ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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モンストのマルチガチャ、爆死です泣


第76話 再度逃走、再度誘惑

未だ戦闘を行うリョウとベレトの周囲には薙ぎ倒されたグレムリンの死体が無惨に転がっている。

暫く戦闘を行っていると、光と闇の二つの力が炸裂した地点から光が見え、白刃を交えていたリョウとベレトは動きを止めその方向へと視線を向ける。

 

リョウ「勝負あったみたいやな」

 

ベレト「いいえ…アンドロマリウスは敗れてなどいませんよ」

 

視線が反れたことによる一瞬の静止の隙を見て、フルーレを豪快に突き出し斜め下に振るう。

撓った刃が防御を隙間を潜り抜け、リョウの腕を斬り付けた。

鋭い痛みを覚え顔を歪めたが、大して支障はないため低めの姿勢を取り逆手持ちにした剣を懐目掛け一閃したが、翼を広げ大きく後退し回避したベレトは再度フルーレをリョウの首筋に狙いを定め前に突き出す。

常人の数倍の反射神経を持つリョウは一秒にも満たない時間で攻撃を察知し、体を僅かに反らし剣先をスレスレで回避した。

回避した勢いを利用し体を回転させ、ジェット噴射により威力を増幅させた義足の右足による蹴りをベレトの腹部に直撃させた。

腹の中をかき混ぜさせられる絶大な打撃を受けたベレトは目にも止まらぬ速度で吹き飛び岩盤へ直撃し、気を失ったのか、項垂れたまま動く素振りは全く見せなかった。

 

ベレトとの戦闘を終わらせたリョウは決着を終えたアイリの元へと駆け足で向かう。

先程行った全力を注いだ一撃を叩き込んだアイリは疲労困憊と言った様子で地面に座り込んでおり、リベリオンも長時間絶え間無く戦闘を行っていたせいか、鎌を杖変わりにし立っている。

アイリ達の前には闇の炎により焼け焦げ、光の猛烈な一撃により抉られた地面があり、中央にはアンドロマリウスの亡骸があり、死亡したことが確認できる。

 

アイリ「あ…リョウ君、あたし、やったよ…」

 

リョウ「お疲れアイリ。 よく頑張ったな。 リベリオンも加勢してくれて感謝するわ」

 

リベリオン「私の自由のため、それだけよ」

 

リョウ「そういうことにしとくわ。 …でも、ベレトの言うように、アンドロマリウスを完全に倒せたわけではないみたいやね」

 

アイリ「え、それってどういう…」

 

最後の一撃を与えた手応えはあったアイリは疑問符を浮かべる。

疑問に応答するため証拠を見せつけるためリョウはアンドロマリウスの亡骸の髪を鷲掴みにしアイリの前に差し出した。

外形はアンドロマリウスのままで全く違和感は感じなかったのだが、一瞥し肌の質感に違和感を覚えた。

触れてみると、薄い膜のような物で生成されており、この亡骸がアンドロマリウス本人でないのは一目瞭然だった。

 

リベリオン「奴め、あの一撃を食らう瞬間に自身の張りぼてを作りその場をやり過ごしたのか。 悪魔らしい狡猾で賢明な判断だ」

 

アイリ「そんな…折角倒したと思ったのに」

 

リョウ「それでもアンドロマリウスを追い込んだのは大した成果よ。 アイリはよく頑張ったよ」

 

亡骸には闇の気を感じることもなかったため、死亡したと断定してしまうのは無理もないだろう。

逃してしまったことに気落ちするアイリを慰めるため優しく頭を撫でる。

 

リベリオン「まだ何処かに潜んでいるかもしれない。 休息している間はなさそうね」

 

リョウ「そうやな。 とは言え、あいつも相応の傷を負ってる筈やから急襲してくることはないとは思うんよ」

 

シャティエル「リョウさん、7時の方向にいます!」

 

アンドロマリウスの攻撃を受け負傷したシャティエルが痛々しく足を引き摺りながら声を上げた。

言われた方角に視線を向けると、気絶した振りをしていたベレトがアンドロマリウスに肩を貸し立っている姿があった。

 

アンドロマリウス「見事だ。私をここまで追い込んだその実力は認めてやろう」

 

リベリオン「負け惜しみをいう暇など与えはしない。 次こそ息の根を止めてやろう」

 

アンドロマリウス「次に会う時、また万全の状態で挑ませてもらおう。 さらばだ元人間の娘。 いや、アイリ」

 

血肉に飢えた猛獣の如く目を光らせ鎌を構え接近するリベリオンを無視し、アンドロマリウスはベレトと共に生成したワームホールの中へ入りこの場から離脱した。

逃がすまいと駆け出したが、ワームホールは秒で口を閉ざしてしまい、追跡するのは不可能となった。

始末すべき敵の逃走を許しリベリオンは不快感を露にし、鎌を地面に深く突き刺した。

 

リョウ「どれだけ逃げようと無駄や。 わしから逃れられる訳がないんやから」

 

リョウは瞳を閉じ、監視者としての力を行使するため集中を始める。

頭の中にあらゆる世界が浮かび上がり、宇宙かそれ以上の広大で無数に存在する世界の中からたった二人を見つけるという、気が遠くなるような難儀なことを一人で行うのは、重労働という言葉しか相応しくないだろう。

 

リベリオン「どう? 見つかりそうなのか?」

 

リョウ「そう焦るな。 ちょいと時間が掛かる」

 

ユンナ「リベリオンさん、無数と呼ばれる世界の大海から捜索するのはわたくし達が思う以上に困難を極めるものです。 大人しく待つと致しましょう」

 

アイリ「ユンナさん! 無事で良かったです! 一人であの大人数を相手にするのは酷だったので大丈夫なのかと心配してたんです」

 

ユンナ「あの程度の連中に梃子摺るほどわたくし弱くはなくってよ? 時空防衛局を束ねる者として、数百という数多の敵を撃ち倒せて当然ですわ」

 

胸を張るユンナは何処から取り出したのか分からぬ、一目しただけで高そうだと分かる豪華なカップに入った紅茶を啜っている。

 

リョウ「……見つけた。 ブロセリアンドがある世界に逃げ込んだみたいや」

 

ユンナ「彼等があそこに向かうのは偶然とは思えませんわね。早速向かうと致しましょう」

 

アイリ「休む間もなく移動かー。 でも弱音なんて吐いてられないし、頑張らないとね。 えい、えい、むん!」

 

シャティエル「悪魔の遺体は放置したままでよろしいのですか?」

 

ユンナ「局の者達がいずれ訪れ痕跡を抹消しますので、御心配には及びませんわ」

 

異世界の者達による介入により、今いるこの世界に影響を及ぼすのではないのかと危惧したが、時空防衛局により証拠を隠滅されるので一切問題はない。

 

異世界との交流が許されているのは、時空防衛局が交流することに問題を引き起こす、互いの世界に影響を及ぼさないと公認した世界のみで、今いる世界は交流を受諾されていない、異世界との交流が一切行われていない世界。

なのでこの世界に存在し得ない異分子が混入すれば、直ちに時空防衛局が行動し、元居た世界への送還、又は排除しなければならない。

 

時空防衛局を束ねるユンナ直々の命令からか、数秒と経過していないにも関わらず、出現したワールドゲートから局員が複数人現れ、懸命に悪魔達の遺体処理に勤め始めた。

 

ユンナ「さあ、わたくし達は悪魔を追跡致しましょう」

 

アイリ「行きましょう! 追跡!撲滅!いずれもマッハ! 頑張るぞー! えい、えい、むん!」

 

気合い充分と言った様子のアイリはユンナが召喚したワールドゲートへ一番乗りで飛び込んでいった。

元気溌剌な様子に微笑むユンナとリョウとシャティエル、不本意ながらも不満を漏らさないリベリオンが続き、戦闘を行った世界を後にした。

 

 

~~~~~

 

 

結愛「これが次回のコンサートのスケジュールよ」

 

時空防衛局本部の内部にあるとある一室。

長いテーブルと椅子が並べられた質素な部屋に待機させられていたWSDの一人であるサリエルと、彼女を守護する存在であるディーバナイト、ファルクは第一時空防衛役員の一人である結愛から一枚の紙を渡されていた。

 

紙に記載されていたのは、次回とある世界で開催されるサリエル主催のコンサートのスケジュール。

当日のリハーサルの時間、曲の順番等の詳細が書かれており、紙全体に文字が埋まる程となると、本番である一日がどれだけハードなのかが伺える。

 

ファルク「毎度ご苦労さん。 んじゃ、行くとしますか」

 

サリエル「もうファルク、こんな時くらい携帯電話を手放したらどうなの?」

 

ファルク「悪いな、ゲームでイベントがやっててな。 今日中にはクリアしときたいんだ。 別のゲームでも周年イベントがあって忙しい」

 

結愛「かるく依存症になってるわね。 取り上げた時の反応がおもしろそうね」

 

ファルク「発狂してここを荒らしてもいいのなら取り上げてもいいぞ」

 

結愛「発狂しないでほしいから取らないわ。 仮に取ったところで、私には勝てないでしょ?」

 

ファルク「…ノーコメントだ」

 

発言からして図星なのだろう、悪戯っぽく微笑む結愛から目線を反らし、ファルクは再度手にしたスマートフォンの画面に視線を移した。

 

結愛「コンサートの時には携帯電話を触ることはしないようにしなさいよ」

 

サリエル「携帯電話のゲームばかりやってるけれど仕事は着実に熟すから大丈夫ですよ。 今回は結愛さんも同行するんですよね?」

 

結愛「ええ。 今回は会場に接近させはしないから、安心してちょうだい」

 

前回警護に就いた、ピースハーモニアの世界で開催されたプリシーのコンサートではエクリプスの一人であるディアグルムの接近を許してしまった。

プリシーのディーバナイト、ルヴィの活躍により会場に躍り出て行われたであろう最悪の結末は回避出来たものの、会場付近である奈落にまで接近を許してしまったのは紛れもなく自分達の不甲斐なさが招いた結果。

前回の失敗を活かし、日々血が滲む修行を欠かさず行い、どの部隊を何処に配置するか幾百もの作戦を練り最善を尽くしてきた。

運否天賦な選択など決してしない、自分達の全力を持って挑む、失敗は許されない任務。

胃が掻き乱され吐きそうな重圧が掛かるが、成さなければならない使命感と、何より守りたいという純粋な思いがそれさえ吹き飛ばす。

 

大切な仲間や友を失う辛さは、過去に嫌と言う程に味わった。

もう二度と死にたくなる喪失感を、誰かを失う悲痛な思いを味わいたくはないから。

 

サリエル「じゃあ私達はこれで失礼しますね。 ファルク、行くよ!」

 

ファルク「分かったから毎度背中を押すのはやめてくれって」 

 

サリエル「だって携帯電話ばっかり触ってて動いてくれないじゃないの!」

 

ファルク「分かったっつーの」

 

一礼したサリエルはファルクの背中を押しながら退室していった。

性格も違えば年齢も違う二人だが、仕事に関係なけ仲睦まじい姿を見ていてとても微笑ましかった。

アイドル活動とは言え、世界の命運が掛かっている、若者には過酷すぎる役目を負っているからこそ、共に歩み続け背中を任せてある存在だからこそ築ける仲なのかもしれない。

 

長年多くのディーバを見ていた結愛には何となくだが二人の絆がどう築けられたのか理解できたのと同時に、嫉妬にも似た羨望が芽生えた。

 

───もし、愛美達が消滅せず側にいてくれたら、私もあんな笑顔で過ごせていたのかしら。

 

消滅した友との有りもしない光景を脳裏に浮かべ、四色のビーズで作られたブレスレットを撫でた。

 

?「また悲しそうな顔を浮かべているわね」

 

背後から聞こえた声を聞くや否や、現実に引き戻された結愛は振り返り様に空気を斬る勢いで回し蹴りを放った。

声の正体に鋭い蹴りは直撃することなく空を斬り、姿も見当たらない。

何処に潜んでいるか集中力を極限まで高め部屋を見渡すと、先程まで居なかったテーブルの向かいの椅子に、サタンフォーの一人、リリスが妖艶な笑みを浮かべ足を組み優雅に座っている。

 

結愛「またあなたなの…!」

 

リリス「お久し振り。 また悲しみに満ちた顔をしていたわよ。 私が小話でもして機嫌を取ってあげてもいいのよ?」

 

結愛「余計なお世話よ。 あなたは何をしに本部に訪れているの? 答えなさい」

 

結愛は怪しい動きを見せれば即座に変身するため手にをピースクリスタル握り締めており、威圧感を放つ鋭い眼光を向けている。

 

リリス「そう睨まないでちょうだい。 美人が台無しよ」

 

結愛「その減らず口、二度と開けないようにしてやるわよ」

 

リリス「なら無駄話なしで進めるとするわ。 私が前に渡したあの本、読んでくれたかしら?」

 

結愛「悪魔に渡された書物を読むと思う?」

 

リリス「その割にはあの本を未だに破棄せず部屋に置いてあるみたいね」

 

言われた事柄が事実だったのか、結愛は苦虫を噛み潰したような表情となった。

 

リリス「沈黙は肯定とはよく言ったものね。 僅かではあるけれど、私の話を信じてくれてるということね」

 

結愛にとっては願ってもない話だった。

幾年も前に消滅し、再開することの叶わない友にもう一度再開を果たせる。

結愛自身、何度も時空防衛局の情報網を行使し方法をしらみ潰しに探したが、全て空振りに終わってしまった。

諦念し過去を振り返らず現在を生きていたが、思わぬ機会で長年求めていたものが手に入るとなると、気持ちが揺らぐのは無理がなかった。

 

リリスが姦計を企てているのは確か。

頭では理解していても、友の復活を願う本心が顕在しているのも確かで、リリスを完全に否定することも出来ずにいた。

耳を傾けず排除すべきなのに、仄かに輝く希望を求め手を伸ばそうとしている。

 

結愛「……何百年と掛けて調べ上げてきた。 コア・ライブラリで検索しても結果は出てこなかった。 それなのに何故あなたがその方法を知っているの?」

 

リリス「特殊なルートを使って手に入れたの。 この世の中にはコア・ライブラリにも記載しきれていない情報もあるってことよ」

 

結愛「はったりね。 コア・ライブラリに記載されない情報がある筈ないわ」

 

リリス「信じるかどうかはあなた次第よ。 でもこれは事実。 私も最初は驚いたものよ。 現にそこから得た情報を駆使したお陰で私のこともコア・ライブラリに記載されていないわけだし」

 

結愛「あなたのことはコア・ライブラリに記載されているわ。 最近起こったルシファーによる反逆により冥府界を離れ世界を転々としていると」

 

リリス「へえ~…やはりそこしか記載されていないのね…」

 

結愛「なんですって?」

 

リリス「いえ、なんでもないわ」

 

小声で呟いた言葉は結愛の耳に届くことはなかった。

 

リリス「話が反れたけど、前にも話しようにあの本は読んでおいて決して損はない。 あなたにとって幸福を齎すものだから」

 

結愛「悪魔であるあなたの話を真に受けるわけないわ」

 

リリス「ならあの本は捨ててしまって構わないわ。 でも、そうしたらあなたのお友達とは本当に再開できなくなるだけ。 暇があれば読むだけ読んでみなさい。 案外解読するのは安易な書物だから」

 

述べることを言い終えたのか、リリスは立ち上がり背を向ける。

 

リリス「あ、それとあの本に記載された方法を私も試したけれど上手くいったわ。 実証済みだから、確信は持てるわ。 それじゃ、良い結果になるよう異世界から願っているわ、『救済の雷鳴』」

 

態とらしく二つ名で呼び、黒い霧に包まれリリスはその場から消え去った。

一人となった部屋は沈黙に包まれる。

警戒を解いた結愛だったが、心は晴れず沈黙が支配する部屋から外出することもなく俯いたまま動かず思考を巡らせていた。

 

先程の話で気になる点は二つ。

 

一つは、消滅した者を復活させる方法が実現すること。

結愛は幾年もの長い時を生き、時空防衛局の一人として様々な世界を巡りあらゆる事柄を見て知ってきたが、一つとして消滅した者が復活するということは耳にすることはなかった。

もし、仮にリリスの話が真実であれば、最愛の友が帰還する。

 

二つ目は、コア・ライブラリにこの情報が記載されていないということ。

この世には無限とも呼べる程の世界が存在する。

人生という限られた時間の中でも数え切ることが不可能と断言できる無数の世界、その全ての世界の事柄の細かく尨大な情報が保存されてあるコア・ライブラリに記載されていない情報があるというのは先ず有り得ない。

取り零しがあったにしても、万という数を越える局員達の手により迅速に書き加えられる。

何の変哲もない一般人の情報なら兎も角、消滅した者の復活という、激甚な災害級の情報を認知、聞き逃すなど到底考えられない。

 

受け入れ難い、真実かどうかも定かではない話だが、頭に焼き付いて離れない。

悪魔が漏らす戯れ言の可能性が高いと分かっていながらも、真実であってほしいという願望が話を否定するのを拒んでいる。

 

結愛「……少し、調べてみる必要がありそうね」

 

仮に真実ならば、消滅した者や世界を取り戻せる。

僅かに芽生えた希望にすがりたくなってしまっていた。

騙されたと思い、公にせず密かに書物の解説をするため、結愛は足早に部屋を退出していった。




最近寒いので風邪引かないよう気を付けないと…
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