ということで今回も長々と掛かりましたが楽しみにしてた人、続きをどうぞ!
アイリ「あーもう死ぬかと思った…あの二人マジでヤバすぎでしょ! 怪人協会から声が掛かっても不思議じゃないよ!」
アレクとアリスの怒涛の攻撃により発生した衝撃で吹き飛ばされたアイリとリベリオンは、被害が及んでいない平坦な地に腰を下ろしていた。
幸い、かすり傷程度の怪我で済んでおり、アイリは胸を撫で下ろす。
アイリに庇われていたリベリオンは衝撃による怪我は負っていないものの、アレクのクラウソラスの光芒を防ぎ乱反射し直撃を受けた足は回復仕切れておらず、歩行が不可能となっている。
兎に角地獄と化した戦場から逃れるため無我夢中で距離を取っているが、先程まで足を着け立っていた場所は無惨なものとなっているのが嫌でも視界に入る。
火山が噴火したかと錯覚してしまう程にまで砂塵と岩石が空高く舞い上がり、地下深くを流れる溶岩が止まることを知らず吹き上がっている。
宛らこの世の終焉を目の当たりにしているようだった。
アレクとアリスの底知れぬ力量にも驚かされるが、二人に拮抗する実力を持つヴィラド・ディアにも驚かされる。
到底、今の自分では敵わないのだと痛感させられた。
自然と悔しさが湧き上がらないのは、越えることが無理なのだと確信しているからなのか。
自分が勇敢に立ち向かおうにも、歯が立たない上に二人の戦闘の妨げになるのが明らかなので、大人しくこの場に留まり二人の安否を願うのが賢明な判断だと自分に言い聞かせる。
「おーい! 大丈夫かー!?」
後方から声を掛けられ、気を張り詰めていたため咄嗟に構えるも、声の主である人物である時空防衛局の局員だと分かると警戒を解いた。
大地を揺るがす衝撃と爆音、天高く伸びる砂塵を見れば異常に気が付かない訳はなかったようだ。
「一体何が起こった?」
少女説明中…
「『世界を食らう者』が現れたのか!? これは悪魔以上の脅威だぞ」
「アレクとアリスまでもがいるとは思わなかったが、あれに対抗できるのはユグドラシルメシアだけだから納得はいく」
リベリオン「お前達では役不足だから、本部に戻って上層部にでも報告してきなさい」
「こいつ…たしか、デスピアのダークネスリベリオンか!?」
「何でこんな奴がこの世界にいるんだ。 貴様、今すぐ自分の住む世界に戻れ。 異世界の交流を許可されていない者が異世界を渡航することは禁止とされている」
リベリオン「は? お前達に指図される覚えはないわ。 あまり上から目線の出過ぎた態度を取れば、頭と胴体を繋ぎ合わせている箇所が無くなることになるわよ」
自分よりも下等な存在であると認識している局員の言葉に苛立ちを隠しきれていないようで、足の怪我が支障ないと言わんばかりに殺気を醸し出す。
一瞬たじろいだ局員達だが、各々が武器を手に戦闘態勢に入ることで更にリベリオンが敵意を出すが、アイリが間に入り調停を行う。
アイリ「ストップストーップ! リベリオンはヴィラド・ディアを倒す手伝いをしてくれたことだし、リベリオンを送り返すのは倒した後のの方がいいんじゃないの?」
リベリオン「勘違いしてるみたいだが、私はあの怪物を倒すつもりなど毛頭ない。 私の目の前に現れたから相手をしただけよ」
アイリに居丈高となり牙を向けようとしているリベリオンにアイリは近付き、局員に聞こえない小声で耳打ちし始める。
アイリ「リベリオンを見逃してあげようとしてるんだからちょっと大人しくしててね」
リベリオン「私を見逃すだと? どういうつもりだ?」
アイリ「何て言うのかな…リベリオンが敵だと分かってるけど、敵だと思えずほっとけないって感じ?」
頭の後ろをポリポリと掻きながら、曖昧な発言に自分自身が困り笑い誤魔化す。
敵対する立場とは言え、互いに助力する場面が少なからずあり、僅かでも良いので助力したい善の気持ちが湧いてしまった。
アイリ「あ、でも条件付きだよ。 他の世界に行っても他人の迷惑になるような行動は謹んでもらうからね。 守らなきゃエグゼロスに無理矢理入れるようリョウ君に頼むからね」
優柔不断な判断を犯せば、己の身に危険が及ぶのは重々承知なのだろうが、見過ごせない思いの方が勝った。
才媛のある少女とは思えない、純粋なのか、それとも幼稚なのか、どちらにも当てはまるかもしれない。
リベリオン「つくづく変わった奴ね。 私に脅し文句を言うのもだけど、おもしろい。 いいわ、その条件呑んであげる」
アイリ「そうこなくっちゃ♪」
「お前達、さっきからこそこそと何を話している?」
アイリ「大したことじゃないよー。 遊○王かデュ○マのどっちが面白いかなって話! さーて…どうやってこの人達を納得させようかな…」
リベリオン「お前、大口叩いておいて状況を打破する手段を考えていなかったのか?」
アイリ「…はい(ブロリー)」
核心を突かれたアイリは冷や汗を垂らしながら項垂れ、リベリオンは呆れ溜め息を溢した。
納得させるための言い分を考えるため脳を回転させる。
言い分となる材料も揃っていない中、脳内で必死に言葉を暗中模索していたが、突如大きな力を感じ思考は停止した。
宙を見上げると、碧空に罅が入っていた。
存在に気付いた時には罅が一瞬で広がり、空が大きく割れ口を開き、亜空間が視界に広がる。
そして這い出るように出てきたのは、世界を食らうとされる怪物、ヴィラド・ディア。
戦闘沙汰になる前の静寂を壊し現れた異形の怪物に、数多の世界で修羅場を潜り抜けてきた局員達でもその姿を目にすると、蛇に睨まれた蛙の如く身動きが取れなくなっていた。
リベリオン「奴め、二人の攻撃を掻い潜り亜空間に逃げ込みここに出てきたのか」
アイリ「ヤバい、みんな逃げて!!」
アイリが声を上げると同時に局員達は我に返るが、遅すぎた。
亜空間から飛び出たヴィラド・ディアの重々しい体が地面に着くと、目にも止まらぬ速度で巨大な口を開き数人いた局員達を瞬時に丸呑みにした。
迅速すぎる捕食に呆然とする。
人の命を奪う罪を知らぬ酷薄な行動は、アイリを震え上がらせるには十分だった。
殺されるよりも惨いかもしれない、捕食される恐怖が急速に心を支配する。
現実世界の日本で過ごしていれば先ず感じることのない恐怖が溢れ、足の震えが止まらなくなる。
ヴィラド・ディアの姿を初めて見た時、奴の危険性を理解していたつもりだったが、甘かった。
悪魔の存在が生ぬるく感じる程にまで、この存在の危険性は異常に高かった。
アイリ「新機軸すぎるよ……。 ど、どうしよ…足が、震える…。 あの数の局員の人達がいれば…まだ、抵抗出来たかもしれないのに…」
リベリオン「局員? 恐怖で頭が可笑しくなったのか? 私とお前の二人しかいないのよ。 今は生き延びる方法を考えるのが先決よ」
リベリオンの発言にアイリは思わず耳を疑う。
まるで先程までいた局員達が最初から存在しなかったような口振りだ。
このような非常時である状況下の中でリベリオンが瑣末な冗談を言うわけがない。
リベリオンの言うように本当に自分が恐怖により錯乱しているのではないかと錯覚したが、自分の見た惨劇が確かに存在した。
アイリ「え? さっきまで局員達がいたじゃん…。 リベリオンに元の世界に戻るよう促してたじゃん…」
リベリオン「本当に何を言っている? この場に私とお前しかいなかったことすら分からないの? 悪いが恐怖で狂った軟弱者の相手をしてはいられないわ」
気が動転しながらも再確認したが、返答はやはり自分の見たものとは食い違うもの。
リベリオンの発言の意味を呑み込めない。
自分の記憶と現状が異なりすぎている。
恐怖ではなく、ここまで話が食い違うことに訳が分からず頭の中が混濁し混乱しそうになる。
リベリオンは意図の掴めない発言ばかりするアイリを捨て置き、鎌を杖変わりにし立ち上がり、殺意を込めた瞳でヴィラド・ディアを睨む。
再び口を開け、戦闘意欲のないアイリを無視し、敵意を表すリベリオンに襲い掛かろうと駆け出すヴィラド・ディア。
片足が完治していない状態でありながらも前方に大きく跳躍し巨体の懐に忍び込み、闇のエネルギーを纏った拳を全力でぶつける。
華奢な体からは想像も付かない威力に一瞬ヴィラド・ディアの巨体は浮かび上がる。
リベリオンは続けざまに鎌を振るうも、刃が体を突き刺さる直前にヴィラド・ディアは手で刃を掴み、もう片方の手でリベリオンの体を鷲掴みにし、地面に勢い良く叩き付けた。
肺の中の空気が全て絞り出され、意識を失いそうになるのを気力で耐える。
勇ましさは無情にも散ったにも関わらず、リベリオンの瞳にはまだ闘志が残っていたが、無駄だと嘲謔するかのようにヴィラド・ディアは喉を鳴らし、大口を開いた。
アイリが混乱しながらもリベリオンの危機に気付き、窮地を救おうとガーンデーヴァを構えようとするも、判断はあまりにも遅すぎた。
どう反撃を行うとしても、間に合わない。
リベリオンに襲い掛かる景色がスローモーションの様に遅く感じる中で、アイリは自身が加勢しなかったことを激しく後悔した。
───シャティエルの時と同じで、また過ちを繰り返してしまう。
どれだけ後悔しても遅いのは、いつも後悔した後に気付かされる。
そうならないためにも精進してきたが、精神的には何も変化はなかったと痛感した。
混乱している現状の中でも、冷静に対処しなければならなかったのに、出来なかった。
悲痛な面持ちになりながら、ただただ命が失われる瞬間を目に焼き付けなければならない。
惨劇を受け入れ難い、認めたくないが故に顔を反らした時に、何者かの姿が一瞬映った。
見覚えのある漆黒の影が戦場に舞い参じた。
リベリオンを拘束するヴィラド・ディアの腕を神速の速度で抜刀された剣により容易く斬り、体を回転させ顎を蹴り上げた。
捕食に夢中だったヴィラド・ディアの大口が閉ざされ歯と歯がぶつかり火花を散らす。
?「『ソードエクスプロージョン』!」
巨体に手にした剣を押し付け、集束したエネルギーを爆発させた。
零距離による爆発を受け強固な皮膚が剥がれた痛みにヴィラド・ディアは絶叫を上げながら、勢いを殺せず何度も横転しながら地面を抉り吹き飛んでいく。
突如現れた人物はヴィラド・ディアを深追いせず、地面に膝を突いているアイリに近寄り腰を下ろした。
アイリの視界に映るのは、心痛な気持ちが顔に出ているリョウだった。
亜空間の時と類似した状況と同様に、見知った顔を目にし安堵した。
リョウ「怪我はないみたいやな。 ホンマ、アイリはトラブルに巻き込まれる不幸体質の持ち主なんか? まだTo LOVEってくれた方がええわ」
アイリ「あ……リョウ君、あの…」
リョウ「何があったかは何となく分かったけえ、話すのは後にするわ。 今は、あの怪物を跡形も残らんように殺さんとあかんから」
物騒な物言いとは裏腹に、包み込む優しさの声色で語り掛け、少し乱暴に頭に手を置きわしゃわしゃと髪を撫でられる。
温かな手の温もりが伝わり、心地好さすら感じさせる安堵感が心を満たし、乱れていた思考が渦巻いていた脳が徐々に平静を取り戻していく。
アイリの頭を撫で終えたリョウは立ち上がり悠然と歩みを進め、リベリオンの隣を通り過ぎる。
リョウ「何でここにおるかは分からへんけど、アイリを助けてくれたことに感謝するで」
リベリオン「助けた覚えはないわ。 でも、私も先程助けられたから、お前達で言うおあいこということになるんだろうけど」
リョウ「…そっか。 今回はわしが助けたから、またいつか借りを返してくれよ」
振り向かず、視界を交わすことなく会話は終わった。
リョウは視線を外さずヴィラド・ディアを見据えている。
汚物を見るような、下等な者を見下すような絶対零度の瞳で、忌むべき存在を睨む。
リョウ「お前も複数確認されているうちの一体なんやろうな。 …忌々しい。 わしと同じで消えるべき存在じゃ」
怒りや怨嗟等が混ざる感情に呼応するように左目が黄金色に染まる。
誰かに向けて話すわけでもない独り言を呟き、柄を静かに力強く掴み、抜刀した。
地面が抉れるほど足に力を入れ踏み込み、再起仕切っていないヴィラド・ディアへ肉薄する。
エネルギーを集束し巨大化させた技、『テオ・ソードスラッシュ』を発動させ、全身全霊の渾身の力で空を斬り剣を振り下ろす。
単純にして豪奢な重い一撃を視界に入れたヴィラド・ディアは回避は間に合わないと判断したのか、俊敏に両腕を動かし刃を受け止めた。
アレクのカラドボルグの一撃よりも威力は劣るものの、その一撃は強大なもので、受け止めた衝撃により地面が弾け、ヴィラド・ディアを中心にクレーターが出来上がる。
リョウ「『フルパワーインパクト』!」
万力並の力で固定された剣を手放すと、義足である右足にライトグリーン色のラインが光り浮き上がる。
手を放せず隙だけとなった腹部に踵落としを叩き付けた。
ただの踵落としではない。
安全装置を一時的に解除することにより、通常時の何倍もの力を発揮できるため、威力は絶大で、何十tにもなる。
先程の爆発により負傷していた箇所に激痛が走り、流石のヴィラド・ディアも苦しそうに呻き声を上げた。
敵である存在に慈悲などなく、間髪入れずに再び剣の柄を掴み、後方へ一回転し、下から振り上げるようにしてヴィラド・ディアの体を地面ごと斬り上げた。
巨体が空中に浮かぶと、長い尾を掴み、勢い任せに地面へと殴り付ける。
持ち上げては叩き付け、持ち上げては叩き付ける。
何度繰り返したか数えるのも辟易としてしまう。
抵抗する間も与えず行われる鬼畜な猛攻に、ヴィラド・ディアの息も絶え絶えになりつつあった。
リョウ「んじゃま、止めいっとくか」
無表情で呟き、上空へ巨体を放り投げる。
翼を展開し飛び上がり、剣で心臓を一突きにしようとするも、最後の足掻きのつもりか、ヴィラド・ディアは手から幾条もの光線を放つ。
『天使の加護』を展開しようとするよりも早く、稲妻が宙を走り枝分かれし、光線を全て防ぎ相殺した。
ヴィラド・ディアは何者かの気配を察知し真横に長い尾を振り回すが、空振りに終わった。
気付いたときには、全身を貫く痺れと斬り裂かれる痛みが襲い掛かっていた。
地面を叩き付けられた時と同様に、何度も襲い掛かる。
全身を隈無く傷付けるそれは、雷撃。
黄色の電撃が纏わり付くように電光石火の速度でヴィラド・ディアの周囲を飛び続けている。
アリス「いいぞーアレクやっちゃえー!」
ヴィラド・ディアの真上から野次を飛ばしているのは、杖の先端にエネルギーを集束し待機していたアリス。
相方でもあるアレクは現在、自身が使用する剣の内の一本、エッケザックスの能力で自身の身体を電気エネルギーに変換し高速移動で宙を駆け回り、電撃と斬撃を駆使した攻撃を繰り出している。
アリス「リョウー! 後は私とアレクに任せて下がってて!」
アリスの指示に頷いたリョウは大人しく引き下がった。
これ以上迂闊に力を酷使するわけにもいかないという理由が最もだが、アリスの放つ一撃に周囲の被害が甚大になるのが嫌でも理解出来てしまうため、アイリとリベリオンを守護する必要があったから。
早急に満足に動くことの叶わないリベリオンを抱え回収しアイリの側に駆け寄り『天使の加護』を発動させる。
リョウの行動を見計らったのか、アイリ達の身の安全を確認し終えたアレクはヴィラド・ディアから距離を保ち自身の身体を電気エネルギーから元の身体に戻し、新たに剣を召喚する。
あらゆる傷を瞬時に治す癒しの剣、フラガラッハ。
前回使用した際は、致命傷を負ったルナアポカリプスを治癒するためだったが、今回は治癒する対象がいない。
なら何の目的で召喚したのか、それは今から披露される。
アレク「『フェイタルアイヴィ』!」
剣から無数の蔦が伸び、ヴィラド・ディアの身体を絡め取る。
ヴィラド・ディアは自身の生命の危機を感じ抵抗しようにも、暴れれば暴れる程に絡み付くような縛りになっているため、徐々に身動きが取れなくなり、最終的に毫も動くことはなくなった。
生命が消え去るかもしれない恐怖が忍び寄ると同時に、その恐怖に上乗せし煽るように更なる恐怖の足音が近付く。
この技には相乗効果があり、拘束した者の生命エネルギーを吸い取るという、聞いただけでも恐れ戦くもの。
ヴィラド・ディアという相手に、アレク達に慈悲と言う二文字は無く、どのような鬼畜で残虐な攻撃を繰り出してでも、着実に息の根を止めに掛かる。
野放しにしてはならない、存在することすら許さないため、遠慮や躊躇など皆無、全力で叩き潰していく。
アリス「もうこれでいい加減消えてもらうよ。 『アルティメットマキシマムフォトンレーザー』!!」
杖の先端を中心に、多重するかのように何個もの魔方陣が展開され、無限と呼ぶに相応しい量の魔力が蓄積されていく。
技名を叫ぶと同時に放たれたのは、視界いっぱいに広がる一本の極太の光芒。
『マキシマムフォトンレーザー』が可愛らしく見えてしまう、世界を滅し、生命を生かすことを露聊かも許さないと言わんばかりの究極の一撃。
ヴィラド・ディアは最期の断末魔を上げる間もなく、光に呑まれた。
想像の域を遥かに超える魔力が、手負いの身体を容赦なく蝕み、身体が崩れていく。
崩れた身体は散り散りとなり、一欠片すら残さず光芒の中へ紛れ、消滅した。
お盆休みまで生きねば…。