ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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後編かと思った?
残念、中編でした!


第78話 アイリVSアンドロマリウスVSダークライ 中編

華奢な身体を貫いた槍状に変化した腕は赤くに染まり、先端から鮮血が滴り落ちていく。

喉元に噛み付いた蛇は遠慮を知らぬ勢いで血肉を貪り、止めの一撃と言わんばかりに喉元を噛み千切った。

頸動脈を引き千切られたことにより鮮血が大量に零れ、アイリ達が滞空している箇所のみに深紅の雨が降り注ぎ青々とした木々を赤く染めていった。

 

天使とはいえ、人間と同様に喉元を切られでもすればタダでは済まない。

腹部への痛烈な一撃を受けたこともあり、抵抗する力は当然一欠片もなく、アイリの腕はだらりと下へ落ちており、見開かれた目には命の灯火が見えない。

 

アンドロマリウス「漸く事切れたか。 悪魔の恐れる要因が消えた。 だが、自身の世界を追いやられた現状では、この娘が生きようが死ぬまいがどうでもよいのかもしれないな」

 

帰還する場所を喪失した己の悲痛な現状を皮肉ったように呟く。

しかし僅かに悲哀が混じった言葉は誰かが返答してくれる訳もない。

 

屍と成り果てたアイリを遺棄しようとしたが、とある違和感に気が付いた。

力無く下に俯くアイリの顔が先程と違うことに。

首を傾け覗き込むと、顔は人間のものではなく、『へのへのもへじ』と描かれた張りぼてだった。

 

アンドロマリウス「なっ…!?」

 

変化に気付くのがあまりにも遅すぎた。

既に間に合わない、尽くす手段が無いと判断した直前、アイリだった何かである物、『カワリミ』は大爆発を起こした。

回避不可能な至近距離での爆発を受けたアンドロマリウスは空中での制御を失い、樹冠を突き破り勢い良く草が生い茂る地面へ激突した。

背中を強打し、全身に収まりきる空気と共に内蔵が破裂したことによる血が口から吐き出された。

 

呻吟する間もなく、アンドロマリウスの左腕の手首と両足首に光の矢が射ち込まれ、完全に動きを封じられてしまった。

 

アイリ「やああああああああああ!!!!」

 

枝木や大木を潜りながらアイリが空中から馳せ参じた。

光の刃と化したガーンデーヴァの切っ先を向け己を鼓舞するための雄叫びを上げ、アンドロマリウスの心臓目掛け急降下する。

 

アンドロマリウス「小娘がああああああああああああああああ!!!!」

 

一度だけでなく二度までも『カワリミ』による瞞着する攻撃を受け激昂し、荒々しい声を上げる。

最後の悪足掻きとも捉えられる、身体の奥底から張り上げられた魂をも揺さぶる一声。

 

悪魔と相対し、闇を晴らす禍根である、厭悪し仇為す少女に自由に動かせる右腕を上げ、拳を握り力の限り突き出す、今までとは比にならないエネルギーが込められた『愚者殺し』が放たれた。

 

アイリの弓とアンドロマリウスの拳が接した瞬間、エネルギーの余波により周囲の木々が吹き飛んだ。

光と闇が激しくぶつかり、交わり、擦れ、散乱する。

森林全体が震える程のエネルギーが放出され、この場を寝床とし住まう獰猛な獣ですら踵を返し逃げ始めている。

周囲を一瞬にして更地へと変化させ、二人だけの独壇場を築き上げたが、より一層攻防の激しさは増していく。

不規則に乱れ飛ぶ闇がアイリの身を蝕み、光がアンドロマリウスの身を焦がす。

それでも両者は決して力を緩めることなどしない、否、許されない。

どちらかが僅かに気を抜き力を緩めれば、その瞬間に勝負が決まる。

一歩も退くことなど許されない、緊迫した戦況が膠着している。

 

アンドロマリウス「貴様のような低俗な存在がここまで強くなるとは思いもしなかった。 だが、この場で貴様は死ぬ。 己の弱さに最後まで向き合えずに」

 

アイリ「己の弱さなら気付いてるつもり! 現実世界では陰湿なあたしだったけど、天使に転生した時から思い描くあたしを貫いてきた!」

 

アンドロマリウス「……やはり、威勢だけは一丁前のようだな。 克服できたわけではないようだ。 貴様の心から恐怖の念が伝わってくる」

 

アイリの心を覗き見たのか、アンドロマリウスは邪悪な笑みを浮かべる。

弱さに付け込む奸悪な言葉を並べてくるも、動じることはない。

 

アイリ「怖いに決まってるじゃん! 死んじゃうかもしれないのに!」

 

アンドロマリウス「ならば逃げればいいではないか。 以前の貴様ならば真っ先に行動していただろう。 簡単な話だ。 武器を捨て去り、その場を去れば良いだけだ」

 

アイリ「本当だったらそうしたいよ。 でも、あたしが敗走すれば、あなた達を目の前にしながら敵前逃亡を図れば、誰かが違う形で被害に遭う!」

 

アンドロマリウス「何故他者の安全を考慮する必要があるというのだ? 自分さえ良いのだけでは満足出来ないのか? 貴様はただ他者を助力し満足したつもりになり、自己満足していただけ…そうではないか?」

 

アイリ「誰かを助けて感謝されてちやほやされたいわけじゃない! 仲間や友達、知らない誰かが傷付く姿なんて見たくもないし想像もしたくない! だから、あたしは逃げずに戦う! それに、あんたとは決着を着けないといけないから!」

 

アンドロマリウス「ただの仇討ちかと思ったが、私情を挟んでいたか。 私が憎いか?」

 

アイリ「憎いかなんか分からないけど、あたしのような運命になってしまう人がいなくならないためにも、あんたを倒す!」

 

アンドロマリウス「決着を着けると発言したな。 その言葉が自然と出るということは、私を憎悪すべき対象だと捉えている何よりの証拠だ」

 

アイリ「そりゃ、ゼロではないよ! あたしを一度殺してるようなもんなんだから!」

 

アンドロマリウス「私を殺したいのだろう? ならばもっと私を憎み恨め。 怒りで力を増幅させ立ち向かって来るがいい。 ここで私を止めなければ、あの機械少女や妖怪の小僧もいずれ殺すことになるぞ」

 

アイリ「そんなことさせるかあああああああああ!!!!」

 

神経を逆撫でする挑発染みた発言がアイリの怒りの沸点を突破した。

怒りの炎が心の奥底で燃え上がる。

呼応するように放出される光の力が倍増していき、アンドロマリウスの闇を纏った拳が徐々に押され始める。

 

生死に関わる強大な一撃にも関わらず、アンドロマリウスに焦りの色は伺えない。

寧ろ、僅かだが不気味に笑みを浮かべている。

怒りの感情に身を委ね、一心不乱にガーンデーヴァを振り下ろそうと力む。

 

更に光が増幅していく最中に、体の奥底にどす黒い何かを感じ取れた。

膨れ上がるように、体を蝕んでいく何かに気付いた時には、既に遅かった。

どす黒い何か、闇が体を支配しようと心を貪り食らうように暴れまわるのを混乱しながらも抑え込もうと神経を集中させる。

 

アイリ「な、何で、闇が……!?」

 

アンドロマリウス「貴様は胸の内で私のことを憎悪し、仲間に危害を加えようとしたことに憤怒した。 貴様の心に生まれた負の感情を闇へ変換しただけだ。 さぞかし苦しいだろうな。 いっそ素直に堕ちた方が楽になれるかもしれんぞ?」

 

堕落させるための甘美な言葉を投げ掛けるも、アイリは一切耳を貸すことはない、と言うより聞く余裕などない状態だった。

 

体の内から相対する力である闇が自身を支配しようと迸る不快感が常時襲う。

身体中の汗腺から嫌な汗が吹き出し、吐き気を催す。

呼吸も乱れ始め、到底戦闘を続行可能な状態ではないのが嫌でも理解出来てしまうため、焦りと不安も募り始める。

視界も歪み始め、弓を持つ手と光の力が衰弱していく。

 

アイリ(ちょっと…ホントにヤバいかも。 少しでも気を抜けば意識が失われそう)

 

朦朧とする意識の中でも絶対に倒れない、退かないという強い意志が自身を奮い立たせており、どうにかアンドロマリウスの拳を受け止めきれているが、時間の問題だろう。

心の奥底から溢れる闇を排斥しようと試みるも、粘り強く巣食う闇は未だに心身を蝕もうと暴れ狂っている。

 

アイリ(凄く辛い。 戦うことってやっぱり辛い。 諦めたくない……でも、耐えられそうにない)

 

アンドロマリウス「このまま身を委ね楽になった方が楽だろう? さあ、闇を受け入れろ」

 

心を読み取ったアンドロマリウスの言葉が脳裏に焼き付くように響きリフレインする。

受け入れてはならないと理解できていても、蠱惑的な言葉を聞き入れ染まってしまった方が楽になれるという考えが生まれてしまう。

この場を凌げるのならば良いのではないかと。

 

アイリ(もう、いいかもしれないのかな?)

 

アンドロマリウス「そうだ。 貴様は不馴れな環境下の中でも必死に生きてきた。 もうあの忌まわしい監視者共に振り回されることもない」

 

アンドロマリウスの勧誘とも受け取れる言葉が響く。

心の奥底に根付き蔓延していく闇は、歯止めが利かない。

体の感覚が徐々に薄れていき、意識が漆黒の深淵へと沈んでいく。

光が途切れ、堕ちていく。

 

闇に呑まれればルシファーの様に堕天使となるか、体が耐えられず死にゆくか。

未来の行く末など眼中にもなければ考慮すらしていないアイリはただ禍々しくも優しく呑み込む闇に浸透されていく。

 

アイリ(あたしなんかじゃ、サタンフォーに勝てる筈がないんだ)

 

闇に呑まれることで、負の感情も芽生える。

自信に満ち溢れ溌剌としたアイリは消え失せ、天使へと転生した日からを振り返る。

 

ガーンデーヴァを使いこなす訓練時に現れたリリスとの戦闘の際にも、決定打を与えることが叶わなかった。

 

天界でのディーバのライブを警護する際にも、ベルゼブブには辛うじて勝利を収めたが、リョウ達により体力を大きく削られていたからこそ。

 

翔琉達の住む世界でアンドロマリウスに襲撃された際には、戦意喪失させられるまでに追い込まれ敗北した。

 

アレクの能力によりピースハーモニアの世界に逃走した際には、自身が戦うことを恐れ戦闘が行えない状態を庇うためシャティエルが犠牲となってしまった。

 

その後のディーバのライブの警護の際にも、エクリプスと共に出現したデスピアの幹部であるグラッジはダークネスリベリオンとの一時的な協力により倒すことが出来たが、一人では勝利は掴めなかったぢろう。

その後のリベリオンとの戦闘では実力が及ばず敗北した。

 

星空界では自身が手にする筈だったルシファーに光の剣クラウソラスを奪取された挙句、取り逃がしてしまった。

 

現実世界では久々に自分の世界に帰還できたことに歓喜していたあまりにベルゼブブの発見が遅れ、新世界に少なからず被害を出してしまった。

 

悪魔を討伐するため終焉を迎えた世界でヴィラド・ディアに喰われ消滅した時空防衛局の局員達も、もっと早く忠告し実力があれば救えたかもしれない。

 

現在も、サジタリウス達にも協力してもらい特訓をしてもらったにも関わらず実力が及ばずアンドロマリウスに敗北しようとしている。

 

過去を振り返れば振り返るほど、自身の不甲斐なさと実力不足が浮かび上がる。

人一倍努力をしてきたが、理想の結果へ辿り着くことがない。

何も変えることなどできない自分に反吐が出そうになる。

外面は変わっても、内面は転生する前の内気な頃と何も変わってなどいなかった。

 

もう自信など持てず、失望するしかないアイリは自分を軽蔑しながらただただ底が見えぬ深淵へと沈んでいく。

 

アンドロマリウス「終わりだな。 心の内から闇に染め上げれば、たとえ光を有する貴様でも抵抗はできまい」

 

光の力が完全に消え去り、静かに瞳を閉じたアイリは地面へ倒れ伏した。

闇に堕ちるよう巧みな話術により誘導したアンドロマリウスは一息つくと手首と足首に刺さった矢を抜き漸く体の自由を取り戻した。

 

アンドロマリウス「あとはこの娘に憑き天界へ行き不意を突き四大天使を滅し、冥府界に戻り裏切り者のルシファーを討つ」

 

闇に蝕まれ気を失っているアイリを殺そうとしたが、野望と復讐を果たすための傀儡として扱った方が効率が良いと判断し命を奪うことはしなかった。

光の絶え間無い攻撃により負傷し体力も大きく削られたが、治るのは時間の問題なため気にする必要もない。

散々アイリ達に邪魔をされたが、ここからは滔々と物事が流れるだろうと密かに確信を得つつ、アイリに憑こうと巨大な右手を伸ばす。

 

あと一寸で肌に触れるという直前で、アイリの体から白い光の粒子が溢れ、身体を守護するように覆い、光の奔流となった粒子がアンドロマリウスに襲い掛かり数メートル先まで吹き飛ばした。

 

アンドロマリウス「ば、馬鹿な…!? 何故光の力が残っている!?」

 

確かに光の力が消失したのを確認できた。

二度と目覚めぬ筈なのに、瞬時にして爆発的に増大し膨れ上がった光の力に戸惑いを隠せずにいた。

一体アイリの身に何が起きたのか全く理解出来なかった。

 

 

~~~~~

 

 

アイリ「暗くて…寒い。 これが、闇?」

 

闇の深淵へと意識を沈めたアイリは瞼を開いた。

上下左右、前後を見渡しても視界に入るのは夜よりも濃い漆黒の景色。

自身の精神世界とは思えぬ黒々とした世界に驚愕するも、自身が闇に捕らわれ堕ちたことを思い出し冷静となる。

 

アイリ「そっか、あたし闇に染まっちゃったんだ」

 

自覚していても、不思議と焦りはない。

自然と馴染むように染み付いており、先程の苦痛が夢だったのではないかと錯覚する。

 

アイリ「もう、後戻り出来ないよね…。 闇堕ちキャラはかっこいいかと思ってたことあったなー。 でも…あたしの場合、負け犬じゃん」

 

自分の運命を皮肉で言い鼻で笑う。

幾ら努力をしても周囲の人々の実力には到底及ばなかった。

転生したばかりの戦闘経験も無いに等しいため仕方ないと言えばその通りなのかもしれないが、言い訳にしか過ぎない。

 

リョウの仕事の補佐をしたいと願い、友や仲間を守れる強さを求めていたが、足を引っ張る結果となることがしばしばあり、自分は足枷の形となってしまっている。

想いだけは人一倍強いが、想いだけでは解決できないのを痛感させられた。

 

アイリ「あたしに、もっと力があれば良かったのに。 はあ…もう、考えてもしょうがないや。 あたしは実力も心も弱いし…何も、出来ない…」

 

自分を責め立てていくうちに、涙腺が緩み始める。

目から涙が出始めそうになるも、泣くまいと必死にこらえた。

 

アイリ「泣いちゃ駄目…! あたしは笑顔が一番似合う子って言われたんだから。 泣いちゃ駄目だって、約束を……約束?」

 

自然と口から出た言葉に違和感を覚えた。

 

泣いては駄目という約束は一体誰と交わした約束なのか?

笑顔が一番似合う子とは誰に言われた言葉なのか?

 

発言した言葉は確実に誰かに言われた事実だけは確かに脳裏にある。

誰に言われたのかは頭をどれだけ捻ろうと出てはこない。

物心が付いた頃には孤児院に居たが、孤児院に勤めていた人に言われた記憶はない。

学校の誰かに言われた記憶もなければ、転生した後に言われた記憶もない。

 

ならば、一体いつ、誰に言われた言葉なのだろうか?

 

『──あな──い──子ね』

 

アイリ「えっ………?」

 

『──私──愛す──よ』

 

聞き覚えのある声が聞こえた気がした。

優しく語り掛ける、女性の声。

聞いているだけでどれだけ不安に駆られようも落ち着いてしまう、懐かしい声。

確かに記憶に残存していたその声は、より鮮明になり聞こえてくる。

 

『あなたは笑顔が一番似合うわ。 あなたの笑顔は、周りを照らす光よ』

 

『何事も頑張れば何でも出来ちゃうものよ。 大切なのは、諦めずに自分の信念を貫くこと』

 

『昨日出来なかったのに、今日は出来たの? 凄いじゃない! 流石、──ね! やっぱり愛莉は出来る子ね! 偉いわよ!』

 

『あたしが──まで、泣かないで。 泣かないって、約束して? 必ず──から。 あなたは、あたしにとって──よ。 ──るわ』

 

所々ノイズが走るように思い出せない箇所があるが、確かに言葉が聞こえた。

何故今まで覚えていなかったのか分からない程の、聞き覚えのある声。

だが何故か、その人物が誰なのか思い出せないのが不思議でたまらない。

覚えている筈なのに覚えていなかった、何とも言えない矛盾が生じる。

 

頭の片隅に眠っていた記憶が何故今になって掘り出されたのかは不明確だが、アイリの心に再度光が灯る契機となった。

 

アイリ「何だろう…凄く懐かしくて、温かい言葉。 誰かは思い出せないけど、心に染み渡って、もう一度頑張ろうって思えてくる」

 

挫け折れてしまった心が記憶に残存する言葉だけで治癒してしまった。

我ながら心が脆く単純だなと思ってしまったが、元気や勇気を与えてくれる活力剤とも言える効力が記憶の中の言葉にはあった。

 

アイリ「誰か分からないけど、ありがとう。 あたし、もう一度立ち直って頑張ろうと思えたよ。 自信を持って、前に進まないとね!」

 

再度戦火の中へと飛び込むことになるのは分かっている。

戦うということは、自身が傷付く覚悟と、周囲にいる者を守り傷付ける覚悟が必要となる。

戦うことに恐れを感じなくなったわけではない。

 

今以上に強大な敵が現れるかもしれない。

激痛を伴い致命傷を負うかもしれない。

仲間や友を失う悲劇も訪れるかもしれない。

 

 

避けては通れぬ困難な道や障害と言う名の壁があろうが、それを見てみぬ振りをしてはならない。

どれだけ目を反らそうが、目の前にある道や壁が消え去るわけではなく、目の前に在り続けるのだから。

未来を覗き見ることなど出来ないため、如何なる困難が振り掛かるか知る由もないが、自身の力で乗り越えなければならない。

 

そのためには、更に強くならなければならない。

現実世界とは異なる、魑魅魍魎な輩が多数存在するファンタジーと呼ばれる世界の中では一人で立ち向かうには限界がある。

だが自分は一人ではないと、過去を振り返り再確認した。

転生してからというもの、様々な出会いに恵まれた。

 

世界の監視者と呼ばれる青年や相棒の喋る消しゴム。

全世界を統一する神様。

電気を操る無鉄砲な天使

エンジェロイドの少女。

幼い妖怪の少年。

 

数える程度だが様々な異世界を巡り、数えられない程の多くの出会いに巡り会えた。

マイナスな局面ばかり見てきたが、確かに自分が居たことで役に立てたこともあった。

何より、様々な人に技の技術を教わり学び、心に刻まれる大切なことも学んできた。

零落せず心身共に強くなれたのは、間違いなく今まで出会ってきた仲間達が背中を押してくれたお陰だ。

 

アイリ「みんなのお陰で、あたしはここまで来ることが出来た。 ここからはあたしがみんなから伝授されたことを活かして、あたしの力で進んでいかなくちゃ!」

 

戦い続けると畢竟したアイリの瞳は光に満ち溢れており、その輝きは一等星をも思わせる漆黒を照らす。

記憶の中に確かに存在する何者かの言葉により賦活したアイリの輝きは、瞬く間に心に染み付く闇を消し去っていき、純白の空間へと早変わりしていく。

蕪雑していた心境は霧散し、決意を固めた意思と志を持ち、夢に向けてもう一度踏み出そうと翼を羽ばたかせ精神世界の上部へ向け飛翔する。

 

アイリ「今からはあたしの快進撃を見せてやるんだから!!」

 

前向きな想いと共鳴するように、光の力も増大していき、身体から白い光の粒子が溢れ出す。

アイリ自身では気付いていないようだが、それはリョウが行使する『天使の加護』と全く同質なもの。

 

一筋の光と成り天へと昇って行き、精神世界を抜け出した。

 

 

~~~~~

 

 

闇から解放されたアイリは立ち上がり、愛用の弓、ガーンデーヴァを掴み、白い粒子で吹き飛ばされたアンドロマリウスの方へ視線を向ける。

討つべき敵に向けられた、決然たる光を灯らせた双眸は、別人だと捉えても不思議ではない程に、強く鋭い。

人間の何倍もの時を生きるアンドロマリウスさえも、どのような甘美な誘惑の言葉を投げ掛けようが、無意味に終わるのが予想できてしまった。

 

アイリ「復活の福音を受けたアイリちゃん大復活! 光が時を刻む間に、あたしの美技に酔いしれちゃいな!」

 

アンドロマリウス「信じられん…闇に呑まれた者は這い出すことなど有り得ん。 屈強な心の持ち主でもない貴様が、何故…!」

 

アイリ「正直、詳しいことはあたしにも分からない。 でも、記憶の中にある誰かの声に救われた。 あたしはあたしらしく、転生したことで生まれ変わった新しいあたしを貫いていこうと思えただけ。 自信を持って、前向きに進む。 それがあたしが望む理想の自分! 今から更に一新されたあたしの実力、見せてやるんだから、お覚悟は、よろしくて?」

 

自信に満ち溢れた言葉に、戦うことへの躊躇いも迷いもない。

友や仲間、誰かを守るために。

自ら望んだ道を行くために。

勇気を振り絞り、今立ちはだかる脅威へと立ち向かう。

 




次回、因縁の二人の戦いに決着!
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