる最中、リベリオンは足に流れる激痛を耐えながらも闇のエネルギーを蓄積し始めていた。

 

アイリ「リベリオン! 無茶はしない方が…!」

 

リベリオン「私がまだ戦えないなんて思わないことね。 奴の足止めくらいなら容易よ。 『ダークネスフォールダウン』!」

 

地を鳴らしながら駆け抜けるヴィラド・ディアの足元に闇で生成された亜空間が口を開いた。

黒よりも深い漆黒の闇が片足を捕らえ、逃れようと必死にもがくも、ズブズブと底無し沼の様に巨体を飲み込んでいく。

 

新たな一撃を加えられる好機を逃すわけにはいかないアレクとアリスの行動は早かった。

アレクは再びカラドボルグを召喚し、アリスは杖の先端に魔力を蓄積し始める。

再度行われようとしている極大な技は周囲に甚大な被害を及ぼすため、この場に居座っていれば命の保証はない。

可能な限り距離を保たなければ五体満足で済まないため、アイリはリベリオンを抱え飛翔し、全速力で退避した。

 

アレク「もういっちょ刮目しろ! 『ランドカタストロフィ』!」

 

アリス「フィナーレだ! 『マキシマムフォトンレーザー』!」

 

大地を砕き裂く破滅をもたらす齎す一撃と、全てを貫く強烈な魔法の光芒。

ほぼ同時に放たれたそれは、身動きの取れぬ怪物へと直撃すると同時に、吹き上がる溶岩と共に、大地が弾け飛んだ。

軽々と舞い上がる岩盤や岩石、溶岩と共に押し寄せる衝撃波と砂塵の速度は想像を絶する。

溶岩により熱された空気が熱風となりアイリとリベリオンに容赦なく叩き付けられ、二人は抵抗も虚しく遥か遠くへ吹き飛ばされてしまった。




もうMR100いったんですけど早すぎですかね?
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