ユグドラシルメシア   作:仮面ピコ

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土日の休日はどうしてもゲームをしてしまうので小説が書けない…


第8話 悪魔、襲来

アイリ「リョウさん、時空防衛局のみんなには内緒だよ?」

 

リョウ「なに初っぱなからネタかましてんだよ」

 

アイリは標準を合わせ矢を放つ。

矢は一直線に飛び、ヘルハウンドの頭部に命中、その場に倒れ消滅した。

 

アイリ「おーヘッドショット! バイオハザードみたいにやれば案外弱かったりするのかな?」

 

リョウ「対策や弱点に関しては間違ってはいないが、ゲーム感覚でやるなよ」

 

一体目が倒されたのが合図のように、ヘルハウンド達は地を蹴り一斉に襲い掛かってきた。

 

アイリはもう一度矢を放つが、俊敏な動きで狙いが定まらず矢を放てずにいた。

焦りが見せる余裕など与える暇なく、ヘルハウンドはアイリに接近し鋭い爪で切り裂こうとしたところをリョウがアルティメットマスターで防ぎ、ヘルハウンドの前足を掴み他のヘルハウンドへと投げ飛ばした。

 

アイリ「ありがとうリョウさん! 遠距離戦が無理な時は、接近戦で挑んだ方が良さそうだね」

 

アイリは頭の中で接近戦で挑もうと思考していると、ガーンデーヴァの弓体の前側が藍白色に光り始めた。

刃の様な輝きを放つガーンデーヴァを振るい、襲い掛かってきたヘルハウンドを吹き飛ばした。

ヘルハウンドの体には刃物で斬られた痕が残っており、血を流しながら吹き飛び地面に落ちたと同時に消滅した。

 

アイリ「思い付きだったけど、以外となるようになるし上手くできた! この調子で討伐してクエストクリアだ!」

 

先程の恐がっていた目は、自信に満ち溢れた目に変わっており、襲い掛かるヘルハウンドを返り討ちにしていた。

リョウも遅れを取るまいとアイリの背後から襲い掛かるヘルハウンド達を斬り倒し着実に数を減らしていく。

 

そして最後の一匹となったヘルハウンドは二人から距離を取り、唸り声を出し警戒していた。

 

アイリ「最後は任せて。 あたしの初めての戦闘にて、初めての必殺技を出してみたいから。 いくよ、あたしの必殺技!」

 

リョウは「必殺技?」と首を捻る。

アイリは矢を召喚し構えると、光の力を矢に溜め始め、矢がより一層輝きを増していった。

 

アイリ「いっけー!『ストレートアロー』!!」

 

先程から射っていたものとは比べものにならない程の速さと威力をもった矢がヘルハウンドに向けて一直線に飛んでいく。

俊敏な動きをするヘルハウンドでも反応できない速さの矢は、ヘルハウンドの体に刺さるどころか貫通し、見えなくなるまで直進していった。

ヘルハウンドは自分の身に何が起こったのかを悟ったときには消滅してしまっていた。

 

アイリ「やったー! あたし初陣を飾れたよね! 勝利のポーズ!決めっ!」

 

リョウ「…マジで信じられねぇ。 ホンマに戦うのが初めてなんかってくらいの強さなんやけど。 調べた中にはアイリは格闘技とかは習ってなかったはずなんやけど」

 

アイリ「習ってないよ~。 習うとしたら中国拳法を取得してチュン・リーみたいに戦いたいなぁ。 自分で言うのもあれだけど運動神経はいい方だよ。 アニメとか見ててどんな風にして振る舞って戦えばいいとかは分かってるつもりだし、もっと努力すれば伸びていくもだよね♪」

 

中国拳法を真似るような動きを見せ始める。

足を大きく振り上げた時に見えてしまったものを気にせずリョウはアルティメットマスターを納め、労いの言葉を掛けようと近寄ろうとする。

 

アイリ「今の強さとテンションがあれば、リョウさんを倒せる! もう何も怖くない!」

 

リョウ「そのセリフ言うだけで死亡フラグが立ってるんだが」

 

アイリ「モーマンタイ! そういうことで、野郎オブクラッシャー!」

 

ガーンデーヴァを構えたアイリはリョウに走り向かってきた。

ただ走って向かってくるだけの攻撃を避けるなどリョウにとっては容易いことの様で、横に一歩移動するだけで避けることができた。

避ける際にアイリの足に自分の足を絡ませ、アイリはその場に豪快に前のめりに倒れた。

 

アイリ「ぐれっぐる! 雲の地面じゃなかったらたんこぶできてたよ~」

 

アイリは顔を上げ、リョウの方を向きものを言おうとしたが、目の前に起こっている出来事に言葉が出ずに硬直した。

 

リョウは銀色のハンドガンを片手で持ち構えており、銃口を顔に向けられていたからだ。

 

アイリが気付いた時には、リョウは銃の引き金を引いていた。

銃口から火が吹き、耳をつんざくような銃声があたり一帯に響いた。

放たれた弾丸はアイリの綺麗に整った顔に傷を付けることはなく、顔の横スレスレの地面に着弾した。

 

アイリ「りょ、リョウさん、流石のあたしでも、これはビクっちゃうよ」

 

生と死の瀬戸際を味わい、震える声で恐怖で引きつった顔で言うが、リョウは表情一つ変えることなく、射ぬくような鋭い目線で銃を構え銃口を向けている。

 

リョウ「戦いに油断は禁物、命を落とすかもしれん、最後まで気を抜かずにいけんとあかんってことやな。 すまんかったな、手荒な真似して。 まぁ他にも理由はあるが…」

 

銃を持つ手の力が強まり、表情も強張るものとなっていく。

 

リョウ「そこにいるの、出てこい!」

 

怒声を荒げるリョウにアイリは驚いたが、能力で背後に何かがいるのを感知し、翼を広げ飛び上がりその場から離れた。

 

そしてその場に黒い霧が漂い始め、姿を現したのは頭から二本の黒い角が生え、漆黒の翼を持つ長い金髪の女性だった。

黒いバラが飾り付けられたワンショルダーの腰から下の生地がないロングドレスを着ており、肘まであるロンググローブを付けている、妖艶な雰囲気をかもし出している。

 

リョウ「お前はたしか、悪魔のリリスだな。目的はアイリの抹殺か?」

 

リリス「ご明察。大人しくその子を渡してくれないかしら? 大丈夫よ、痛い目には合わせないから。一瞬で楽になるもの」

 

リリスは舌なめずりをし口角を上げる。

リョウはリリスの存在が分かると冷や汗をかき始め、銃を持つ手にも汗が吹き出る。

 

リョウ「アイリ、今すぐカイを連れてシェオルに戻れ。 こいつはさっきのヘルハウンド達とは比べ物にならないほど強い。 アイリじゃ絶対に勝てない」

 

アイリ「それはやってみないと分からないよ? たしかにこの人から感じる力は凄いけど、あたしの実力、まだまだ試してみたいところだから!」

 

自信満々なアイリはリョウの指示を流し、ガーンデーヴァを構え矢を召喚し、リリスに向け『ストレートアロー』を放つ。

高速で放たれた矢が迫っているにも関わらず、リリスは避けようとせずその場から微動だに動こうとはしなかった。

 

リリス「私が気付かないとでも思って?」

 

光の矢が当たる直前に腕を振るい、飛ぶ虫を払い除けるかのようにいとも簡単に矢を叩き飛ばした。

 

リリス「このようなものは攻撃とは言えないわね。 そんな貧弱で魅力のない攻撃で、サタンフォーの私に迎え撃とうとするとは、いい度胸をしているわね、元人間」

 

リリスの腰あたりから、先端が銀色の特徴的な形をしており、先端の中心に光の球体がある触手が飛び出しアイリを捕らえようと猛スピードで向かっていく。

触手が姿を見せたと同時に、リョウが正に高速とも呼べる速さで動き、右足で触手を蹴り飛ばし、手にしていた銃をリリスに向け全弾射ちつける。

 

リョウが使用している銃は『マグナム44M』と呼ばれる超大型回転式拳銃だ。

装弾数は5発で、先程1発射ってしまったので、残りの弾数である4発が放たれ、1発がリリスの肩をかすめ、残りの3発は回避されてしまう。

 

リリス「その弾、銀の弾丸ね。 私達の苦手とするものはその小さな脳に知識として入っているようね」

 

西洋の信仰では、狼男や悪魔等を撃退できるとされ、装飾を施された護身用拳銃と共に製作されており、実際に現在行われている悪魔との戦闘で確実にダメージが通るので、リョウだけでなく現実世界に住むエクソシスト達が使用しているのだ。

 

リョウ「痛い目にあいたくなきゃさっさと冥界に帰れ。 次は当てるぞ?」

 

目の前の相手を睨み付けながら銃を射ち切った弾の薬莢をその場に捨て、新たな弾を装填し始めるが、その内の一発は手から滑り雲の平原へ落ちてしまった。

 

表情をあまり出さないよう極力努力しているリョウですらも、焦燥感を隠せずにいた。

リリスがリョウの感情を知っているかは定かではないが、脅しは全く効果はなく、妖しげな笑みを浮かべている。

 

リョウが後にアイリに説明することにはなるだろうが、リリスはサタンフォーと呼ばれる、悪魔族の王、サタンに仕える悪魔族の中でも優れた実力を持つ四人衆だ。

帝釈天に仕える、四天王とも呼べる存在に当たる。

 

敗北という二文字が嫌でも浮かぶ、無謀とも言える戦いになる。

戦闘慣れしているリョウはとある事情で力が半減しており、満足には戦えない不利な状況。

 

アイリを守りながら戦闘するとなると更に難易度が上がり、殺されるという最悪の結末を想像したくなくても脳裏を過ってしまい、リョウにとっては焦るなと言われるのが無理な話だった。

 

リリス「銀の弾丸は悪魔にとっては有害な代物でしかないけれど、防ぎ避けきれれば、脅威にはならないわ。」

 

リリスは腰から更に3本の触手を出し、合計4本の触手を操りリョウに攻撃を仕掛ける。

リョウは引き金を連続で引き射つが、機敏に動く触手には弾は一発も当たることなく空を切る。

弾を撃ち切り荷となる銃を投げ捨て、アルティメットマスターを抜き迫り来る触手を斬り払う。

触手は非常に頑丈で、斬れることはなく弾かれただけで、先端は再びリョウに向かっていき体を貫こうとする。

 

リリス「『テンタクルレイ』! さぁ、逃げながら守ることができるかしら?」

 

触手の先端の特徴的な形をした部位が上下に開き、光の球体から黄色の細長い光線がリョウと空中にいるアイリに放たれた。

 

リョウは光線をアクロバティックで華麗な動きで避け、一本の触手を踏み台にし翼を広げ飛び上がり、アイリの盾になるように前に飛びアルティメットマスターを構え光線を防いだ。

リョウを逃がした触手はアイリの背後へ回るように俊敏に動いていき、奇襲を仕掛けようとしていたが、能力で気配を察知したアイリがガーンデーヴァで斬りつけることで危機は免れた。

 

アイリ「危なかった~。 あっ!リョウさん前からリリスが来るよ!」

 

リリスが翼を広げ自分達の元へ向かっていることに気付いたアイリは声を上げた。

リョウも気付いてはいたが、触手から放たれる光線を自身の身とアイリの身を守るのに徹しており手が出せずにいた。

 

リリス「今、楽にさせてあげるわ」

 

リリスは剣を手元に召喚し、切っ先を向け真っ直ぐに飛んでくる。

 

アイリ「させない!リョウさんを傷付けさせやしないんだら! お願い、当たってください! 『トリックアロー』!」

 

光の矢を召喚し、リリスへと標準を合わせ力強く引き矢を放った。

矢はリョウの真横を通り抜け直進していくが、誰がどう見ても飛んでくるリリスに当たるような軌道ではなかった。

リリスは戦闘において素人が放った技だと捉え、驚異とは感じず矢を無視しリョウへと飛んで行く。

 

アイリはリョウに傷を負わせないために闇雲に技を出したわけではなく、自分の才能を信じた、意図による行動だった。

予想通りの反応を見せた事にアイリは思わず頬が緩んだ。

 

アイリ「さっきリョウさんが言ってた通りだね。 戦いに油断は禁物だよ!」

 

目を輝かせながら人差し指を突き出しかっこよく言い放った。

放たれた矢は突然軌道を変え曲がり、リリスの横腹に命中した。

精神を弛緩する事のないリリスだが、弱者からの予想外の攻撃にリリスは怯んでしまい、触手から放たれた光線が一瞬弱まったところをリョウはアルティメットマスターにエネルギーを溜め巨大化、『テオ・ソードスラッシュ』を発動させ、光線を斬り裂きながら進んでいき触手を斬り払いリリスへと剣を降り下ろす。

リリスは片手で持っていた剣で巨大化したアルティメットマスターを受け止め斜め後ろに払い、リョウはバランスを崩しリリスの身に体を授けるように倒れこむ形になる。

 

リリス「楽しかったわよ、世界の監視者」

 

妖しげな笑みを浮かべ、剣をリョウの腹に突き刺し体を貫通した。

深々と突き刺さった腹部からは鮮血が溢れ出ており、口からは吐血し、致命傷を負っているのは明らかだが、刺さる直前に微妙に体をずらし急所を外すように避け、世界の監視者として数多の戦闘を繰り返し得た経験が僥倖を手にしていた。

 

巨大化したアルティメットマスターは光が消え元の大きさへと戻ってしまった。

 

アイリ「あ、あ、あぁ…リョウさん!!」

 

アイリは銀色の刃物がリョウの背中から飛び出しているのを目の前で見て、ガーンデーヴァを落としてしまうのも気にせず、両手を口で抑え動揺を隠せずにいる。

 

リリス「避けようともせずに突撃してくる方が悪いのよ。 それに、大事なあの子まで悲しませてしまって、最低で無様ね。 よくそんなのでこの子を守るなんて約束ができたものね」

 

リョウ「あぁ、そうだな。 でもそんなのは重々承知なんだよ。 わしが今まで、どれ程の人間を悲しませてきたと思ってるんだ?」

 

左手で自らの身体に刺さった剣を掴む。

掴んだ手から血が出るのも構わずに、離すまいとばかりに力強く掴んだ。

 

リョウ「お前ら悪魔の人の心の奥底に潜む闇を探り、傷付け堕とすやり方はこのわしには通用なんてしない。 何故ならわしは、過去の過ちを全て受け入れこうして過ごしているからだ。 自分が滑稽でどれほど残酷かをいっそのこと受け入れた方が気持ちが楽だからな。 心の闇は存在しても泥棒のように覗き見て奪うことなんてできやしないよ。 それに…」

 

リリスを睨み付ける左目が徐々に金色へと変わっていく。

 

リョウ「わしがこういう存在だからだよ。 言わなくても分かるよな?」

 

リリス「えぇ、充分すぎるわ。 だからこそおもしろいのよ。 貴方のような人間を相手にできて心喜ばしいわ。 でも、私達の邪魔をするようなら遠慮せず抹殺させてもらうわ。 今の貴方なら、可能でしょうから」

 

四本の触手を操り先端をリョウに向け、『テンタクルレイ』を再び撃とうとしている。

リョウは透かさずアルティメットマスターの剣の面となっている樋部と呼ばれる部位をリリスに向け、エネルギーを溜め始める。

 

リョウ「わしをこんな近距離に追い込んだのが運の尽きだったと思えよ? 『ソードエクスプロージョン』!」

 

リョウが力を込めると、アルティメットマスターは目映く輝いたと同時に、光の爆発が起きた。

爆発の目の前におり、持っていた剣をリョウに掴まれ身動きが取れなかったリリスは爆発を諸に受け、後ろに大きく吹き飛ばされ雲の平原へ体を打ち付けられた。

追い撃ちを掛けるように右足の脹脛が左右に展開され、小型のミサイルが発射された。

反動で動けないリリスの体に雨のように振り撒かれたミサイルが命中し爆発が起きる。

 

リョウ「それなりにダメージは入ったはず…。 それにしても幾つになっても刺されるのは痛いもんやわ」

 

苦痛の表情を浮かべ身体に刺さった剣を勢いよく引き抜いた。

引き抜いたことで傷口から更に多量の血が溢れ出るのを止血するために応急処置として手で抑える。

 

リリス「今の攻撃は、私の体にも応えたみたいね」

 

爆煙が晴れ、横たわっていたリリスが腕を押さえながら立ち上がった。

四本の触手はゆっくりとした動きでリリスの元へと戻っていった。

 

リリス「満身創痍の今なら殺すことも容易いかもしれないけれど、生憎私も相当ダメージを負ってしまったから、今日のところは帰るとするわ」

 

リョウ「満身創痍? 勝手に思ってろ。 人間相手に調子に乗るのも大概にしておくんやな。 剣をぶっ刺された程度で戦えなくなったなんて一言も言ってないじゃろうが。 それと、サタンフォーのお前をわしがはいそうですかと見逃すわけがないやろ!」

 

白いオーラがリョウから溢れ出し、表情も険しいものとなっていく。

アルティメットマスターを構え、地面に立つリリスへと急行下する。

 

正直傷を負ってしまったダメージが大きく、思い通りには身体は動かせず戦闘を継続すれば間違いなく今より深手を負ってしまうだろうが、今のリョウには自身を心配する余裕と思考は毛頭ない。

逃がしてしまえば現実世界に住む人間達と、特殊な力を兼ね備えたアイリにとって脅威となり続けてしまう。

悲劇が起きるのを事前に防ぐためにも、多少の無茶を覚悟の上で立ち向かっていく。

 

リリスは黒い霧を出し中へ入っていったところをリョウはアルティメットマスターを斬りつけたが、既にリリスはその場から姿を消し、形のない霧を払っただけに終わった。

 

リョウ「くそっ、逃がしたか。 あまり逃がしたくなかった相手やったんやけどな」

 

苛立ちを隠しきれず、腹から滴り落ちた血が滲んだ地を蹴り、アルティメットマスターを一振りし鞘に納めた。

 

アイリ「リョウさん!! 怪我は大丈夫なの!?」

 

身動きが取れていなかったアイリはショックで体を震わせながらも物凄いスピードでリョウに飛び寄り腕に抱きついた。

 

リョウ「痛てててて!? 今の衝撃が痛かったよ。 痛いっちゃ痛いけど、こういう怪我は良くあるから、気にせんで大丈夫よ」

 

アイリ「気にするよ!!」

 

鋭い目付きでリョウの瞳を見つめ、今まで会話した中でも聞いたことのない怒声を上げた。

急に怒鳴ったことにリョウは驚き、アイリの怒りと悲しみを感じ取れる炯眼を見つめる。

 

アイリ「目の前で大事な人が危険な目にあってたら、誰だって心配するに決まってるじゃん! あたしは大事な人が危険な目にあってるのを見て見ぬふりをするほど腐ってなんかいないよ! リョウさんだったらどうする? 大事な人が殺されそうになったり、怪我をして苦しんでるのを傍観しているだけなんて、そんなことできるの?」

 

張り上げる声は震えてはいたが、心からの思いをぶつけた。

そこに雲の平原で戦闘の一部始終を見ていたカイが泣きながら駆け寄り、リョウの足にしがみついた。

 

カイ「リョウ! いたいいたい! しぬ! いや!」

 

涙で濡れていくズボンに顔を埋め更に大声で泣き始めてしまった。

 

リョウはアイリの言った言葉の一つ一つを漏らすことなく聞き入れ、何か思うところがあり、目を大きく開かせた。

下を向き、自分の言動が間違っていたことを反省するかのように自らの頭を1発殴り顔を上げた。

 

リョウ「確かにアイリの言う通りや。 わしも馬鹿やなぁ。分かってたつもりやのに、アイリに心配を掛けせたくないがために、思いやりのないことを言ってしまった。 ごめんアイリ、ありがとう。 心配してくれて嬉しいよ。 カイもありがとうな」

 

リョウは痛みを堪えながらもしゃがみ込み泣いているカイの頭を優しく撫で、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をポケットから取り出したハンカチで拭き取ってあげた。

カイは安心したのか、向日葵の様に咲き誇る笑顔を見せた。

 

リョウ「アイリ、すまんけど門のところまで肩を貸してもらってええか?」

 

アイリ「うん、うん! あたしので良かったら幾らでも貸すから!」

 

抱きついたいた腕を頭の裏に回し持ちリョウを支え、カイはリョウのズボンの裾を掴み、帰るために門に向けて歩き始める。

 

リョウ「すまないなアイリ。 今日は特に教えることもなくこんな形で終わってしまって」

 

アイリ「いきなり悪魔が来ちゃったのは事故みたいなもんなんだから仕方ないことだよ。 でも、おかげで色んな危機に直面して、ほんのちょっとだけど強くなれた気がする」

 

リョウ「たしかに、この短時間であそこまで上達するとは…尋常じゃない速さで成長してるな。 リリスに放ったあの技って、思いつきで作った技なのか?」

 

アイリ「そうなるかな~。 リョウさんが危なかったから、あたしがなんとかしないとって思って、咄嗟に思いついた攻撃をしようと体が動いちゃってたよ」

 

リョウは改めてアイリの実力に驚かされた。

頭で想像すればできると断言したものの、短時間でコツを掴み、早々に習得した技を応用し使用できるようになる者は決して多くはなく、大体は頭の中で完成したものが思い描かれるだけで具現化することができず失敗に終わってしまうものだ。

アイリが短時間で成長できたのは、自身の才能だけではなく、どんなことにも恐れず自信を持ち立ち向かう強い思いと、 誰かを思いやり誰かのために戦う優しい思いがあったからこそではないだろうか。

 

アイリ「今日ここまでできるようになったのはリョウさんのおかげでもあるんだよ? リョウさんがどうやって矢を出すのかとか教えてくれなかったら、あたしここまでなんて絶対できてないもん」

 

リョウ「そう言ってもらえるだけでもわしにとっては救いだよ。 何はともあれ、アイリの身に怪我とかなくて良かったよ。 命を賭けてでも守った甲斐があるってもんや」

 

賛辞の言葉を受けリョウは思わず微笑んだ。

アイリは自分で述べた事が恥ずかしかったのか、頬を赤く染めリョウと同じ様に微笑んだ。

 

アイリ「さーて、帰ったらバイ○ハザードの続きをするぞ~!」

 

リョウ「ゲームのやりすぎは目に良くないから今日はもう駄目だ」

 

アイリ「駄目!? そんな~。今日は厄日だわ!」

 

アイリは娯楽の時間を楽しめないことに不満を爆発させていた。

 

 

~~~~

 

 

アイリ達がその場を去り数分が経過し、風の音だけが寂しく聞こえるなか、再び黒い霧が出現し、リリスが姿を現した。

先程の戦闘で負った傷は既に癒えており、アイリ達が去った方角を見て莞爾として笑みを浮かべている。

 

リリス「なかなか面白いお嬢ちゃんね。何か大きな力を感じるのは、光の力だけってわけではなさそう。これは、面白くなりそうね。まあ今日は現在の監視者の実力とアイリって子の実力を測るのが目的だったし、今日は帰りましょうか。私の野望のためにも、今は泳がせて更なる進化を期待しないと」

 

正に悪魔と呼べる、悪辣な陰謀を企む薄気味悪い笑みを浮かべ、再度黒い霧に包まれ天界を去っていった。

リリスが何を企み、何をしようとしているのか、知る者は誰一人としていない。




マスクを着用して外出しましょう(切実)
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