ということで書きました、どうぞ!
アイリ達が天界へと帰還した頃、リョウとマリーは冥府界へと訪れていた。
何故悪魔等の邪悪な種族が住まう世界に二人がいるのか、答えは純然たるもの。
リョウ「まさか冥府界にエクリプスが潜んでいるとはなあ」
マリー「凶暴な魔物も生息しているというのに、よくここに止まろうと考えたね」
ブロセリアンドがある世界を去った後も、リョウはマリーと共に幾つかの世界を渡り歩き、エクリプスの小部隊を地道に潰し回っていた。
あらゆる世界に小規模でありながらも拠点を築き上げており、数だけは多く厄介極まりない。
一つの組織とは思えぬ莫大な人数を誇る団体の壊滅は不可能とも呼んでも間違ってはおらず、世界の数だけ一つの軍隊があると言っても過言ではない。
二人は冥府界に来る以前に数多の戦闘を行っていたのだろうが、疲労困憊した様には見えず、かすり傷一つ見当たらない。
マリー「序でと言ったら悪いけど、ルシファーの反乱も止めた方がいいんじゃないんですか?一応、リョウさんが関与してるし」
リョウ「確かにそうやな。サタンがどうなったか気になるところやし…でも、先にエクリプスから潰す」
この世界に住まう一族が滅び行くかもしれない命運よりも、あらゆる世界に影響を及ぼすエクリプスの壊滅の方が優先順位が上になるため、監視者の力を行使し居場所を捜し出すため目を瞑り集中し始める。
乾いた風が吹く音だけが聞こえ、沈黙を貫くこと僅か数秒、開眼したリョウは怪奇そうに首を傾けた。
マリー「どうかしたんですか?」
リョウ「可笑しい…悪魔の存在が、無い。一人残らずルシファーが駆逐したのは分かるけれど…サタンの気配すら無い」
マリー「ルシファーが倒したんじゃないですか?伝説の剣を二本も帯刀しているなら可能な気もするけれど…」
リョウ「エクリプスの連中もルシファーの近辺におるみたいやし、兎に角行ってみよう。あと、わし等の近くにラミエルとウリエル、ミカエルもおるみたいやし」
マリー「天使が三人も?」
リョウ「大方、手薄になった冥府界に攻め込んだか、現状把握に偵察に来たんやない?」
確認しなければならないことが多くあり、推測ばかりしていても意味がないため移動を開始することにする。
荒れた大地に紫色に近い空が延々と広がる、清々しい気持ちが一切沸き上がってこない嫌悪感を抱くようなこの世界を見ていると、悪魔達はよくこんな厳しい環境下で衣食住をしているなと感心すら覚える。
飛行すること数分、物陰に身を潜めているラミエル達を発見し降下し地に足を着けた。
気配を感じ取れなかったのか、一驚した三人は振り向き様に臨戦体勢を取り、ウリエルが先手必勝と言わんばかりに紅蓮の炎の渦を生み出しリョウとマリーを瞬く間に呑み込んだ。
相手が誰か判別せずに攻撃するのは如何なものかと思われるが、気配を感じさせず接近してくる相手となると、相当な実力の持ち主であり、背後から現れたとすると敵だと判別されるのも無理もないのだが。
リョウ「わしじゃよ、わし。リョウやって」
マリー「流石に野蛮だと思いますよ」
鉄でさえ容易く溶解される灼熱の炎をものともせずにいられるのは、リョウが『天使の加護』を発動させているお陰だった。
ウリエル「なんだいリョウか。ビビらせるんじゃないよ」
ラミエル「悪魔の襲撃かと思っちまったぜ」
ミカエル「悪魔よりも質が悪いですけどね。監視者だけでなく『爆炎のマリーゴールド』もいるとは。全く忌々しいですね」
リョウ「わしは兎も角、マリーに悪態をつくのはやめてくれへんかね?」
ミカエル「何をしに我々の前に現れたのですか?」
ウリエル「確かに。悪魔の殲滅を終わらせたってのにあんたみたいのがここに現れる理由はないと思うんだけど?」
敵意を剥き出しにしているミカエルとあまり快く思っていないウリエルを宥めつつ、冥府界に訪れた理由を説明する。
ウリエル「成る程、貴方達の目的は把握しました。では精々私達の邪魔になることのないよう、其方の目的を果たしてください」
リョウ「別行動したいのは山々なんやけど、丁度ラミエル達が行こうとしてる場所にエクリプスがおるみたいなんよ。申し訳ないけどもうちょい行動を共にすることになる」
マリー「それに、ルシファーの件も看過することは出来ない。伝説の剣の内の二本を手にしているから、今後異世界に赴いて何かしらの影響を及ぼす可能性だって考えられます」
リョウ「そういうことで、わし等もお供させてもらうで」
ラミエル「心強い限りじゃねえか。いいだろ、ウリエル?」
ウリエル「ルシファーの件に関しては私等が受け持たせてもらうよ。元天使であるあいつは私等天界に住まう天使が裁きを下す。伝説の剣に関しての件は時空防衛局で何とかしてくれるだろ?」
リョウ「勿論やってくれるやろう。元あった場所に責任を持って厳重に運ばれる。わしも立ち会うつもりやから安心してええ」
ミカエル「あなたの同類のお仲間のシスターにクラウソラスが渡らなければいいんですけどね」
リョウ「そんなことはしないし、リアがクラウソラスの所有者だったのは何千年も前の話や。昔の話を掘り返すな」
リアと呼ばれる人物の触れられたくない話題を出したせいか、リョウは僅かに眉をひそめ憤怒の表情を露にする。
ミカエル「『力』もまともに発動することを許されないあなたは脅威ではありません。あなた方はその『力』を行使し蹂躙することしか脳がないのでは?」
リョウ「誰も戦うとは言うてへん。怒りに身を任せ敵じゃない者と無意味な戦いをするほど子供やない」
ラミエル「口を動かすよりさっさと足を動かそうぜ。リョウ、どうせ監視者の力で状況は把握してるんだろ?どうなってんだ?」
リョウ「悪魔は一人もいない。恐らくルシファーが一網打尽にしたんやろ」
ミカエル「哨戒している兵士すら確認出来ないのは怪奇と思っていましたが、納得はいきますね」
ウリエル「邪魔者がいないのなら好都合じゃないか。早速行くよ」
天敵である本拠地にも関わらず迎え来る相手がいないという異様な状況だが、此方としては好都合でしかない。
元々少人数だったので戦闘は極力避けたかった天使三人にとっては正に棚から牡丹餅と言える。
そもそも、今回三人は悪魔の頭領であるサタンを打倒するために攻め込んできたわけではない。
突如反乱を起こしたルシファーが冥府界にどれ程の被害を与えたのか調査するためだ。
大人数では目立ち、小規模な戦闘に成れば喧喧囂囂となり最初から少人数で向かうのは決定していたが、人選に関しては滞ったままでいた。
ならば四大天使自らが赴こうと先行し意見を提出し、最終的にウリエルとミカエル、天使の中でも指折りの実力者であるラミエルが冥府界への偵察を行う結果に落ち着いた。
間諜を使わず四大天使直々に敵陣に赴いたのはそのためだった。
敵対関係にある悪魔を屠れる好機が訪れ、途方もなく長い歴史に終止符が打たれようとしている。
内心ラミエル達も歴史的瞬間となる由々しき出来事に心踊らない訳はなく、因縁深い種族同士の終焉を我が手で迎えさせようと矢も楯もたまらないと言った様子。
天使と言い難い荒々しさを含んだ闘志が瞳の奥でメラメラと燃えている。
ウリエル「それで、あんた達のお目当てにしてる敵は何処にいるんだい?」
リョウ「ちょい待ってな。………ルシファーと共にいる。何かを話し合ってるみたいやな」
ミカエル「はあ…結局貴女方とは最後まで共に行動しなくてはならないということですね」
ウリエル「そう落胆しなさんな。私も正直なところリョウ達の存在自体は好かないから関与したくないところだけど、エクリプスとかいう世界を横行闊歩してる連中もいるなら相手になってくれるのは有難い限りじゃないか」
リョウ「そういうこった。ルシファーに関しては別世界のとんでもない代物を腰に下げとるんやから、回収の目的もあるしミカエルにとっては得しかない」
ミカエル「貴女方と共に行動する時点で損でしかありませんよ」
ラミエル「敬遠しすぎだろ。協力するっつってんだから素直に受け止めろよ」
ミカエル「あなたは彼等の犯した罪を忘れたわけではありませんよね?」
ラミエル「忘れるわけねえだろ。でも過去の話だ。リョウだって改心してるし、危害を加えるつもりもないんだからいいじゃねえか。ほら、口ばかり動かさず足を動かそうぜ」
ミカエル「やれやれ、致し方ありませんね。それにしても、正面から堂々と乗り込むとは無謀ですね」
マリー「私達がいるので心配ありませんよ。防御はリョウさん、攻撃は私が行いますから」
邀撃を企んでいる可能性もあるため無闇に接近するのは危険を伴うが、何にせよルシファーを打倒する以外に選択肢はないため正面突破となる。
一度も襲来されることもなく安易に辿り着いたのは、全体が黒を貴重とした巨大な城。
特殊な漆黒の石で造られた城は立派でありながら、人を寄せ付けぬ禍々しさを放つ刺々しい造り。
正しく巨悪の根源が居座っている雰囲気を漂わせている。
侵入を拒む思いが生まれ踵を返す者が大半だろうが、今の面子は異様な雰囲気に尻込みしたりすることはない。
門前払いを食らうことなく易々と城内に入り込んだが、視界に広がるのは闇一色。
松明といった光源は一切なく、何処から襲いかかられても不思議ではない緊張感に満たされる。
マリー「不気味な程に静かですね…」
ミカエル「周囲に邪悪な気配は一切感じられないので、悪魔兵は一人もいないようです」
ラミエル「分かってはいてもこんなこの暗さは気味悪いな。十何年か前にやらせてもらったゾンビ共を銃で射ちまくるゲームを思い出したぜ」
リョウ「ここは洋館ではないにしろ、城みたいな雰囲気は確かに世界観的には至当かもしれへんね」
ウリエル「悪魔が一人もいないのは最初に分かりきっていたことだしビビることはないさね。恐らくルシファーがいるのは玉座の間ってところかい?」
リョウ「そうやね。最上階にルシファーの存在を感知した」
天窓から差し込む僅かな光だけが頼りだが、視界を広げるには程遠い。
しかし最上階に向かうだけなので、上部の位置だけ確認できれば良いため然して問題とは言い難く、各々飛行し最上階へ向け飛翔する。
数秒の内に辿り着いた最上階。
目の前には鉄製で造られた重々しい巨大な扉がある。
入室する許可を得た者にしか通ることは叶わない、世界を統治する権力者が居る雰囲気を露骨に醸し出す扉は固く閉ざされている。
ウリエル「ここで間違いないね」
ミカエル「相当強固な扉ですね」
ウリエル「関係ないね。ぶっ壊せばいいのよ!」
罠が仕掛けてあっても不思議ではないにも関わらず、せっかちと言うのか、直情径行なウリエルは炎の渦を扉に向け放った。
灼熱の炎は扉に直撃するも、熱により赤色に変色することはなく、水が油を弾くように炎を打ち消していた。
ミカエル「やはり魔法や魔力と言ったものの攻撃は通用しないようですね」
ラミエル「ぶん殴っても無理か?」
リョウ「無理やろうね。手の骨が粉々になってもいいなら試してもええかもしれへんけど」
ラミエル「そいつは勘弁だ。で、どうすんだ?」
リョウ「ウォー◯ーを探す勢いで鍵を探す…時間はないから、マリー頼む」
扉の解放を託されたマリーは頷き一歩前に出る。
この場には不釣り合いな学生服を着た華奢な少女に何が出来るのだろうと思うだろうが、この場に居る面子は彼女の実力を嫌というほど知り尽くしている。
マリー「『爆散華』!」
両目の瞳が黄金色に染まると同時に手から一発のエネルギー弾が放たれた。
扉に直撃すると、四方八方、あらゆる方向へエネルギーが分散され次々と爆発していく。
花火のように荘厳で美しくもあるが、一発一発の威力が凄まじく、扉だけでなく周囲の壁や天井も巻き込み爆破し瓦礫へ変えていく。
轟音と爆風が周辺を包み込み、巻き込まれまいとリョウ達は扉とは反対にある壁際まで下がっていた。
ラミエル「あれでも威力としては下級の方なんだろ?マリーはマジで相手にしたくないぜ…」
ウリエル「仲間としていてくれるのは有難い限りだねえ」
ミカエル「あの爆破の能力もですが、監視者と同様にあの『力』があるからこその強さでしょう」
マリー「皆さん、開きましたよ」
城を破壊する勢いの猛撃に近い一撃により、人の手で動かすことすら困難な重厚な扉は吹き飛ぶどころか粉々に崩れ、元が扉だったと言われても分からぬ程に原型を止めない鉄の欠片へと成り果ててしまった。
リョウ「ほな行こうか」
ラミエル「ああ。ルシファーの奴を取っ捕まえてやる!」
指をポキポキと鳴らし、友の過ちを食い止めようと俄然やる気が上がっているようだ。
リョウとラミエル、二人が先行し爆煙と砂埃の中を突き進む。
ラミエル「邪魔だどけえぇ!」
煙の中に紛れ何者かの気配を捉えたラミエルが電気を纏った拳を突き出す。
それは悪魔ではなく、人間。
サバイバルナイフを手にした若い男の胸部に拳が命中し、男は抵抗する手段もなく体をくの字に折り曲げながら後方へ吹き飛び何度も床を横転し絶命した。
リョウ「エクリプスか…!」
憎悪する対象の存在が確認した途端、リョウの目に殺意が籠められる。
その場から跳び上がり煙の中から脱し、アルティメットマスターを抜刀し近くにいた戦闘員二人の首を一閃し撥ね飛ばす。
床へと着地してもリョウの攻撃は止まらず、此方の存在に気付き接近してくる数名の戦闘員の首を『ソードカッター』で落としていく。
必ず絶命させる狂気にも満ちたその目で見つめる先には、エクリプスの首領セラヴィルクと、反乱を起こした堕天使ルシファーの姿があった。
そしてもう一人、サタンフォーの一人にして、裏で策略を練り行動する謎の多い悪魔リリスもいた。
セラヴィルク「お早い到着だな。流石、『世界の監視者』は伊達ではないってことだな」
リョウ「冥府界に何しに来たんや?サタンがおらんくなったから我が物にしようとしてんのか?」
セラヴィルク「調査済みってことか。それもあるが、一番の目的は戦力増強だ。人が交渉してる途中だってのに横槍を入れないでほしいぜ」
リョウ「お前の都合なんか知ったことか」
ラミエル「交渉って、まさかルシファーを勧誘してんのか!?」
セラヴィルク「それ以外に誰がいるんだ?サタン討伐という目的を成せず、何のために堕天したのか分からなくなり失望したこいつに俺が道を示そうとしてやってんだよ」
ウリエル「何のためにサタンを討とうとしたが知らないけど、目的を成せなかったってのはどういうことなのさ?現にサタンの気配なんて一欠片もないじゃないか」
ミカエル「身を潜めている訳ではなさそうですね。サタンがこの世界にいるのであれば、私達が気付かない筈がありませんし」
マリー「冥府界にもういないということですか?」
遅れてやってきたウリエル達が疑問符を浮かべ矢継ぎ早に質問を投げ掛ける。
答えを告げる当の本人は喪失感に包まれながらも憤怒と悲哀が混濁した複雑な表情を浮かべたまま俯いていたが、重々しく、力なく口を開いた。
ルシファー「………サタンは、既に存在していなかった…」
ウリエル「……は?どういうこった?」
予想だにしない突飛な発言に驚愕のあまり間抜けな声が出てしまう。
疑問符を浮かべていた状況に更に疑問が重ねられたところでセラヴィルクが開口した。
セラヴィルク「文字通りの意味だ。サタンは存在していなかったんだよ。少なくともこいつが天界のために堕天する頃から」
ラミエル「おい、天界のために堕天したってどういうことなんだよ!色々と訳分かんねえよ!」
重要な情報が溢れ頭の中で混濁し掻き乱す。
ラミエルだけでなく四大天使のミカエルとウリエルも同様に、理解出来ずに困惑している様子だった。
リリス「なら、語って差し上げなさい。何故堕天し悪魔に身を投じたのかを。そして私は、何故サタンの存在が消えているのかを語るとするわ」
全てを見透かしているのか、リリスは妖艶に微笑む。
悪魔の声に耳を傾けるとはとても思えない怜悧なルシファーは語り始めた。
ルシファー「……俺が堕天したのは、天使の使命を全うすることに嫌悪感を示した訳でもなければ、人間達に対し辟易とした訳でもない」
ラミエル「何…?どういうことだよ…」
リョウ「以前翔琉達のいる世界で語ってたことは嘘っちゅうことや」
ルシファー「リョウの言う通りだ。あの時の発言は、全て嘘偽りに過ぎない」
ラミエル「何で嘘なんか…ん?ちょっと待て、何でリョウがルシファーの発言を嘘だって知ってんだよ!」
ウリエル「私はその場にいなかったから何とも言えないけど、大方リョウも一枚噛んでたってところだろうね」
リョウ「んな話は後回しや。今はルシファーの話を聞こうやないか」
どのような事柄で、どのようにして関与しているかは不明だが、ルシファーの成そうとした策略や秘密を認知しているのは間違いない。
悪びれる様子もなく平然と表情を崩さずいけしゃあしゃあとしている態度にマリーを除く全員が睨みを利かしているが、当の本人であるリョウは何処吹く風だ。
そして再度ルシファーは開口し、誰にも話すことを許されなかった、自身の常軌を逸する暗澹とした歩みを語り始める。
ルシファー「俺は…天界を救うため、サタンを葬るために、堕天することを決意した」
暇なんで伊勢に旅行に行こうと決意しました笑
皆さんも何かしらの形でゴールデンウィークを楽しんでくださいね!