今年もマイペースにダラダラと書いていきますので今年もよろしくお願いします!
ユンナ「……それは、誠なんですの?」
ベレト「私の心を読めば真実だと分かると思いますよ?」
ベレトから告げられたリリスの情報にユンナは珍しく動揺を隠しきれずにいた。
悪魔についてはコア・ライブラリで記載されてある情報を根掘り葉掘り調べ上げ、造詣が深いつもりではいたが、たった今聞いた情報はコア・ライブラリには記載されていなかったものだった。
ありとあらゆる情報が毎秒感覚で更新され続けている膨大なデータの中にも記載されていないなど異例としか言いようがない。
ベレトが虚言を吐いていないのは、彼の心を読めば一目瞭然だった。
ユンナ「何故、あなたはそれをご存知なのですの?」
ベレト「私も彼女に直接聞いたわけではありません。ただ彼女の行動を不審に思い独自で調査した結果ですから」
ユンナ「つまり、憶測にしか過ぎないと?」
ベレト「いえ、ほとんど真実だと思いますよ。私も実際に目にしたこともありますし。監視者や他の連中から事情聴取すれば分かることでしょう」
ユンナ「そうですか。ご協力に感謝致しますわ。あなたはこれから時空防衛局で身柄を拘束させていただきます」
ベレト「おやおや、解放させてくれると思いましたが、やはり手厳しいですね」
ユンナ「自由の身にさせるわけがないでしょう。あなた方は異世界を終末させる未曾有の危機に陥らせた未遂があるのですから、逃すなど有り得ませんわ」
所持していた頑丈な鋼鉄で生成された手錠でベレトの両手を束縛し、時空防衛局本部へ連行するため立たせる。
ワールドゲートを開こうとした刹那、何かの気配を感じ取り、全身に鳥肌が立った。
覆い被さるように押し寄せる純粋な殺意。
考えるよりも早く体を動かし、その場から素早く撤退し迫る謎の気配から距離を取った。
ベレト「ぐはっ…!?」
咄嗟に横転した直後に聞こえたのはベレトの呻き声。
何が起きたのか状況を確認するため即座に体勢を立て直し槍を構える。
視界に映るのは、中心に光の球体がある先端が銀色の特徴的な形をした触手がベレトの体を貫いている光景。
もしあの場に止まっていれば、恐らくあの触手の餌食となっていただろう。
?「私の殺意に気付くなんて、察しが良いのは相変わらずね」
触手が伸びる元を辿っていくと、ベレトから少し離れた場所に、妖艶に微笑む美女がいた。
先刻まで話題になっていた張本人である悪魔、リリスだ。
ユンナ「何をしに来たかは存じませんが、好都合ですわ。あなたにはお尋ねしたいことが幾つかありますの」
リリス「私はあなたに用など微塵もないわ。そこの塵芥を処理しに来たの。余計なことを流暢に喋らないうちに芽を摘んでおこうと思ったのだけれど、一足遅かったみたいね」
ベレト「私を始末するということは、私の憶測は、事実というのが確定したことになりますね」
リリス「あら、そういうことになっちゃうのかしら」
ベレト「あなたらしくも、ないですね。墓穴を掘ったようなものですからね。案外抜けていて、無様なこと、極まりないですね…」
ベレトの発言はごもっともで、ユンナに話した内容が事実である証拠となった。
ユンナは超能力による読心術で相手が虚言を漏らしていないか確認が可能だが、時に心を読む対象者の能力により読み取れない、又は偽りの心の内を赤裸々にさらけ出される場合も稀だがある。
ベレトの話した内容が確信へと変わったため、ユンナは警戒心を高める。
リリス「死に行く者の言葉など聞いてられないわ。大人しく私の力を取り戻すための肥やしとなりなさい」
ベレト「があああああああ!?」
最後の悪足掻きのつもりか、口角を上げ憎まれ口を叩いたベレトの首筋に別の触手が突き刺さり、ベルゼブブの時と同様に体液を一滴残らず吸い取ってゆく。
断末魔を上げるのを束の間で、体液を吸い尽くされた脱け殻と化した体は灰となり崩れ去った。
新たな力を得て恍惚な笑みを浮かべるリリスは、次の獲物であるユンナに的を移す。
ユンナ「あなたは一体何をなさろうとしていますの?」
リリス「それをあなたに教える義理は何一つないわ。それに、ここで撃たれる運命にあるのだから、尚更教える必要はないでしょ?面倒で厄介な時空防衛局の長は、潰しておかないと」
淡々と述べているが、大抵の者が成せるような生半可なことではない。
知る人ぞ知る、ユグドラシルメシアと呼ばれる伝説を作り上げた一人であるユンナを打倒しようなど、浅学菲才な人物か、興味本意で挑んでくる愚者だけだろう。
だが目の前に佇む悪魔はそれに当てはまることはない。
歴然の猛者であろうが戦慄する不気味さと、圧倒的強者の威圧感により身が竦みそうになる。
数多の修羅場を潜り抜けてきたユンナは後退りするようなことはしなかったが、悪魔とは思えぬ異様な雰囲気を放つリリスに違和感を感じていた。
一戦交えても先ず死ぬことはないだろうが、下手に追求するのは危険だと判断し、心を読み取り情報を割り出そうと考えた。
リリスの心の内を覗き込もうと怪しまれぬよう意識を集中させる。
ユンナ(………何故、読み取ることができないんですの?)
悟られぬよう傾注していたが、読み取ることが叶わなかった。
より深くまで掬い上げようと試みるも、一掬することができない。
読心されるのを阻害する能力等を所持していると勘案していると、
リリス「何故、読み取ることができないのか…そう思ってるわね?」
逆に心を読み取られ、思わず気が動転する。
当てずっぽうにしては的確過ぎており、此方の心の内が見透かされているのではないかと思えてくる。
リリス「図星かしら?あなたにとっては稀有でしょうね。何故なのか種明かしはしないわ。ここで死ぬかもしれない人間に何を言っても無意味でしょう?」
底知れぬ実力を持つであろう悪魔は、再度妖艶な笑みを浮かべながら歩みを進める。
狼狽えこそはしなかったが、一歩、また一歩と近寄るにつれリリスから放たれる圧に押され呑まれそうになる。
本気で挑まなければならないと確信を得たユンナは槍の切っ先を向ける。
?「ユンナさーん!」
鬱蒼と生える森の暗闇の中から、溌剌とした声が発せられた。
思いも寄らない増援に微かに勝利の星を掴む余裕が生まれるも、歩みを進めるリリスの余裕が消え去ったわけではない。
まるで問題ないと言わんばかりに。
リベリオン「別の悪魔がいるわね」
アイリ「リリス!?また何か企みがあるみたいだけど、何か吐いてもらうんだからね!」
リリス「騒がしい子猫達ね。厄介な存在ではあるけれど、アイリ…特にあなたは今ここで葬るのは得策とは言えないわね」
アイリ「どういう意味?」
リリス「知らなくてもいいことよ。無駄話は終わりにして、始めましょうか?」
不気味に揺らめく触手の先端をユンナに向け、自身も武器である剣を召喚し構える。
?「ユンナだけじゃ役不足…って訳じゃなさそうか」
新たな介入者の出現により戦局は傾いた。
両者の間に割り込むように空中から降りてきた人物には、アイリにも見覚えのある人物だった。
白いローブを纏う、目付きの鋭い青年。
第一時空防衛役員のリーダー、リュート・バリアウロ。
時空防衛局の中でも指折りの実力者が何故馳せ参じたのかは不明だが、願ってもいない増援だった。
既に空中に魔方陣を幾つか展開し戦闘準備が万端だったリュートは形振り構わず攻撃を開始した。
魔方陣からエネルギー弾を放たれた。
近距離による、一発一発が凄まじい威力のエネルギー弾が容赦なく向かってくるも、リリスは触手と剣で弾きいなす。
翼を広げ後退したかと思うと、身体中に赤いオーラを纏わせ突貫した。
この技は紛れもなく、先程吸収され死滅したベレトのもの。
リュート「近寄ってくんな悪魔。『残虐なる歪み』」
手に蓄積された魔力と共に、リリスの体に紫色の魔力が纏わり付き拘束した。
流星の如く勢いの速度は瞬時に停止し、魔力に捕らわれたリリスは踠くがうんともすんともいかないといった様子。
拘束から逃れることを一時的に諦め、触手を伸ばし光線を放とうとするも、リュートが更に魔力を飛ばし事前に攻撃を阻止した。
それだけでは終わらず、魔力により空間を歪ませ触手をねじ曲げ引き千切った。
リュート「俺に触れられると思うなよ」
リリス「思ったよりも魔力が膨大ね。でも、力が不完全な私にはありがたい限りね」
焦る仕草を一切見せない余裕が何故生まれるのか、即座に理解させられた。
別の触手が魔力を吸い始め、屡叩く間に動きを封じていた枷は消失した。
リリス「褒賞として差し上げるわ。『テンタクトレイ』」
篭絡しているのではないかと疑問に思う程の手際の良さで一転攻勢したリリスは瞬時に再生させた触手から光線を放つ。
リュートは退くことなく魔力により生成した剣で光線を手際よく斬り弾きつつ、展開し続けている魔方陣からエネルギー弾を射つ。
エネルギー弾の一発は強力だが、リリスは触手を
どちらも引けを取らない強力な力が衝突し合う中心では、リュートとリリスの激しい剣戟が繰り広げられている。
リュート「悪魔にしちゃそれなりに強いな。俺は幾つもの修羅場を潜り抜けてきたがお前は上位に入るくらいには強いぜ」
リリス「それはどうも」
リュート「お前、本当に悪魔なのか?アンドロマリウスとか言う奴よりも強いと思うんだが?」
リリス「悪魔以外に何があるというの?もうお喋りを楽しむ余裕はないわよ」
リュート「それはこっちの台詞だ!」
リリスが一本の触手でリュートの剣を持つ腕をすれ違いざまに叩いた。
その一瞬の隙にリリスは剣の切っ先を向け、命を刈り取るため心臓目掛け突きを繰り出す。
魔術を扱うものとは思えぬ、アスリート並の反射神経でリュートは集束した魔力を纏った手で自身を貫こうとする剣を鷲掴みにした。
数秒という短い時間の膠着状態を狙っていたかのようにユンナがエンプレスジャッジメントに装飾されている刃を念力で飛ばす。
光線とエネルギー弾を華麗に掻い潜り、リリスを斬り刻もうと縦横無尽に宙を進む。
リリス「これも使いたくなかったのだけれど仕方ないわね。『暗夜蝶』」
前に手を掲げると、蝶の形状のエネルギー弾が放たれ、擲つ勢いで刃と衝突し追撃を阻止した。
放たれ残された『暗夜蝶』は意思を持つように宙を漂いリュートの背後に回り込み背中に纏わり付いた。
リュート「鬱陶しいな。直ぐにでも、ぐっ……!?」
強気な態度で戦闘を繰り広げていたリュートが突如膝を着いた。
急速に体から魔力が吸い取られている感覚に陥る。
いや、実際に吸い取られていた。
吸い取っている犯人は十中八九背中に張り付く蝶の仕業で、取り付いた者の力を吸い尽くすまで離れることはない。
リリス「私の肥やしとなってくれたことに感謝するわ」
リュート「この俺が、簡単に沈むと思うなよ!」
顔を歪ませながらも、決死の猛攻として『残虐なる歪み』を繰り出す。
背後の空間を歪ませ自身の背中を巻き込みながらも張り付く蝶を無理矢理引き剥がした。
その影響で背中の皮膚が少々抉れたが、お構いなしに時空を歪ませ続け、リリスも纏めて巻き込もうとする。
腕が巻き込まれる直前でリリスは翼を広げ上空に回避したが、待っていたのはエンプレスジャッジメントを構えたユンナだった。
ユンナ「お沈みなさい!『ドラゴンスラスト』!」
空中で翻りリリスの真上へ移動し、念力でエネルギーを纏わせた槍を突き出す。
空気を裂き、音すら貫く、女性の膂力とは思えぬ光速で放たれる突き。
リリス「その技は何度か見たことがあるから脅威ではないわ」
二本の触手を巧みに操り、金属並に硬度がある先端で刃を挟み勢いを殺した。
達人技に近い白羽取りをされては手の打ちようがないが、それは一般常識に過ぎない。
念力で槍に装飾された五つの刃を飛ばしリリスの身体を斬り刻もうと宙を翔るが、先程よりも小さな『暗夜蝶』を大量に飛ばす。
視界を覆い尽くす大群は刃の行く手を遮り、ユンナのエネルギーも吸い尽くそうと羽ばたく。
流石のユンナも危機を察し、余儀無く撤退という選択肢を選び地面に着地した。
リリス「さて、思わぬ邪魔も入ったことですし、私はもう行かせてもらうわ。私の相手などせずに、事の善後措置でもしておきなさい」
ユンナ「お待ちなさい!」
追撃を行おうとするも、黒い霧に覆われこの場から去ってしまった。
一先ず悪魔の殲滅が達成され事が終息し、静寂に包まれる神秘的で安穏とした泉に戻ったが、心の内は曇天と化していた。
ユンナ「逃がしてしまいましたか…。リュートさん、御無事ですか?」
リュート「この程度でくたばってたまるかよ。それより、あいつの追跡を急がせる。これ以上蔓延らせてたら何するか分からねえからな」
自分の失態は自分で尻を拭いたいようで、少々回復したリュートは直ぐに立ち上がる。
リュート「おっと、その前にあんたに用があったんだ。リョウからの伝言だ。暫くヴィラド・ディアの殲滅に専念するため天界には戻らないみてぇだから、ミカエルに悪魔の掃討は済んだと報告をしといてほしいみたいだぜ」
ユンナ「何故リョウ本人が向かわずわたくしに?…まさか、アイリさんの件ですか?」
リュート「みたいだぜ。へまをしちまったんだろうよ」
リョウはマリーと共に行動する前に、時空防衛局に赴きリュートにユンナ宛に伝言を依頼していた。
リョウを忌み嫌うミカエルは真面に対談することは叶わないため、渋々ユンナに報告を依頼する羽目になってしまった。
真の目的は、アイリにこれ以上詰め寄られ問い質される前に距離を取ること。
ある程度の事を認知しているリュートは面倒臭いと思いつつも協力者となりユンナのいるこの世界に現れ、今に至るという訳だ。
ユンナ「分かりましたわ。リョウさん、また力を使ってしまわれたんですね。流石に厳重注意をしなければなりませんわね」
リュート「だな。俺達の補助があって不自由なくいられるのを今一度頭に叩き込んだ方がいいな」
アイリ「あの、ユンナさん。リョウ君のことで何か知ってるんですか?」
超人染みた戦闘に付いていけず傍観していたアイリがユンナにリョウの行方を尋ねた。
一番関わって欲しくない相手に会話の内容が漏出してしまう失態を犯してしまったが、ユンナは決して取り乱したりはしない。
ユンナ「リョウさんは火急の用件によりこの世界を去りましたの。当面の間はアイリさん達の元へ帰還するのは難しいと思われますわ」
シャティエル「そう、なのですか…」
リュート「世界の監視者って呼ばれてるだけあって為すべき事が多いんだよ。呑気に日々を送ってるお前達と違ってな」
アイリ「あたしはリョウ君の行動を知りたいんじゃないの。ユンナさんならリョウ君の何かを知ってるんじゃないかと思って」
ユンナ「…何か、と申しますと?」
アイリ「リョウ君の過去や、力のこと。そして、あたしの過去とリョウ君の関係性を」
ユンナ「……期待を抱き質問を投げ掛けておいて申し訳ありませんが、それはリョウさん本人から直接聞いてくださいまし」
アイリ「え…その言い方だと、ユンナさんは知っているみたいだけど…」
ユンナ「大方はそうですわ。ですが、それはわたくしの口から申すことではありません。本人の許可なくお話していいような内容ではありませんので」
アイリ「確かに、そうかもしれないけど…」
ユンナ「わたくしは心を読むことが可能ですが、他者の心の内に秘めてある話すことを拒むような事柄、事情があり公言できない事柄を喋る品の無いことなどしたくはありませんの。例えばアイリさん。アイリさんの秘密にしている事をリョウさんがアイリさんの許可なく誰かに言いふらしていたとなると、良い気分にはなりませんわよね」
適切で納得のいく例えにアイリは自然と相槌を打つ。
非常に真実を知りたいところだが、本人から情報を聞き出す以外に方法はなさそうなので、曇天が掛かり沈んだ心情なまま引き下がるしかなかった。
リベリオン「おい、私はどうなるのよ?まさかリョウの奴、私のことを放置したままにしといたわけじゃないわよね?」
リュート「お前の処遇は決まっている。時空防衛局としては絶対にやりたくはねえが、お前を保護する形となった」
リベリオン「保護だと?約束が違う。私を自由の身にするから同行してあげたのよ」
リュート「リョウからはそのように言われた。が、時空防衛局としてはそれを受諾することはできない。異世界の住人、況してや世界を脅かす危険分子の輩を放任しておくことなどあり得ないからな」
リベリオン「はあ…どうやら協力関係はここまでのようね」
己の自由のために協力関係に至っていたが、決裂する結果となった。
願いは儚くも散り、最早信頼を築き上げるには至らない敵と成り果てた者達を葬ろうと殺意が沸き上がる。
ユンナ「……幾つか出す約束を厳守し履行するのならば、あなたの自由を保証しましょう」
痺れを切らし暴れだす前にユンナが待ったを掛けるように提言した。
気性が荒いリベリオンだが、話を聞かない野蛮な人間ではないため、取り敢えず話だけでも聞くことにしたようで、殺意が多少は抑えられたように見える。
多少抑えているだけで、話が聞くに堪えない眇眇たるものであるならば即座に闇を解き放ち牙を向くだろう。
ユンナ「先ず一つ。当たり前な話でありますが、辿り着いた世界で一切問題を起こさないことを約束していただきますわ。もう一つは、エクリプスやヴィラド・ディアが出現した場合、これを使い即座に連絡して頂きたいんですの」
手にした何かを投げ、リベリオンは片手で受け取った。
手の中にあったのは、小型の通信機。
時空防衛局の局員は十万単位の人数であることに変わりはないが、それ以上に膨大な数の世界が無限に広がっており、全てを管轄するなど不可能に近い。
ならば僅かでも負担を減らすため、協力関係を築く。
時空防衛局に属していないアレクやアリスもリベリオンに説明した同等の立場にある。
リベリオン「要するに、悪巧みをせず大人しくしておくなら異世界への移動を許す、と。その変わりにあらゆる世界に害を及ぼす者がいれば報告しろと」
ユンナ「その通りです。あなたにとっては悪い話ではないと思うのですが、いかがでしょう?」
リュート「おいユンナ!何を勝手なことを…こんな奴を闊歩させておくことなんて許されないぞ!」
ユンナ「全責任はわたくし、時空防衛局最高責任者、ユンナ・ヴィクトリアが引き受けます。リュートさん、あなたの心情も汲み取れますが、ここはわたくしに任せてくださいまし」
リュート「しかしなあ………ちっ、どうなっても知らねえからな」
ユンナ「感謝致しますわリュートさん。さて、リベリオンさん。わたくしの提案では不服ですか?」
リベリオン「私は自由が欲しかっただけだもの。他に方法はなさそうですし、その案を了承してあげるわ」
ユンナ「寛大なその心に敬意を払います。ありがとうございます」
醜聞など一切耳に届くことのない、絶対の信頼を寄せるからこそか、煩悶したもののリュートは首を縦に振った。
リベリオンも嫌悪感を表すことなく快く受諾し、自由を勝ち取ることが叶った。
ただ放任するだけでなく、時空防衛局にとって利になるよう上手く併呑することができた。
どちらかと言えばリベリオンを自由を与えるというより、世界に出現する異世界からの危険分子の出現を報告させるための駒を増やしたと言う方が的確なのかもしれない。
自由を手にし心の内で愉悦に浸っているリベリオンはユンナの口車に乗せられ丸め込まれていることに気付くことはない。
ユンナ「言っておきますが、その通信機を破壊しても無駄ですわよ。破壊されれば即座に本部に連絡がいきますし、内部に発信器が仕込まれていますので、どの世界に居ようが隠れまいが発見し逮捕しますので、お気を付けくださいまし」
リベリオン「心配せずとも、己の首を締める真似はしないわ。交渉成立ということで、私は失礼するわ」
アイリ「リベリオン、ありがとね。リベリオンがいなかったら悪魔の殲滅もヴィラド・ディアとの戦いも乗り越えられなかったかもしれない。ホントにありがとね。また何処かで会えるといいね!」
リベリオン「私はごめんだわ。お前の光は私には眩しすぎるもの」
アイリ「あたしは光の巨人にも負けない光の力があるからね~。黄猿にだって勝てるかも。あ、今度勝負する時は負けないんだからね!」
リベリオン「会うのはごめんだと言っただろ。やれやれ…まあ、戯れ程度であれば再開を許してあげないこともないわ」
アイリ達に背を向け、召喚したワームホールの中へ入っていき、行き場のない孤独の旅に歩みを進めた。
最後に見たリベリオンは微かに微笑んでいるように見えた。
またアイリと合間見えるのを待ち望んでいるかのようにも思えた。
リュート「はあ…厄介事にならないことを願うばかりだぜ。用は済んだし俺は戻るぜ。さっきの奴も追わねえといけねえし…仕事が山盛りだぜ」
ユンナ「リリスに関してはわたくしも調査しなくてはならないことが多いので、わたくしも後程調査に参加させてもらいますわ」
アイリ「リリスは一体何がしたいんだろうね?色んな世界を渡り歩いてるみたいだけど、何を目的としているのか検討もつかない…」
ユンナ「リリスによる被害が出たという報告もありませんし、謎が多いですわ。ここからはわたくし達、時空防衛局の調査する事柄ですので、申し訳ございませんがアイリさん達には手を引いてもらいますわ」
アイリ「っ…うん、了解です」
決して無関係とは言えないが、事が天界という一つの世界では手に負えぬ事態に発展してしまっている。
流石のアイリでも承知しているため、最後まで関わり協力をしたいのは山々だったが、自身が踏み込み邪魔をするわけにもいかず断る選択しかなかった。
ユンナ「彼女の件について気になる点は多いでしょうが、わたくし共が必ず解決致しますので、天界でわたくし達の安否を切に願っていてくださいまし」
アイリ「そうします。リョウ君のこともあるし、大人しく家で待機しておこう」
シャティエル「懸命な判断だと思います。カイさんもアイリさんの帰宅を待ち望んでいる筈です」
アイリ「あ、そうだ!カイ君を一人にしちゃまずいもんね!ユンナさん、あたし達を天界まで送ってもらってもいいですか?」
ユンナ「ええ、勿論。端からそうするつもりでしたので。ではリュートさん、また後程本部で会いましょう」
リュート「ああ。先に行っとくぜ」
リュートは時空防衛局の本部、ユンナはアイリとシャティエルを天界に送るためワールドゲートを開き、この世界から去っていった。
先程まで戦闘が行われていたのが嘘のように静まり返り、神秘的な雰囲気が辺りを包む。
誰もいない静寂の世界の中、黒い霧が出現した。
周囲に散布されるように何もない宙から湧き出てきた霧は意思を持っているのか、一点に集束し、漆黒の中からリリスが姿を現した。
リリス「『暗夜蝶』で吸収して正解だったわ。あの魔道士の魔力、中々の上物ね。思いもしない収穫だったわ。それと、目の前には更なる上物がある。ただでこの世界を去ったりはしないわ」
地上へゆっくりと優雅に降り立ち、バラントンの泉へと歩み寄る。
触手の先端を底まで透き通る透明な水の中へと入れ、水に含まれる万能薬にも匹敵する治癒能力を吸収し始める。
リリス「流石、伝説の剣の内の一本であるフラガラッハ、やっぱり素晴らしいわ。…ん?」
更に水の成分を吸収しようとしたが、水中から何かが迫ってくるのが見え反射的に後退した。
自分が立っていた水面ギリギリの地面に人の体の一回りは太い巨大な蔓が叩き付けられ、固い地面を抉り取った。
何者かによる襲撃を受け臨戦体勢に入ろうとしたが、不要だと悟った。
奇襲を仕掛けた張本人は、フラガラッハにより封印されているミネルヴァのもの。
その証拠に泉の中心にある小島から蔓は伸びており、接近を許さないと言わんばかりに他の蔓が伸び今にも襲い来る勢いでゆらゆらと揺らめく様は威嚇や脅しにと見える。
リリス「彼女に意識がない筈…彼女の意思に呼応してフラガラッハがここを防衛しているってことかしら?……まあいいわ。これ以上泉の成分を吸収するのは得策ではないわね」
威嚇の一撃で怯んだのか、リリスは呆気なく引くことを決意した。
実際には怖気付いた訳ではなく、『今の』自分では手を下す実力がないから。
リリス「ワールドコアを直接狙える絶好の機会なんだけど、フラガラッハの所有者の相手は厳しいわね。でも成分を僅かでも頂戴できただけでも十分成果と呼べるわ。ふふふ…私の野望まで、あと少し…」
練りに練った血の滲むような画策は、現実になりつつある。
そう思うと高揚する思いが溢れ、周囲を破壊したくなる衝動に駆られ、妖艶に、不気味に微笑む。
リリス「さて、後はこの子が覚醒するのを待つだけ」
漆黒の霧の中に浮かび上がったのはとある映像。
何かを閉じ込めているかのような卵にも似た暗黒の球体。
中身は完全に見えないわけではなく、うっすらとだが凝視すれば確認できる程度の透明度。
中には膝を丸め眠っている一人の幼い少年がいた。
それはアイリ達が良く知る、共に衣食住を送っている人物、カイ。
その様子を監視しているリリスは再び微笑みを浮かべ、新たな策略に向け動き始めるためこの世界を後にした。
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アイリ「たっだいま~♪」
悪魔の殲滅に向け幾度となく世界を渡り戦闘を繰り広げ、漸く天界へと帰還することが出来た。
一日も経過してはいないが郷愁に駆られていたので、体に傷を負いながらも無事に帰宅できたことが非常に喜ばしく涙腺が緩みそうになる。
浮き上がりそうになった涙を気力で引っ込め、頬を軽く叩いた。
アイリ「泣いちゃダメ。スマイルスマイル」
ユンナ「アイリさん、どうかなさいましたか?」
アイリ「ううん、何でもないよ。…あれ?家に誰もいないのかな?」
シャティエル「静けさに満ちています…いえ、ピコさんがおられるようです。地下に存在するリョウさんの部屋におられます」
ピコ「大変だよ!」
家に誰もいないのかと思っていた矢先、地下に通ずる階段を留守を任されていたピコが駆け上がってきた。
その顔は焦燥に若干染まっており、何やら只事ではないのは一目瞭然だった。
シャティエル「どうかされたのですか?」
ピコ「エーリヴァーガルから帰って色々報告が終わった後だったんだけど、家が何者かに荒らされてる!」
天界に他人の家を荒らす野蛮な天使はいないため、別世界の何者かによる仕業だと考えられる。
アイリは走りリビングの扉を開くと、棚や机といったあらゆる家具が破壊され散乱しており、廃墟同様の酷い有り様へと成り果てていた。
シャティエル「この荒らされ方は、何かを物色していたものだと推測できます」
アイリ「何かを物色?あ、それよりカイ君は!?カイ君は無事なの!?」
一人で留守番をしていたであろうカイの身を案じ、アイリは鬼気迫る表情でピコに問う。
ピコ「二階も同じ有り様になってた。家中を探し回ったんだけど…カイがいないんだ」
アイリ「そんな…ま、まさか……」
ユンナ「その何者かは、カイさんを連れ去っていったと、いうことですわね」
大切な存在が喪失した衝撃に、心臓が早鐘のようになり、顔から血の気が引いていき蒼白していく。
悲劇へと繋がる歯車は、人知れずまた回り始めた。
ガチャで今年の運を使い果たした感が半端ない笑
今年死ぬんじゃないだろうか((( ;゚Д゚)))